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◆Date:2008年01月
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江國香織『間宮兄弟』

  • 2008/01/27(日) 10:00:19

間宮兄弟 (小学館文庫 え 4-1)
間宮兄弟 (小学館文庫 え 4-1)

内容(「BOOK」データベースより)
だって間宮兄弟を見てごらんよ。いまだに一緒に遊んでるじゃん。“そもそも範疇外、ありえない”男たちをめぐる、江国香織の最新恋愛小説。

江國香織さんの作品はちょっと苦手意識があって殆ど読んだことがない。
(確か「すいかの匂い」だけしか読んでないと思う)
なんかこう、繊細で傷つきやすいのに敢えて傷つく言動に出てしまうような、メンドクサイ人がたくさん出てきそう…じゃない?
違うかな?(笑)でも、私の中ではそういうイメージがあって読んでいるとイライラしそうだったのと、もともと基本的に「恋愛」がメインテーマの小説って苦手なので「読まなくていいや」分類の作家さんだった。

でも、この作品は恋愛ものというよりも家族ものみたいな感じがしたし、文庫だったら失敗してもいいかと思って買って読んでみたら…面白かった!

都内のマンションに2人だけで暮らす明信と徹信。
決して若いとは言えない2人だけど、それぞれ思い込みが激しく、人付き合いがヘタ、しかも外見もイマイチなので今まで女性と付き合ったことがない。
そんな2人が女性を招いてカレー・パーティーを開くことに…という導入部から始まる兄弟とそれを取り巻く人々の物語。

何かが起こりそうで揺れ動くんだけど、結局何も起こらないまま終わっていく緩やかな、穏やかな話の展開がいい。
私は何が起こるのか、どう決着したのかがハッキリしない物語ってあまり好きじゃないんだけど、このお話はその曖昧さがポイント。
別にどうでもいい2人の暮らしの中のこだわりとか、決まりとか、習慣、家族への愛情を丁寧に描くことで、少しずつ兄弟に愛着が沸いてくる。
「いい年して一緒に住んでるなんてなんか変」と思えた兄弟の暮らしがどんどん豊かで羨ましいものに思えてくる。

ただ、「穏やかで緩やか」だと思うのは、端から見てる傍観者の勝手な感想であって、兄弟本人にしてみればその間にも嵐のような葛藤や苦悩があるんだろうなあ。
そうしてそうやって葛藤し、苦悩した分、それを知らなかったときとは確実に「何か」が変わっている。

 そんな明信の心の叫び。

会社の入っているビルを見上げ明信はため息をついた。そして、世間にはややこしい恋愛沙汰がごろごろしているらしいのに、なぜ自分の身にだけ起きないのだろうと考えてしまった。起きないのに、厄介なとばっとりだけは被るのだ。

ちなみにこの「とばっちり」を与えている人々はすご~くデリカシーに欠けていて私は苦手だった。

明信と徹信は他人に対して繊細すぎるんだよね、きっと。
人と人の関係なんて「誤解」で成り立ってるようなものなのに、2人はきちんと理解した上でないと成立しない、と思ってる。
だから臆病で、慎重で、不器用なんだ。

この作品は'06年に映画化されている。
その映画自体は見ていないけど、明信が佐々木蔵之介、徹信が塚地武雅がキャスティングされていたのは知っていた。
なので小説を読んでいる間も兄弟はその2人の姿だった(笑)
2人ともイメージにピッタリ!(特に塚ちゃん!蔵之介はちょっとカッコよすぎかも?)
映画も見てみようかなと思って、読み終わってから他のキャストをチェックしてみたけど、2人以外はあまりピンと来なかった。
う~ん、どうしようかな。
「間宮兄弟」公式サイト

間宮兄弟(通常版)
間宮兄弟(通常版)

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奥田英朗『町長選挙』

  • 2008/01/27(日) 09:35:01

町長選挙

内容(「MARC」データベースより)
離島に赴任した精神科医の伊良部。そこは、島を二分して争われる町長選挙の真っ最中だった。伊良部もその騒動に巻き込まれてしまい…。「空中ブランコ」「イン・ザ・プール」でお馴染みの、トンデモ精神科医の暴走ぶり健在!

