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◆Date:2008年03月
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大崎梢『サイン会はいかが?』

  • 2008/03/30(日) 21:40:22

サイン会はいかが?―成風堂書店事件メモ (ミステリ・フロンティア 32)
サイン会はいかが?―成風堂書店事件メモ (ミステリ・フロンティア 32)

駅ビルの6階にある書店「成風堂」で起こるちょっとした事件の謎を責任感が強い社員の杏子と不器用だけど頭脳明晰なバイトの多絵が解決するミステリー短篇集。
表題作を始め「取り寄せトラップ」「君と語る永遠」「バイト金森くんの告白」「ヤギさんの忘れもの」の5編を収録。

シリーズ3作目。
過去2冊に「イマイチ…」と感想を書いているのに、ついつい読んでしまった。
で、今回の感想も…やはり乗り切れず…。

といっても、謎の設定とか、謎解きはうまくまとめてあって今までで一番読みやすかったし説得力もあったと思う。
(結論に辿り着くまでがちょっと回りくどかった気もしたけど)
それからお客さんに見えないところで忙しく働く書店員さんの日々の雑務の丁寧な描写が今回もとてもよかった。

ただ…(これはホントに個人的な感覚なんだけど)私にはここの店員さん(杏子や多絵も含めて)の会話がどうも肌に合わないんだなあ。
何だか読んでいるといちいち引っ掛かる感じ。
特に作品中でも「デリカシーがない」と書かれている店長のセリフはホントにイライラした。
もともとそういう設定なのかも知れないけどね…。
あと「バイト金森くんの告白」の冒頭部分でのスタッフみんなの反応も苦手。
いくらお酒の席とはいえ、あんな会話が飛び交う場面って(ひとごとだとしても)ちょっといたたまれない。
お客さんとして行くにはいい本屋さんかもしれないけど、スタッフにはなりたくないなあ…と思えてしまったのだ。
(「こっちこそ、お断り!」って話だと思うけどね^^;)

常連のお客さんが成風堂で無くした写真入りの封筒の行方を捜す「ヤギさんの忘れもの」が短いけど余韻があって印象的だった。

配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)
配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)
晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)
晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)

過去の作品の感想文ももしよかったらどうぞ。
大崎梢/配達赤ずきん
大崎梢/晩夏に捧ぐ

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桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』

  • 2008/03/30(日) 21:31:25

赤朽葉家の伝説
赤朽葉家の伝説

出版社 / 著者からの内容紹介
「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった!

読む前に想像していたのと全然違う話だった。
"伝説"というからには数百年、最低でも百年は経っている時代の話かと思ったら昭和20年代から始まるし、"赤朽葉家"なんていういかにも「何かありそうな」ネーミング、禍々しい雰囲気の朱赤の表紙からもっとおどろおどろしい(例えば『犬神家の一族』みたいな)話なのかと思っていたらそうでもないし…。

未来視の能力を持つ祖母の万葉、少女の頃は暴走族のリーダーとして暴れ回りその後人気マンガ家として多忙な日々を送り若くして死んだ母 毛鞠、そしてやりたいことが見つからず焦りと葛藤と迷いの中でニートな生活を送る娘 瞳子。
山陰の小村の旧家・赤朽葉の三代に渡る女たちの年代記。

文章は読みやすいし、3人の人生の中に巧みにその時代の気分や雰囲気、風俗、流行などが取り入れられてそういう部分は楽しく読めた。
でも、全体的に(いろいろ事件が起こるわりに)感情的な記述が少なく淡々とした調子で描かれているので、どこに感情移入していいか判らなくてスーッと読み終わってしまった印象。
更には私はこの3人の誰にも似ていないから共感も出来ないし…。

この作品の登場人物のなかで私が一番好きだったのは、拾われっ子の万葉を見初め、息子の嫁として赤朽葉家に迎え入れ生涯万葉を愛し、守り抜いた姑のタツ。
親類からは愛されつつ恐れられ、経営する会社の社員からは敬愛された、物に動じない、懐の大きなドッシリした人物像がすごくよかったなあ。
何より、孫に泪、毛鞠、鞄、孤独なんて名前を付けちゃうところがスゴすぎる!(笑)
私としてはタツさんの一代記のが読みたかったかな。

