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児玉憲宗/坂道尾道書店事件簿

  • 2009/07/05(日) 09:47:33

尾道坂道書店事件簿
尾道坂道書店事件簿

内容紹介
著者・児玉憲宗が勤める啓文社は、昭和6年、尾道にある商店街に十坪ほどの店舗、わずか3人で創業した。もともとは、煙草の元売捌をしていたが、制度廃止後、今まで、身体の害になるものを売ってきたから、今度やる商売は人の役に立つものにしたいと、薬局か書店かに絞られた末、書店をすることにしたという。今では広島県内に二十店舗を展開する書店チェーンである。
そのお店で、先輩から仕事を盗み、良いお店に向かってがむしゃらに突き進んでいた児玉を襲ったのは、脊髄の悪性リンパ腫だった。新店オープンを前に入院することになるが、児玉は一切泣き言をもらさず、現実と立ち向かい、手術、リハビリの末、退院。手に入れたのは車椅子とバリアフリーの家、そして「わしはおまえに障害があろうと特別扱いはせんよ。バンバン仕事をやってもらうから。」と肩を叩く社長をはじめ、同僚だった。現在本部として啓文社の売り場を支えているが、そのフットワークは、誰よりも軽く、改造した車に乗って各店舗を見て歩く。そんな書店員人生と地方の書店の現状、本部という仕事を描いた1冊。

タイトルに<事件簿>と付いていますが、ミステリーではありません。
著者の児玉さんは広島県内でチェーン展開する書店「啓文社」の一社員。
その児玉さんが実際にお店や社内で起こったこと、経験したこと、本を扱う人間として思うこと、仕事仲間やお客さんとのエピソード、そして著者自身の日常などを描いたエッセイです。

とても面白かったです。

さまざまなエピソードから児玉さんの書店員という仕事への真摯な、前向きな思いがストレートに伝わって来ます。
地方書店としての悩み、その中で出来ることを積極的に取り入れていくアイディアや実行力、サービスに対する考え方、同僚との関係など、ただ「書店員」だけに限らずどんな職業にも当てはまるエピソードがたくさんあってとても参考になりました。

児玉さんは(上記の「内容紹介」にも書かれているように)10年ほど前に難病(悪性リンパ腫)を患い、その治療のための手術により下半身不随になり車椅子での生活を余儀なくされています。
そのため書店員としての活躍の他に、その発病からリハビリ、会社復帰までの様子が「闘病編」として約50ページにまとめられています。
そこには、普通であればかなり悲劇的、絶望的であるとも思える難病とハンデキャップに真正面から向き合い、決して諦めず前向きにそれを受け入れ、乗り越えていく児玉さんの力強い姿が描かれています。
そんな児玉さんのために会社をバリアフリーに改築してまで「また一緒に働こう」と待っていてくれた手塚社長を始めとした啓文社という会社の懐の深さ、温かさが感動的でした。
もちろん、その待遇は破格のものだなと思います。
一般的には会社はそこまでしてくれないと考えるのが普通でしょうし、仮にそうしたくとも出来ない場合も多いでしょう。
でも、児玉さんはそうした対応をしてくれる会社に出会うことが出来た、それはとてもラッキーなことだったと思います。
でも、児玉さんは何もせずにそのラッキーに巡り会ったわけではなく、そういう状況や関係を可能にしたのもまたそれまでの児玉さん自身の努力や働きがもたらしたものだと素直に理解できる内容でした。
本当は社会全体がこんなふうにきちんと努力した人が、正当に報われる仕組みであるべきなんですけどね…。

児玉さんは本屋さんであって文筆を職業にしている方ではないのですが、やはり毎日本に触れているだけあって(読書量も相当とか)文章がとても上手なんですよね。
いわゆる「美文」というわけではありませんが、感情がセーブされ、人間関係や時系列などがスッキリまとめられている判りやすい文章で読みやすかったです。
プラス、そこにちょっとした笑いの要素や、話の内容に合わせた本の紹介などもさりげなく挟み込んでまとめあげてしまうセンスもあって、下手な小説家の装飾語ばかりで何が書いてあるか判らない文章よりもずっと好感が持てました。
文章というのはその人の性格や思考方法の反映だと思うので文章を読むとその人がどんな人かよく理解できると思うのですが、その視点で行くと児玉さんは頭が良くて、情熱的だけど同時に理性的、そして気さくで信頼出来る人というイメージですね。
こんな児玉さんが愛して止まない啓文社書店。
機会があったら是非行ってみたい本屋さんです。

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