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◆Date:2004年08月
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風野真知雄『喧嘩御家人 勝小吉事件帖』

  • 2004/08/29(日) 11:01:42

勝小吉事件帖―喧嘩御家人
風野 真知雄
風野真知雄/喧嘩御家人 勝小吉事件帖小吉は祖父の代に旗本に成り上がった男谷家の三男坊に生まれ、7歳の時に御家人・勝家の養子に入りその後勝家の一人娘おのぶと結婚したが、小さな頃から暴れん坊で腰が座らず、喧嘩、家出、借金、女遊びなどろくでもない事ばかりしでかす界隈でも有名な不良侍であった。
そんな小吉が十四の時以来二度目の家出からようよう連れ戻されたその日、悪い遊び仲間の一人、岩三が何者かによって殺されてしまう。
疑いは直前に岩三に会っていた小吉に向けられ、体面と小吉の将来を案じた家族によって小吉は家の中の座敷牢にに監禁されてしまうのであった。

幕末にその名を残す勝海舟の父親・小吉を主人公(探偵役)に据えた時代推理小説。
「座敷牢の男」を始め8編の短篇を収録。



面白かったです。

素行の悪さから自宅の座敷牢に閉じこめられてしまった主人公が、その中で事件を推理して解決すると言う発想が楽しいですね。
いわゆる「安楽椅子探偵」ならぬ「座敷牢探偵」です(笑)

しかもそうした設定だけでなく事件自体も「密室」あり「暗号」ありでなかなか凝っているし、小吉の謎解きもきちんと筋が通っていてスルスル読めました。
また幼い息子の麟太郎(後の海舟)が常に推理のヒントを小吉に与えていた、と言う細かい設定も見逃せません。

でもなんと言っても「小吉が座敷牢に閉じこめられていた」と言うのが創作ではなく事実(しかも3年も!)だと言うところが、驚きでした。
勝海舟は幕末の怪人物ですが、その父親もすごい人物だったんですね~(笑)
解説によると坂口安吾や子母澤寛なども小吉を作品の中で取り上げているとか。
しかも歴史的な活躍をした海舟とは違って小吉自身は「暴れん坊だった」と言うだけで特に世間的な実績がない(むしろどちらかというと「厄介者」だったのでは…?)のにそうして人を惹きつける魅力を持っていたと考えると、もしかしたら海舟よりも潜在的な力は大きかったのかも。
幕末前夜のまだ安定していた時代はその爆発的な力を発散させるには穏やかすぎたということなのでしょうか。

この作品を読んで「勝小吉」と言う人物に俄然興味が沸きました。
小吉自身が遺言として残した「夢酔独言」と言う作品があるらしいので近いうちに読んでみたいと思います。

夢酔独言
勝 小吉
勝 小吉/夢酔独言

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中島らも『ガダラの豚1~3』

  • 2004/08/21(土) 10:54:41

ガダラの豚〈1〉
中島 らも
中島らも/ガダラの豚〈1〉
ガダラの豚〈2〉
中島 らも
中島らも/ガダラの豚〈2〉
ガダラの豚〈3〉
中島 らも
中島らも/ガダラの豚〈3〉

アフリカ呪術研究の第一人者 大生部多一郎はテレビ出演の依頼が絶えない人気タレント教授。
しかし、彼には8年前の現地取材で娘をなくした過去があり、それ以来彼はアル中に、妻の逸美は神経を病んでおり、息子の納(おさむ)の3人の家族は崩壊寸前だった。
娘をなくしてしまった喪失感から逃れるため怪しい新興宗教にのめり込んでいく逸美を、超能力者のトリックを暴くことを売り物にしているマジシャン「ミスター・ミラクル」の助力を得て奪還するまでを描く第1巻。

TVプロデューサー・馬飼の企画による特番の取材のためアフリカへ旅立つ大生部一家と出演者、スタッフ一行。
彼らのアフリカ道中記及び目的地「クミナタトゥ」での大呪術師バキリとの対面までを描く第2巻。

