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◆Date:2005年06月
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火坂雅志『骨董屋征次郎手控』

  • 2005/06/25(土) 08:22:41

骨董屋征次郎手控
火坂 雅志
火坂雅志/骨董屋征次郎手控時は幕末。
征次郎は訳あって生まれ故郷の金沢を離れ、京都は東大路 夢見坂で骨董屋「遊壺堂」を営んでいる。
ある日征次郎の店に品のいい武家の妻女と見受けられる女が現れ、一つの茶入れの鑑定を依頼する。
征次郎には一目で「名品」と認められる作品だったが、女は何故かそれに困惑し茶入れを征次郎に預けたまま帰ってしまう。
数日後、茶入れを返してくれとの女からの便りを受け取った征次郎は約束の場所に出向くが、そこで見知らぬ武士にいきなり斬りつけられる。

骨董という"魔"に魅入られた人々が「遊壺堂」に持ち込むいわくつきの品々と人間模様を、闇の顔を持つ征次郎が読み解く連作短篇。


この著者の作品は以前 『美食探偵』という作品を読んだことがあってそのときの感想が「イマイチ…」だったのでこれを買うときも 「どうしようかな~」とちょっと躊躇したんだけど、今回は買って正解。
面白かった。

前の作品は『美食探偵』なのに他の要素が多すぎて肝心の<美食>についての記述が割とサラッと流されていたのが不満だったけど、 こっちは<骨董>というモチーフがきちんと物語のなかで生かされていたし、 人に言えない過去を抱えながら京都で若いながらもひとかどの骨董屋の主として名品を扱う征次郎のキャラクターもいい。
更に短篇として独立していながらも前に出てきた登場人物や状況をその後の物語にも生かすことで作品全体のまとまりもあって読みやすかった。

ただ、京都の「遊壺堂」を舞台にして訪れる客や同業者たちちと征次郎のやり取りが中心に描かれる前半はよかったけど、 あるきっかけから新選組から追われる身になり京都を離れ、更には故郷 金沢(加賀藩)で藩ぐるみの悪事に巻き込まれる (と言うか首を突っ込んでいく)展開にまでなってしまう後半は話が広がりすぎてちょっと違和感。
元々そういう展開にするために征次郎の過去をああ設定したんだろうけど… 私は別に歴史的な登場人物が出てこなくても世を動かすような大きな事件が起きなくても充分面白い題材だと思うんだけど。

この作品の最後では加賀藩での騒動も収束、時代も江戸から明治へと変わり晴れて京に戻った征次郎が「遊壺堂」を再開し 『ここがおれの居場所だった』と思いを新たにするところで終わり、更にその後続編が出版されているとのこと。
時代が明治になってしまうのはちょっと残念だけど続編では京都を中心にした物語が読めることを期待したい。


■『美食探偵』の感想はこちら

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出久根達郎『御書物同心日記<虫姫>』

  • 2005/06/23(木) 08:15:50

御書物同心日記 (虫姫)
出久根 達郎
出久根達郎/御書物同心日記<虫姫>将軍家の蔵書を守る御書物方同心 東雲丈太郎の周囲で起こるちょっと変わった出来事をまとめた同名シリーズの三冊目。

相変わらずゆるゆると過ぎていく丈太郎の日常が淡々と描かれている。
今回は多少丁々発止のやり取りがあったりするけど、それでも他の「捕物帖」なんかに比べたら大人しいものでしょう。
その「なんでもなさ」が私は好きだなあ。

丈太郎を始めとして、御書物方の厳格な上役やちょっととぼけた同僚、家族のように親しくしている行きつけの古本屋の家族や使用人、 芝居好きで洒脱な養父に友人のようなお付きの小者…そうした登場人物たちとの穏やかな気の置けないやり取りと、 その中で丈太郎が見せる相手への気遣いがとても心地よかった。
御書物方同心の仕事の内容や、江戸の風物などもさりげなく、それでいて判りやすく書いてあるのもいい。