2作目を読み終えて図書館に行ったら、3作目があったので速攻で借りて読む。

う~ん、面白かったけど、2作目に比べるとパワーダウンの印象が…。

今回は主役の患者が「プロ野球界最強球団のワンマンオーナー」とか「若くして設立したIT企業が大もうけでやりたい放題の社長」とか誰が読んでもモデルが特定できるような人物設定だったのが原因かな。
もちろんだからこそ面白かった、という部分もあるんだけど、それ以上に「患者のキャラクター勝負」みたいな感じが全面に出てしまったように思えた。
(この2作のあとに「プロ野球球団削減、1リーグ化に反対して前代未聞のストをも辞さない構えで奔走する選手会会長」なんて設定が出てくるかと思ったらさすがにそれはなかった…残念(笑))

表題作の「町長選挙」も今ひとつ。
終わり方が2作目の「女流作家」と同じで、そこでそんな展開になるなら伊良部は不要なのでは?って感じで終わってしまったのが残念。
(そこに行くまでの伊良部の傍若無人っぽりは楽しかったけど。プラス伊良部の急所をガッチリ掴んでいるマユミちゃんの有能さに拍手(笑))

それから、全体的に患者がみんないい人すぎるんじゃないかなあ。
まあ、もともとこのシリーズにはいい人しか出てこないっていうのは判るんだけど、何だか終わり方が余りにも単純に「いい人」になってしまうのがちょっとつまらなかった。
もうちょっとひねりがある「ニヤリ」と出来るラストを期待していたんだけど…。

表題作の他「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」の4作を収録。

奥田英朗『空中ブランコ』

  • 2008/01/27(日) 09:28:21

空中ブランコ (文春文庫 お 38-2)
空中ブランコ (文春文庫 お 38-2)

内容(「BOOK」データベースより)
人間不信のサーカス団員、尖端恐怖症のやくざ、ノーコン病のプロ野球選手。困り果てた末に病院を訪ねてみれば…。ここはどこ?なんでこうなるの?怪作『イン・ザ・プール』から二年。トンデモ精神科医・伊良部が再び暴れ出す。

伊良部シリーズ第2弾。
文庫になっていたので早速購入。
面白かった~♪

相変わらずハチャメチャな行動のくせに、ちゃんと患者の心に入り込み自分を見つめさせて回復に持っていってしまう伊良部…もしかして名医?(笑)
まあ、真剣に悩んで病院の門を潜る患者にしてみれば「なんだ、このふざけた医者は!」って思うだろうし、伊良部本人にしても真面目に治療しているというより「自分がやりたいからやってる」ってことなんだろうけど。

でも、その患者が一番必要としているものを敏感に感じ取り、そこに向かって一直線な部分とか、自分も一緒になって楽しむところ、何に対しても手を抜かない、何があっても誰か(特に患者)のせいにしない、なんてところはけっこう「アリ」なんじゃないかなあ、なんて思うんだけどどうだろう。

それぞれ50ページほどの短篇なので、非常に読みやすく書かれているのにきちんと話が完結していて満足感も高い作品集。
物語の作り方や人物設定が本当に上手い。
登場人物(患者)がみんなちょっと特殊な職業(サーカスの空中ブランコ乗り、暴力団の若頭、大学病院勤務の医師、プロ野球選手、流行作家)なのが気になるけど、自分とは違う立場の人の話だから却って笑って読める部分があるのかな。

作家が主役の「女流作家」のラストはちょっと感動的だったけど、あそこであの人物にあのセリフを言わせちゃうなら、伊良部はいらないんじゃ…?とちょっと思った。
(それを素直に聞けるような心理状態にしたのは伊良部だったのかもしれないけど)
でも、そのあとのマユミの(意外な(笑))行動はとてもよかった。
何だかんだ言ってもベストなコンビなのかも。

