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◆Date:2005年12月
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富樫倫太郎『妖説 源氏物語〈参〉』

  • 2005/12/30(金) 11:39:08

妖説 源氏物語〈3〉
富樫 倫太郎
富樫倫太郎/妖説 源氏物語〈参〉

出版社 / 著者からの内容紹介
本当の父親は光源氏ではなく、亡き柏木なのか。 苦悩する薫中将。そして、その疲れた心を癒すが如く現れた美しき姫・大君。心の迷路を彷徨う薫であったが、陰陽師白鴎の力を借り、 ついに冥界より召還された柏木と対面する。真実が明らかになり、静かにすべてを受け入れて、前に進もうと誓う薫。だが、 その背後には凶悪な魑魅魍魎が迫っていた。シリーズ完結篇。

「完結編」なので(「宇治十帖」の)最後まで書いてあるのかな、と思ったけどそんなことはなかった。
原典としたら匂宮が初瀬詣での帰りに宇治に立ち寄って、そこで八の宮の屋敷を訪ねる…あたりまで。
つまり、薫と匂宮の「恋の鞘当て」が始まる前まで、ということ。

これについて著者は「あとがき」のなかで

自分としては、薫と匂宮の友情を『妖説 源氏物語』の主題のひとつとして設定していたので、 その友情に女性関係でヒビが入る前に物語の幕を引こうと考えたのだが、その考えが甘いと言われれば返す言葉もない。

と書いている。

つまり、著者としてはここで終わることを最初から決めていた、ということ。
私にとっても原作の匂宮、薫、大君、中君そして浮舟をめぐる三角関係、四角関係のもつれというのは正直「邪魔くさいなあ」 って感じの展開なので、それを読まずにすんだのは気分的には楽だったかな。
それに薫と匂宮、そしてその遊び仲間たちの出てくる殆ど著者のオリジナル設定の物語はかなり面白く読めたんだけど、 ちょっと原典に沿った話が続くと(例えばこの巻だと「橋姫」のあたり) 物語のスピード感が急速に失われてとてもつまらないお話しにしか思えなかったというのもある。

そして薫と匂宮の友情!
あの2人の関係にそんな感情があったなんて原作(現代訳)を読んだときには感じなかったけど、確かに言われてみれば叔父・ 甥とはいえ1歳違いで、小さい頃からすぐ近くで幼なじみのように、兄弟のように育った若い2人なんだから、 そうした感情が生まれるのは普通に考えれば当然の話。
で、その関係が想像できれば、この物語のようにどこに行くにも連んで出掛けて行く2人や、匂宮がどこかで困ったことになっていると、 それを聞きつけた薫が仕方ないな~という表情で出掛けていく姿なども思い浮かべることが出来る。
この2人の関係は原作の中では宇治の姫君たちを間に挟んでのあまりお上品とは思えない争いばかりが書いてあるけど、 それより前はこんなに仲がいい2人だったのだということに思いを致すことはとても意味深いことだと思う。
この2人の友情が前提にあるからこそ大君という女性に出会って初めて人を愛することを知った薫の悩み、彼女を失ったあとの哀しみ、 そしてその想いが匂宮に愛された中君を慕う心に繋がり、やがて浮舟への愛に転化される…しかし、それは報われることなく静かな最後を迎える… という原作のストーリーが生きてくる。

著者は敢えてその後を描かなかったけれど、原作には書かれていない重要なことを提示してくれた意味は大きい。

ただ、原典のラスト、 薫からも匂宮からも言い寄られてどうしていいか判らずパニックに陥り宇治川に飛び込んだまま行方知れずになった浮舟が、目が覚めた尼寺 (だっけ?)で「もうこんな煩わしい世の中まっぴらだわ」とサッサと出家してしまうエンディングはけっこう好き(笑)
なので、この部分を著者がどう描くかは読んでみたかった気もするな~。

