ページ内記事タイトル一覧

◆Date:2009年05月
ALL

フリーエリア

テスト中。ここはフリーエリアです。

スポンサーサイト

  • --/--/--(--) --:--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

越水利江子『花天新選組-君よいつの日か会おう』

  • 2009/05/25(月) 09:38:03

花天新選組―君よいつの日か会おう
花天新選組―君よいつの日か会おう

内容(「BOOK」データベースより)
現代の少女がタイムスリップし、幕末の新選組隊士に!否応なく戦闘に巻き込まれ、泣いたり、わめいたりしながらも、やがて総司への想いを胸に、鳥羽伏見の戦いに…。壮絶に燃える幕末ファンタジー。

前作では幕末の沖田が秋飛のいる現代に飛んできた、という設定でしたが、今回は秋飛のほうが幕末にタイムスリップして新選組の隊士になる(死にかけた隊士の身体に秋飛の意識だけが入り込む)という設定になっています。

新選組の隊士たちのキャラクターや史実、時代の中で果たした役割などは丁寧に判りやすく書いてあるのですが、そこがあまりにもカッチリし過ぎていて「秋飛」という異分子が入り込んだことによる「ずれ」とか「遊び」の部分があまりなく、全体的に普通の「新選組もの」になってしまっているのが残念でした。

元々は女の子であった、とか剣の修行をしていた、とかいう前提の部分を活かせば、もっと「物語」として膨らますことが出来る部分が多かったような気がするのですが。
逆に考えれば、それだけ著者が「新選組」という集団に対して真摯であったという証なのかもしれませんが。

一番気になったのは、幕末に飛んでから最後まで秋飛が一度も現代に戻る部分がなかったということ。
秋飛にとっては沖田が一番大切な人物になっていたということや自分の意志でどうこうできることではなかったということだと思うのですが、現代にもまた秋飛を心配している家族や友人、仕事仲間がいることを考えれば何かのきっかけで少しの間でも現代に戻るシーンがあってもよかったのでは。
そして本来の秋飛としての人生や生活に心を残しながらも、その上でやはり沖田のいる時代に戻ることを自分の意志で選択して、その時代に戻るという設定にしたほうが秋飛の真剣さがより強調されたような気がしました。
または沖田が死んでから現代に戻ってきて、自分の生きる意味や進む道を真剣に考えて生き始めるとか…。

自分で捨ててきたわけでもないのに突然タイムスリップしてそのままそこで終わってしまい残された現代の状況には何も触れないというのはちょっと不親切だなあ、と思いました。

新選組本として読めば丁寧な文章できれいにまとまっているし沖田や土方ら主要な人物はかなり魅力的に描かれている作品だと思うのですが、せっかく歴史小説以外の要素を持ち込んでいるのですからその視点からのアプローチがもっとあったらよかったのに…と思います。

スポンサーサイト

越水利江子『月下花伝-時の橋を駆けて』

  • 2009/05/21(木) 09:33:55

月下花伝―時の橋を駆けて
月下花伝―時の橋を駆けて

内容(「BOOK」データベースより)
秋飛!天と地があるかぎりおれたちは永遠に共に生きる。激動の時代を駆け抜けた青年・沖田総司と現代の少女・秋飛の出会い。

主人公は17歳の少女・秋飛(あきひ)。
2歳のときに両親を事故で亡くして以来、剣術の道場を営む祖父の元で7歳違いの姉・春姫とともに暮らしていたが、先日その最愛の祖父も病死してしまう。
悲しみにくれる秋飛が気晴らしに家の中から見つけた古い映画のフィルムを見ていたところ、その中から新撰組の沖田総司が現れる…。

読みやすい文章できれいにまとまっているのですが、何が言いたいのかがよく判らないまま読み終わってしまった感じでした。

古い映画のフイルムの中から沖田が出てきたり、秋飛が女優になるという設定自体は面白いのですが、その根拠や意味がきちんと描かれていないのでその設定の重要さや秋飛の真剣さが今ひとつ伝わって来ないんですよね。
秋飛の前に沖田が出てくるのは、おじいちゃんが剣術の達人で小さい頃から秋飛も稽古をつけてもらっていたからという前提があるのでまだ納得できるのですが、女優になる設定の方は「興味があるからやってみたい」以上の、もう少しのっぴきならない、または運命的なエピソードがあったほうが秋飛の行動や心情に感情移入出来るのではないかと思いました。

