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柴田よしき/貴船菊の白

  • 2009/06/24(水) 09:41:16

貴船菊の白 (祥伝社文庫)
貴船菊の白 (祥伝社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
秋になったら、いつかあなたが話してくれた、京都の紅葉を見に連れて行って―亡き妻が語ったその地は刑事になって初めての事件で、犯人に自殺された因縁の場所だった。刑事を辞めた男が十五年ぶりに訪れたとき、そこに手向けられていた貴船菊の花束。白く小さな花は、思いもよらぬ真相を男に告げる…。美しい京都を舞台に、胸に迫る七つの傑作ミステリー。

柴田さんは巧い作家さんだと思います。
私も以前は「RIKO」シリーズとか「炎都」のシリーズとかけっこういろいろ読んでいたのですが、最近はあまり手が出ません。
あまりにも巧すぎるので読んでいるとこっちまで心理的に追い詰められてしまい息苦しくなってしまうんですよね。
(緊張の持続にすごく弱いのです。TVや映画もついついそういう作品は避けてしまいます・・・)
なので、柴田さんの作品で安心して手に取れるのは「猫探偵 正太郎」シリーズくらいかも。

そんなヘタレな私なので京都が舞台のミステリー、しかも表紙イラストがちょっと暗めと不安材料が多いこの作品も購入前にちょっと迷いましたが、ちょうど手持ちの本が切れて他にめぼしい本もなかったので思い切って買ってみました。
結果、なんとか許容範囲内でした。
内容としては予想した通り「人間関係のドロドロ系」なのですが、1篇のページ数が少ないので展開が早く、苦しくなる前に読み終わることが出来ました。

作品のイメージとしては残念ながら好きなタイプではなかったのですが、登場人物の人間関係や心理描写、事件の内容、経緯そしてそこに京都ならではの風習やしきたり、景色まで入れて短いページ内できれいに完結させる物語の流れはどれも見事でした。

でもどうせ京都が舞台の話なら、以前読んだ『ふたたびの虹』の続編が読みたかったなあ。

表題作他「銀の孔雀」「七月の喧噪」「送り火が消えるまで」「一夜飾りの町」「躑躅幻想」「幸せの方角」の7編を収録。


RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)
RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)
炎都―City Inferno (徳間文庫)
炎都―City Inferno (徳間文庫)
猫探偵・正太郎の冒険〈1〉猫は密室でジャンプする (カッパ・ノベルス)
猫探偵・正太郎の冒険〈1〉猫は密室でジャンプする (カッパ・ノベルス)
ふたたびの虹 (祥伝社文庫)
ふたたびの虹 (祥伝社文庫)

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ほしおさなえ/天の前庭

  • 2009/06/20(土) 09:38:03

天の前庭 (ミステリ・フロンティア)
天の前庭 (ミステリ・フロンティア)

内容(「MARC」データベースより)
自動車事故で意識不明となり、そのまま9年間眠り続けた柚乃。奇跡的に目覚めたとき、すべての記憶を失っていた。そして今、かつての日記に自分にそっくりな少女に出会ったという記述を見つける-。彼女の行き着く真実とは?

何が書いてあるのかよく判らないなあ、と思いながら、それでも最後にはちゃんと解答が提示されるのであろうと思って読み進んでいたのに結局そのまま終わってしまったよ、という印象の作品でした。
いろんな要素が次々と提示されてそれが一見リンクして結末に近づくための鍵のように見えながら、その結びつきに関する情報は曖昧で要素が増えるに従って逆にどんどん全体像がぼやけていってしまうのです。
『ミステリ・フロンティア』シリーズの中の1冊なのでミステリだと思って読み始めたのですが、途中でドッペルゲンガーやタイムスリップなども出てきてミステリなのかSFなのかさえもよく判らないままでした。

でも、それは(他の方のレビューを読む限りでは)「敢えてそういう書き方をしている」っぽいですね。
確かに文章自体は読みにくくはないのですが…やっぱり私には合わないタイプの小説でした。
こればっかりは相性の問題なので仕方ないですね。

小路幸也/「東京バンドワゴン」シリーズ

  • 2009/06/12(金) 11:03:53

東京バンドワゴン (集英社文庫)
東京バンドワゴン (集英社文庫)
シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン (集英社文庫)
シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン (集英社文庫)
スタンド・バイ・ミー
スタンド・バイ・ミー

内容(「MARC」データベースより)
下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」。ちょっと風変わりな四世代の大家族が、転がりこんでくる事件を解決する。おかしくて、時に切なく優しい、下町情緒あふれる春夏秋冬の物語。

築数十年の古い建物、季節ごとの自然、そして親密なご近所付き合いが残る、東京のとある下町。
この町で大正時代から「東京バンドワゴン」という変わった名前の古本屋(現在はカフェも併設されている)を営む堀田家は80歳になっても元気な家長の勘一から生まれたての曾孫まで四世代が一緒に暮らす大家族。
この堀田家周辺で起こる小さな謎や事件を中心にした連作短編集。

既刊4冊のうち『東京バンドワゴン』『シー・ラブス・ユー東京バンドワゴン』『スタンド・バイ・ミー東京バンドワゴン』の3冊を順番に読みました。

す~ごく面白かったです!