表題作他「ハリネズミ」「義父のカツラ」「ホットコーナー」「女流作家」の5編を収録。

海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』

  • 2008/01/19(土) 09:22:17

ナイチンゲールの沈黙
ナイチンゲールの沈黙

内容(「BOOK」データベースより)
東城大学医学部付属病院・小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌―網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たち。眼球を摘出されてしまう彼らの運命に心を痛めた小夜は、子供たちのメンタルサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。その渦中に、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正は院内捜査を開始する。小児科病棟や救急センターのスタッフ、大量吐血で緊急入院した伝説の歌姫、そこに厚生労働省の変人・白鳥圭輔も加わり、事件は思いもかけない展開を見せていく…。

田口・白鳥シリーズ(でいいの?)2作目。
1作目(「チーム・バチスタの栄光」)がかなり面白かったので期待して読んだんだけどテンテンテン、な感じ。
読み終わってからAmazonの書評など見てみたら、やはりかなり低評価なようで…^^;

とにかく、長すぎ。
全部で400ページ強の作品だけど、こんなにページ数使う必要なかったのでは?
少なくても100ページは減らせそうな気がする。
特に事件が起きるまでの前フリが長かった。
たくさんの人物が入り乱れ彼らの人物紹介とか細かい描写が続くけど、それが物語の中でどんな役割を担うのか、そしてこの物語の核心は何なのかが読んでも読んでもなかなか判らないことにかなりイラついた。
それに一つのこと、同じことを何度も、しかもくどいほど丁寧に描きすぎている気がした。

登場人物や組織への別名(渾名)付けも鬱陶しかった。
普通、人やグループや組織に渾名付けることってそんなにないんじゃないの?
それとも病院組織というのはそういう慣習があるんだろうか?
しかも肝心のネーミングのセンスも「どうなのよ」って感じだし…。

またちょっとした言葉(多分その現場では普通に使われている言葉なんだろうけど決して「一般的」ではない)が何の説明もなく文章にポンと放り出されているのもあまり親切ではないと思う。

ただ、こうしたことは、前作でも入っていたことなんだよね。
でもその時は物語の流れのなかですごくスムーズに処理出来ていて、全然気にならなかった。
それが今回はいちいち引っ掛かる感じ。
全体のテンポが悪い、ということはこうした部分にも悪影響を及ぼしてしまうものなんだね。

後半、前作で強烈な印象を残した白鳥が登場してからは多少ペースアップして読みやすくなったけど、彼のキャラクターもちょっと薄くなってしまったような…。
(やはり初登場の印象には勝てないということか。あるいは「似たもの同士」の加納とのぶつかり合いで相殺されてしまったのかも)

少々人数が多すぎたきらいはあるもののキャラクター設定とセリフは今回も楽しめる部分が多かった。
もうちょっと人数とエピソードを絞ってコンパクトに仕上げた方がよかったと思う。

坂木司『シンデレラ・ティース』

  • 2008/01/12(土) 09:17:38

シンデレラ・ティース
シンデレラ・ティース

内容(「BOOK」データベースより)
サキは大学二年生。歯医者が大嫌いなのに、なぜかデンタルクリニックで受付アルバイトをすることになって…。個性豊かなクリニックのスタッフと、訪れる患者さんがそれぞれに抱えている、小さいけれど大切な秘密。都心のオフィス・ビルの一室で、サキの忘れられない夏がはじまる。

坂木さんの作品は真一と司が出てくるシリーズから読んでるけど、あのシリーズよりこの間読んだ「切れない糸」のほうが好きで、そしてそれ以上にこの作品はよかった。

大学2年の夏休みに大ッ嫌いな歯医者で受付のアルバイトをすることになった女子大生・咲子(サキ)がクリニックのスタッフや来院する患者さんとのやり取りの中で起こった謎を解決し、そしてそれによって成長していく物語。