この後、続編(『花天新選組』)があるのでこちらではもっと深い話が読めることを期待しましょう。
(既に借りてあります(笑))

高橋克彦『蘭陽きらら舞』

  • 2009/05/21(木) 09:31:07

蘭陽きらら舞
蘭陽きらら舞

内容(「BOOK」データベースより)
胸にしみる人情話から背すじも凍る幽霊譚まで捕物帖の醍醐味が満載!大好評「だましゑ」シリーズ第4弾!若衆髷を結い、女と見紛う美貌だが、役者仕込の俊敏さで荒事もこなす蘭陽が、相棒の春朗(後の葛飾北斎)とともに江戸の怪事件に挑む―。

『だましゑ歌麿』から始まったシリーズの第4弾。
今回の主役は前作で登場した女形の蘭陽。

戯作者の俵蔵(のちの南北)の引き合いで休業していた舞台の仕事が回ってきて喜ぶ蘭陽。
そんな彼の行く先々で降りかかってくる事件や揉め事を春朗(のちの北斎)や北町奉行筆頭与力・仙波家の人々の助けを借りて解決していく短編集。
表題作他「はぎ格子」「化物屋舗」「出で湯の怪」「西瓜小僧」「連れトンボ」「たたり」「つばめ」「隠れ唄」「さかだち幽霊」「追い込み」「こうもり」の12編を収録。
この中で、蘭陽が役者を辞めた理由や少年の頃愛した人の話、蘭陽が抱える幕府の隠密につけ狙われるほどの秘密の話などが明らかにされていきます。

派手で短気でわがまま、だけど人情に厚く思いやり深い蘭陽と、そんな蘭陽を心配してぶつぶつ文句をいいながらも危険な場所にも一緒についていく春朗のテンポのいい会話が楽しい作品でした。

ただ、全体を通してまとまった作品にはなっているものの、1編づつが短すぎるせいか今ひとつ蘭陽に感情移入出来ずに終わってしまった感じがします。
母親を殺された少年・芳吉を引き取るあたりの話は細かく切ってしまうよりもまとまった話にしたほうがよかったのでは。


このシリーズの1作目『だましゑ歌麿』がテレビ朝日系列でドラマ化されるようです。(放送日時は未定)
歌麿が水谷豊、仙波は中村橋之助というキャスティング。
なかなか面白そうです。

テレビ朝日ドラマスペシャル だましゑ歌麿

だましゑ歌麿 (文春文庫)
だましゑ歌麿 (文春文庫)
 

今野敏『蓬莱』

  • 2009/05/16(土) 09:27:46

蓬莱 (講談社文庫)
蓬莱 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
そのゲームには「日本」が封印されている!?人気沸騰のゲームソフト「蓬莱」を開発したソフトハウスは、パソコン版に続きスーパーファミコン版を計画した。しかし、恫喝し、力尽くでその発売を執拗に妨害する巨大な力が…。バーチャル・ゲームと伝奇世界がリアルに交錯する傑作エンタテインメント巨編。

安積班シリーズの長編です。

主役は小さなゲームソフト会社の社長・渡瀬。
彼の会社の若手社員・大木が中心となって作成された「蓬莱」というゲームソフトを巡って起こる事件に所轄の担当者として安積が関わっていくという構成になっています。

いつもの安積班メインの作品とはちょっと異質な印象でしたが、とても面白かったです。

物語のキーワードとなるのは「蓬莱」と名付けられたシュミレーションゲームなのですが、このゲームのディテールの設定が見事。
重要なアイテムなのですから当然といえば当然なのですが、かなり細かい部分まで手を抜かずきちんと設定してあるし、何よりゲームとして「面白そう」と感じました。
このゲームソフトが全ての鍵を握っていて、これを中心に事件が動いていることを考えると、そのアイテムをどれだけ魅力的にみせることが出来るかがポイントだと思うのですが、そういう意味で「蓬莱」の描写は成功していたと思います。
といっても私自身はこういうシュミレーションゲームのような手の込んだゲームにはあまり興味も知識もないので、あくまで「小説の中の設定として」という判断しか出来ませんが。 

