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◆Date:2004年07月
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吉岡平『火星の土方歳三』

  • 2004/07/31(土) 06:51:00

火星の土方歳三
吉岡 平
吉岡平/火星の土方歳三五稜郭で戦死し魂魄としての存在になってしまった、かつての新選組副長・土方歳三。
しかし、死さえも彼の「荒ぶる魂」を鎮めることはできなかった。
死して尚、斗う場所を求めた彼の目に映ったのは欧米では「戦の神」の名を持つ赤い星・火星。
「いっそ火星にでも行って、そこで再び斗いたい」そう思いながら禍つ星に手を差し伸べる土方の魂は次の瞬間、軍神マルスに抱き取られるように空間を越えたのだった…。



すっごい面白かった!
大好きです、この作品(笑)

まず、導入部がいいです。
上に書いたような「敵の銃弾によって死んでしまった土方が魂魄の存在になり遂には火星に行くまで」が10ページくらいで書かれているのですが、ここでの土方の「自分語り」と「周りの状況へのツッコミ」と「真面目に語られるボケ」に完全にココロを掴まれてしまったのでした(笑)
そう、私の土方のイメージはまさにこんな感じなのです。
(ちなみにこの3つの要素はこの後 全編に渡ってお楽しみいただけます(笑))

残された戦友や上官へのツッコミも容赦なくて「火星に行かずに、魂のまま日本の行く末をツッコミまくってくれてもいいかも」と思ったくらいでした(笑)
(まあ、この「荒ぶる魂」はそんな事をしていたらイライラして狂い出すでしょうが…(笑))

その後、火星に行ってからは場所を替え相手を替えながらとにかく斗い続けるのですが、その斗い方とか行動、考え方とかも基本的に(巷間言われているところの)「土方歳三」のキャラクターをきちんとなぞって描かれていると感じました。
しかも新選組での有名なエピソードのパロディもそこここに散りばめられているのが楽しかったです。
(特に火星の二つの月を見ながら『豊玉先生』となって句作するシーンと、後半で土方の思い通りの剣を作ることになる伝説の刀匠の名前が『ノサダ』だったところがワタシ的爆笑ポイントでした(笑))
更に後半では、行く先々で戦友となった火星の戦士達と組んで火星版・浪士隊(笑)を作ると言う展開で、「そこまでやるかっ!」と言うくらいの徹底した遊び感覚が良かったです。

それから、「謎」として提示されたものがそのまま放置されずにきちんと謎解きや解説されている辺りに、著者の生真面目さとか誠実さが感じられ好感が持てました。

私は自分の好きなものに対して、そこに悪意やバカにしたような意識がない限り、パロディ化されたりする事に抵抗はありません。
なのでこの作品も非常に楽しんで読めましたが、そうじゃない人はこういう土方の扱われ方はちょっとイヤかも?
その辺が平気ならば最近の新選組関連本のなかでも「異色の一冊」として読んでみるのも一興かと。

ちなみにこの作品はバローズの「火星シリーズ」のパロディ(オマージュ?)でもあるらしいのですが、私はそちらの方は読んだことがありません。
(SFってあんまり夢中になった時期がないんですよね~)
なのでその作品をベースにした箇所は普通の文章としてしか読めなかったのが残念でした。
知っていたら倍楽しめたって事ですもんね。
(逆に言うと「知らなくても楽しめた」って事でもあります)
「火星シリーズ」もかなり面白いようなので、そのうちこちらも読んだら再読してみたいと思います。

ちなみにカバー及び本文中のイラストは末弥純氏なのですが、氏のイラスト=「グインサーガ」の図式になっている(それしか知らない)私にはカバーイラストがどう見ても「イシュトヴァーン」にしか見えなかったです…(汗)

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逢坂剛『重蔵始末』

  • 2004/07/28(水) 06:46:41

重蔵始末
逢坂 剛
逢坂剛/重蔵始末火付盗賊改の加役に任ぜられた御先手鉄砲組の組頭松平左金吾の下で働く与力 近藤重蔵を主人公にした著者初の本格時代小説。

「火盗改」って言ったら不朽の名作『鬼平犯科帳』を思い出さないわけにはいかないわけで。
特に私は平蔵親分贔屓なのでどうしても「鬼平ありき」で読んでしまいました。
それから考えると人物の掘り下げ方とか感情表現とかがあっさりしすぎていて物足りなさを感じました。