それと、この物語で出色なのが、薫が実の父である柏木(の霊)と対面する場面。
女三の宮との浮気を嫉妬した源氏にいびり殺されてしまった(笑)柏木は原作ではその後顧みられることなく、 ただ薫が悶々と悩み続ける原因とだけなっているけど、この作品の中では陰陽師・ 白鴎の力によって死んだ柏木の霊が呼び出され薫と親子の対面をしているところが非常に印象的だった。
原作では母になった女三の宮のことも生まれてきた息子・薫のことも関係なくただ自分が死ぬことばかりに気を取られていて、 全くいいとこなしで退場してしまったイメージがあったけど、この作品で霊的な存在として息子と対面した柏木は薫を気遣い、 自分の浅慮によって不幸にさせてまった女三の宮を思い遣る気持ちに溢れた「いいお父さん」として登場している。
更には猿田大納言の陰謀により冥界に落とされてしまった薫を自分が身代わりになって救うなど、千年ぶりの名誉回復(笑) といった活躍振りだった。

まあ、全体的に舞台は借りているものの、全く別物といったイメージだったけど、 ただ単に原作を現代訳しただけでは気付かないいろんな意味や関係を教えてくれる部分も大きい作品だった。

あ、それから「あとがき」に書いてある著者の源氏観がかなり面白いので、ここだけでも読んでみるべし(笑)

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きたみりゅうじ『SEのフシギな生態』

  • 2005/12/18(日) 11:30:15

SEのフシギな生態―失敗談から学ぶ成功のための30ヶ条
きたみ りゅうじ
きたみりゅうじ/SEのフシギな生態

内容(「MARC」データベースより)
今の「技術力」に甘えてはならない。ほんとうに必要なものは「人間力」である。先輩SEのトホホな失敗に学ぶ仕事術。就職・ 転職に効く実践ノウハウ満載。

以前PC関連本の売り場に行くと必ず平積みされていて、表紙のイラストが可愛い(?) のでいつも気にはなっていたのだけど1,500円出して買おうとまでは思えなかった本。
今回文庫化されたので買ってみた。

面白かった。

私はもちろんSEではないから、仕事の詳細についてはよく判らないし別に興味もない^^;んだけど、ここに書いてある内容って特別 「SE界」に限ったことではなくて、普通に仕事をしていればどこの分野でも(形は違えど)ありがちな問題なんじゃないのかな、と思う。

で、その問題を受けて著者が導き出す「教訓」というのも、その業界特有のものではなくどの分野にも、いやもしかしたら仕事・ 会社に属していない人でも適応できる、とても広い意味での「他人とコミュニケーションする上での心がけ」のようなものが多かった。

例えば、

「話をまとめるにあたっては、相手の背後関係を洗い出し、その中からキーとなる人物を見つけ出すことが何より重要と心得よ」
「ヤラレタと嘆いても事態は変わらない。常に自らが責任をとれる手段を考えて動くべし!」
「言葉というのは難しいもの。常に自分が想定した通り受け止めてもらえるとは限らないと知るべし!」
「自分の常識が、必ずしも相手に通じるとは限らない。これは当たり前だろうと思った時、 そこに大きな落とし穴が待っていると心得よ」

などなど。
もうね、前段を読まずにこれだけ読んでも「あ、そういうことってあるよね~」と思わず納得してしまうことが多かった。
状況から問題の本質を抜き出すことに長けている人なんだろうなあ。

そんな著者が「エンジニアをやめてマネジメントをやりなさい」と上司に言われてガックリきた、という部分がある。
でも、この本を読む限りでは(もちろん、ご本人も後で認めているけれど)完全に現場の人というよりマネジメントの人だろうと思うけど。
ここまで自分を、そして周りを冷静に見つめられる人が、マネジメントやらないでどうすんの、と。

この著者の考え方で特徴的なのは「他人を変えるのは難しい(面倒くさい?(笑))から、自分が変わりましょう」ってことかな。
確かにそれは言える。
同じ間違いをしたとき言って判るヤツにならいくらでも言うけど、 言っても判らないヤツに対して判るまで言い続けるのはハッキリ言って時間のムダだと思う。
(お、ちょっと過激な意見(笑))
ついつい「間違っているなら正してやるのが人として親切」なんていう考えに取り付かれてしまいがちだけど、それにも限度があるもんねえ。
だとしたら、判らないヤツは「判らない」とした上で、それでも大丈夫なように自分のほうの仕様を変えて行動した方が効率もいいし、 ストレスも少なくて済むってこと多いと思う。
プライベートな友人だったらまだ性格も好みも判ってるし自分と似た部分があるから対応しやすいけど、 会社みたいな自分では付き合う相手を選択出来ない場所ではどんな人が目の前に現れるか判らないものね。
だとしたら、あまりにも自分の考えに固執するよりも相手に合わせつつ、 その中で自分の要求を何気な~く通すすべを身につけた方が効率的だと思う。
まあ、これが言うよりも難しいから大変なんだけどね^^;