また、今回の作品では「蓬莱」自体の解説の他にも設定の元となる史実や学説、人物についての解説がかなり詳しくページ数を割いて記述されています。
私はこういう歴史的薀蓄みたいなのも好きなのでけっこう面白く読んだのですが、いつもの「安積班シリーズ」の1作品として読み始めるとちょっと面食らうかもしれません。
確かに事件のベースになる考え方だし、すごく判りやすく書いてあるのですが、物語の展開の上でここまでの分量が果たして必要だったのかどうかはちょっと疑問を感じました。
(「QEDシリーズ」に比べればカワイイものですけどね…って比べる対象が違うか^^;)

この作品では渡瀬の目を通した安積が描かれています。
(特に前半)
通常の作品では安積の心理描写が(しつこいくらい)出てくるので、安積は仕事が出来るし部下や同僚からの信頼も篤いのに心配性で気にしぃというイメージあるのですが、こうやって第三者(しかも心当たりのない暴行を受け不安な一般人)の目から見た安積は、その表情の内側で何を考えているか判らないため事務的でとっつき難い印象に映るということが(当然のことではあるのですが)新鮮でした。
(その後、時間の経過とともに渡瀬にも安積の本質が理解されていくのですが)
誰の目から見るかで同じ人物でも違った印象で見えてくるのが面白いですね。

導入部、設定、伏線、展開、エピソード、どれもスムーズですが同時に緊迫感がある展開で、非常に面白い作品でした。
登場人物も一人一人丁寧に設定されていて、物語に説得力と厚み、深みを与えていました。

これで現在出版されている安積班シリーズは全て読了。
充分楽しみましたが、もう次に買うものがないのが寂しいです…。
でも、このシリーズのおかげで今まであまり意識していなかった「警察小説」というジャンルに、興味が湧いたのでこの系統の本から次のお気に入りを探してみたいと思います。
※面白い作品をご存知の方、教えて下さい!

今野敏『ST警視庁科学特捜班』

  • 2009/05/14(木) 11:08:07

ST警視庁科学特捜班 (講談社文庫)
ST警視庁科学特捜班 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
多様化する現代犯罪に対応するため新設された警視庁科学特捜班、略称ST。繰り返される猟奇事件、捜査陣は典型的な淫楽殺人と断定したが、STの青山は一人これに異を唱える。プロファイリングで浮かび上がった犯人像の矛盾、追い詰められた犯罪者の取った行動とは。痛快無比エンタテインメントの真骨頂。

「警視庁科学特別捜査班」という架空の部署に所属する特殊な能力を持つ5人のメンバーを中心にしたシリーズの1作目。

普通の刑事たちの地道な捜査活動を描きリアリティを追及した「安積班シリーズ」に対し、超能力とも呼べる頭脳や身体能力、五感を持つ5人のSTたちを主役にしたこちらのシリーズはかなりエンターテイメント性が強いです。

STのメンバー5人それぞれが別々の特殊脳力を持っているんだけど、個性的すぎて(?)却って特徴と名前を覚えられない…^^;
結局どちらもちゃんと覚えられたのは「もう帰っていい?」が口癖の美貌のプロファイラー・青山くんと地獄耳の紅一点・翠ちゃんだけでした(笑)
あとの3人は名前は覚えたけど(赤城と山吹と黒崎)、どの人が何が得意なのかよく覚えてません…。
同じ5人でも安積班の地味な(笑)メンバーズはすぐに覚えたのにな。
しかも一つの場所に(彼ら以外にも)何人も一緒にいるシーンが多いので、しゃべり始まると誰のせりふかよく判らない部分もあったりしてその点でもちょっと混乱してしまいました。

さらに安積班シリーズの場合は、捜査の状況が全て読者に開示されているイメージなのでどこでどうなっているのか何が起こっているのか読んでいるこちらにも判りやすかったのですが、これは実際に捜査に当たる刑事たちが集めてきた事実がSTたち(というかプロファイラーの青山)によってどう解釈されるかが判らないと全体像が見えてこない構成になっているらしく、その辺りが曖昧なまま進んでいくので読んでいてちょっとイライラしました。
しかもプロファイルとか科学捜査がメインになるだけに事件そのものもかなり込み入っているし…。
全体像が見えてきてからは展開がスピードアップして俄然面白くなるのですが、そこに行き着くまでを「長い」と感じてしまいました。
テーマや雰囲気は嫌いじゃないので短編があったらまた読んでみたいです。

ところでこの5人の名前、戦隊ものの登場人物みたい。
だったら紅一点はミドリじゃなくてピンクだよね(笑)

