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◆Date:2006年06月
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浅田次郎『五郎治殿御始末』

  • 2006/06/25(日) 15:40:32

五郎治殿御始末
浅田 次郎
4122046416

内容(「BOOK」データベースより)
男の始末とは、そういうものでなければならぬ。決して逃げず、後戻りもせず、能う限りの最善の方法で、すべての始末をつけねばならぬ。 幕末維新の激動期、自らの誇りをかけ、千年続いた武士の時代の幕を引いた、侍たちの物語。表題作ほか全六篇。

う~、泣いた^^;
私の「泣きますボタン」は押されっ放しでした。
幸か不幸か、読んだ場所が殆ど会社か電車の中だったのでさすがに号泣ってほどなかったけど、 そんな場所でさえ物語のクライマックスでは思わず涙がポロポロ出てしまったくらい。
相変わらず巧いです。

新選組好きなので幕末ものの時代小説はけっこうよく読んでいたけど、考えてみるとその次の時代「明治」 の物語って殆ど読んだことがなかった。
で、他の殆どの時代がそうであったように「江戸」(というか「慶応」)から「明治」 への変化というのも単に元号が変わっただけかと思っていた。
でも、これを読んでこの時代の変化、いわゆる「明治維新」というのは本当にその通り名が示す通り「すべてのことが改められて、 すっかり新しくなること。」であったのだということが理解できた。

自分の拠り所であった「身分」というものがなくなり、家がなくなり、仕事がなくなり、それどころか暦や時間まで、自分が今まで「当然」 と思っていたものが全て何の前触れもなく変わっていってしまう、そんな時代。
確かにいきなり「今年の大晦日は12月2日です」って言われたらビックリするよね~^^;
要するに「太陰暦」から「太陽暦」への変更なんだけど、こういうことが何の事前説明もなく即時導入されてしまうとしたらそりゃあ混乱するわ。
「明治」という時代は、過去の日本が積み重ねてきた歴史や習慣の多くを捨てて新しい制度を受け入れた、 今までの日本の歴史の中でも一番の激動の時代だったんだ。

そんな中で、過去となった「武士の時代」から抜け出せないまま不器用に、しかし誇り高く生きる男たちの物語。
こういう物語に「美しさ」を感じられる心こそが日本人の美質なんじゃないのかな。
「国家の品格」で藤原氏が「取り戻すべき」とした「武士道」の具体的な例がこういう物語なのではないかと。

特別付録として『御一新前後 江戸東京鳥瞰絵図』付き。
各作品の関連地名へのインデックスも付いているスグレモノ。
この心配りがニクイ。

表題作の他、「椿村まで」「箱館証文」「西を向く侍」「遠い砲音」「石榴坂の仇討」の計6編を収録。

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近藤史恵『にわか大根 猿若町捕物帖』

  • 2006/06/24(土) 11:27:28

にわか大根 猿若町捕物帳
近藤 史恵
4334924913

出版社/著者からの内容紹介
男前でもてるのに堅物の同心・玉島千蔭と、お人好しでおっちょこちょいの岡っ引き・八十吉の名コンビが大活躍!
次々に起こる事件に、千蔭の勘と推理力が冴え渡る。
そんな中、千蔭に押しかけ女房が…?! 美貌の花魁・梅が枝との仲はどうなる?
軽妙と繊細が絶妙にマッチした、近藤史恵の真骨頂!

久々の「猿若町捕物帖シリーズ」。
面白かった~♪

近藤さんの作品を読むと「不安定」で「危なっかしい」という印象を持つことが多い。
(もちろん作品によって印象は変わるし、何よりその不安定さもまた魅力である、と思っているのだけれど)
でも、この「猿若町捕物帖」はすごく安定していて、とても読みやすい作品に仕上がっている。
一番最初の作品(「巴之丞鹿の子」)を読んだときから「面白い」と思っていたけど、 作を重ねるごとに安定感が増していて魅力的なシリーズに成長していると思う。

なによりも好感が持てるのが、登場人物の個性がハッキリしていることと、彼らの行動原理が判りやすいこと。

仕事も出来て男前なのに堅物で、30を過ぎても独身を通している主人公、南町奉行所の同心・玉島千蔭を筆頭に、 千蔭の父で顔は似ているが性格は正反対の洒落者・千次郎。
千次郎の代から玉島家に小者として仕え、今は千蔭の手足となって働く八十吉、中村座の人気女形・巴之丞、 その巴之丞とそっくりな美貌を持ち過去に浅からぬ因縁もあるらしい吉原の花魁・梅が枝…。
おなじみの登場人物たちが個性を振りまきながら物語の舞台に登場して、それぞれの役割をキッチリこなしていく。
そしてそれぞれが、物語に奥行きと広がり、落ち着きと華を与えているのが楽しい。