と言っても同じ作品ではないわけだから表現方法はそれぞれだろうし、更にそう言った作品があると判った上で敢えて同じ舞台を設定して作品をぶつけてくる(それも初の時代小説で)と言うチャレンジャー精神は評価すべきでしょう。

それにこの主人公は後に北方探検家として名を馳せた実在の人物との事なので、著者の思惑としては火盗改の与力としての重蔵よりもその後の活躍を描くことこそが真の目的なのかも知れないですね。
続巻が出ているようなのでまた文庫になったら読んでみたいです。

とは言え。
そうした表現とか「鬼平」との比較よりも何よりも私が気になって仕方なかったのは「重蔵は21歳なのになんでそんなにおっさん臭いんだ」って事(笑)
確かに幼少の頃から「神童」と言われるほど頭が良かった事や、与力の跡取り息子として育ったとかそうなる条件というのはあるのかも知れないけどそれにしても可愛気なさすぎです。
態度や喋り方が偉そうなのはともかく、どこかにもうちょっと「弱み」みたいなものを入れておいた方が取っつきやすいと言うか感情移入し易いんじゃないかなと思ったのでした。

物語の展開自体は面白い作品が多かったです。
特に後半の「茄子と瓜」とか「猫首」は物語のモチーフが個性的で、展開もスムーズで楽しく読みました。
ただ「猫首」は最後の謎解きの説明文がちょっと長すぎたのが残念でした。

青井夏海『陽だまりの迷宮』

  • 2004/07/24(土) 06:41:56

陽だまりの迷宮
青井 夏海
青井夏海/陽だまりの迷宮主人公は11人兄弟の末っ子・生夫。
小学3年生の彼の身の回りで起こるちょっとした謎を下宿人のヨモギさんが解いていく、コージーミステリーの連作集。



以前読んだ「赤ちゃんをさがせ」の感想が『ちょっと苦手』だったのでその続編の「赤ちゃんがいっぱい」には手を出さなかったのですが、これは別作品なので大丈夫かと期待して読んでみました。
結果…やっぱりダメでした…(泣)

何故かというと私がこの作家さんが描く人物像に共感出来ないと言うのが最大の原因です。
(「赤ちゃんをさがせ」が苦手だった理由もこれでした)
謎とか、物語の設定自体は面白い部分もあるのですが、それに絡んでくる人物達が生夫の兄弟たちを始めそれ以外の人たちも殆どが「こんな人たち、なんかイヤ」って感想しか持てなかったんですよね。
特に『黄色い鞄と青いヒトデ』に出てくる生夫の家の近所に住む兄弟なんか、読んでも読んでもいいところが発見出来ないと言う感じ。
と言って、それは特に悪意で描かれているわけではないんですよね。
でも、私には却ってそれがダメでした。
だって悪意を持って悪い人に描いているなら読者が「ヤなヤツ」と感じるのは当たり前なわけですから。
そうじゃないのにそう感じてしまう、と言うのは自分の感じ方がおかしいのかな、とか余計なことを考えてしまうので読んでいてかなりストレスでした。
それ以外の部分でも「そこでそう行動するかな」とか「そんな事言うかな?」とか登場人物の言動に違和感を感じる部分が結構ありました。

もちろん私も、こうした登場人物の全てが「いい人」であることを期待するわけではないし、現実では人の行動が全て端から見て納得出来るような理由があるとも思ってはいないわけですが、それがお話である以上はやはり読者にとってある程度の説得力や共感を持つものであって欲しいと思うのです。

それと、主人公の生夫の兄弟が「11人」である必要があるのかも不明でした。
「兄弟が多い」そして「彼らと主人公が年が離れている」しかも「全員が実の兄弟というわけではない」と言う複雑な設定の中から出てくる雰囲気とかストーリーはあると思うのですが、それにしても何も11人なんていうあまり現実的とは言えない数にする必要はあったのでしょうか。
と言うのも、その(生夫以外の)10人の中には名前しか出てこなかった人もいるんですよねえ。
いくら訳アリの大家族でももう少し扱いやすい人数(6~7人とか)にしておいた方が良かったのではないでしょうか。

プロローグとエピローグの雰囲気はとても良かったです。
中身もこの雰囲気だったら良かったんだけどな~。

光原百合『十八の夏』

  • 2004/07/21(水) 06:36:12

十八の夏
光原 百合
光原百合/十八の夏「花」をモチーフにした短篇連作ミステリー。
表題作を始めとした4篇を収録。



全編「花」をモチーフにしているので<連作>なのだろうけど、それにしては物語の雰囲気に微妙に温度差がありますね。
ただモチーフが同じってだけで、特に物語そのものに共通性を持たせる意図はなかったと言うことなのかな。