ワクワクドキドキはしないけれど、安心して読めるシリーズ。
これからもじみ~に(笑)続いていって欲しい。


<よろしければこのシリーズの別作品の感想もどうぞ>
『御書物同心日記』
『続御書物同心日記』

浅田次郎『珍妃の井戸』

  • 2005/06/19(日) 08:12:17

珍妃の井戸
浅田 次郎
浅田次郎/珍妃の井戸1902年、イギリス海軍提督ソールズベリーは2年前に起こった義和団の乱を鎮圧した八ヶ国連合軍の掠奪の実体を調査するために清国に派遣された。
王族の一人載沢殿下の舞踏会に招かれた彼は、そこで出会った謎の貴婦人から驚くべき事実を告げられる。
混乱のさなか、皇帝の寵愛した美しい妃が何者かによって紫禁城内の井戸に頭から投げ込まれ命を落としたというのだ。
この事実を聞いたソールズベリーはドイツ、ロシア、日本の高官とともに、秘密裏に妃の死の真相を探り始める。


ああ、こういう話だったんだ。
タイトルもそれっぽいし、帯や裏表紙に「『蒼穹の昴』に続く~」と書いてあったりしたこともあって「同じ中国の話なんだな~」 とは思っていたけど、ここまで密接な関係の話だとは思わなかった。
『蒼穹の昴』の中にいた馴染み深い名前の登場人物がたくさん出てきていた。

でも、物語の構成は『蒼穹の昴』とは全く別物。
前作は正統派の大河歴史小説であったのに対し、この作品はミステリー仕立て。
混乱の最中に不審の死を遂げた皇帝の美しい妃<珍妃(チェンフェイ)>。
彼女を殺した犯人を捜す日英独露の高官4人に、事情を知る人物が証言する形で進んでいく。

それぞれの立場、視点、思惑の違いによって万華鏡のように変わっていく証言と、 それに振り回され次々と証言者を求めて危険な場所に入り込んでいく4人の高官たち。

証言者の独白の形で書かれた証言の部分は芥川の『藪の中』 のスタイルを彷彿とさせるけれど、 その前後に配された探偵役の4人がその証言を巡って意見を交換する様子や微妙な関係を通常の文章で描くことでもっと馴染みやすく判りやすくなっていた。

全体的にとても面白く読んだのだけれど、最初の設定(「何故この事件がそんなにも各国高官にとって重要だったのか」 「何故この4国の高官が集まったのか」)がかなりサラッと流されてしまっていて今ひとつ納得出来ないままになってしまったのが残念。
全ての登場人物はそれぞれの立場の象徴であったのだろうとは思うのだけれど…。

最後に出てきた珍妃から皇帝への心情の告白は残念ながらあまり好きじゃなかったな。
その前で終わっていた方が綺麗だったと私は思う。

池上永一『バガージマヌパナス-わが島のはなし』

  • 2005/06/14(火) 08:07:46

バガージマヌパナス―わが島のはなし
池上 永一
池永永一/バガージマヌパナス-わが島のはなし沖縄の小さな島で産まれ育った綾乃は19歳。
人目を惹く美しさと頭の良さを持ちながら怠け者でものごとを深く考えることが嫌いな綾乃は、 のんびりした島民でさえ顔をしかめるほどの自然児だった。
そんな綾乃を理解してくれるのは86歳の大親友オージャーガンマーだけだったが、 綾乃にはなんの不満もなくこの生活がずっと続けばいいと願っていた。
ある日、綾乃の夢の中に神様が現れ「ユタ(巫女)になれ」と告げる。
修行などまっぴらな綾乃は必死で抵抗するのだが…。

第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。


全編にあふれる沖縄の方言、豊かな自然、風習そして生死観…。
こういう物語を読んでいると今は同じ日本だけれど、あの島々は日本(ヤマト)とは全く別の誇り高い文化を持つ一つの「国」 なんだなあと強く思う。

その想像も出来ないような自然の中で産まれ育った少女・綾乃の魅力的なこと!
私もたいがいグータラな性格で、出来ることならば何もしないで暮らしたいことだよと夢想したりはするけれど、 その実本当にそんな環境に置かれたら不安で仕方なくなるであろうことも知っている。
それに比べて綾乃のグータラさは感動的ですらある。
なんと言っても、神様が何度も出てきて「ユタになれ!」とお告げを授けているのに、「面倒だからイヤだ!」 と思うあまり考えることを拒否して一晩寝たら忘れてしまうのだ。
そしてそれを繰り返した結果、最後には〈神罰〉を受けることになる。
「面倒なことはイヤだし、そんなこと自分には出来ないから」と拒否することは想像できるけど、 そんな重要なことをすぐに忘れてしまうという綾乃の徹底ぶりが素晴らしい。