バキリの元からキジーツ(呪術の増幅装置)として育てられていた少女を攫った一行は多くの犠牲を払いながら命からがら日本に戻るが、安心したのも束の間バキリが東京に現れる。
TV局を舞台に繰り広げられるバキリと大生部一家との壮絶な闘いを描く第3巻。


文庫版で全3巻それぞれ300~350ページ前後というかなりの分量でしたが、とても面白くて1巻から3巻まで一気読みでした。

「超能力」「マジックによるトリック暴き」「新興宗教」「アフリカ呪術」「TVによる情報操作」などなど、怪しげでだからこそ興味津々な話題が次から次へと出てきます。
しかもそれらは単に「話題」として出てくると言うことではなく、それぞれに対するきちんとした研究と考察の上に書かれており物語の中の重要な核として機能しています。
更にそうした真面目な内容であるにも関わらず、決して重かったり暗かったりすることはなく全体的には著者らしい軽妙でユーモアのある物語になっているので最初から最後まで飽きることなく読み進める事が出来ました。
また大生部一家を始めとして登場人物の数がかなり多いのですが、それぞれの性格付けが非常にきちんとしているため(ある意味「反則」な部分もありますが(笑))混乱することがないのも読みやすさの要因でした。

第3巻のラスト、TV局を舞台にした命がけの追跡劇は流血や痛いシーンが満載で、そうした描写が苦手な私にはちょっとツラかったですが、その中でそれぞれが強くなり家族としての絆を取り戻していく大生部一家の姿は非常に印象的でした。
そしてここまで大風呂敷を広げてしまっても、登場人物の一人一人にも物語全体にもキッチリとエンドマークを付ける生真面目さにも好感が持てました。
(でもちょっと死人が多すぎるかも…(汗))


<関連サイト>
「Ramo Nakajima Office」

芥川龍之介『地獄変・偸盗』

  • 2004/08/20(金) 10:08:31

地獄変・偸盗
芥川 龍之介
芥川龍之介/地獄変・偸盗平安時代に材料を得た「王朝物」と言われる作品7編を集めた短篇集。
表題作2編を始め「竜」、「往生絵巻」、「藪の中」、「六の宮の姫君」を収録。



難しかったので一言感想(笑)

「偸盗」
女は怖い。しかも無謀(笑)
しかし、男もしょーもないのばっかり出てくる話。

「地獄変」
良秀の娘があんな事になったのは、やっぱり堀川の殿様の「振られた腹いせ」だと思う…。
良秀も堀川の殿様もどっちもどっちでしょう。

「竜」
これは結構好き。
自分が仕掛けたいたずらが思いもよらなかった方向に大きくなってしまってオロオロしている恵印法師を想像すると笑ってしまう(笑)
それなのにだまそうと思った恵門もまんまとひっかかっているのを見ると思わず喜んでしまう恵印が可笑しい。

「往生絵巻」
短いのに、すごくたくさんの人が出てくる話。

「藪の中」
こんなに短篇なのに上手いし、面白い。
一番信用できそうなのは「多襄丸の白状」かな。
「女の懺悔」はちょっと胡散臭いと思う。

「六の宮の姫君」
こういうのを読むといつも思うんだけど、自分が死んだら娘は苦労すると判ってるのになんだって父親は娘を嫁がせようとしないし、財産も残さないんだろうか…。
可愛がるのはいいけど、自分がいなくなった後のこともちゃんと考えてやって欲しいよ。
それで苦労して死んだ後、未練が残っていたりすると「極楽も地獄も知らぬ、腑甲斐ない女の魂」なんて言われちゃうんだからかわいそ過ぎます。

北森鴻『蜻蛉始末』

  • 2004/08/15(日) 10:01:57

蜻蛉始末
北森 鴻
北森鴻/蜻蛉始末明治十二年九月十二日夜半。
長州出身で大阪に大店を構える豪商・藤田傳三郎が贋札事件の容疑者として逮捕された。
全く身に覚えのない罪状での逮捕に徹底的に抵抗する傳三郎だったが、ある日取り調べを担当する佐藤権大警部から贋札の見分け方について市中で流れている「地紋に描かれている蜻蛉の脚が一本足りない」と言う噂を耳にする。
その瞬間、傳三郎の脳裏にはある一人の男の姿が浮かんだ。
それは自分に影のように寄り添ってきた幼なじみ「とんぼ」こと宇三郎の姿だった。