…と言うようなどうでもいいことを最初にグダグダ書いているときは「イマイチ」だったシルシです(汗)

何て言うのかな~…表現が丁寧すぎて読んでいるうちにちょっと息苦しくなってしまったんですよね。
状況とか人物をすごくきちんと丁寧に描いてあるんだけど、あまりにも細かいところまで気が配られすぎていて「別にそこまで書かなくてもいいんじゃないの?」って思ってしまう部分が割と多かったのでした。
(特に私は最近「余白」とか「行間」を想像することが面白いと思い始めたので、そういう事を強く感じてしまったのだと思うのですが。)

それからどの作品も相手との誤解や思い込みが話を意外な方向に導いていく、と言った感じの内容だったのですが、2話目と3話目に関してはその誤解の内容が読んですぐに判ってしまった、と言うのも大きい。
特に3話目は最初からどういう状況か見通せてしまって、本当にそのまま進んでいったので何だかちょっと脱力してしまったのでした。
ちょっとあれは安易すぎるんじゃないかなあ…。
(と、言うのは簡単ですが)

4話目は緊張感があり、謎も凝っていて物語自体は面白かったです。
でも、物語の雰囲気が4編の中では非常に異質。
他の3作はちょっと切なかったりほろ苦かったりしつつも明るい陽の下で爽やかに終わるのに比べて、この作品はエンディングこそ最悪の結果にはならないにしてもその全編を覆うのは非常に暗く重いテーマの作品になっています。
この4作が<連作>であるのなら、この作品をここまで重くする必要はあったのかちょっと疑問でした。

作品の雰囲気が好きだったのは2話目の「ささやかな奇跡」。
キーパーソンであるバリバリ大阪弁の元気な小学生・太郎くんが可愛かったし、穏やかで無理のないストーリー展開も映像が目に浮かぶようなエンディングの描写も良かったです。
(恐竜図鑑のくだりは笑えました!(笑))

村上龍『69 sixty nine』

  • 2004/07/15(木) 00:26:38

69(シクスティナイン)
村上 龍
村上龍/69 sixty nine妻夫木聡主演で現在公開中の同名映画の原作。

この作品は、単行本が出たとき('87年)か文庫になったとき('90年)のどちらかに一度読んでいるので、今回は正確には「再読」なんだけど、まあ例によって例の如く内容は殆ど覚えていなかった(笑)
覚えていたのは「佐世保の高校生の話」ってだけで、彼らが何をしたとか何を考えていたとか、読んだとき(少なくとも今より15歳くらい若い)自分がどう感じたか、と言うのは全く忘却の彼方なのであった。

で、15年経った現在の私の感想はと言うと、「いかにも昔の田舎の高校生だなあ」。
とてもストレートな感じ。
多分、彼らは彼らなりに屈折したりしているんだろうけど、でもその屈折さえも素直に表現できている感じがした。

それから非常に映像的な物語だと思った。
これだったらかなり映画にし易いんじゃないかな。
それで出来上がってきたものが自分のイメージに合っているかどうかは別だけど。
でも、多分、佐世保北高の「バリ封」とかフェスティバルとか、本で読んでるよりも映像で見た方が、面白いと思う。
そう考えると、これって村上龍本人が映画化したくて書いた作品なのかな~?

最後がすっきりキレイに終わってしまっているのがちょっと不満。
そのあたりを映画ではどんな描き方をしてるのか興味があるな。
脚本がクドカンなのも気になるし。
もしかしたら見に行くかも。

<おまけ>
今日のニュースにこんな記事が。

佐世保北高校でまた落書き被害 映画「69」のシーンまねる?

【長崎】 14日午前6時20分ごろ、佐世保市八幡町の県立佐世保北高校で、校舎B棟1階の廊下の窓ガラス1枚が割られ、近くの壁と2年生教室の机がペンキで落書きされているのを、出勤した教諭が見つけた。佐世保署は器物損壊などの疑いで調べている。
同高では6月20日にも同様の手口の落書き事件が発生しており、同署は関連を調べている。同市では、同高を舞台にした村上龍氏原作の映画「69」が公開中で、映画の落書きシーンを模倣したとの見方も出ている。(西日本新聞)