ただ、全体的な印象としては「判る、判る」という感じだったけど、けっこう事例が多いので段々「物わかりが良すぎませんか?」 とも思えてきてしまった。
う~ん、読者というのは我が儘なものだ(笑)


<関連サイト>
「R's factory」(ご本人のWebサイト)
「きたみりゅうじのブルルンバイク日記」Clubman web内連載4コママンガ)

近藤史恵『桜姫』

  • 2005/12/17(土) 11:50:24

桜姫
近藤 史恵
近藤史恵/桜姫

内容(「MARC」データベースより)
歌舞伎役者の跡取として期待されていた兄・音也を絞め殺す夢に苦しめられる妹・笙子。成長した笙子の前に、 音也の親友だったという若手歌舞伎役者・市川銀京が現れるが…。書き下ろし歌舞伎ミステリ。

養成所出身の大部屋歌舞伎役者・瀬川小菊と彼の大学時代の友人で探偵の今泉文吾が梨園で起こる事件の謎を解くシリーズ第3弾。

ミステリーなのかな、これって。
確かに「謎」は存在するし、死体が出てきたり、最後には謎解きもあるからミステリーの形はしているのかもしれないけど… その全体的な姿は私にはどちらかというとラブストーリーに近い感じがした。

誰かが誰かを捜している物語。
誰かが誰かを見つける物語。

その捜す過程からはラストが全く想像出来なかったので、回答が出た(見つかった)ときはビックリした。
近藤史恵さんってこんな風に引っ張って引っ張ってラストに意外な展開を準備しておいてくれる物語が上手いと思う。

ただ、この内容だと今泉の立場はどうなるの?って感じがしちゃうけど(笑)
「いつになったら出てくるの?」と思ってたら、殆ど活躍するスペースもなくただ結果を報告する人だったので驚いてしまった。
それから、芝居小屋の中で死んでいた彼とその周囲の人たちの部分と、本筋の物語との関係性もなんとなくよく判らなかった。
何故あの事件がこの物語の中にあったんだろう。

それよりも何よりも、主役の一人である銀京が一番不思議。
彼の意図とか性格が最後まで把握出来なくてずっと据わりが悪かった。
まあ「いい人」か「悪い人」かハッキリしろというのも乱暴な話ではあるけど、でも物語の中で笙子が「何故?」 と思う以上に読者には銀京の心の内が見えないわけだから、もうちょっと彼の行動の意味が判るように書いてある部分が欲しかったかな。

でも物語全体に漂う少々陰鬱な雰囲気が私はけっこう好きだったし、謎(秘密)が明かされた後その鍵によって全ての疑問がスルスルと解けていくさまが心地よかった。

だから、最初からある特定の人物が探偵役として出てくる(であろう)ミステリーとかっていう思い込みがなく読めた方が単純に面白いと思えたかも。

ところで、この作品のタイトルは何故『桜姫』なんだろうと読んでいる間ずっと疑問だった。
確かに、銀京や小菊たちが「勉強会」の名目でやる舞台の演目が「桜姫」ではあるんだけど、それだけじゃないはず。

実は「桜姫東文章」は私が一番好きな歌舞伎作品。
(知ってる作品数自体、たいした数じゃないけど)
あまりにも奇想天外、波瀾万丈な物語で最近のドラマなんて目じゃないよ、って感じ。
(詳しいストーリーは「じゃわ's じゃんくしょん」さん内のこちらのページを参照してみて下さい)
これを見ると「南北ってすごい戯作者だなあ」と思うと同時に、こんな芝居を上演することを許していた200年前の日本ってのもスゴイと思う。