他サイトの感想を読むとどこでもかなり評価が高かったので期待するのと同時に、あまり馴染みがない事件の話だし割と分量もある(450ページ弱)ので「どうかな~」と言う不安半々で読み始めたのですが最初の5ページくらいを読んだらそうした不安はなくなって後は一気読みでした。

とても面白かったです!

幕末から明治維新にかけての激動の時代、商人の身でありながら若い頃から長州の有力な志士たち(高杉晋作、久坂玄瑞など)と交流があった傳三郎を中心に、その後明治政府の高官となっていく様々な人物たちとの交流、そして明治政府の中で長州が果たした役割に傳三郎の力がいかに大きく作用していたかが描かれています。
そしてその傳三郎に影のように寄り添って生きた「手足だけがひょろ長く、そのくせ立ち居振る舞いのいちいちが鈍重で、幼い頃から人にからかわれるためだけに生まれてきたような(本文36ページより)」<とんぼ>こと宇三郎と言う架空のキャラクターの生き様や想いが実在の人物にも負けないくらい生き生きと描かれている事がこの作品を本物以上に本物らしくしていると思いました。

人物の出入りも多く、それに伴って起きる事件もかなり煩雑なのですが、それによって物語の焦点がぼけたり意味が分からなくなると言うこともなくすんなり読むことが出来ました。
それはこの物語が、いかに多くの(歴史的に)重要な人物、事件を扱っていたとしても、あくまでその核は傳三郎と宇三郎の2人の「個人的な」関係であることからブレていないからだと思います。

最初は「<とんぼ>がどうやって傳三郎を贋札事件の容疑者に仕立て上げたのか」が書いてある話なのかと思っていたのですが、そうではなくこれは「<とんぼ>が何故傳三郎を贋札事件の容疑者に仕立て上げなければならなかったのか」の物語でした。
つまり「ハウダニット」じゃなくて「ホワイダニット」の話だったわけですね。
と言ってもこの作品は一般的な意味でのミステリーではありません。
伏線やラストのどんでん返しは存在するし<とんぼ>の一生をかけての「何故」を解いていくわけなのでミステリー的な要素はあるのですが、何かを隠したりミスリーディングさせるような部分がない非常にストレートな作品になっています。
そして、そう書いてある事こそが物語の輪郭を明確にし、更にこの話を非常に奥深く切ないそして上品な作品に仕上げていると思いました。

そして物語を読み進めるうちにこの作品の主役はその商才と胆力で時代の波を泳ぎ切り藤田観光を始めとする現在の藤田グループの祖となった傳三郎ではなく、小狡く、その場逃れの嘘ばかり吐いて、他人の感情に気持ちを重ねることもないけれどただ傳三郎にだけは終生忠実であった、はみ出し者の<とんぼ>であった事に気付くのです。

幕末~明治維新ものというと新選組や龍馬や徳川慶喜関連は幾つか読んだことがあるのですが、長州サイドの物語には殆ど縁が無かったので、この作品はそう言う意味でも楽しめました。
特に先日ドラマ「新選組」で自決した久坂玄瑞はドラマではどんな人なのかハッキリしないうちに死んでしまった、と言う印象だったのですがこの作品を読んで「ああ、こんな人物だったのか」と知ることが出来、改めてその死に思いを致しました。

清廉潔白に生きねばならぬとする傳三郎がいる一方で、人はそれほど清いものではないと嗤う傳三郎がいる。それはすなわち≪とんぼ≫こと宇三郎ではないのか。/このときからである。周囲から馬鹿にされる≪とんぼ≫を庇いつつ激しく憎み、憎みつつ庇い続けるようになったのは。(本文P51より)