とにかく主人公のサキが魅力的。
元気で明るくて物怖じしなくて協調性もあって、お客様(患者)相手の応対もちゃんと出来て学習能力もやる気もある、しかも可愛い…捉え方によってはちょっとイヤミになるくらいちゃんとした「女の子」として書かれているのに、それをすんなり読ませてしまう、更には「ガンバレ!」って応援したい気持ちにさせてしまうのは坂木さんの柔らかくて穏やかな文章の賜物だと思う。

クリニックのスタッフの面々も個性的で賑やか。
院長以下医師2名、歯科衛生士3名、歯科技工士1名、事務1名と計8人も出てくるのに、みんなきちんと性格付けされていてそれに沿って発言・行動しているのですごく判りやすい。
しかも歯科医の専門的な仕事についての解説や治療の様子も丁寧に書いてあるので、まるで本当にそんな歯医者があって自分も行ったことがあるような錯覚に陥るくらいだった。
でも、こんなにスタッフ全員が接客業としても技術者としてもプロフェッショナルで、仲間内のモチベーションと方向性が一致している歯医者さん(といううか職場)ってあるのかな~。
ほとんど理想型だよね(笑)

物語の中に出てくる謎自体はそんなに大きな問題ではないけど、確かに歯医者(病院)の受付で仕事をしていたらぶつかるかもしれないなと納得できるような内容ばかりだったし、その謎の解き明かし方、そして終わらせ方に「愛」があって読んでいてとても温かい気持ちになれた。
サキと、人付き合いがちょっと苦手な四谷との恋の行方も爽やかで清々しくて気持ちよかったし。

ただ謎解きするときのサキの反応がちょっと鈍くて、それについて探偵役の四谷とやり取りしてる間にこっちは「あ、そういうことか」って判ってしまうことが多かったのがちょっと不満。
ボンヤリとは判るけど「う~ん、なんだっけ…」と考えているくらいの時に「実は…」と種明かししてくれるくらいがちょうどよかったんだけどな。
この部分はちょっと親切すぎたかも。

でも全体的にはバランスが取れていて、安心して読める大満足の1冊だった。

表題作の他「ファントム vs ファントム」「オランダ人のお買い物」「遊園地のお姫様」「フレッチャーさんの贈り物」の5編を収録。

サキの大学の同級生でよき相談相手、頼りになる親友の浩美(ヒロ)が同じ夏休みに沖縄にバイトに行った話も別の本として出ているらしい。(『ホテルジューシー』)
こっちも読んでみようっと。

ホテルジューシー
ホテルジューシー

野火迅『使ってみたい武士の日本語』

  • 2008/01/09(水) 09:12:02

使ってみたい武士の日本語
使ってみたい武士の日本語

内容紹介
つい百五十年前まで日本を覆っていた「武士の世」で話されていた、味わい深い言葉の数々。
声に出して使ってみれば、日本語本来の豊かさ・面白さが身にしみる。
卒爾ながら(突然のことで失礼ですが)、それは重畳(大変けっこうなことだ)、異なことをいう(また妙なことを)、これはしたり(これは驚きだ)、念には及ばない(確認するまでもない)……。
会話で・メールで・手紙文で、ひとことうまく使ってみたい「極上の日本語」を紹介する。

時代小説や歴史小説を読むのはけっこう好きなので、90%くらいは知ってる言葉だったかな。
「知ってる」といっても意味を言葉で説明しようとすると難しい。
でも、ニュアンスはほぼ理解できているという感じ。
だって、いくら今は使わないといっても同じ日本語なんだからね。
その言葉だけ言われたらちょっと困るけど、文章の中で出てくるのなら前後の流れを考慮すれば大体のことは判るんじゃないかと思う。