で、そのスゴイ歌舞伎作品のタイトル(というかタイトルロールのお姫様の名前)が何故この物語に付いているのか判らないまま読み終わったんだけど、そのあとふと「桜姫は生まれ変わりだ」ということを思い出した。

…!
なるほど…。


<関連サイト>
むくいぬ屋仮宅(著者ご本人のブログ)

古田敦也『古田のブログ』

  • 2005/12/15(木) 11:47:28

古田のブログ
古田 敦也
古田敦也/古田のブログ昨日購入。
今朝通勤電車の中で読んでいたんだけど、写真が多いのでちょっと恥ずかしかった(笑)
(別に恥ずかしい写真が載ってるわけじゃなくて、後ろとかから見られて「こいつ、何読んでるんだ?」って思われそうだった、って話)

'04年12月25日の練習から'05年11月1日の「Fプロジェクト」までのエントリーと、吉田淳也ブログ、監督就任直前 ('05年9月13日~10月17日)までのアップできなかったシークレットブログ、 そして30ページ以上に渡るロングインタビューという構成。

全体的な感想は、「ま、こんなもんかな」って感じ。
期待していた以上でも以下でもなかった。
(って、別にけなしているわけではありません、念のため^^;)
そりゃあ、その内容の3分の2くらいは既に読んだことあるんだから当然といえば当然。

ブログのエントリーの部分は(文字色こそ黒一色だけど)文字の大きさや太さ、写真の配置などはほぼ忠実に再現されているのが好印象。
あと、エントリー内でリンクを貼っている箇所は、文章の下にリンク先のアドレスが書いてあるのも親切だった。
ブログのエントリーには書いた当時の印象や裏話を古田氏自身がコメントした「FURUTA MEMO」や、そのエントリーに登場した人々 (スワローズの選手や奥様、So-netの担当者など)のコメントといったオマケ付き。

実は私が一番楽しみにしていたのは「シークレット・ブログ」だったんだけど、これは今ひとつだったかな。
『シークレット』なんていうからもっとディープな話が読めるかと期待していたんだけど、 けっこうアッサリ風味でちょっと肩すかしをくらった感じ。
まあ、考えてみればこれで辞めるわけではなくて逆に始まるわけだから、 過ぎた話とは言えそんなにセキララに語るなんて出来るわけないのは当然だと思うけど。
なんか、ブログを読んでいてすごく身近にいる人のような錯覚に陥ってしまっていたのかも^^;

反対に良かったのはロングインタビュー。
古田氏のクレバーで常識人な部分がよく出ていて面白かった。
このくらい密度が濃い話がもうちょっと多ければ良かったんだけどな。

「選手兼任監督」ってのは賛否あると思うけど、 でもそれをやりたいと思っても出来る人は滅多にいないわけだからやってみてもいいんじゃないの?と思うけどな。
どんな試合をやってくれるのか楽しみ!
来年一年、身体に注意して頑張って下さい♪


<参考ブログ>
「古田敦也公式ブログ」

富樫倫太郎『妖説 源氏物語〈弐〉』

  • 2005/12/13(火) 11:34:54

妖説 源氏物語 弐
富樫 倫太郎
富樫倫太郎/妖説 源氏物語〈弐〉

出版社 / 著者からの内容紹介
光源氏の子・薫中将は自らの出生を悩む日々を送っていった。そんなある日、匂宮からある相談を持ちかけられる。 それは知人が貰った妖しい 「玉手箱」についてだった…!! シリーズ第二弾。

すごく読みやすくて面白かった。

第1巻を読んだときはイメージしていた内容と違ったのでちょっと肩すかし食ったような「あれ?」って感じの読後感だったんだけど、 "これはこういう作品なんだ"と判って読んだ今回は作品全体の雰囲気をそのまま楽しむことが出来た。

源氏物語(宇治十帖)の筋に沿いつつ、過去の話も織り込んで、更に原作とは全く違う人物が出てきて新しい物語が展開されているというなんだか不思議な世界。
でも、そのいろんな世界がバラバラに存在しているのではなく、ちゃんと一つにまとまっていてしかもおおもとの「源氏物語」(の人間関係)も判るようになっている構成がスゴイなあ、と思う。