アイザック・アシモフ『われはロボット』

  • 2004/08/12(木) 09:57:17

われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集
アイザック・アシモフ 小尾 扶佐
アイザック・アシモフ/われはロボットユナイテッド・ステーツ・ロボット&機械人間株式会社のロボ心理学者であり、ある意味会社そのものでもあったスーザン・キャルヴィン博士が遺した、人間とロボットとの9つの物語。



第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。

第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

物語は全て有名なこの「ロボット工学三原則」を中心に展開していきます。
この命題により「ロボット」と言う存在に制限を与えることによって、人間とロボットの間に様々な物語を生んでいるわけですね。
そうした物語の基点となる優れた概念であると同時に、この三原則は簡潔であるのに全ての重要なものを網羅していると言うほぼ完璧な文章であると感じました。
この三原則を思いついた時点でアシモフは「勝った」も同然だったのではないでしょうか。
いつか現実にこの三原則に則ったロボットが実在する日が来るのではないか…と思ってしまいます。
まあ、その前に人間にこそこの三原則を当てはめないと、そんなロボットが出来る前にいなくなってしまいそうですが。

三原則にはそんな感じで非常に感心、と言うか感動したのですが、この本の内容自体はと言うと実はよく理解出来てません…。
何だか非常に観念的な話が多くて理解が追いつかず、意味とか状況がよく判らないまま読んでいた部分がかなりありました。
一話目の「ロビイ」くらい情緒的な内容ならば何とか行けるのですが…つくづく自分には理数系の才能はないのね、と思い知らされました(泣)

ところでこの本、帯に『映画「アイ、ロボット」原作』と書いてあるのですが、昨日「マッハ!」を観に行ったときに見た予告編からすると全く違う話のような気がしたのですが…。
どうなんでしょうか?

黒岩重吾『子麻呂が奔る』

  • 2004/08/08(日) 09:52:31

子麻呂が奔る
黒岩 重吾
黒岩重吾/子麻呂が奔る厩戸皇太子(聖徳太子)の元、犯罪調査の職に就いている官人・調首子麻呂(つぎのおびと ねまろ)と部下の秦部魚足(はたべの うおたり)が斑鳩の里で起こる難事件を解決する古代ミステリー。



飛鳥時代が舞台のミステリーって言う発想がスゴイですね。
今まで読んだミステリーの中でも一番時代が古い作品です(笑)

事件の内容は「私怨のために相手を殺してしまった男の話」や「相手を失脚させるために部下に毒を飲ませて殺してしまう話」、「子麻呂の息子の不登校の話」などで、時代が変わっても人間が考えること、やることはあまり変わらないようです。

黒岩重吾氏と言うとどちらかというと硬めの作品が多いと思っていたのですが(ずっと以前「聖徳太子」(全4巻)を読み始めたのですが、難しすぎて挫折した経験アリ)、こういう作品も書いていらっしゃったんですね。
それが一番意外な感じがしました。

ただ、やはりミステリーを書き慣れていないようで、ちょっと説明がくどかったり、前後の脈絡がよく判らなかったりする部分が多いような気がしました。
また、その当時の生活習慣とかしきたりについてあまり説明が無く話が流れていってしまうのも、そうした歴史的事実に疎い私にはちょっと辛かったです。
(解説によるとこの作品は『斑鳩宮始末記』の続編らしいので、その前作にはそうした記述もあるのかも?)

石田衣良『約束』

  • 2004/08/07(土) 09:47:29

約束
石田 衣良
石田衣良/約束「ヨウジそのものになりたい」
10歳のカンタが本気でそう願うほど憧れていた幼なじみの同級生が、ある日突然目の前で死んだ。
それ以来、カンタは「終わり」だけを見つめ続けていた。
そんなカンタの前に奇蹟が起きる…。
人生の喪失と再生を描いた短篇集。
表題作を含め7編を収録。



帯にも「絶対泣ける短篇集」って書いてあるし、何たって衣良さんの新作だし、ってことでスッゴイ期待しながら読み始めたのですが…あらら?
ちょっと空振りな感じでした。
期待しすぎてしまったかしら…。

