ページ内記事タイトル一覧

◆Date:2004年11月
ALL

フリーエリア

テスト中。ここはフリーエリアです。

スポンサーサイト

  • --/--/--(--) --:--:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

北森鴻/孔雀狂想曲

  • 2004/11/20(土) 16:05:31

孔雀狂想曲
北森 鴻/集英社
北森鴻/孔雀狂想曲下北沢の駅から離れた住宅街の片隅にある古道具屋「雅蘭堂」。
この店に集まる数々の道具や美術品を巡る事件や謎を、店主である越名集治(こしな・しゅうじ)が解決する推理短篇集。
表題作を始め「ベトナム・ジッポー・1967」「ジャンクカメラ・キッズ」「古九谷焼幻化」「キリコ・キリコ」「幻・風景」「根付け供養」「人形転生」の8編を収録。



主題になる古道具(または美術品)の選び方がそれぞれ個性的で同じイメージのものがないところとか、その品物にまつわる事件や謎の深さや広がりが短篇として丁度いいところとか、物語の中に骨董商と言う職業の慣習やしきたりなどが何気なく書いてあるところとか…全編を通して、物語巧者で博識な著者らしい楽しい作品集でした。

ただ、一作目の「ベトナム・ジッポー・1967」でお店の客として登場して、その後の作品では押し掛けアルバイトとて居着くことになる女子高生・安積(あつみ)。
この少女の存在が私は苦手でした。

物語の中で彼女は、越名と事件(謎)の関係者だけでは重くなってしまう話に軽さ・明るさを加えたり、越名に違う角度からアドバイスを与えたり話を進展させたり、読者の代わりに疑問を投げかけて物語を判りやすく説明させる、と言った役割を担っています。
そのため「骨董に詳しくなくてあまり頭も良くないけど、勘が鋭く人の気持ちに敏感な現役女子高生のアルバイト」というキャラクター設定です。
私もそこまでなら特に問題がないのですが、「イヤだなあ」と感じたのは彼女が古道具店で働いていながらそこにある「物」(取り扱っているいわゆる「商品」のことです。どういう書き方がいいのか判らないので「物」と書きます)の扱いがぞんざいであると感じられる表現がかなり度々出てくるからなんですよね。
もちろん彼女も元々は何も知らない女子高生だったわけだから最初のうちはそんな状態であってもいいけど、アルバイトとしてそこに通って「物」に実際に触れる、しかも店主である越名はその仕事をただ生活のためお金のためにやっているわけではない、そういう越名に安積も懐いていると言う設定もあるわけだから、その流れとして越名の「物」に対する気持ちが安積にも伝わって少しずつ変わってくる…と言う設定であった方がよかったんじゃないかと思いました。
彼女の越名に対する信頼は物語が進むごとに強くなっているのに、その他の部分ではいつまで経っても殆ど変化がなくて、そのあたりが何だかとてもアンバランスに感じました。
著者としては「いつまでも変わって欲しくない」って気持ちの表れなのかなあ。

それ以外は分量も丁度良くて読みやすい作品集でした。
特に丁寧に書き込んだ流れの最後に何度も意外な展開が準備されている「根付け供養」は一番印象に残りました。

スポンサーサイト

舞城王太郎『みんな元気。』

  • 2004/11/14(日) 15:50:55

みんな元気。
舞城 王太郎/新潮社
舞城王太郎/みんな元気。目が覚めると隣のベッドに寝ていた姉のゆりちゃんの身体が15cmほど宙に浮いていた。
翌朝家族で話をしていたら妹の朝ちゃんも空を飛べるらしい。
その朝ちゃんが突然やって来た「空飛ぶ家族」に連れ去られてしまう。
代わりにうちにはその家族の一員だった昭が残された…。

表題作を始め「Dead for Good」「我が家のトトロ」「矢を止める五羽の梔鳥」「スクールアタック・シンドローム」の5作を収録した短篇集。



本屋さんで新刊の棚を見て歩いていたら目に入ってきたこの本。
「お、オウタロウの新刊が出てるじゃないですか」と手にとってパラパラ。
表題作の冒頭、主人公の枇杷(びわ)が空中に浮かんでいる姉のゆりを発見したときの感想、その後の両親との会話、…ページ数にして約3ページくらいを読んだのですが、ビックリでした。

その文章のテンポがとにかくすごく快感で、文章が途切れることなく頭の中にスルスル入って来るのです。
それは言葉の意味や内容がどうこうと言うことではなくて、ただリズムとかテンポとか音楽的な快感だったんですよね。
全身がブワッと鳥肌立つ感じ。
本当は「もっとこのまま読んでいたい!」と思ったのですが、私は本の立ち読みは殆どしないのでそうしている自分の状態を気持ち悪く思ってしまったせいもあってその場は何とか本を閉じてそれを買って帰ってきたのでした。

で、そのまま家に帰ってきて読み始めればその続きを体験出来たのかもしれないのですが、あいにくその先を読み始めたのは次の日。
私の魔法は既に切れてしまっていたようでした。

