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◆Date:2006年10月
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宇月原晴明『安徳天皇漂海記』

  • 2006/10/31(火) 08:42:46

安徳天皇漂海記
宇月原 晴明
4120037053

内容(「BOOK」データベースより)
悲劇の壇ノ浦から陰謀渦巻く鎌倉、世界帝国元、滅びゆく南宋の地へ。海を越え、時を越えて紡がれる幻想の一大叙事詩。

タイトルに惹かれて読んで、あまりの難しさに眩暈がしそうになった(笑)『信長~あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』以来の私にとって2冊目の宇月原作品。

壇ノ浦で源氏に敗れ祖母の尼君とともに入水した悲劇の幼帝・安徳帝。
誰の目にも死んだと思われたその高貴な血筋を持つ少年は、琥珀の珠に守られて海を漂い続けていた。
その安徳帝の存在により悲劇に導かれていく人々の姿を描いた物語。

面白かった。
題材が題材だし、ファンタジーというか幻想小説、伝奇小説の趣もあるので、決してとっつき易い作品ではないと思う。
正直私も読み始めてしばらくはなかなかページが進まなくて苦労したし。
でも、全編「暗号で書いてあるのでは?」(笑)と思うほど難解だった『信長~』に比べたら文章も設定も平易に描かれているので、読み進めるうちに登場人物と物語設定、そしてその雰囲気に次第に引き込まれていって少しずつスピードが速くなっていった。

安徳帝を死に追いやった源氏の棟梁として将軍職を継ぐ実朝が安徳帝に出会い、彼の荒ぶる魂を鎮めるためにその命を差し出すまでをかつて実朝の傍近く仕えた老隠者が語る第一部。
琥珀の珠の中から実朝とその若き近習の夢に現れ、ひたすらに自分の兵を求める安徳帝の無邪気さが恐ろしくも哀しい。

更に時代は下り、いましもアジアの覇権を握ろうとするクビライ・カーンの巡遣使としてその老隠者の話を聞いた若きマルコ・ポーロが次に赴いた南宋で、今まさに滅びようとしている帝国の最後を見守る第二部。
クビライ率いるモンゴル軍に祖国を追われ、海上での生活を強いられ、その子どもらしさを表現することを禁じられた少年は夢に現れた同じ年頃の少年と友人になり束の間の楽しい時間を過ごすことになる。
南宋の最後の皇帝・趙昺(ちょうへい、「へい」は日の下に丙)は、その後引き写したようにその友人と似通った運命を辿ることになる…。

全体的な内容は「滅びに至る悲劇の物語」なのだけれど、その読後感は不思議と明るく温かい。
それは、その物語の最後に配された結末が癒しと慈しみに満ちたものであったからだと思う。
独りぼっちでその小さな身体を自分の腕で抱きしめながら遠い海を彷徨い続けた安徳帝の魂が、金色に光る島で生きる神々の末裔の一人として優しく迎え入れられたとき読者は自分も「赦された」と感じるのかもしれない。

浪の彼方にも都のさぶらふぞ

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス
宇月原 晴明
4101309310

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斎藤美奈子『文壇アイドル論』

  • 2006/10/19(木) 08:40:23

文壇アイドル論
斎藤 美奈子
4167717085

内容(「BOOK」データベースより)
「文学バブルの寵児」ともいえる村上春樹、俵万智、吉本ばなな。「オンナの時代の象徴」となった林真理子、上野千鶴子。「コンビニ化した知と教養の旗手」立花隆、村上龍、田中康夫―。膨大な資料を渉猟して分析した、80~90年代「文壇アイドル」の作家論にして、すぐれた時代論。斎藤美奈子の真骨頂。

上記の「BOOK」データベースからの引用には書いてないけど、これは「作家」論ではなく「作家論」論。
つまり作家本人やその作品を直接斎藤氏が批評するということではなく、彼ら及びその作品が周囲からどう批評されたかを読み解くことで、その作家の本質に迫るというアプローチ。
これが面白かった。
直接その素材について語るよりもこのくらい対象と距離がある書き方のほうが視界が広くなって色んなものが見えてくる感じ。

もちろんそれは斎藤氏の分析力、構成力、文章力のおかげだと思うし、更には俎上に上げられた作家たちが「アイドル」であった頃から20年という時間が経過したということも多分にあるだろう。
(それでも多少の差こそあれ全員が現在も現役で活躍する作家であるのはやっぱりスゴイ)

それにしても驚くのはその引用の幅広さ。
その作家、その著作について語られた文章とは言っても、それがそのままのタイトルがついて本になっているケースなんてよほどの文豪でもない限り稀なことだと思う。
実際、この本の中で取り上げられている引用も当時の雑誌や新聞の記事などがかなり多い。
でも、「雑誌や新聞の記事からの引用」って実はすごく大変だよね。
だってそれって消耗品だから。
昨日ネットニュースに載ってた記事を書き写すなら簡単だけど、20年前の新聞・雑誌の文章を引用するまでにどんな苦労があったことか!
もちろんそんな苦労話が語られることは(あとがきでさえ)ないし、そして集められた引用が惜しげもなくふんだんに使われているからこそこの作品は面白く仕上がっていると思う。
斎藤氏の気っぷのよさが十二分に発揮された切れ味のいい作品。
面白かった。