とにかく、登場人物がとても多いのが印象的。
なにしろ中心になる堀田家からして12人(!)の大家族。
(シリーズ1冊目では8人でしたが、その後お嫁さんとお婿さんが1人づつ+赤ちゃんが2人増えて3冊目現在は12人になりました。今後、更に増えそうな予感です(笑))
これだけでも充分多いのに、そのほかにもお嫁さん、お婿さんの親御さん、町内のご近所さん、お店の常連さん、子供たちの同級生やその保護者などなど。
これだけ人が出てくると普通は誰が誰だか判らなくなったり、出てきたけど印象が薄くて忘れちゃったりするものですがこの作品ではそういう人が殆どいないんですよね。
それぞれがきちんと人物設定、性格設定されて物語の中に存在して、それぞれの役割を果たしているので、小説の登場人物の名前や人間関係を覚えるのがあまり得意ではない私でも覚えようと意識しなくても読んでいるうちに一人一人がスーッと自然に入ってきてしまう感じでした。

個性的な登場人物の中でもダントツなのは、勘一の一人息子・我南人(がなと)。
60歳を過ぎて、孫までいるおじいちゃんなのに、職業は「伝説のロッカー」(「自称」ではなくホントの有名人)なのです。
金色長髪に派手な服、あちこちをふらふらしてまともに家に寄り付かず、口癖は「Loveだねぇ」…という奇抜なキャラクター。
とても「下町の古本屋(しかも大家族)」にはそぐわない設定なのですが、そんな我南人でさえ悪目立ちすることもなくちゃんと堀田家の一員、作品の中の登場人物として違和感なくそこに存在している、その世界観がスゴイと思うのです。

このシリーズには巻末に「あの頃、たくさんの笑いと涙を届けてくれたテレビドラマへ」という献辞が入っています。
つまり、この作品は「あの頃」のテレビドラマへのオマージュなんですね。
イメージからいうと「寺内貫太郎一家」あたりかな?
家長の勘一が80歳という高齢という設定なので、ドラマみたいに「毎回ちゃぶ台をひっくり返して喧嘩するシーン」はありませんが(笑)家族みんなで食事するシーンはどのお話にも出てきて、これがすごく印象的。
お料理は名前が出てくるだけでそんなに詳しいディテールが描かれているわけではないのですが、贅沢ではないけれどちゃんとバランスが考えられた手料理がいっぱいに並ぶ大きなテーブルで、家族全員が集まってワイワイ喋りながらの食事シーンはそのまま「幸せ」を表現しているような気がしました。
(だからといって、一人でご飯食べるのが「不幸」だということではないですけどね)
私は正直あまり大勢の人と一緒にいるのが得意なほうではないのですが、この作品を読むと「家族っていいよねえ」と自然に思ってしまいますね。

物語は堀田家の中やその周辺で起こる小さな謎や騒動を中心に展開します。
それらの事件も伏線がきちんと引いてあり結末も自然でよく出来ているのですが、それ以上にそうした事件や騒動があっても繰り返される堀田家の日常、日ごとに成長していく子供たち、人との繋がりを大切にして真面目にまっすぐ生きている人々がきちんと描かれている部分が素晴らしい作品でした。
感動して大泣きすることはありませんが、読んでいる間も読み終わった後もすごく気持ちよくて、「人に優しくしよう」という気分になります。

これからもずっと続いていって欲しいシリーズです。

取りあえずは今年の4月に出たシリーズ最新刊『マイ・ブルー・ヘブン』(勘一の若い頃を描いた番外編らしい)は現在図書館の順番待ち中。
もうすぐ読めそうなのですごく楽しみです(^^)

マイ・ブルー・ヘブン―東京バンドワゴン

公式サイト発見!
集英社「東京バンドワゴン」シリーズ

藤野恵美『ハルさん』

  • 2009/06/10(水) 09:58:02

ハルさん (ミステリ・フロンティア)
ハルさん (ミステリ・フロンティア)