その後は、最初読んだときに感じたあの快感は何だったの?と思うくらい、普通の感覚しか持てませんでした。

舞城作品を読むのは『阿修羅ガール』以来なので約2年ぶりです。
その間の作品を読んでいないので、この作品が最近の舞城氏の傾向なのかそれとも違った内容なのかは判らないのですが、少なくとも私には『阿修羅ガール』までに読んだ4作の作品から抱いていた「舞城王太郎」と言う作家のイメージからはずれてきているように感じました。

もちろん、私のイメージに合わせて作品を書いているわけではないし(当たり前!)、私が読んでいない間も精力的に新作を発表されているのですからその中で作品の傾向や表現方法、主張が変わってくるのは当然だろうし、逆に私の感じ方の方が変わったのかもしれないのですが…デビュー作『煙か土か食い物』を読んで「すっご~いっ!」と感動して熱に浮かされたような感想を書いた私としてはちょっと哀しい気分になってしまったのでした。

この本にも全ての作品で暴力的なシーンが入っています。
バイオレンスシーンはあまり得意でない私ですが、舞城作品ではそういうシーンを読んでもそんなに嫌悪感を感じたことはありません。
この点はこの本も同じでした。
ただ、以前の作品ではそこから必然であったり言葉に置き換えることの出来ない想いが伝わってきたのに対して、今回の作品群のシーンではただそういう表記がそこにあるという感想しか持てなかったんですよね。
非常に失礼な言い方をしてしまえば「作品を舞城王太郎風にするために書いてある」としか感じられませんでした。
後半はそうしたシーンが影を潜めてしまった「スクールアタック・シンドローム」の当たり前な父子の物語な感じが、却って新鮮に思えました。

もしもこの作品が最初に読んだ舞城作品だったとしたら、他の作品を読もうとは思わなかったでしょう。
全体的にはそんな感想しか持てなかった、それだけにあの最初の3ページを読んだときの高揚感は何だったのか、それがとても気になります。

糸井重里『ほぼ日刊イトイ新聞の本』

  • 2004/11/09(火) 15:44:16

ほぼ日刊イトイ新聞の本
糸井 重里/講談社文庫
糸井重里/ほぼ日刊イトイ新聞の本
開設から4年。
今や1日100万アクセスの超人気Webサイトに成長した「ほぼ日刊イトイ新聞」。
その誕生と成長のヒミツを主催者の糸井さん自身が書き下ろした<早すぎる社史>。



同じ糸井さんの『インターネット的』を読んだときも思ったのですが、この本も読んでいて元気になれる本でした。
もちろん会ったことも話したこともないけど、イトイさんを始めとしてこの本に関わった色んな人から「頑張れ!」って言って貰えたような、そんな気持ちになりました。
それはイトイさんがこれらの本をあくまでプラス思考で書いているからだと思います。

この本はタイトルからも判るように全編イトイさんが主催している「ほぼ日」についての本なのですが、私にはインターネット、Webサイトの話を書きながらそれよりも大きなステージ、仕事や生活や人生に立ち向かうときの姿勢や考え方を提案してくれている本のように思えました。
色々な状況の中でその「不安」や「不満」や「不信」などのマイナス部分ばかり数え上げて嘆いていても事態が好転することはありません。
だったらその状況を楽しもう!楽しくないなら自分で楽しくしてしまおう!と言うのが、この本を通じてイトイさんが私達に伝えたかった事なのではないでしょうか。

一つの時代を経て、空虚な生活の中で「何か」を探していたイトイさんが出会った「インターネット」と言う可能性。
その可能性に全てを注ぎ込み、大切に育て上げた結果が現在の「ほぼ日刊イトイ新聞」の姿なのですから、説得力ありますよね。

どうせ生きていくなら難しい顔して下向いているよりも、ちょっと無理しても上向いて笑っていた方が楽しい。
そしてそうしていればそれに応えてくれる人に必ず出会える、そんなメッセージを受け取った気がします。

内容も良かったのですが、イトイさんの文章もとてもいいです。
サラッと書いているけどとても判りやすいし、何より攻撃的な表現がないのでとても気持ちよく読めます。
もちろん内容的には(イトイさんにとって)いい話ばかりではないのですが、イヤな事があっても相手の立場を理解しようと努めつつ冷静にその内容を記録に留めようとする姿勢にとても刺激を受けました。


折しも本日、申し込んでいた「ほぼ日手帳2005」を『発送しました』とのメールを受信しました。
(このメールの内容も簡潔かつ丁寧、そしてどことなく親しみを感じるいい文章です。こういう文章が書けるといいなあ)
この本の内容の流れの先にあるものとしての「ほぼ日手帳」と、このタイミングで出会えたことに何となく運命的なものを感じたりして(大袈裟?(笑))。
もうすぐ手元に届くであろう新しい手帳と一緒に前向きな楽しい1年を過ごせればいいな、と思ってます。