確かにこういう言葉って味わいや含みがあって深いなあと思うけど、だからといってそれを『会話で・メールで・手紙文で、ひとことうまく』使うというのはどうなのよ、と。
例えばいきなり会社で上司に「大儀である」とか言われたら、「ケンカ売ってます?」と思ってしまいそう(笑)
それに自分は知ってるけど相手が知らない(かもしれない)言葉を使うことはあまり親切じゃないと思うし、逆にお互いに判っていればいいかというとそれもちょっとね。
例えば「率爾ながら拙者このたび転勤することになり申した」「これはしたり」なんて会話をしてたらかなりアブナイ人になってしまうでしょう?(笑)

つまり、どこで誰に対して使えばいいか判断がすごく難しい言葉だよね。
(今の時代の言葉じゃないんだから当然といえば当然)
なので、現代の一般ピープルとしては知識としてこういう言葉があって、こういう意味だったんだよって知っていればいいんじゃないのかなと思うけど。

でも、読む方はそれでいいけど、その作品の状況とか関係とかにあった言葉を探して正しく使わなければならない作家というのは大変な仕事なんだなあ、ということを改めて感じた。
これからはもうちょっと文章を味わって読んでみよう!

三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』

  • 2008/01/05(土) 11:27:31

三四郎はそれから門を出た
三四郎はそれから門を出た

内容(「BOOK」データベースより)
それでも本から離れられない。人気作家にして筋金入りの活字中毒者、三浦しをんの秘密の日常。初の、ブックガイド&カルチャーエッセイ集。朝日新聞の人気連載、『anan』のカルチャーコラムも収録。

雑誌に発表された書評と本に関する文章をまとめたエッセイ集。
全部で6つの章に分かれていて、1と2が書評、3、6が本にまつわるエッセイ、4、5はカルチャー系のエッセイという感じかな。

最初は書評目当てで読み始めたけど、結果的にはストレートに本について書いてある部分よりもそれ以外の文章のほうが面白かった。
書評は本人自ら「活字中毒」というだけあってちゃんと読み込んでいるんだろうなあというのは伝わってくるんだけど、書き手と対象(本)の距離が近すぎるのか違和感があってあまり読みたいと思う本が見つからなかった。
(考えすぎだろうけどね^^;)

面白かったのは三章の「本のできごころ」。
これは例えば『虚無への供物』の舞台となった氷沼邸を探しに目白に足を運んだり、『長くつしたのピッピ』に出てくるしょうが入りクッキーを実際に作ってみるというような感じの体験型エッセイ。
本を基点にしているけれど本そのものからはちょっとずらした視点で書かれている内容が楽しかった。
なかでも電車で近くにいあわせた人が読んでいた本を自分も読んでみるという「本の辻占」が好きだったなあ。
著者も書いているように自分で本を選ぶと趣味や嗜好が偏ってしまって同じような傾向になってしまいがちだから、こうして人任せで本を読むというルールを自分に課すと意外に面白い本を発見することが出来るかも。
私も機会があったらやってみよう(^^)

田村裕『ホームレス中学生』

  • 2008/01/03(木) 10:24:24

ホームレス中学生

内容紹介
麒麟・田村のせつな面白い貧乏生活がついに小説に!
中学生時代の田村少年が、ある日突然住む家を無くし、近所の公園に一人住むようになる超リアルストーリー。
ダンボールで飢えを凌ぎ、ハトのエサであるパンくずを拾い集めた幼き日々から、いつも遠くで見守ってくれていた母へ想いが詰まった、笑えて泣ける貧乏自叙伝。

私にしては珍しく「ベストセラーど真ん中」の作品。
実家に帰ったら、父親が図書館で借りてきた本があったので読ませてもらった。
(自分では買いもしないし、借りもしないと思ったので)

読み始めてすぐに感じたのは「うわ、へたくそな文章だなぁ」ということ(笑)
ですます調とだである調が混在しているし、文章がぶつ切りだし、話が前後するし、重要な話とそうでない話が並列で書いてあるので全体的に平板になってしまって、盛り上がりに欠ける感じ。
タレント本ってよく「本人じゃなくてゴーストライターが書いている」とかって話があるけど、ここまで下手なら本人が書いたんだろうなあということは納得できる出来だったかも(笑)

