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◆Date:2005年05月
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松井今朝子『奴の小万と呼ばれた女』

  • 2005/05/28(土) 09:24:46

奴の小万と呼ばれた女
松井 今朝子
松井今朝子/奴の小万と呼ばれた女大阪でも名の知れた大店のお嬢様(おいとさま)として美しく生まれながら、 男勝りの負けず嫌いな性格と大きな身体で人から常に注目され続けるお雪。
仕組まれた縁談を壊してもらう目的で近づいた身分の違う乱暴者の男に惚れ込み、果ては彼を助けるために角材を手に大立ち廻りを繰り広げる。
そんな彼女を<まっとうな世間>は「奴の小万」と渾名し、人形芝居に登場させた…。

江戸時代に実在した奴の小万こと木津屋お雪の生涯を描く物語。


先に読んだ『非道、行ずべからず』が面白かったので図書館で借りて読んでみた本。

う~ん、こっちは今ひとつかな。

<まっとうな世間>が女に与えた役割を本能的に嫌いそれにひたすら反発することで生を貫いたお雪の生き方は、 200年も前の江戸時代に生きた女性としては特殊なものだったのであろうと思う。
その辺りを彼女が愛した男達を始め、 たくさんの登場人物との出会いと別れを絡めながら生き生きと描写している部分は前作同様非常に面白かった。

ただ、彼女は世間に反発しあくまで自分を貫くことで一体何を得、何をなそうとしたのか。
そこまで激しく世間とぶつかり、好むと好まざるとに関わらず注目を浴び、 家族や使用人に迷惑をかけ心配させた人生の果てにあったものは何だったのか。

「物語」であれば、彼女のつまずきながら傷つきながら生きたその人生の果てに、何か悟りにも似た回答を載せることだろう。
しかし、この作品にはそれがない。
愛する男も、生まれ育った家もなくし、 ただ自分を育ててくれた寝たきりの祖母を抱えて尼に姿を変えて生きていこうと決めた彼女はその後どうなったのか…。
それをこの作品は伝えていない。

もちろん人生の中で何か形のあるものを、しかも他人に認めてもらえるものをしかと残せる人間は一握りでしかないのだろうとは思う。
彼女もまた自分の人生をただ真っ直ぐに生きた一人の女性であったということなのだろう。
彼女くらいの美貌、胆力、財力、包容力があってさえも世間にただの<変わり者>の烙印を押されてしまう。
そしていくら全力でそれに立ち向かおうとしても結局それに勝つことは出来ないのだ。

そこに勝手な思い込みやサービス精神で何かの「意味」を与えることを、著者は敢えてしなかったのかもしれないが… 私にはそれがちょっと不満だった。

それに、とにかく彼女の男の趣味が悪すぎるっ!(笑)
(いや、他人の男の趣味に口出すのは野暮だと判ってはいるけど)
何だってあんなしょーもない男ばかり好きになって、しかもその相手が悪い方へ転がる手助けになってしまうような関係しか作れないのかなあ…。
友人とか信頼できる人とかはみんなちゃんとした人なのにね。
人の好みは自分でコントロール出来ないってことかな。
まあ、だからこそ人生は面白いのかもしれないけれど。

現代の大阪の地下街で偶然見つけた古書店で手に取った一冊の和綴じ本から物語が始まり、またそこに戻ってくる構成は面白かった。


<関連サイト>
「松井今朝子ホームページ」
公式サイト

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松井今朝子『非道、行ずべからず』

  • 2005/05/28(土) 09:19:38

非道、行ずべからず
松井 今朝子
松井今朝子/非道、行ずべからず江戸で最大の歌舞伎小屋・中村座が正月早々の火事で焼け落ちた。
役人が来る前に火事場を見に出掛けた小屋の主・中村勘三郎と小屋の使用人たちは、そこで見知らぬ男の死体を見つける。
火事に巻き込まれて死んだとは思えないその男の正体を探るうちに、歌舞伎の名門一家の過去に隠された謎が明かされていく…。


焼け落ちた芝居小屋から発見された男の正体、名門の役者一家の襲名問題に影を落とす出生の秘密、絡まり合う人間関係… と謎が幾重にも重なった物語は奥が深く読み応えがあった。

また、老境に入っても息子に名前を譲らず立て女形として君臨し続ける名優、その跡目を襲おうと火花を散らす二人の息子、 若いながら機転が利いて実直な桟敷番頭の男、ひょんなことから成り上がり今では座の運営に大きく関わっているが嫌われ者の金主、 一座の上演作品を一手に引き受ける穏やかな物腰の座付き作家、 事件の捜査に深く関わっていく万年大部屋住まいでパッとしないオコゼに似た女形、 芝居好きで一風変わった町方与力とその行動に反発を感じながら少しずつ仕事を覚えていく新米与力…などなど多彩な登場人物達も個性的であり、 かつきちんと生活感があるので読み進むうちにそれぞれに感情移入して読めたのが楽しかった。

何より「歌舞伎」と言う独特な世界の住人、それも表舞台に立つ役者の物語だけでなくその裏側でうごめくさまざまな役割の人間達を配し、 その仕事上の役割の説明をきちんと加えながらミステリーとしての面白さも失わない著者の筆力が印象的な作品だった。