今回何よりもビックリだったのは、千次郎が前作で千蔭の見合い相手だった17歳のお駒と本当に夫婦になっていたこと!
今の時代だってそれはちょっとビックリだよ、お父上(笑)
でも、千次郎と千蔭の男2人きりよりも、17歳のお駒が間に入ることで2人の関係が以前よりも上手くまとまってきた感じ。
お駒を加えた3人のコンビネーションの今後に期待。

物語は「吉原雀」「にわか大根」「片陰」の3つの別々の物語がそれぞれ完結しつつ、 それを通して語られるもう一つの謎によってそれぞれの物語が微妙にリンクしていて、最後の物語が完結するのと同時にその謎も解決する、 という構成。
謎も謎解きもひとひねりが効いていて面白かったし、 著者お得意の歌舞伎についての記述も主張しすぎないけどピリッと効果的に使われていて楽しく読めた。

これからも続編が楽しみ(^^)


巴之丞鹿の子
―猿若町捕物帳

近藤 史恵
4344401670
ほおずき地獄
―猿若町捕物帳

近藤 史恵
4344402847

藤原正彦『国家の品格』

  • 2006/06/13(火) 11:18:07

国家の品格
藤原 正彦
4106101416

内容(「BOOK」データベースより)
日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」 である。 国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。「論理」と「合理性」 頼みの「改革」 では、 社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、 民主主義よりも武士道精神であり、 「国家の品格」を取り戻すことである。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的提言。

今朝、TVで本のベストセラー・ランキングを見たら、この本が相変わらず1位だった。
しかも新書史上最速で200万部突破とのこと…(驚)

まあ、売れているもの(本に限らず)というのは人の目に触れる機会も多いので、売れれば売れるほど「(そんなに売れてるなら) 買ってみようか」と思う人が増えて更に売れるってことなんだろうなあ。
しかも「本」ってお試し出来ないし。
それが判ったうえで敢えて。

何故この本は売れているんだろう?

だって…別にビックリするようなことも目から鱗なことも書いてない、普通の本だとしか思えないんだもん。
少なくとも私はあまり感心しなかった。
正直「いい本」「優れた本」ではない、と思う。

確かに「日本人としての誇りと価値観、欧米の模倣ではない『品格』を持った国を取り戻そう」という主張自体は否定するものではない、 むしろ「正しい」と思えるんだけど…それ自体は別に目新しい考えでも何でもないでしょう。

ただ、こういう内容でも書き方によっては面白い本になる可能性はあると思う。
でも、この本は読んでいる間中「う~ん…」とか「???」とかばっかりで。
何がダメだったかというと、その内容を展開するときの話の持って行き方だと思う。

例えば日本は素晴らしい国なんだから、欧米に倣っていないでもっと独自の文化を大切にしよう、という主張をするのはいいんだけど、 わざわざ 「日本は素晴らしい」ってことをいうのに「日本は昔から○○だったのに、欧米はその時代はまだ××だった」 って比較することないんじゃないの?
なにかをよくいうために、相手を落とすのってそのまんまアメリカから入ってきた「比較広告」 みたいであまり品がいい行為だとは思えないんだけどなあ。

他に「変なの」と思ったのは、「日本人ほど自然に対する感受性が繊細な国民はいない」といいながら、 それについて言及している部分で出てくるのは全て外国人がそうした日本の自然の美しさに感嘆している姿なんだよね。
だとしたら日本人はただ単にそこに当たり前にあるものを享受しているだけで、 本当にその美しさを理解しようと努めているのは日本以外で生まれ育った外国人ではないのか?と思えてしまうのだけど。

全編けっこうこんな感じの判ったような判らないような話が続くので、読んでいるうちに「もしかしてこれって全編パロディなのかな?」 と思ってしまったくらい(笑)

この本は、著者の講演記録をもとに加筆したものらしい。
なので文章自体は判りやすいのだけれど、話しているなかで「ジョーク」 として発言しているのであろう内容も全てその他の内容と並列で扱われているので、 どこが本気でどこが冗談なのか判然としない部分も多くて判断に困る部分もあった。
例えば冒頭の