文章は相変わらず非常に上手いです。
特に「約束」の冒頭カンタとヨウジがクラス対抗のドッヂボールをするシーンは、ほんの3ページほどの分量なのですが、その中に2人がどんな男の子で、お互いがどう思っているか、クラスの中でどんな存在か、そうした基本的な情報がギュッと凝縮された見事な文章でした。

それなのに、どの物語に対しても気持ちが上手く共鳴できなくて、ただ単に「ああ、そうなんだ」って思うだけで、読んでも読んでも言葉が気持ちの上をスルスル滑って行ってしまう感覚がずぅっとありました。

何でかな~と考えてみたのですが、ふと気が付いたのは「笑い」の要素がない、と言うこと。
今回の作品は全編「死」とか「病気」と言った話なので基本がシリアスであることは仕方ないと思うのですが、今までの衣良さんの作品には哀しさを表現するときにもちょっとした笑いが練り混んであって、却ってそこに「笑いとの対比によって強調される哀しさ」と言ったものがあった気がするんですよね。
今回はそれがなくて、ただひたすら哀しさの表現が前面に出てしまっているので、それが作品の閉塞感に繋がってしまったような気がします。

それから「再生」のきっかけの出来事が一部の物語でちょっと非現実的な現象で表現されているのですが、これもどうなのかな、と。
私はこうした結末の物語よりも、「夕日へ続く道」や「ハートストーン」のように現実に目の前にいる登場人物が身をもって「生きろ」と告げる作品の方が好きでした。
特にこの2作は「おじさん(おじいさん)」の存在が切なくて、ちょっと泣けました。

鯨統一郎『邪馬台国はどこですか?』

  • 2004/08/05(木) 07:14:50

邪馬台国はどこですか?
鯨 統一郎
鯨統一郎/邪馬台国はどこですか?ビルの地下1階にあるカウンター席しかない小さなバー「スリーバレー」。
店の常連の宮田が発した「ブッダは本当に悟りを開いたのだろうか?」の一言から始まった、美貌の歴史研究家静香との歴史検証バトル。
誰も気付かなかった歴史の真実(?)が今夜も明らかにされる。



鯨統一郎氏の本は今までにも何冊か読んでいるしこの本の事ももちろん知っていたのに何故か読む機会がなかったのですが、先日本屋で平台に並んでいたのを見つけてようやく読んでみました。
噂に違わずとても面白かったです。

普通に学校で習うような歴史の観点からでは全く想像も出来ないような独創的な仮説が次々と展開されていてそれ自体もすごく面白くまた説得力もあって、歴史は好きだけど詳しくはない私は「え?これってホント?」って思わず信じてしまいそうになるくらいでした。
(いや、でも全面的にとは言えなくても部分的には合っている所も結構あったりして)

それから、それを表現するための人物設定も上手いです。
まず語り手の宮田、その内容を「なるほど」と聞いて納得していく松永、宮田の奇想天外な意見に徹底的に反論する静香、そして時々助け船を出す三谷教授。
特に松永と静香は読者が宮田の説を理解するための補助役(と言うか読者の代役)として非常に有効に作用していると感じました。
(その分、静香が妙におとなしい「謀叛の動機はなんですか?」は今ひとつで、展開もかなり強引な印象を受けました)
片や三谷教授は影が薄いです…と思ったら、今気が付いた。
実は三谷教授はこのお店の影のオーナーなわけですね!
だからお店の名前が「スリーバレー(三つの谷)」なんだ。
それだけで教授は存在価値があるって事なんですね。
あ~、スッキリした♪

他にもこの本に入っている表題作を始めとした6つの作品(「悟りを開いたのはいつですか?」、「聖徳太子はどこですか?」、「謀叛の動機はなんですか?」、「維新が起きたのはなぜですか?」、「奇蹟はどのようになされたのですか?」)それぞれが「5W1H」(懐かしい!)になっている事とか、最後に宮田による「これは私の説を知人の小説家Kに代筆して貰ったものだ」と言う内容の付記が付いているあたりが著者の「遊び心」を表現していて楽しかったです。