そういえば、この本を読もうと思ったきっかけは「このミス2008」でランクイン(国内2位)していたからだった、というのを読み終わってから思い出した。
(図書館に予約して約4ヶ月も待ったのですっかり忘れていた^^;)
ということは、これって「ミステリー」だったんですね(驚)
これが一番意外だったかも…。

加藤実秋『インディゴの夜』

  • 2008/03/20(木) 11:47:37

インディゴの夜 (創元推理文庫 M か 5-1)
インディゴの夜 (創元推理文庫 M か 5-1)

内容(「BOOK」データベースより)
「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」―すべては女性ライター・高原晶が、大手出版社の編集者・塩谷に漏らした何気ない一言から始まった。謎めいた美形の敏腕マネージャー・憂夜の助力を得て、二人は一風変わったホストクラブ“club indigo”を渋谷の片隅に開いたが、順調な経営とはうらはらに常連の客が殺され、店のナンバーワンに疑いがかかる。晶は個性豊かなホストの面々とともににわか探偵団を結成、真犯人捜しに奔走する!第十回創元推理短編賞受賞の表題作がシリーズ化。スタイリッシュでウイットあふれる新世代探偵小説、ここに登場。

帯に「ホスト探偵団」って書いてあったから、よくTVなんかで見かける「いかにも」な感じの人たちがみんなで殺人事件を調べたりする話かしらと思ったら、紹介文にもあるように「DJやダンサーみたいな男の子」がホスト役とのこと。
実際にそういうお店があったら確かに面白いとは思うけど、小説にするんだったらホストらしいホストさんたちが探偵の方が面白いような気がするけどな。お話の中のホストクラブでしかも探偵をする連中ならそういうの(「ストリート系」とでもいうのでしょうか)って却ってありがちな印象を受けてしまう。

何よりも登場人物たちをそう設定すると、モロに『IWGP』とかぶってしまってかなり不利だと思うんだけどなあ。
そうやって『IWGP』に比べてしまうと、この作品は(枚数の関係もあるかもしれないけど)ストーリーにひねりがないし、事件も表面的で単調に感じてしまった。
それから、"club indigo"のホストくんたちはみんな個性的で可愛らしいし頭も性格も悪くなさそうだけど、「コイツいい!」っていえる決定的な決め手がないのも残念だった。

『IWGP』との差は語り手が女("club indigo"のオーナー晶)だってことだと思うんだけど、そこも上手く活かされているとは言いにくいような。
共同経営者の塩谷や天敵の豆柴(生活安全課の刑事)のセクハラ発言へのツッコミかたもけっこうありがちなセリフばかりだし、お店の従業員とも信頼関係があっていいんだけど何故そこまで受け入れられているかについて単に「オーナーだから」以外の納得できるエピソードが欲しかったな。

でも、文章はクセがなくシンプル、かつテンポがいいのでとても読みやすく、読後感は悪くなかった。
シリーズ2作目も出ているようなので(『インディゴの夜 チョコレート・ビースト』)こっちも読んでみようかな。

表題作の他「原色の娘」「センター街NPボーイズ」「夜を駆る者」の4編を収録。

インディゴの夜 チョコレートビースト (ミステリ・フロンティア)
インディゴの夜 チョコレートビースト (ミステリ・フロンティア)
 

有栖川有栖『モロッコ水晶の謎』

  • 2008/03/20(木) 09:00:00

モロッコ水晶の謎 (講談社文庫 あ 58-14)
モロッコ水晶の謎 (講談社文庫 あ 58-14)

内容(「BOOK」データベースより)
推理作家・有栖川有栖の眼前で起きた毒殺事件に、臨床犯罪学者・火村英生が超絶論理で挑む表題作ほか、クリスティの名作「ABC殺人事件」をモチーフに書かれた、連続挑戦予告殺人を追う「ABCキラー」、誘拐殺人の陰に潜む悲劇を描く「助教授の身代金」など、研ぎ澄まされた論理が光る有栖川本格全4編を収録。

「国名シリーズ」8作目。
表題作を始めとして「助教授の身代金」「ABCキラー」「推理合戦」の4編を収録。

面白かった。
ストーリーがどうというよりまず手法が安定していて、事実の確認、伏線の張りかた、当事者、関係者の発言の提示など読者に対して誠実であることろがいい。
その上で、ストーリーがあり、キャラクターがあり、の積み重ね。
推理小説の王道って感じで安心して読んでいられる。
そして何よりも文章の巧さ。