今野敏『半夏生』

  • 2009/05/12(火) 11:02:06

半夏生―東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫)
半夏生―東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
東京お台場のビルの狭間で、アラブ系と思われる外国人男性が倒れているのが発見された。事件性の疑いはないと考えられたが、男性は原因不明の高熱を発し、間もなく死亡。それを機に、東京湾臨海署の安積班にただならぬ空気が流れはじめる―本庁公安部が動きだしたのだ。海外からウイルスを持ち込んだバイオテロなのか?地域・道路封鎖に奔走する安積たちの不安をよそに、事態はさらに悪化の気配を見せはじめた!大好評長篇警察小説、待望の文庫化。

シリーズものって、最初は気に入って読み始めても4~5冊読むとだんだん飽きてきたり、表現が鼻に付くようになってしまい途中で投げ出してしまうことがけっこうあります。
中にはあと数冊で全部読み終わるってところで挫折する場合もあったり。

そんな中、この安積班シリーズは順調に読み進みあと1冊(『蓬莱』)でコンプリートというところまで来ました。
びっくりするくらいリーダビリティがいいですね。
時々ちょっとしつこい表現でイラッとすることもあるのですが、それ以上に全体の丁寧な展開や緩急のリズム、登場人物の魅力などが勝っていて、どんどん読めてしまいます。

この作品も面白かったです。

お台場で身元不明のアラブ人が原因不明の高熱で行き倒れているのが発見され、サイバーテロ実行犯の疑いが掛かる。
臨海署からの報告を受けて本庁の公安部が動き、やがて内閣によるテロ対策室が設置されるという大事件に発展していく。
発生場所から最も近い所轄の臨海署もその騒ぎに巻き込まれる、という内容。

サイバーテロといういつも取り扱っている事件とは違った見えない相手との闘いに翻弄され、先の見えない捜査への不信感、疲労感、焦燥感。
そんな中でもいつもの自分たちの仕事を地道に積み上げることで見えてくる事実…そういった様々な要素が判りやすく丁寧に描かれています。

今回「巧いな~」と思ったのは須田の使い方。
須田と黒木は最初に該当の外国人と接触したため、感染の恐れがあるとのことで入院、隔離されてしまい実際の捜査には参加できなくなります。
でも、須田は(どういう手を使っているのか)度々病院から安積に連絡を入れて、自分や黒木の様子、病院の対応などの情報を安積に提供します。
この須田の情報によって、安積は混乱している状況の中で真実を掴み取り事件を解決に導く重要な役割を果たすのです。
「普通の捜査員は立ち入れない」場所に須田を配置し「動けないけど動ける」状態にした(しかも不可抗力で)というのがこの作品の勝因ではないかと思います。

また、この病院内で黒木は発病したけど、須田は大丈夫だったのですがその理由にきちんと伏線が張ってあるのもよかったです。
(その理由も須田ちゃんらしくてgood!)

今回のメインはサイバーテロ騒動という非現実的な事件ですが、仕事も家も家族もなくし絶望の淵にあった男が再び生きる希望を見つけるというストーリーを絡めたり、珍しく安積と村雨、安積と桜井が業務連絡以外の会話をして、安積の認識の変化があったり、いつもは同じ署内にいても会話も殆どない他の課同士が協力しあって職務に当たって成果を上げていくといった人間的な展開が自然に挿入されていつもの安積班シリーズらしい人情味溢れる演出も健在でした。

今作が他とちょっと違うなと思ったのは、全編を通して日本のテロ対策への批判とも取れる記述が散見されること。
速水が「この国は、じきに滅びるぞ」なんてせりふもあったりして結構過激です。
まあ、ここに書かれていることが現実だとしたらそれも当たらずとも遠からずって感じでしょうか。
しかも現実には安積も速水も、物分かりのいいキャリアもいないわけだし。

はからずも世界的な病気の流行に右往左往している現在。
これは自然発生的なものだから伝播が緩やかだし、情報もきちんと入ってくるし、政府の対応も(今のところ)功を奏しているようなのでマスコミの報道の割にはみんな落ち着いているかなと思いますが、これが明確な悪意を持った何者かが意図的に仕掛けたものでその原因が長時間特定できず、その間にもどんどん感染は広がり患者、死者が増えていく…なんて状況になったら実害がなくても想像だけでパニックになりそう…。 
この本が出版されたのが2004年、それから少しでも状況が好転していることを祈らずにはいられません。