有栖川有栖『山伏地蔵坊の放浪』

  • 2006/10/15(日) 08:37:22

山伏地蔵坊の放浪
有栖川 有栖
4488414044

内容(「BOOK」データベースより)
地蔵坊先生お気に入りのカクテル『さすらい人の夢』の二杯目が空く頃、物語は始まる。土曜の定例会で山伏の先生が聞かせてくれる体験談ときたら、ローカル線の犯人消失、崖に住む新興宗教家の死、トリュフに端を発する真夏日の事件、雪と共に降って湧いた博士邸の怪など、揃いも揃って殺人譚。ことごとく真相を看破したという地蔵坊が、名探偵行脚さながらの見聞を語る七話を収録。

ある小都市にあるバー「えいぷりる」に毎週土曜日の夜に集まる常連客に、地蔵坊と名乗る山伏が修行の旅の途中で遭遇した事件を話して聞かせる…という設定の短篇ミステリー集。
「ローカル線とシンデレラ」「仮装パーティの館」「崖の教祖」「毒の晩餐会」「死ぬ時はひとり」「割れたガラス窓」「天馬博士の昇天」の7編を収録。

常に正装(?)したまま町中を歩いてバーにやってくる山伏という何とも人を喰った設定の語り手がまず印象的。
その外見の怪しさ同様話す内容もかなり非日常的で「ホントの話?」といった感じの設定ばかり。
また、それを聞く側の「えいぷりる」に集まる面々も全て真実として真剣に受け止めているというよりは、毎週土曜日夜の集会の「座興」といった反応を言動の端々に垣間見せている。
(最後の方は黙って最後まで聞いてるのに飽き足らなくなって、みんなで推理までし始めていたし(笑))
このあたりの「ゆる~い」感じが私は好きだったな。

この本、東京創元社の「スキマ時間活用術~短篇集フェア~」のなかの1冊だったんだけど、まさに

電車の移動時間、約束までの待ち時間、寝る前のひととき――そんなちょっとした”スキマ時間”を埋めるのに最適な短編集

だった。
どの事件でも1人ずつ人が殺されちゃうような作品だけど全然重くならずに読めるので(それがいいか悪いかはまた別問題だけど^^;)、通勤のお供におすすめです。

広瀬仁紀『新選組風雲録 激斗編』

  • 2006/10/10(火) 14:16:39

新選組風雲録 激闘篇
広瀬 仁紀
4167679086

内容(「BOOK」データベースより)
蛤御門の変ののち、新選組をはじめとする幕府側に激しく追われる長州の桂小五郎は、霞小僧のお多加に助けられ必死に洛中を逃げ回る。果して無事に脱出できるか!?新選組でも変化が。江戸より伊東甲子太郎等が新しく加盟し、医師・松本良順と局長近藤勇が交遊を始め、そして、結党以来の同志・山南敬助が脱走を図った。

時期的には、蛤御門の変(元治元年・1864年)の直後から、第十四代将軍・家茂が薨去するまで(慶応二年・1866年)の約2年間の物語。

こうやって時代の流れに沿って彼らの行動を見ていると、本当に上り坂だったのは第一巻の最後に出てきた蛤御門の変あたりまでで、(傾斜角度の差こそあれ)あとはもうひたすら坂を下るしかなかったのだ、ということがハッキリと判るのが哀しい。
本当に恐ろしい速さで時間が過ぎ、状況が変化していった時代だったんだなあ。

この巻の中心は、やはり山南の脱走・切腹。
ちょっと動機の部分が曖昧になってしまっているのが残念だけど、その追っ手が土方だった、という独創的な(少なくとも私は初めてのパターン。普通ここは総司が追いかけて…ってシーンだもんね。あんなに二人を仲良しに書いた『黒龍の柩』でさえそうだったと思う…確か)設定がなかなか効いていた。
今までは反目しあっていた(いるように見えた)二人が初めて心を開いて酒を酌み交わす最後の夜…泣けます。

それから、ドラマ『新選組!』でも印象的な一編に仕上がっていた勘定方・河合耆三郎の事件もかなりのページを割いてじっくりと書かれていた。
もしかして、三谷さんはこれを参考にしたのかな?と思うくらい。
犯人はドラマとはまた別の人物の設定なっていたけど。
このエピソードの中でのはじめちゃんの使い方がいい。

松本良順登場。肝が据わった、いいキャラクター。
近藤と初めて対面するときのエピソードが凄い。
近藤さん、ムチャクチャ過ぎます(笑)
第一巻では殆ど出番ナシだった局長の存在感がいきなりアップしているのがちょっと笑える。

時勢の流れもすごいけど、新選組の中の変化もあまりにも速くて読んでいると息が詰まります。

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