今回の主役は博打ばっかりやって借金しまくっている不良皇族の匂宮くん。
ま、彼も彼なりの悩みがいろいろあるみたいだけどね…もうちょっと節制したほうがいいのでは。
そんな生活してるから猿田大納言みたいなヤツにまとわりつかれちゃうのよ(笑)

とは言え、確かに成り上がりでケチな猿田くんはあまり好ましい登場人物ではないけれど、「たまたま金持ちに生まれただけで、何の苦労もしないでふらふら遊び歩いている」匂宮が嫌いだって気持ちは判る気がする。
でも、残念ながら匂宮くんは主役だからね、猿田くんには勝ち目はないということで。

第3巻は薫が宇治の姫君たちに会って恋に悩む話が中心になるのかな。
あのウダウダ状態をどんなふうに表現してあるのか。

更には裏表紙のあらすじによると、「白鴎の力を借りて柏木と対面する」というスゴイ展開も待っているらしい。
楽しみ~♪

山本一力『深川黄表紙掛取り帖』

  • 2005/12/11(日) 09:55:58

深川黄表紙掛取り帖
山本 一力
山本一力/深川黄表紙掛取り帖

内容(「MARC」データベースより)
深川の薬売り蔵秀が日本橋の雑穀問屋から厄介事の解決を頼まれた。仲間と4人で各々の得意仕事を生かして行う裏仕事が始まった…。 元禄版請負人の連作短篇集。『小説現代』掲載。

面白かった。
とにかく上手い。

普通こういう「厄介事を解決」っていう話だと「必殺○○人」みたいな超法規的手段での解決物語なことが多いけど、 これは人を傷つけたり殺したりすることはもちろん、その手段全てを(少々ズルイ手は使うものの) 法律の範囲内で納めているところが却って新鮮。
しかもその方法がまたかなり凝っていて、それを成功させるための下準備の描写がすごく丁寧なのもいい。
(あまりにも手が込んでいて何をやってるのか時々判らなくなってしまうこともあったけど^^;)

一つ一つの物語が短篇として成立しているのと同時に、その結果が後に続く物語に受け継がれ全体で一つの長編のようにも読める構成。
よくある構成だけど、その繋ぎ方が上手いのでどの物語も興味深く読めたし、 その中で変化していく蔵秀を始めとした4人の仲間たちの関係も丁寧に描かれていて面白かった。

また脇役、特に蔵秀の父親の雄之助(「山師」だっていうから信用できない職業の人かと思ったら、本来的な意味での「山師」だった(笑) ) とか船宿の主人の善右衛門が味があって良かった。

ただ、その前の話まで蔵秀たちと遺恨が残ったままだった紀文と仲が、 ある登場人物の出現で急に上手くまとまって大団円になる最後の部分がちょっと唐突な印象。
確かにその人物は非常に魅力的に描かれていたので「その人物が認めるなら…」と紀文が考えたのかもしれないけど、 その辺が上手く伝わって来なかった感じ。

これってもしかしたら、実は紀文の中には蔵秀に対するこだわりが残っていて、この後も「つづく」ってことなのかも。
それはそれで楽しみだな。

北森鴻『螢坂』

  • 2005/12/08(木) 09:49:47

螢坂
北森 鴻
北森鴻/螢坂

出版社/著者からの内容紹介
カウンターでゆるり、と時が流れる。≪香菜里屋≫に今日もまた、事件がひとつ。
わだかまっていた謎が、旨いビールと粋な肴で柔らかくほぐされる。
それが当店の「陰謀」なんです。

三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」を舞台にした短篇ミステリーシリーズ第3弾。

シリーズものを連続で読むときの私の悪い癖がまた出てしまった。
途中までは「面白かった!さあ、次だ!」と読んでいるくせに、作品が重なってくると急激に飽きてしまう、というか、 なんとな~くアラばかりが見えるようになってしまうのだ。

このシリーズも久しぶりに読んだ前作 『桜宵』は「面白い」と思えたのに、その勢いでこれを読んでみたら登場人物の暗さばかりが目について今ひとつ楽しめなかった。
それに、なんだかだんだん工藤の謎解きが神がかり的になってきているのも気になったかな。
特に表題作である「螢坂」の推理なんか、何故あそこまで行き着くのかが判らないなあ。
洞察力が鋭いってレベルの話じゃない気がするんだけど。