ほぼ日刊イトイ新聞

奥泉光『坊ちゃん忍者幕末見聞録』

  • 2004/11/04(木) 15:37:49

坊ちゃん忍者幕末見聞録
奥泉 光/中公文庫
奥泉光/坊ちゃん忍者幕末見聞録出羽庄内藩の片田舎で霞流忍術を伝える横川家の養子として育った松吉は、ある日一念発起して医者になるべく江戸に出る事を決意する。
旅費を工面してくれた裕福な庄屋の跡取り息子・寅太郎、攘夷の魁となるべく脱藩した平六と共に江戸を目指すはずが、着いた先は何故か攘夷か開国かで揺れる京の町。
仕方なくここで医者の修行を始めた松吉だったが、次々と厄介事が降りかかり…。



何だかすご~く微妙な味わいの物語でした。
いや、微妙なのは物語ではなくてその表現方法なのかな。
何というか…(失礼を承知で言ってしまうと)「小説」を読んでいると言うよりも、(多分面白いであろう)小説の「(長い)あらすじ」を読んでる感じでした。
または松吉のWeb日記(別にWebじゃなくてもいいですけど)か。

出羽の国を出立して京までの道筋、そして京での生活…短い日数(同じ年の春から夏まで)の中でかなり色んな事が次々と起こるのですが、それが全て松吉視線の同じテンポの文章で淡々と書いてあるんですよね。
なのでスル~ッと読めてしまうのですが、逆に何の引っかかりもなくて、ホントにいいの?って感じがしてきてしまって…。
一番不思議だったのはとにかく、非常にセリフが少ないと言う事。
「普通、この内容だったら登場人物が直接セリフ喋るでしょ」ってところも、ただ地の文でどんどん進んで行ってしまって何だかただの説明みたい。
(この辺が「あらすじ」風)
あと、伏線とかっていうのも全くないんですね。
結構思わせぶりな話とか登場人物とかセリフとかが出て来たりするのですが、出てきて去っていったらもうそのまんまです。
(この辺が「日記」風)
変な話「面白く書く気がホントにあるのかな~?」って思ったりしながら読んでいました(汗)

それにどこが「坊ちゃん」で、どこが「忍者」なのかも謎だったし(笑)

話の筋自体は登場人物も、エピソードも結構面白くて、「???」と思いながらも結局3日くらいで読んでしまったわけですし、以前奥泉氏の作品を読んだとき(『吾輩は猫である殺人事件』『葦と百合』の2冊)には今回のような感想は持たなかったので、多分意図的にそうしたのだろうとは思うのですが…私はもっと単純な作品の方が好きだなあ…。

物語の終盤になって松吉の中で現在と未来が交錯したり平行して存在したりするようになって、「夢」と「現実」の区別が曖昧になってくる辺りからが一番楽しく読めました。

特に何でもなく終わってしまうラストも、この物語の結末としては合っていて好きでした。


<関連サイト>
「バナール主義」奥泉光氏の公式サイト

凶鳥の黒影(まがとりのかげ)~中井英夫へ捧げるオマージュ~

  • 2004/11/01(月) 15:52:21

凶鳥の黒影 中井英夫へ捧げるオマージュ
赤江 瀑 有栖川 有栖 嶽本 野ばら 恩田 陸 笠井 潔 菊地 秀行/河出書房新社
凶鳥の黒影(まがとりのかげ)~中井英夫へ捧げるオマージュ~
中井英夫氏のデビュー作にして偉大なる代表作『虚無への供物』刊行40周年を記念して、17人の作家が捧げる短篇&エッセイ集。



とてつもなく贅沢な一冊でした。
とにかく執筆陣が素晴らしい!
鶴見俊輔の序文から始まって、赤江瀑、有栖川有栖、北森鴻、倉阪鬼一郎、竹本健治、嶽本野ばら、津原泰水、皆川博子、森真沙子(以上、短篇)、恩田陸、笠井潔、菊池秀行、北村薫、長野まゆみ、三浦しをん、山田正紀(以上、エッセイ)監修である本多正一の手による後書きと言う錚々たる顔触れが、ただ一人の作家の一つの作品のために集結し、暗く輝く宝石のような文章を寄せています。

それを読めただけでも幸せな気分になれたのですが、これらの文章の目指す先にあるその【作品】をきちんと読んだことがない私は、劇場で繰り広げられている絢爛な舞台を客席にも入ることが出来ずにロビーのモニターで見ているようなもどかしさや疎外感を感じながら読んでいました。
それもまた楽しからずや…と言う部分もありましたが(笑)やっぱりちょっと寂しいので、3年前に一度挫折したその本に再挑戦して次は天井桟敷あたりからでも見られるようになればいいなと思っています。

虚無への供物〈上〉
中井 英夫/講談社文庫





<関連サイト>
「凶鳥の黒影」津原泰水氏による本書の公式サイト

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。