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≪ 澁澤龍彦『高丘親王航海記』 ALL 嶽本野ばら『下妻物語―ヤンキーちゃんとロリータちゃん』 ≫

辻原登『遊動亭円木』

  • 2004/03/16(火) 20:52:30

遊動亭円木
辻原 登
辻原登『遊動亭円木』意識して選んだ訳じゃないけど、『高丘親王~』に続いてこれも「夢」と「現実」が微妙に入り組んだような雰囲気がある作品だった。

ただ味わいは全く別物。
『高丘親王~』が懐かしく穏やかな気持ちになったのに対して、こちらはちょっと不安で落ち着かない気分にさせられることが多かった。
と言っても、それは決して不快なわけではなくて「不安だからこそ惹かれてしまう」と言った感じ。

遊動亭円木は真打ちを目前にした落語家だったが遺伝体質の糖尿病と自分の不養生から殆ど目が見えない状態になってしまい、高座から遠ざかり実の妹とそのつれあいが経営するマンション「ボタン・コート」の一室で暮らしていた。

この円木を中心にした人間関係が物語の中心。
いわくつきのボタン・コートの住人たち、円木を含めたその住人たちの面倒を親身になって見る妹夫婦、円木の昔のひいき筋で今も何かと気遣ってくれる明楽(あきら)の旦那、昔一緒に暮らした多恵、後に円木と結婚することになる寧々…それぞれに語り尽くせない過去を背負って生きている登場人物たちはみんな優しく魅力的で、どこか幻想的でもある。

彼らが織りなす現代の大人のおとぎ話と言った趣の「普通、こんな事ないだろう」と言うような関係や事件が、ゆったりした文章でサラリと描かれる。
その文章の細かいことを説明しすぎない「余白」の部分が物語や人物設定ととてもよくマッチしていて気持ちのいい読後感が味わえる作品だった。

他にも円木が出てくる作品が幾つかあるようなので、機会があったら読んでみたいと思う。

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