「モロッコ水晶~」の謎解きについては正直ちょっと「う~ん…」と思わないでもなかったけど、あそこまで話を引っ張って盛り上げる、そしてその難しい結末にも説得力を持たせるだけの小さな伏線の積み重ねは素晴らしいと思う。

でも、実は私が一番好きだったのは全部で7ページしかない「推理合戦」。
わりとヘビイな中編の間に、こういう何気ない謎が、サラリと書いてあるのってセンスいいなあ、と思う。

これは新刊で平積みされていたのでつい買ってしまったけど、表紙の折り返しの作品リストを見たら「国名シリーズ」でまだ読んでいないのもたくさんあった。
これから遡って読んでみようかな。

海堂尊『螺鈿迷宮』

  • 2008/03/16(日) 11:39:20

螺鈿迷宮
螺鈿迷宮

幼い頃に両親を事故で失い、祖母に育てられた天馬大吉は現在、東邦大学医学部の学生。
そのラッキーな名前とは裏腹にやることなすこと不運続きで投げやりな生活を送っていた。
ある日大吉は新聞社で編集者として活躍中の幼なじみ 葉子に呼び出され、地元で怪しい噂が絶えない桜宮病院の実態を探って欲しいと依頼される。
葉子に負い目がある大吉はイヤイヤながら桜宮病院にボランティアとして通い始めるが…。

海堂作品、4冊目。
ここまで来てようやく、この作家が書きたいのは「物語」ではないのかも、ということに気が付いた。
『チーム・バチスタ~』はちょっと違うような気がするけど、その後の『ナイチンゲール~』『ジェネラル・ルージュ~』そして今作と続く作品の中で、作者がその物語性よりも声を大にして読者に語りかけているのは、現在の医療の実態とそれを支える医療行政への不満と希望なのだと思う。
(『チーム・バチスタ~』がちょっと違うのは、「世に出るため」の作品であったからかな、と思う)

桜宮病院がやっていることは一般的に考えたら違法であるし、倫理的にも「悪」と考えられることであると思う。
ただ、その実態を見ずに画一的に否定してしまうことへの警鐘が何度も何度も繰り返されていく。
法を守っていさえすればそれでいいのか。
遵法の中で切り捨てられていく人間の命や尊厳、そして未来の医療への可能性を作者は「エンターテイメント」の姿を借りて世に問うているような気がした。

作を重ねるごとにハッキリしていく作者の明確なテーマの中に、既にミステリーであることへのこだわりはないのかもしれない。

「人は誰でも知らないうちに他人を傷つけている。存在するということは、誰かを傷つける、ということと同じだ。だから、無意識の鈍感さよりは、意図された悪意の方がまだマシなのかも知れない。このことがわからないうちは、そいつはまだガキだ。」

巌雄院長が天馬に語った言葉。
非常に印象的、かつその後の展開に大きな意味を持っている。
この言葉の持つ真理や奥深さには私も共感するけど、この言葉によって暴かれる事実が天馬の原罪だというのはちょっと腑に落ちないなあ。
だってそこに天馬は何も関与していないし、意志さえも入り込んではいないんだから。
確かに「存在すること」イコール「誰かを傷つける」のであれば成り立つ図式なのかもしれないけど、だとしたら全ての人間は存在してはならないものになってしまうんじゃないの?
あの原因が(天馬は忘れているけれど)彼自身の何らかの行動の結果だったとかいうならまだ理解しやすいけど、そうではないから巌雄の言葉は単なる自己弁護だし、行動は八つ当たりにしか思えなくて説得力がなかったような気がする。

白鳥はキーパーソンではあったけど、やっぱり『バチスタ~』のときと比べると随分と違う。
ちょっと子どもっぽくて変わってるけど、本質は正義感溢れ周囲に細やかな心遣いの出来る有能な官吏、というイメージ。
まあ、この登場人物で『バチスタ~』のときみたいな設定だったら、誰も制御出来ないだろうから仕方ないってことなのかな。
(田口センセの存在はやはり大きい)

姫宮は…「しずちゃん」とは違うんだろうなあとは思うんだけど、じゃあどんな感じ?と思っても想像が出来なくてちょっと困った。
こういう「ドジ」(と呼んでいいのかどうか…)な女の子って可愛いものなの?
こんなにされても姫宮に好意を持てる天馬の感覚がちょっと謎。
それとも男と女の感じ方の差かなあ。
私はプライベートだったらともかく、仕事でここまでやられたら正直「うっとうしい…(T_T)」と思ってしまうんだけど。
姫宮の評価に関しては小百合に同感、でした(笑)