そんな彼女の行動に遅れずに着いていくどころか、時として彼女よりもパワフルで行動力のある年の離れた大親友オージャーガンマー。
こんなオバァの存在は他ではちょっと考えられない、とても印象的な登場人物。
二人の友情物語は明るく楽しく、そしてとても切なかった。

それからオージャーガンマーとは別の意味で印象的だったのは、綾乃の敵役となる先輩ユタのカニメガおばさん。
信仰心が篤く有能だけど"がめつい"ため島の人々から敬遠されているカニメガと綾乃の闘いは真剣だけどどこかユーモラス。
その闘いのうちに知らず知らず小さな友情の芽が育っていく様子も印象的だった。

そして「ユタはなぜ拝むのか」の答えを見いだせずに相変わらず適当な毎日を送っている綾乃に神様が見せた回答。
とても単純だけど、どんなに宗教が違っても神様が変わっても「祈り」 という行為の一番根源にあるのはこういうことだよねと納得できる答えだった。

なんだか全体的にシリアスなのかコメディなのかよく判らないところをフワ~ッと漂っているような不思議なお話だったな。
それなのに何故か心に沁みる…もしかしたらそれがこの島の雰囲気なのかな~、と沖縄に行ったことのない私は思ったのでした。

大森望 豊由美/文学賞メッタ斬り!

  • 2005/06/10(金) 09:38:55

文学賞メッタ斬り!
大森 望 豊崎 由美
大森望 豊由美/文学賞メッタ斬り!

出版社/著者からの内容紹介
業界騒然!読書家待望! 小説が100倍楽しくなる痛快文学賞ガイド

文学賞ってなによ? 芥川賞・直木賞から、話題のホラー小説大賞、メフィスト賞、ファンタジーノベル大賞まで、 50を越える国内小説賞について、稀代の読書家大森望・豊崎由美の二人がアンタッチャブル徹底討論!
WEBマガジン「エキサイトブックス」で一大センセーションを巻き起こした掟破りの言いたい放題がさらにパワーアップ。
最新受賞作全採点「文学賞の値うち」付き。
読む前に、読むべし!

面白かった~!

大森氏が巻頭の「はじめに」で

あくまでも、三度のメシより小説が好きな男女が語る、「小説好きによる小説好きのための小説賞ガイド」だと思って下さい。

と書いている通りの内容だった。

とにかく大森・豊両氏の文学賞のあり方や審査員、受賞者、受賞作に対する忌憚のない発言の数々が楽しい。
(特に審査員への審査態度や講評への発言は…!^^;)

私は本を読むのは好きだけど、文学賞については特に興味も知識もないので殆どの内容は「へえ~」「そうなんだ~」 というレベルでしか読めなかったけど、盛り上がっている二人の会話を読んでいるだけで楽しめた。
ここまで何かについて熱く語ることはよっぽどその対象物に「愛」がなければ出来ないと思うなあ。
特に殆どの賞の受賞作とその著者についてお二人ともきちんとその作品を読まれた上で自分の意見を持って批判なり評価なりしている姿勢は素晴らしいと思った。

福田和也氏著『作家の値うち』の評価基準を使った巻末付録「文学賞の値打ち」(03年8月までに決まった主な文学賞作品に両氏が採点・ 寸評したもの)も面白かった。
10点の作品とかがあるんですけど…^^;
(ちなみに29点以下は「人前で読むと恥ずかしい作品。もしも読んでいたら秘密にした方がいい。」作品らしい)

しかし、この中には全部合わせるとかなりの数の受賞作が出てくるんだけど、 その中で私が読んだことがあるのは10作前後くらいしかなかったような…。
(作家数にしてもそうは変わらない)
いくら文学賞に興味がなくても本好きとしてこれでいいのか?!と反省したのでした^^;
もうちょっと頑張ろう。