私は自分が正しいと確信していることについてのみ語るつもりですが、不幸にして私が確信していることは、 日本や世界の人々が確信していることとしばしば異なっております。もちろん私ひとりだけが正しくて、他のすべての人々が間違っている。 かように思っております。

のくだりなんか、冗談っぽく喋っていて会場も笑っているのと、大まじめに言っているのでは全然意味が違ってくるでしょう。
そのあたりが活字でしか内容を把握できない読者にもちゃんと判るように書いて欲しかったなあ。
「(笑)」なんて書くのは美意識が許さなかったのかもしれないけど、そうやって相手を慮ることも日本人の美徳ではないかと私は思う。
(いや、でも本当に真面目に言った可能性もあるのか…だとしたらかなり「引く」^^;)

この本のなかで読む部分があるとすれば、最後の「第七章 国家の品格」。
この部分はすごくシンプルで、判りやすくて、まっとうで、フラットな考え方が素直に書かれていて好感が持てた。
その他の部分は読むと却って混乱すると思うので、読む必要はないような気がします(笑)

まあ、こういうタイトルの本を読みたくなるほど、日本人が危機感を持っているってことではあるのかも。


それよりも、この著者の本なら『博士の愛した数式』の著者・小川洋子氏との対談を収録した『世にも美しい数学入門』 のほうが100万倍くらい好き。
数学どころか数字を見るだけで思考停止してしまう私でも「数学って面白いのかも」と思えたくらい、ホントに素敵な内容の本だった。
数式の美しさを楽しそうに語っていらっしゃる藤原氏の様子が印象的。
やはり「餅は餅屋」ってことなのではないかと。
オススメです。

世にも美しい数学入門
藤原 正彦 小川 洋子
4480687114
博士の愛した数式
小川 洋子
4101215235
博士の愛した数式
寺尾聰 小川洋子
小泉堯史
B000C5PNV4

 

米村圭伍『紀文大尽舞』

  • 2006/06/10(土) 11:14:09

紀文大尽舞
米村 圭伍
4101265364

内容(「BOOK」データベースより)
花のお江戸で女だてらに戯作者を志すお夢が追うのは、紀伊国屋文左衛門。蜜柑船で一夜にして財をなした豪商の一代記を書くためだ。 ところが紀文は逃げ回り、お夢は命を狙われる。華やかな立志伝に隠された秘密とは何か。ついに大奥に潜入したお夢が遭遇する、 将軍継承を巡る大陰謀とは。紀文と八代将軍吉宗の意外な接点。お夢の推理が冴えまくる痛快無比の大江戸歴史ミステリー。

江戸の豪商・紀伊国屋文左衛門の江戸での成功の裏には紀伊徳川家の姿があった、というところから始まる歴史ミステリー。
紀伊徳川家の密命を帯びて江戸で材木商を営み、その潤沢な資金を使って幕府御用達に成り上がり幕府の中枢に入り込んでいく紀文。
その真の目的は将軍継承を巡る大陰謀だった。
しかし時間が経つうちに紀文の思惑は派遣した紀伊徳川家を離れ、意外な方向に向かって行く。

その謎を追いかけるのは女でありながら戯作者志望の湯屋の娘・お夢。
そして彼女が掴んだ真相とは-。

かなり読み応えがあって面白かった。

最初は単純に一つの方向で描かれていてそのまま完結しそうだった物語が、 新たな登場人物と視点を与えられることによってどんどんその構図を変えていく。
一つ一つのパーツと現在そこに現れている現象は同じなのに、誰がなんのためにそれをやったのか、 そこに当てる光の方向を変えることで全く違ったものがそこに立ち現れて来る、しかもそれが何度も何度も繰り返されるという構成が面白かった。
世に知られた歴史的事実に創作を挟み込んで「もしかしたらホントにこんなことがあったかも?」 と思わせるような作品に仕立て上げるパワーが凄い。

登場人物は主人公のお夢が魅力的。
彼女の行動力と、そして彼女以外の登場人物の口から語られる紀文、紀伊徳川家、将軍家、幕府、 大奥などなどの噂話や推理と事実を組み立て直して紡ぎ出される鮮やかな謎解きが楽しかった。
でもそれ以外の登場人物は(それぞれ個性的ではあるのだけれど)あまり感情移入が出来る人物がいなかったのが残念。
最後まで彼女の味方であり続けたむささび五平の気持ちがもうちょっと判りやすく書いてあるとよかったかも…。