チーム・バチスタの栄光
チーム・バチスタの栄光
ナイチンゲールの沈黙
ナイチンゲールの沈黙
ジェネラル・ルージュの凱旋
ジェネラル・ルージュの凱旋

あさのあつこ『夜叉桜』

  • 2008/03/08(土) 11:32:59

夜叉桜
夜叉桜

出版社からのコメント
「弱えほうが、ようござんすよ」

話題作『弥勒の月』から一年半。
深まる謎。生きる狂おしさと生きる者への慈しみ。
少年たちの成長を描いた『バッテリー』のあさのあつこが、
「生きる苦み」を知ってしまった大人たちに満を持して放つ、胸を裂く物語。

『弥勒の月』の続編。
続きであっても出てくるのは信次郎と伊佐治だけで新しい事件を追っていく作品になるのかと思っていたら、遠野屋もしっかり出てきたのでちょっとビックリ。

で、感想はというと…ちょっと微妙。

前作同様、信次郎、伊佐治、遠野屋のキャラクター設定と、心理描写は素晴らしかった。
それぞれの男達の心に巣食う苛立ち、歪み、迷い、諦め、希望、祈り・・・といった様々な感情が、色んな角度から光を当てられ露わになっていく。
この3人の言動、気持ちの描写だけでグイグイ引き込まれて面白く読んだ。

でも、連続女郎殺しの犯人を探す推理小説として読むと、こちらも前作同様、犯人の設定と結末が気に入らない。
さんざん情報だけを積み重ねて盛り上げた挙句、終盤になって全く圏外だった人物がポンと出てきて「実はこういう事情があって…」って説明されても・・・。
事件の部分もキャラクターの作り方やエピソードの積み上げ方はすごく巧いのでどんどん読めてしまうんだけど、それと後半の謎解きがうまくリンクしていないので「これが犯人です」って言われても何だか納得出来ない。
殺人事件が起きて犯人を探してっていう内容を盛り込むのであればやっぱりそれに対応して伏線を張ったり、怪しい人物にはちゃんと「怪しいよ」って旗を立てておくといったこともして欲しいと思ってしまう。
それともこれは「推理(捕り物)小説」ではないのだろうか?

この作品で今は藩の重職となっている腹違いの兄と遠野屋が再会し、重要な駆け引きをする場面がある。
この駆け引きはこの中では決着を見ずに終わっており、次回作への布石が打たれている。
次の作品はこの3人の物語だけで事件はなくてもいいんじゃないの?とも思うけど、信次郎、伊佐治が与力と下っぴきであり、遠野屋もそのキャラクターから「人の死」と無縁でいられない設定であればそれも難しいんだろうな。
それであるならばその事件自体にも説得力がある作品であってほしい。
今のままの書き方では、何人も殺されていく犠牲者たちは遠野屋のキャラクターを説明するための小道具でしかないように思えてしまうから。
それは多分、遠野屋にとっても不本意なことなんじゃないのかな。


弥勒の月 (文芸)
弥勒の月 (文芸)
こちらの作品の感想もよかったらどうぞ。
あさのあつこ/弥勒の月

祝康成『真相はこれだ!-不可思議8大事件の核心を撃つ』

  • 2008/03/02(日) 11:27:00

真相はこれだ!―不可思議8大事件の核心を撃つ
真相はこれだ!―不可思議8大事件の核心を撃つ

内容(「MARC」データベースより)
美智子皇后を失語症に追い込んだのは誰か、3億円事件で誤認逮捕された男の「悲劇」、猪木・アリ戦に「向けられていた銃口」など、今こそ話せる重大証言続出! 『週刊新潮』連載「置き去り20世紀の奇談」を加筆修正。

事件の後追い記事を読むのはわりと好き。
その事件の渦中では見えなかった、語られなかった本音や真実が見える場合が多いし、またその当時の事件そのものを忘れている(または知らなかった)場合もあって興味深い。