<関連サイト>
「松井今朝子ホームページ」
公式サイト

小田部雄次『ミカドと女官-菊のカーテンの向こう側』

  • 2005/05/14(土) 11:43:46

ミカドと女官―菊のカーテンの向う側
小田部 雄次
小田部雄次/ミカドと女官-菊のカーテンの向こう側

内容(「MARC」データベースより)
皇室の長い伝統の中でつちかわれてきた最大の不思議、それが女官制度である。菊のカーテンの向こう側にある秘密のベールの奥を、 皇室研究の第一人者が書き下ろした異色のお局入門書。( 01年6月発行のハードカバーの紹介ページより引用)


タイトルからして、もっとスキャンダル的な要素の濃いドロドロした内容なのかしら?と想像していたのだけれど(笑)、 実際は公的なデータや書籍からの引用、当事者(公的責任者)の証言を多用して天皇の傍近く仕える職業としての「女官」 の制度やシステムの移り変わりを解説した非常に真面目な内容。

でも、だからといって読みにくくはなかった。
人名がかなり多く出てくるし、更には「○○は××の娘で、××は△△の配偶者の兄である」 みたいな血縁関係の記述も多いものだから人名を覚えるのが苦手な私にはどんどん「誰が誰やら?」 な状態になっていってしまった以外は思ったよりもスルスルと読むことが出来た。

明治から現在の皇太子付きの女官まで5代に渡る女官制度について書いてあるが、 そのうちでも個性的な女官個人のエピソードもいくつか入っている。
その中で一番ページを割いていてかつその分量に見合った面白さを提供している明治天皇の女官であった「下田歌子」 についての記述が非常に面白かった。

下田歌子は7年間宮中に仕えた後退官し、結婚。
女子学校を設立するなど女子教育の第一人者となってからも、美子(はるこ) 皇后に寵愛され内親王の教育を任されるなど宮中に深く関わった人物とのこと。
その下田歌子を題材に当時発行されていた『平民新聞』に41回に渡って連載されたと言うスキャンダル暴露記事、『妖婦下田歌子』 の内容が41回分きちんと掲載されている(もちろん、一回につき1~2行の要約だが)のが圧巻。
普段あまりこういうスキャンダル的な内容の話に興味がない私でも思わず本文を読んでみたくなるくらいだった(笑)

他にも初めて民間人として東宮妃(当時)に選ばれた美智子妃と良子皇后(当時)の間の軋轢など、宮中で起こっていた様々なエピソード (そんなに詳細なものではないが)も興味深かった。

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』

  • 2005/05/08(日) 11:40:08

ラッシュライフ
伊坂 幸太郎
伊坂幸太郎/ラッシュライフ「金があれば何でも出来る」と公言して憚らない画商 戸田と理解者を裏切る形で彼と契約した新進の画家 志奈子、 仕事は一人でやる主義の泥棒 黒澤、 新興宗教まがいの集団のトップに心酔している河原崎とその集団のNo2である塚本、プロサッカー選手 青山とW不倫をしているためお互いの配偶者を殺そうと計画している精神科医の京子、 長年勤めた会社をリストラされ40社受験するも未だに再就職先が決まらない豊田…まったく関係のない彼らが、 そうとは知らないうちにすれ違い、交錯し、関係を結んでいく。


面白かった!こんな作品、初めて読んだなあ。

本の中に挿し絵として(ハードカバーでは表紙)エッシャー(M.C. Escher)の騙し絵( 「Ascending and Descending」)が使われているんだけど、まさにこの絵をそのまま小説にしたような作品。  

全てが伏線で出来ている物語、とでもいうのかな。
全ての登場人物が自分のパートでは主役なんだけど、同時に他の登場人物のパートをお膳立てするための脇役でもあるのだ。
それぞれの登場人物がみんな独立してバラバラに存在するのに、 ちょっとした小道具や場所の共有でちゃんと一つの物語としてリンクしていく構成がとても新鮮。
しかもその時系列が、出てくるシーンごとに微妙にずれているのでどことどこが繋がっているのか、 どっちが過去でどっちが未来なのかが判らなくなっているところや、 どんな結末になるのか全く予想できない展開も読んでいてすごくドキドキした。

「陽気なギャング~」の時も感じたけど、伊坂氏の作品って非常に映像的だと思う。
この作品も読んでいると頭の中に仙台駅前の雑踏の中に立っている美人留学生、植え込みをうろつく汚れた老犬、 そしてその周辺を色んな想いを抱えて行き来する登場人物達をとても立体的にクリアにイメージすることが出来た。
(パートによって時間がずれているあたりなんとなく「木更津キャッツアイ」 を思い出してしまったのは私だけ…?)

色んな登場人物が出てくるけど私が好きだったのはまず黒澤。(う~ん、ありきたり(笑))
それから意外なことに京子。
あのあくまでも強気な姿勢がスゴイ。私も少し見習いたいと思う(笑)
(なので最後は残念だった)
あと、豊田のパートに出てきた元の会社の後輩やタクシーの運転手が良かったな。

構成が面白くて意外で楽しくて、しかもそれだけではなく物語としてもちゃんと伝えるものを持っている非常に完成度が高い作品だと思う。
とにかく、色んなポイントで楽しめる作品。オススメです♪
(って私が薦めるまでもない、って感じだけど^^;)

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