内容(「BOOK」データベースより)
(瑠璃子さん…今日はね、ふうちゃんの結婚式なんだよ。まさか、この僕が「花嫁の父」になるなんて…)ふうちゃんの結婚式の日、お父さんのハルさんは思い出す、娘の成長を柔らかく彩った五つの謎を。幼稚園児のふうちゃんが遭遇した卵焼き消失事件、小学生のふうちゃんが起こした意外な騒動…。心底困り果てたハルさんのためにいつも謎を解き明かしてくれるのは、天国にいる奥さんの瑠璃子さんだった。児童文学の新鋭が、頼りない人形作家の父と、日々成長する娘の姿を優しく綴った快作。

最愛の妻・瑠璃子さんが夭折して以来、人形作家のハルさんが男手一つで育て上げた一人娘・ふうちゃん。
今日はそのふうちゃんの結婚式。
花嫁の父として結婚式に臨むハルさんの脳裏に、小さい頃からのふうちゃんの思い出がよみがえります。

元気で社交的なふうちゃんの周囲に起きる事件を、人付き合いが苦手で心配性なハルさんが天国の瑠璃子さんの手助けを借りながら解決していくという構成。
「消えた卵焼き事件」「夏休みの失踪」「涙の理由」「サンタが指輪を持ってくる」「人形の家」の5編が収録されています。

最愛の人を早くに亡くし、遺された一粒種のふうちゃんの養育に心を砕くハルさんと、その愛情を一身に受けて明るく頭がよく誰からも好かれる素敵な女性に育っていくふうちゃんの成長の様子が丁寧に描かれたほのぼのした物語だったのですが…私はちょっと苦手でした。
原因はハルさんの人物設定。
人付き合いが下手で気が弱くて心配性、だけど人形作家としての才能は一流で一人娘のふうちゃんを何よりも大切にしている…という設定のようなのですが、どうも私にはマイナス部分ばかりが目に付いてしまったんですよね~。
特にふうちゃんに何かあったときの動転っぷりが尋常じゃない。
一人娘を心配する父親の心情としては当然なのかもしれませんが、それにしても大人なんだからもうちょっと落ち着いたほうがいいんじゃないの?と読んでいてイライラしてしまいました。
しかもただオタオタしてるだけで、建設的な考えや行動に結びついて行かない、結局死んだ奥さんの手助けがないと何も解決されないというのはどうなのよ、と。
物語の中の1つくらい自力で解決してもよかったんじゃないのかなあ、と思いました。

物語の中でふうちゃんは幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と成長して行くのですが、それにつれて行動も考え方も発言も少しずつ変わっていく部分はすごく丁寧にリアルに描けていると思いました。
(特に中学生になって反抗期に入ったふうちゃんの描写が良かったです♪)
なのにハルさんの性格だけがずぅっと同じなんですよね。
あまりに変わらないのでだんだん「死んだのは瑠璃子さんじゃなくてハルさんだった」というオチなんじゃ?と穿った見方をしてしまうくらいでした^^;
でもそのくらい頼りなくて現実感がない感じだったんですよ…。
完全に好みの問題ですが、私としてはもうちょっとしっかりした人物像であって欲しかったです。

まあ、ハルさんの周囲の人、特にふうちゃんはそういうハルさんが大好きなんですから、その他の人間がどう思おうとハルさんには関係ないんでしょうけどね。

上田早夕里『ショコラティエの勲章』

  • 2009/06/09(火) 09:53:29

ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア)
ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア)

内容(「BOOK」データベースより)
絢部あかりが勤めている老舗の和菓子店“福桜堂”。その二軒先に店をかまえる人気ショコラトリー“ショコラ・ド・ルイ”で、不可解な万引き事件が起きた。その事件がきっかけで、あかりはルイのシェフ・長峰と出会う。ボンボン・ショコラ、ガレット・デ・ロワ、新作和菓子、アイスクリーム、低カロリーチョコレート、クリスマスケーキ―さまざまなお菓子をめぐる人間模様と、菓子職人の矜持を描く、小松左京賞作家の鮮やかな力作。

老舗和菓子店の売り子をしているあかりと、人気ショコラトリーのシェフ・長峰が周囲で起こるスイーツ絡みの騒動や謎を解決していく連作短編集。
表題作他「鏡の声」「七番目のフェーヴ」「月人壮士」「約束」「夢のチョコレートハウス」の6編を収録。