で、問題の内容だけど…全編が話題になっている内容(「自宅を借金で差し押さえられて住む家がなくなり、父親の「解散」の一言で家族全員がバラバラになり中学2年生だった著者は一人で公園のすべり台で暮らす」)について書いてあるわけじゃないのね。
それについて書いてあるのは全体の約3分の1程度(190ページ中約60ページ)で、また実際にホームレスだったのも約2週間くらいの期間だったらしい。

もちろん、中学2年生でいきなり自宅がなくなったうえに「解散」の一言で親に見放されて一人放り出され、何の後ろ盾も先行きへの見込みもない状態で公園で野宿することを余儀なくされるというのは2週間だったとしても異常、というか極限的な状況だと思う。
だから本の紹介をするときにその部分が強調されるのは仕方ないと思うけど、「それしか」話題にならないというのも読み終わってみるとちょっと腑に落ちない部分はあるかな。

というのも、この本はそういう異常な生活の様子よりもそうした環境の中でも失われなかった兄弟(著者と兄、姉)の絆や死んでしまった母への思慕、借金を残したまま自分たちを捨てて失踪してしまった父親に対する思いなどの家族の話と、著者を厳しい環境から救ってくれた友達、その家族、近隣の人々、学校の先生などたくさんの人々への感謝の気持ち、それによって変化した著者の心境などのほうが重要なのではないのかと思えるから。

中でも著者にとって重要だったのはまさかのホームレス生活よりも、むしろ最愛の母親の死だったように思う。
幼いころに味わったその大きな喪失感を見ないふり忘れたふりをすることで自分を守っていたけれど、成長してものごとを理解するなかでその問題と向き合わざる得ない状況になり、その結果生きることへの目的も見失い無気力な状態になってしまう。
それでも家族や周囲の人々の支えを糧にそこから立ち直り、誰を恨むわけではなくそうしたものがあったからこそ「今の自分がある」という心境に至る著者の変化こそが重要な部分だったのでは。

最初に本の内容を知ったときに感じた「笑える悲惨さ」ではなく、「哀しみを乗り越えたものだけが得られる本物の明るさ」みたいなものが感じられる作品だった。

ただ、それさえもあまりにもへたくそな文章であるために内容を理解することに気をとられてしまい、あまり感情移入できずに読み終わってしまった感はぬぐえない。
確かに経験した人にしか表現できない臨場感というのはあるのかもしれないけど、それを表現するにもやはり最低限の表現力というのは要求されるんじゃないかなあ。
リアルであることも大切だけど、もうちょっと添削するとか構成を整えるとか読みやすさを調整する必要はあったのでは。
そうした結果があれだったのならもう何もいうことはないけどね。
もしかしたらそうした流暢すぎない部分が売れている要因の一つなのかも?
あと、まさかとは思うけど「わざとそう書いた」のだとしたら…かなり腹立たしい。

現在この本の発行部数は180万部(!)だとか。
どこかで「世界一売れているノンフィクション作品だ」という話を聞いたんだけど…ホント?
まあ基本的にノンフィクションの本が売れないという事実があるからかもしれないけど、この本がそういう位置に置かれてしまうというのは何かが間違っているような気がするなあ…。

※この↓話と勘違いしてるかな?
麒麟田村“貧乏本”ギネス申請も検討

「ホームレス」から想像されるダンボールを使った装丁は好き。
下手な手書きで書かれた文字がタイトルになった表紙もいいけど、背表紙で同じダンボールの隙間からちらりと外の景色(マンションらしき白い壁とその周囲の木)が見せているところがよかった。
その隔てられた「あっち」と「こっち」にあるのは薄っぺらなダンボール1枚だけど、それこそが「超えることが出来ない厚い大きな壁」であるということが端的に表現されていたと思う。
(実際にはダンボールに住んでいたわけではないけどね)
本文中には著者によるヘタくそなイラスト付き。(これは別になくてもよかったかも…^^;)

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