それから、終盤の何度も推理がひっくり返る部分はすごく面白かったんだけど、その分最後の最後オチの部分は今ひとつだったかなあ。
私なんか一瞬終わったことに気付かなかったくらいだもの(笑)
本当に「上手く落とす」というのは難しいことなんだなあ。
ましてやあれだけ、終盤盛り上げてしまうと、読者の期待も高まってしまうだろうしね。

それにしても、もっと「のほほん」とした作品かと思ったら、けっこうシリアスで非情な部分もある作品だったのが意外。
これは米村氏の作品にいつも使われている表紙イラスト(柴田ゆう氏。「しゃばけ」シリーズと同じ方ですね)の影響が大きいかも…。
あの絵を見るだけでインプットされてしまうイメージってあると思う。
表紙の持つ意味は大きい。

鳥飼否宇『昆虫探偵 シロコパκ氏の華麗なる推理』

  • 2006/06/03(土) 11:08:10

昆虫探偵
鳥飼 否宇
433473877X

内容(「BOOK」データベースより)
ある朝目覚めるとゴキブリになっていた元人間のペリプラ葉古。無類のミステリ好きだった葉古は、昆虫界の名探偵、 熊ん蜂シロコパκの助手となった。人の論理が通用しない異世界で巻き起こる複雑怪奇な難事件を、 クロオオアリの刑事の力も借りて見事解決していく!書下ろし「ジョロウグモの拘」を収録。 昆虫と本格ミステリについてのユニークな注釈を新たに付加。
ある日目が覚めると、葉古小吉(はぶる・しょうきち)はゴキブリになっていた。

こんな衝撃的な(でもどこかで聞いたことがあるような(笑))文章で幕を開けるこの作品。
普通だったらいきなり人間からゴキブリになっていたら、驚いたり、悩んだり、哀しんだりしそうなものだけど、 この小吉は地味で目立たない存在のまま30数年を人間として過ごしてきた、しかも無類の虫好き。
むしろ喜んで虫社会の一員になり、探偵シロコパκ(カッパ)氏(熊ん蜂)の助手として活躍(?)する、というお話。

初めて読む作家さんでどんな作風か判らなかったし、カバーイラストが蝶と蛾、 蟻の端正な細密画だったのでもっとシリアスな話かと思ったら、かなりユーモアの効いた作品で楽しく読めた。

いや、確かに変わった作品だとは思うけど(笑)
だって、虫社会で起きた殺虫事件を「虫の生態や論理に従って」解決するなんて話、普通考えないと思う。
推理小説だと思って買ったのに、いきなり虫の生態について詳しい説明が書かれていたらちょっと驚くよ。
(説明が上手いのですごくよく判ったけど(笑))

でも、何故かこれが面白かったんだな~。
ここまで徹底するとむしろ見事、という感じ。

しかも元々の設定からも判るとおり真面目一辺倒の作品ではなく、その中に笑いもちゃんと同居しているから非常に読みやすい。
例えば虫の生態や行動の正確な説明を繰り広げる一方で登場虫そのものは大胆に擬人化されている部分とか、ペリプラ葉古(小吉) が人間のときの知識・常識・行動パターンでもって虫の事件を解明しようとするとすかさずシロコパ氏から「ここは人間界じゃない」 ってダメ出しが入るところとか。
あと、事件そのものも虫の生態の中で説明、解明していながらも、 それ自体はちゃんと推理小説のセオリーにのっとった書き方がされているのも巧いと思った。

大胆な発想と、繊細な構成が融合した作品という印象。

もちろん虫嫌いの人は苦手だと思う。
全編虫だらけだし、しかものっけからいきなり主人公が「ゴキブリ」なわけだから(笑)
私だって、これがマンガとか映像だったら「勘弁して下さい」ってことになったかも知れないけど、 文字で読む分にはそんなにイヤではなかったな。

「蝶々殺蛾(さつじん)事件」、「哲学虫(てつがくしゃ)の密室」、「昼のセミ」、「吸血の池」、「生けるアカハネの死」、 「ジョロウグモの拘」、「ハチの悲劇」の七編を収録。
この過去の推理作品のタイトルをもじった各編のタイトルはじめ、最後に明かされる意外な真実など細部にわたって計算されているけど、 それがイヤミにならないところがセンスがいいと思う。
また他の作品も読んでみよう。

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