コージーミステリーらしく丁寧で穏やかな語り口で話が進み最後もきちんとエンドマークが付けられるのですが、「みんなの誤解が解けてめでたし、めでたし」というまん丸なものではなく、それぞれの気持ちのどこかにちょっとだけ引っ掛かりを残したままのほろ苦い結末の作品が多かったような気がしました。
これも「チョコレート」がテーマだからなのかな。
主役のあかり、長峰を始めとした主な登場人物も、包容力があり大人の分別を持った落ち着いたキャラクターが多く、全体的に大人っぽい雰囲気の作品。
作品中に出てくるお菓子の描写もすごく丁寧で美味しそうだし、物語の中での役割も不自然ではなく上手くまとまっていて気持ちよく読めました。

ただ、読むのに邪魔ってほどではなかったですが、お菓子についての専門用語がすごく多いなあと思いました。
専門家である長峰はともかく、単に「お菓子好き」という設定のあかりの口からもどんどん専門用語や蘊蓄が出てくるんですよね。
いくら父親が菓子職人で、本人も無類のお菓子(スイーツ)好きだとしてもちょっと詳しすぎでは…。
それとも最近の女の子はこのくらい当然なのでしょうか?(汗)
でも、そうした専門的な用語が多用されているにも関わらず 鼻につかないのは、文章や構成がスッキリとまとまっているからなんでしょうね。

ちなみに私はこの本を読んで「ここに出てくるようなチョコレートとかケーキとかにあまり興味がないんだな~」ということを改めて実感しました(笑)
もちろん嫌いではないので目の前にあれば美味しく頂きますが、こういう小説を読んでどうしても食べたくなって思わず買い(食べ)に行ってしまうようなタイプではないみたい。

そんな私でも面白く読める作品でした。
甘いもの好きの人だったら絶対気に入ると思うのでぜひ。

西條奈加『金春屋ゴメス』

  • 2009/06/08(月) 09:49:50

金春屋ゴメス (新潮文庫)
金春屋ゴメス (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
近未来の日本に、鎖国状態の「江戸国」が出現。競争率三百倍の難関を潜り抜け、入国を許可された大学二年生の辰次郎。身請け先は、身の丈六尺六寸、目方四十六貫、極悪非道、無慈悲で鳴らした「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった!ゴメスに致死率100%の流行病「鬼赤病」の正体を突き止めることを命じられた辰次郎は―。「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。

舞台は近未来の日本の中にある「江戸」という国。
日本から属国として認められているが、基本的に<鎖国>状態であるためその他の諸外国との交渉はない。
日本との行き来も厳密に規制されているという設定。

一見時代小説のようでありながら、実はSFなんですね。
タイムスリップものではないのに現在と過去を同時に描ける、しかもお互いに干渉しあうことも(タイムスリップものよりは)容易であるという、ちょっと緩めの設定。
しかも表紙のイラストに描かれた迫力のある人物!
これがタイトルロールの「ゴメス」だっていうんだから、どんなにハチャメチャな物語が展開しているんだろう…と思いきや、内容は意外なくらい真面目だったのでちょっとガッカリでした。

まず、物語の中で描かれている「江戸」国がその風習や人物も含めてきちんと(時代小説やドラマ、映画でよく見る)江戸なんですよ。
しかも物語の殆どが「江戸」での話なので、読んでいるうちに単純に「時代小説」を読んでいるような錯覚に陥ってしまうのです。
ベースは実在の(あるいは私たちがよく知っていると思っている)「江戸」でもいいのですが、それとは別にもっとこの物語の中の「江戸」特有の設定があったり、江戸との対比として「日本」の状況がもっと描かれていたほうがよかったかなという気がしました。

それにゴメスも、外見や噂の中ではかなり強烈な人物として描かれているのですが、実際の言動はけっこうマトモなのでちょっと拍子抜け。
人間離れした外見で乱暴者という部分は読み取れるのですが、「大泥棒も泣いて怖がる」というほどの極悪非道ぶりがあったかと言われると…。
むしろ「見かけは怖いけど、実は頭が良くて情に篤い有能なお奉行」というイメージのほうが強い人物のように思いました。
(でも、ラスト近くで窮地に陥った辰次郎たちを愛馬に乗ったゴメスが助けに来るシーンは(トラックか戦車なみの)迫力があってよかったです(笑))

舞台設定もキャラクター設定も話の内容もそれぞれを見ると面白かったのですが、お互いが遠慮しあって小さくまとまってしまったような印象を受けました。
設定を生かしてもっと弾けた話でもよかったのでは。