<関連サイト>
「大森望 豊崎由美 スペシャルインタビュー」excite books内)

恩田陸『蒲公英草紙-常野物語』

  • 2005/06/05(日) 09:35:19

蒲公英草紙―常野物語
恩田 陸
恩田陸/蒲公英草紙-常野物語県の南端にある小さな集落・槇村を収める大地主槇村家。
代々その槇村家の土地を借りて住んでいた医者の娘・峰子は10歳の年から数年間を生まれつき心臓が悪く外で遊ぶことも出来ない末のお嬢様・ 聡子様の話し相手として槇村家のお屋敷に通うことになる。
殆ど寝たきりであるにも関わらず明るく、聡明で、美しく、誰をも惹きつける魅力を持った聡子を始めとする個性的な槇村家の家族、 槇村家に寄宿する様々な客人たち、そしてある日突然屋敷にやってきた不思議な能力を持った一家…。
20世紀(にゅう・せんちゅりぃ)を迎えたばかりの小さな農村を舞台に子供から少女へと成長する過程で峰子が経験した出会いと別れの物語。


不思議な能力を持つ「常野」の人々を描いた 『光の帝国-常野物語』の続編。
今回は長編です。

槇村家で過ごした年月を『蒲公英草紙』と自分で名付けた日記をもとに峰子が回想するかたちで綴られた物語。
年老いた峰子の柔らかく丁寧な語り口とゆったりとしたリズムが心地いい。

また「常野」の家族が物語のキーワードとして重要な役割を担っていながらも、 決して突出することなく全体の中の一つのパーツとして物語の中に溶け込んでいるそのバランスもとても読みやすかった。

それはそのくらい槇村家を囲む人々(家族、使用人、客人たち)もまた個性的で、懐が深い人々として描かれていたということ。
それぞれの心に新しい時代への期待と不安を抱きながら、ぶつかり合い、でも相手を思い遣る心も忘れない…そんな心優しい人々。

私たちの国にかつてあったゆっくりとした時代、そして峰子自身の「輝く宝石」であった時代への郷愁。

それだけに峰子の「今」を描いた最後の3ページの内容は痛い。
特に最後の2行の問いは、そこからまた先の時代にこうして存在してしまっている私たち(質問は私たちに向けられたものではないけれど) に何が答えられるのだろうか。
もしかしたらその答えは「No」かもしれない。
でも、それであっても今に生きる私たちはその先へも行かなければならないのだから。
もちろん、少しでも「Yes」と言えるようにそれぞれの心に願いながら。

本格ミステリ作家クラブ・編『透明な貴婦人の謎』

  • 2005/06/02(木) 09:32:41

透明な貴婦人の謎
本格ミステリ作家クラブ
本格ミステリ作家クラブ・編/透明な貴婦人の謎泡坂妻夫、鯨統一郎、柴田よしき、西澤保彦、法月綸太郎、はやみねかおる、 松尾由美各氏による短篇ミステリーのアンソロジーに円堂都司昭氏の評論を加えた「本格短篇ベストセレクション」。


いろいろなパターンの短篇ミステリーが味わえるアンソロジー。
大部分が「シリーズもののなかの1編」という作品で「シリーズを読んでいる人には判るよ」的な設定も時々出て来たけど、もちろん 「今回初めて読みました」な読者でもちゃんと物語として成立するように書かれている。
シリーズものだけにキャラクターや物語世界が安定していて読み始めると(たとえ初めて読む作品でも) スルッと入っていけるのでとても読みやすかった。

ただその分「すごく面白かった!」と言うのはなかったかな…。
短篇集だということもあり、通勤時にサクサク読むのが丁度いい一冊だった。

ただ最後に掲載されていた円堂都司昭氏の評論「POSシステム上に出現した『J』」は、 何だか難しくてちょっと私の頭ではついていけなかった…^^;
だいたいこんなところに評論が入っているなんて思ってなかったし。
読んでも読んでも「謎」も「物語」も出てこないから「おかしいなあ」とは思っていたけど、まさか小説じゃなかったとは(笑)


<関連サイト>
「本格ミステリ作家クラブ」
公式サイト

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