この後の作品を考えると、この方はこのまんま作家活動を続けているわけですね~。
これからもこの調子で頑張って欲しいです。

戸松淳矩『名探偵は千秋楽に謎を解く』

  • 2004/08/03(火) 07:09:19

名探偵は千秋楽に謎を解く
戸松 淳矩
戸松淳矩/名探偵は千秋楽に謎を解く下町のとっぱずれにある相撲部屋・大波部屋。
この弱小部屋を中心に、町中で次々と起きる不穏な事件。
中学の同級生・花田が入門しているためこの部屋を身内のように贔屓にしている「オレ」たち3人もその騒ぎに巻き込まれて…。



あまりにも色んな事件が起きるし、それに関係する人々(野次馬もあわせて)もすごく多いのですが、それを取り纏めて整理してくれるいわゆる「探偵役」の人物の印象が弱いため、ひどく「とっちらかった」雰囲気のお話でした。
タイトルにも「名探偵」って謳ってあるのに物語の後半になるまで、誰がその名探偵なのかハッキリしないっていうのはちょっとどうかな、と。

それに冒頭に語り手の「オレ」と幼なじみのの枝川、転校生の筒井の3人組として登場するのに、筒井くんが途中からプッツリ出てこなくなってしまう事とか、これだけ近所の人が大挙して出てくるのに「オレ」や枝川の家族は(家族がどうこう…と言う描写はあるものの)全然顔を見せないのも何だか変な感じがしました。

そして何より、これだけの事をやっていながらあの終わり方はないだろう、と思うのですが。

益子昌一『指先の花』

  • 2004/08/01(日) 07:04:54

指先の花―映画『世界の中心で、愛をさけぶ』律子の物語
益子 昌一
益子昌一/指先の花映画「世界の中心で愛をさけぶ」が封切られた直後、うちの会社の後輩たちも会社帰りに大挙して(笑)映画館に行っていた。
私は映画も観てないし、原作も読んでいないけど(あまりにも売れてしまった本を今更読むのは恥ずかしいし、何より元々恋愛ものが苦手なのだ)、そんな後輩の中の一人から「これ読み終わったから貸しますよ」って渡されたのがこの本。

映画「世界の中心で愛をさけぶ」で主人公朔太郎の現在の恋人として登場する律子の物語、らしい。

しばらく部屋に積んであったけど、さっき片づけものをしていて借りたままだったのを思い出し「せっかくだから」とちょっと読んでみた。

大本の所を全く知らないのでその中でこの物語がどう作用しているかとかは書きようがないけど、文章とか話の展開は嫌いじゃなかった。
特に人物の性格を表現するときの何気ない描写で上手いなと思う部分がいくつか。
中でも印象的だったのは、律子と朔太郎がホテルで食事してデザートを食べるシーン。

端正に焼かれた生地がなかなか切れず、食べていくうちに、わたしのミルフィーユは完全に原形を失ってしまったけれど、彼はフォークでサクサクとキレイに切って食べていた。わたしがその食べ方に感心してみていると、彼はふと手を止め、目を向けた。
「今夜、ずっと一緒にいないか?」(本文p45より)

「ミルフィーユをキレイに食べる」なんて事をその人物の性格の人となりを表現として使うところが意外性があって面白かった。

映画の映像が先だったのか、この物語が先だったのかは判らないけど、このシーンも含め全体的に非常に映像的。
読んでいるとそのシーンの映像が(映画を見ていない私でも)想像できるような描写が多い。
その辺りも読みやすさの原因だろうね。

しかしこの本、別に本文中に写真とかが入っているわけでもないのに、紙質がすごくいいために本文は180ページしかないのにかなり厚いのが気になる。
(ちなみに手元にあった260ページほどの文庫本とほぼ同じ厚さだった)
そう言えば「世界の~」(元本)も厚手の紙を使って本に厚みを持たせて、「長い物語を読んだ」と満足感を与えた事もヒットの要因だと聞いたことがあるような、ないような…。
いや、確かに「見た目」は厚くなるけど、長い物語だったかどうかは「見た目」とは関係ないのでは…(汗)
と言っても実際に文章がすごくたくさん書いてあって、紙も薄くて、現実的に厚くなってる本があったとしても、それと面白いかどうかは別だけどね。
却って、つまらなかった場合「こんなに読んだのに、結局つまらなかった~っ!」となるのを考えると、早いうちに結果が出る本の方が被害は少ないかもね…。
って、そんな話じゃないか。