今野敏『最前線 東京湾臨海署安積班』

  • 2009/05/11(月) 10:57:12

最前線―東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫)
最前線―東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
東京・お台場のテレビ局に出演予定の香港映画スターへ、暗殺予告が届いた。東京湾臨海署の安積警部補らは、スターの警備に駆り出されることになった。だが、管内では、不審船の密航者が行方不明になるという事件も発生。安積たち強行犯係は、双方の案件を追うことになる。やがて、付近の海岸から濡れたウェットスーツが発見され、密航者が暗殺犯の可能性が―。安積たちは、暗殺を阻止できるのか。(「暗殺予告」より)新ベイエリア分署・安積班シリーズ、待望の文庫化。

安積班シリーズの短篇集。
表題作他「暗殺予告」「被害者」「梅雨晴れ」「射殺」「夕映え」の6編を収録。

何冊も読んでくるうちに安積の独白の多さがちょっと鼻に付き始めてきたので、サックリ終わってくれる短編のほうが面白く思えてきた今日この頃。
更に短編では安積以外のメンバー視点で展開する新鮮さも魅力です。

この本では表題作の「最前線」が、安積班の最年少メンバー・桜井の視点で描かれています。
安積に「村雨に犬のように飼いならされているのではないか」といつも心配されている桜井くんだけど、彼なりに考えて村雨に対応し日々の仕事に当たっている姿が垣間見えます。
そんな彼の前にかつて同僚として過ごした大橋が都内で異動先の警察署で活躍する刑事として登場、桜井は自分とはかけ離れた存在になってしまったように見える大橋に憧れと同時に焦りを感じます。
でも最後に安積や村雨の存在の大きさ、大切さを大橋から聞かされて自分も前向きな気持ちを取り戻す…という内容。

安積視点だと説教くさくなってしまいそうな話を、桜井視点で書くことで熱血な部分もありつつ爽やかな雰囲気に仕上げているのが巧いと思いました。
でもそれよりも(順番を適当に読んでいるため)いつのまにかいなくなってしまい「どこに行ってしまったの?」と気になっていた大橋くんの行方が判ったのが嬉しかったです(笑)
彼が安積班を去るときの話もあるのかな~?

他には、ある現場で偶然再会したもうすぐ定年を迎えるかつての上司と安積の交流を描く「夕映え」もしみじみした中に強い決意が感じられるいい作品でした。

また今回は「暗殺予告」で中国マフィア、「射殺」でアメリカ人の狙撃犯が出てくるという国際色豊かな展開。
そんな相手にも安積はいつもの地道で誠実な捜査でキッチリ犯人の足取りを掴み事件を解決していきます。
「射殺」では一匹狼のアメリカ人刑事の心も動かす、安積。
なんでそんなにオジサンに好かれるのでしょうか(笑)

ところで速水には「上司」はいないのかなあ?
本庁所属なのに所轄の事件のためにパトカーを出動させたり、自分の判断で勝手に持ち場を離れたり。
「射殺」では銃を持った犯人と対峙している安積を助けに白バイでウィリーして来るという無謀さ!自由すぎるっ!(爆)
部下と上司の間に挟まれていつも細心の注意を払って行動している安積に対して、速水の自由さはカッコいいけど謎ですね。

そういえばこの小説には女性の警察官って一人も出てこないなあ、ということにふと気がつきました。
まあ、いいんですが。

坂木司『短劇』

  • 2009/05/09(土) 10:54:55

短劇
短劇

内容(「BOOK」データベースより)
たとえば、憂鬱な満員電車の中で。あるいは、道ばたの立て看板の裏側で。はたまた、空き地に掘られた穴ぼこの底で。聞こえませんか。何かがあなたに、話しかけていますよ。坂木司、はじめての奇想短編集。少しビターですが、お口にあいますでしょうか。

タイトルどおり、10ページ前後の短編ばかり26作が並んだ作品集。

普段は柔らかい語り口と丁寧な描写で最後にパワーや癒しを与えてくれるものが多い坂木さんの作品ですが、この本にはそうした作品の中では見えてこない人間の悪意や苛立ちがストレートに描かれています。
でも、こんな作風もまた「意外」と思わせず、「やっぱりこういう作品も書けるんだなあ」と納得させてしまうところが坂木さんの巧さだろうと思います。