この本は2001年に週刊新潮誌面に「置き去り20世紀の奇談」というタイトルで掲載された連載作品に加筆したものらしい。
「週刊新潮」というと電車の中吊り広告の見出しだけで"お腹いっぱい"になってしまうので殆ど本誌を読んだことがないけど^^;、これは丁寧な取材の結果が落ち着いた、判りやすい文章で書かれていて非常に読みやすかった。

取り上げてある題材も「美智子皇后の『失語症』」「3億円事件」「美空ひばりvsNHK」「丸山ワクチン」など有名な人物、事件が殆どなので飽きずに読むことが出来た。

この中で一番衝撃的だったのは昭和43年に実施された日本初の心臓移植手術の舞台裏。
心臓外科の権威と呼ばれた札幌医科大の和田教授により海水浴中に溺れてなくなった大学生の心臓を、18歳の心臓病患者に移植する手術が実施される。
しかし、実はドナーの大学生は実は(重体ではあったが)生きていたし、患者の心臓は移植するほどの重病ではなかった…という内容。
密室で行われたことだし、実際問題として起訴されなかったようなので本当に事件性があったのかどうかは謎だけど、事実だとしたらかなり怖い話。
こういうのを読むと『事実は小説より~』という言葉は単なる比喩ではないんだなあ、と実感する。

他には先日発生した自衛隊のイージス艦「あたご」の事故以来、ニュースで耳にすることの多くなった「なだしお」の事件について書いてある章がタイムリーで興味深く読んだ。

それにしても、「強大な権力や組織の前では個人の尊厳、権利、更には「生」でさえ何の力もない」と思わせられる事件がなんて多いこと!
こうやって好き勝手に本を読んだり、文章を書いたり、寝たり、食べたり…とフツーに生活出来ることは、本当はすごく特別なことなのかも。
いつ何時、この生活が覆ってもおかしくない危険性を誰もが持っているのかもしれない。
…だからといって、そうならないように防ぐ手段も思いつかないけど。

本の内容は面白かったけど、読んでいて憂鬱な気分になってしまった。

津原泰水『ルピナス探偵団の憂愁』

  • 2008/03/02(日) 11:23:27

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)
ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)

内容東京創元社Webサイト内より引用)
高校時代「ルピナス探偵団」として様々な事件に遭遇してきた少女3人と少年1人。卒業後、それぞれの道を歩んでいた4人のうち、1人が不治の病で世を去った。久々に顔を合わせた3人に残されたのは、彼女が死を前にして百合の樹の林に造らせた、奇妙な小路の謎だった――。第1話「百合の木陰」から時を遡り、高校卒業式を目前に殺人が起きたルピナス学園で、彼らが授かった“祝福”を描く第4話「慈悲の花園」までを辿る。津原泰水だからこそ書き得た、少年少女たちの「探偵」物語。〈ミステリーズ!〉連載の4編を大幅加筆修正。

以前読んだ『ルピナス探偵団の当惑』の続編。

前作は、第一話だけが推理そっちのけでラブコメディや学園ドラマが進行していくところとか主人公・彩子の姉 不二子が暴走しているところとかがすごく面白くてよかったのに、二話目以降は割と普通の学園ものミステリーになってしまってちょっと残念だった。
今回の続編は第一話目方向に戻っていないかと期待していたんだけど…前作以上に無難なミステリー短篇集になっていた。

彩子もキリエも大人になってるし、祠島くんの「人の顔を覚えるのが苦手」という特徴も殆ど出てこないし、庚午さんは偉くなってるし、不二子は殆ど出てこないし、そして何より探偵団の一員だった摩耶が第一話でいきなり死んでしまうし…。
私が期待していた方向性とはかなり差があって残念。

でも、全体的には一話目とそれ以外の温度差があまりにも大きかった前作に比べて、作品の方向性が揃っている今作のほうがスムーズに読めたことは確か。
しっかりと個性を主張しながらも決して特徴的過ぎないキャラクターや、数多の雑学の披露の中に巧みに隠された伏線の数々。
祠島くんの推理の鋭さ、鮮やかさ。
そして事件を解決しながら時を遡り、最後にルピナスを去る日に戻っていく構成が見事。

4人が永遠の友情を誓うラストシーンが心に残った。

「百合の木陰」「犬は歓迎されざる」「初めての密室」「慈悲の花園」の4編を収録。


ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫 M つ 4-1)
ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫 M つ 4-1)
この作品の感想もよかったらどうぞ。
津原泰水/ルピナス探偵団の当惑

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