戸梶圭太『牛乳アンタッチャブル』

  • 2004/08/01(日) 06:59:41

牛乳アンタッチャブル
戸梶 圭太
戸梶圭太/牛乳アンタッチャブル大手の牛乳メーカー雲印乳業製の牛乳を飲んだ消費者が次々と食中毒の症状で病院に担ぎ込まれる事件が起きる。
自分の保身ばかりを考えてろくな対応が出来ない社長を始めとした経営陣を追い出し、会社を建て直すため人事部・宮部をリーダーにした「特別調査チーム」が発足した。
彼らの役割はこの事件に荷担した全ての人間に「クビ」を言い渡す事だった。



戸梶氏の作品は過去に「溺れる魚」「ギャングスタードライブ」の2冊を読んでいるけど、どちらもすごく面白くて好きな作品だった。

どこが気に入ったかというと、「問答無用のスピード感」、「勧善懲悪なんて気にしない何でもアリな荒唐無稽さ」そして「個性的だけどシンプルなキャラクター設定」かな。
とにかく何も考えずに「こんな事あるわけないよ~っ!(笑)」とゲラゲラ笑いながら一気に読んで「あ~、楽しかった」と本を閉じる…と言うのが私の戸梶作品に対する印象だった。

この「牛乳アンタッチャブル」も本屋で最初の1~2ページを読んだところ、いつもの調子でぶっ飛ばしていたので「これだったら大丈夫」と思って読み始めたんだけど…読了してみるといつもの爽快感がない、とは言わないものの非常に希薄な作品だった。

上に書いたあらすじ(のようなもの)を読んでいただければ判るとおり、この作品はあの「雪印事件」をモチーフにしている。
それも事件の原因とか社長のコメント(「寝てないんだよ!」発言など)とか結構そのままなぞっている部分が多い。
更には時々妙にシリアスになったりちょっとお説教臭いセリフが出てきたりする部分があって、その辺を読むと戸梶氏の気持ちのどこかではこの事件と真剣に向き合いたい気持ちがあったのかな、と思われる。
それだったらそうでもいいんだけど(私が求める戸梶作品とは違うけど)、その反面社長や重役・管理職の性格や場面設定をムチャクチャにして無理矢理(?)「笑い」の方にベクトルを向けようとしている部分があったりで…要はどっちつかずであまり楽しめなかった、と言うのが正直な感想。

それに無駄にエピソードや登場人物が多くて物語の焦点がぼけてる感じがするし、何よりも主役の宮部の性格設定が私には理解出来なかったのがつまらなかった一番の要因。
宮部というのは会社を建て直そうと「特別調査チーム」を作った人事担当役員・柴田がチームのリーダーとして指名した社員なんだけど、私には最後までどうしてこの人物がリーダーで主人公なのか全く判らなかった。
会社を何とか建て直したいと言う柴田の想いに共感してその任務に当たる事を決意するわけだけど、他のチームメンバーがそれぞれ個性的でその個性に合わせた活躍をしている中で宮部だけは特に特徴がなくて何だかいつもウダウダしててる印象。
果ては途中で宮部はある事件を起こしてチームリーダーを辞め、チームからも身を引く事になるんだけど、その後になって物語がすごい勢いで動き出してその前よりも俄然面白くなってしまったのだ。
う~ん、これってもしかして作者さえも宮部の動かなさ加減に呆れていたって事では?(汗)

もっと全体を短くして(580ページは長すぎでしょう)、登場人物を絞って、完璧に「経営陣」対「社員」の図式にした方が判りやすく面白い作品になったんじゃないかな。


<関連サイト>
■戸梶圭太公式サイト「トカ ジャングル」

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