長い物語ではちょっと重く生臭くなってしまいそうな内容を、短い枚数の中でサラッと書くことによってそれを回避してピリッとスパイスの効いた佳作に仕上がっています。
また、ダークな内容であっても弱い者が徹底的にいじめられるといった類のものはなく、最後まで読むと小心者の読者もちょっとした「共犯者意識」を持って思わずニヤリとしてしまう結末になっているあたりにいつもの坂木さんの姿が覗いているように思いました。

今野敏『残照』

  • 2009/05/06(水) 10:52:45

残照 (ハルキ文庫)
残照 (ハルキ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
東京・台場で少年たちのグループの抗争があり、一人が刃物で背中を刺され死亡する事件が起きた。直後に現場で目撃された車から、運転者の風間智也に容疑がかけられた。東京湾臨海署(ベイエリア分署)の安積警部補は、交通機動隊の速水警部補とともに風間を追うが、彼の容疑を否定する速水の言葉に、捜査方針への疑問を感じ始める。やがて、二人の前に、首都高最速の伝説を持つ風間のスカイラインが姿を現すが…。興奮の高速バトルと刑事たちの誇りを描く、傑作警察小説。

面白かった~!
何なんでしょう、この落差(笑)

捜査の展開もすごくキッチリ作ってあるし、捜査の停滞や敵対関係など緩急の変化に富んでいて物語の中でリズムが何度も変わるのでそれがすごく面白かったです。
この作品で何より魅力的だったのは、安積と本庁交機隊の速水がコンビを組んで捜査に当たるという設定。
この2人のオジサンコンビにはそこはかとない色気があっていいですよね~(笑)
普段は速水が一方的に安積に絡んで行って安積はそれを迷惑に思っているように見えるのに、安積がふと気になって速水のほうを見ると速水は何でもない顔をしているので安積が「あれ?」ってなっていたり。
でも、2人とも大人なのでお互いに気にはなるけどそれ以上深入りしたりしないのがいいですね。
速水がこれだけ安積にこだわるには何か理由があるのだろうと思うので、それについて触れている話なんかも読んでみたいですね。

更に今回は速水の運転するパトカーで容疑者とカーチェイスをするシーンがあってすごく盛り上がります!
速水小隊長、カッコいい~!

容疑者の設定もなかなか魅力的だったし、またまた本庁の相楽くんが悪役で出てきて安積のいいところを強調してくれるし…展開としてはほぼ完璧な感じじゃないですかね。

ああ、でも須田以外の安積班メンバーズがほとんど活躍していないのはちょっと寂しかったかな。

今野敏『虚構の殺人者』

  • 2009/05/06(水) 10:50:33

虚構の殺人者―東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫)
虚構の殺人者―東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
東京湾臨海署―通称ベイエリア分署の管内で、テレビ局プロデューサーの落下死体が発見された。捜査に乗り出した安積警部補たちは、現場の状況から他殺と断定。被害者の利害関係から、容疑者をあぶり出した。だが、その人物には鉄壁のアリバイが…。利欲に塗れた業界の壁を刑事たちは崩せるのか?大好評安積警部補シリーズ、待望の文庫化。

安積の独白がいつも以上にすごく多くて、ちょっと「イラッ」とするくらいでした。
最初のページで既に被害者の死体が見つかっているのに、そこから捜査が始まるまでのなんて長いこと!
村雨が融通が利かないのも、須田が見た目と違って有能な刑事なのも、黒木がスポーツマンのような神経質さを持っているのも、桜井が村雨に飼いならされてしまっているのではと心配しているのも、もう判ったから早く事件の捜査に入ってくださ~い!って何度も思ってしまいました(笑)
更に捜査に入ってからも、メインの事件には直接関係のない別の事件がいくつも入ってきたり、安積の個人的な(家庭的な)話も入ってきて話がなかなか進展しないし。

まあ、本当の警察の仕事というのは、TVドラマや小説みたいに起きた事件に全員がずっと張り付いていられるわけではなく、いくつもの事件を掛け持ちしているのかもしれないけど…でも、これはあくまで「小説」なんだからそんなところにリアリティを求められても…って感じ。
メインの事件は短編くらいの長さなのにそれに無理やりいろんな要素をくっつけて文庫一冊分にした作品という印象が残りました。

残念ながら今まで読んできた安積班シリーズの中で一番つまらなかったです。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。