香菜里屋で出てくる料理の描写は相変わらずお見事。
「食べてみた~い!」と思わせる魅力充分。

この描写とミステリーを融合させている手腕は素晴らしいと思うんだけど、出来れば私はもう少し明るくて軽い物語を読みたいなあ。

■『桜宵』の感想は こちら

浅田次郎『沙高樓綺譚』

  • 2005/12/03(土) 09:44:52

沙高樓綺譚
浅田 次郎
浅田次郎/沙高樓綺譚

内容(「MARC」データベースより)
各界の名士たちが集う「沙高楼」。世の高みに登りつめた人々が、ミステリアスな女装の主人に誘われ、秘密を披露しあう。 稀代のストーリーテラーによる息を呑む驚愕の物語。

浅田次郎の作品は決して嫌いではないどころか、かなり好き、なのだけれど、本屋で新刊(文庫) を見かけてもその場でパッと手が伸びる場合と、しばらく考えて「う~ん…やっぱりいいや」と保留にしてしまう場合がハッキリ別れる。

敬遠してしまうのは「壬生義士伝」のような長編の感動もの(読むのに体力・気力が必要そうなのでなかなか思い切れない)とか、 現代物のちょっと切ない系短篇集(巧すぎる文章で書かれるリアルな切なさがちょっと苦手)など。
反対に大好きなのは「天切り松」シリーズとか、「きんぴか」などの、 掛け値なしに切ないけど舞台が自分のいる場所とは離れているから多少落ち着いて読める、とか「こんなことあるわけないよ」 な荒唐無稽な設定の中で大笑いさせたあとにホロッとくる作品。
そんなふうにちょっと作品との距離感があってしかも短い作品でないと、あまりの文章の巧さに引きずられてしまいとても気疲れしてしまうのだ。

そんな私にとってこの「沙高樓綺譚」は久々に出会った「出たらすぐ読みたい」浅田作品だった。

今は引退した刀剣の鑑定士が、その世界の宗家を継いだ昔なじみと偶然出会うことから始まる。
宗家は彼をある高層マンションの最上階に案内する。
そこに掲げられた扁額の名は『沙高樓』。
現実離れした空間に集まっているのはいずれも様子のいい紳士・淑女ばかり。
何が始まるのか知らされていない元鑑定士の前に現れたオーナーは派手なドレスに身を包んだ大柄の婦人-いや、それは紛れもなく男性であった。
彼(女)の一言でその夜の宴の幕が切って落とされる。
「沙高樓へようこそ-」

その秘密のサロンに集まった人々の中からその夜選ばれた5人によって語られるそれぞれの物語の広がり、深み、不思議さ、美しさ、危うさ…。
人間の心に潜む深い闇を描いた心理描写ももちろんだけれど、 彼らの職業に対する深い知識と理解に基づくさりげない描写がその物語に力を与えていた。

巧いと思うのは、この物語をいきなり「沙高樓」からではなく、そこには全く関係のない一人の男の視線から始めていること。
彼が戸惑いながらゲストとしてその場違いな場所に身を置き、現実離れした不思議な物語に耳を傾ける。
その彼の目を通して私たちは沙高樓を見、彼の耳を通して5つの物語を聞く。
彼こそが私たち読者の視点であり、彼の感じる戸惑い、怯え、苛立ち、疑問、理解などの感情はそのまま私たちがそこに感じるものなのだ。

ただ5人の物語を聞く(読む)だけでも充分楽しめるけど、実際に自分もあの現実離れした「沙高樓」 という空間に一緒にいるような気分にさせてくれるこのちょっとした設定がとても効果的だった。

お話しになられる方は、誇張や飾りを申されますな。お聞きになった方は、夢にも他言なさいますな。あるべきようを語り、 巌のように胸に蔵うことが、この会合の掟なのです-

沙高楼綺譚 草原からの使者
浅田 次郎
浅田次郎/沙高楼綺譚 草原からの使者続編も出ているみたいなので早速図書館でチェックだ!

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