この作品はシリーズ化されているとのこと。
全体的な世界観や、文章の書き方などは嫌いじゃないので、別の作品も読んでみたいと思います。

堂場瞬一『雪虫』

  • 2009/06/04(木) 09:46:23

雪虫 (中公文庫)
雪虫 (中公文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
俺は刑事に生まれたんだ―祖父・父を継いで新潟県警捜査一課の刑事となった鳴沢了は、晩秋の湯沢で殺された老女が、かつて宗教教団の教祖で、五十年前に殺人事件に関わったことを突き止めた。了は二つの事件の関連を確信するが、捜査本部長の父はなぜか了を事件から遠ざけるのだった。正義は、そして歳月は、真実を覆い隠すのか?新警察小説。

刑事・鳴沢了シリーズの1冊目。

鳴沢家は主人公の了自身だけでなく、祖父、父と三代に渡って刑事(しかも「優秀な」)だったという設定。
これをもっと引っ張るのかと思っていたのに、それが軽く裏切られる結末でちょっとビックリしました。
(読んでいるうちにある程度予想は出来るのですが)

一人暮らしの老女・本間あさ殺しに始まる一連の事件の捜査~解決の流れはまあまあ面白かったのですが、その間に挟まる了の個人的な人間関係(家族や恋人)についての記述がかなり多いな~、という印象を受けました。

特にひっかかったのは了と現在は新潟魚沼署の署長を務める父親との確執(というか、了の一方的なこだわり?)が何度も描かれるのですが、その理由が明確に説明されていないこと。
作中で「(了が)刑事になるときに一方的に反対されたから」との記述はあるのですが、「ホントにそれだけ?」って感じがする嫌い方なんですよね。
なので、もっと深い理由があるんじゃないかと思っているのですが…。
(もしもホントにそれだけの理由だとしたら、了ってかなりガキだなあ、と思うんですが…^^;)
また「鳴沢家の男は15歳で独立する」ってことで、高校から東京で一人暮らしするっていうのもなんだかわかったような判らないような…って感じの設定でしたし。
更にそうやって多くのページを了の個人的な感情や人間関係に費やしている割に「鳴沢了」という登場人物のアウトラインはどうも曖昧なままに終わってしまったような気がしてちょっと消化不良でした。

これからシリーズが進むにつれてその辺りの事情も明らかになっていくのでしょうか。

高井忍『漂流巌流島』

  • 2009/06/02(火) 09:42:36

漂流巌流島 (ミステリ・フロンティア)
漂流巌流島 (ミステリ・フロンティア)

内容(「BOOK」データベースより)
宮本武蔵は決闘に遅れなかった!?赤穂浪士は浅野内匠頭が殿中刃傷に及んだ理由を知らなかった!?近藤勇は池田屋事件を無理やり起こしていた!?鍵屋ノ辻の仇討ちは都合よく行きすぎた!?人使いの荒い監督に強引に引きずり込まれ、チャンバラ映画のプロットだてを手伝う羽目になった主人公。居酒屋で額を寄せ合い、あーでもない、こーでもないと集めた史料を検討すると、巌流島の決闘や忠臣蔵の討ち入りなどよく知られる歴史的事件の、目から鱗の真相が明らかに…!綾辻行人・有栖川有栖両氏に絶賛された第二回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む、挑戦的歴史ミステリ短編集。

ここの所、1冊当たり1~2日でどんどん読み終わっていたので「読むスピードが上がったのかな」とちょっと喜んでいたのですが、この本は読了までに1週間掛かってしまいました。
やはり歴史ミステリーは情報が多いので時間が掛かりますね…。
(といっても、古文書の引き写しとか読み下し文など漢字が山盛りの部分は殆ど読み飛ばしていたのですが^^;)

でも、内容は面白かったです。

登場人物は歴史的な事件を扱ったオムニバスの短編チャンバラ映画を製作することになった監督と脚本家。
その資料として脚本家が集めたその事件の過去資料を元に事件のあらましを説明すると、監督が同じ資料の中から隠された事実を見つけ出す。
それを組み立てていくことでその歴史的事件に一般的に知られていたのとは別の姿が浮かび上がってくる…という構成。

2人が打ち合わせする数時間のうちに事件全体の説明から矛盾点の指摘、新説の解明までが完了するというスピーディな展開のため無駄がないし、話の内容もあまり広がりすぎないので分かりやすかったです。
(途中で殺人事件が起こったりもしないしね…(笑))
その分多少強引なところもありましたが、基本的に作品中に提示された資料の中で推理が完結しているので読者に対してもかなりフェアな内容であったと思います。

表題作他「亡霊忠臣蔵」「慟哭新選組」「彷徨鍵屋ノ辻」の4編を収録。

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