<関連サイト>
「Japan Mail Media」
著者が編集長を務めるメールマガジン

山田風太郎『忍法帖短篇全集4「くノ一死ににゆく」』

  • 2004/07/15(木) 00:22:38

山田風太郎忍法帖短篇全集4
山田 風太郎 日下 三蔵
山田風太郎/忍法帖短篇全集4「くノ一死ににゆく」サブタイトルは「くノ一」と付いているけど、忍者ではなく普通の女性が登場する作品もいくつか。
でもどれも重要な役割であることには変わりない。
女性がメインだからか、今までの他の作品よりも情緒的で凝った構成の作品が多かったかな。
そして相変わらず斬新で独創的なストーリー展開が面白かった。

特に「かまきり試合」、「麺棒試合」、「摸牌試合」で見られた、別の人間の組み合わせで同じ状況を複数作って、それぞれに同じ動きをさせ、同じセリフを言わせる演出(下手な説明だ(汗)え~っと私は「『輪唱』みたいだな」と思いました。ちょっとは通じるかな?)がとても効果的で面白かった。

ただ「麺棒試合」のオチ(ラスト)は今ひとつピンと来なかったんだけど…どういう意味?

最後に、漫画家矢野徳氏が描いたイラストを配した「忍者 石川五右衛門」の絵物語を収録。
物語とイラストの雰囲気があっていてこれも力作。
物語だけ(第一巻に収録)よりも私はこっちのが好きだな。

イラストと言えば、この全集のカバーを担当している山本タカト氏のイラストも素敵♪
公式サイト(「yamamototakato.com」)によると丁度今日から銀座のギャラリーで個展が始まったそうなのでちょっと覗いてみようかな。
(しかしこのサイト、どこから入るか判らなくてしばらく探してしまった…こんなところに入り口が!(笑))

山田風太郎『忍法帖短篇全集3「忍法破倭兵状」』

  • 2004/07/11(日) 00:19:04

山田風太郎忍法帖短編全集3 忍法破倭兵状
山田 風太郎 日下 三蔵
山田風太郎/忍法帖短篇全集3「忍法破倭兵状」面白かった!
ちょっと長めの話もあったけど、テーマがぶれることなく粛々と進んでいくのでどんどん物語に引き込まれてサクサク読めた。
内容は所謂「房中術」と言った性質の話が多かったけど、決して下卑た表現はなくそれに絡むそれぞれの物語の展開が個性的で飽きることもなかった。
本当にこの想像力というのは素晴らしいと思う。

最初の方はストレートな展開で自分の同輩をも騙し殺してまで主命を達成するために命がけで任務に当たる忍者たちの姿が描かれているんだけど、終盤になるとその任務が終わって安心したのも束の間、変化する状況によって新たに与えられた使命に翻弄されていく彼らの苦悩に変わっていく。
その、他人に向けた刃が自分に向かってくるような終盤の展開の意外さがとても興味深く、かつ切なく描かれていて読み応えがあった。

どれもよかったけど特に、どんな女も確実に身籠もらせさらにその懐妊を水にすることが出来る忍法を使う六波羅十蔵の苦悩を描いた「忍法肉太鼓」(すごいタイトル!)と、お家の存続のため不能の殿様を助けた3人の忍者が辿る過酷な運命を描いた「忍法花盗人」の2作品の終盤の展開が面白かった。

振り向けばそこには血にまみれた累々とした屍が積み重ねられているけど、それを悼むものはなにもないと言った風情が却って物語の哀れさを引き立てている簡潔な最後の一文が秀逸。

ビートたけし『頂上対談』

  • 2004/07/11(日) 00:15:22

頂上対談
ビートたけし
ビートたけし/頂上対談ビートたけしと各界の著名人との対談集。
対談相手は長嶋茂雄を始めとして、石原慎太郎、松本人志、中田英寿など13人。

対談集を読むのは話し言葉である点やその場でお互いに理解できる内容で話さなければならない点から、普通の文章で書かれた話よりも判りやすいし情報量も多いので結構好き。

特にこの作品はインタビュアーの、相手本人やその職業に対する知識や好奇心から来る的確かつ鋭い質問が他の記事やインタビューではあまり読んだことのないその相手のホンネを引き出していると思う。
それは単にインタビュアーが優秀であると言うこと以上に、それが「ビートたけし」と言う、相手に対して影響ある存在である事がかなり大きなファクターになっている。

ただ、この対談集の場合、その相手が野球選手(長嶋茂雄、長谷川滋利、古田敦也)とか、スポーツ選手(中田英寿、桜庭和志)、お笑い芸人(松本人志)、映画関係者(今村昌平、淀川長治)などたけしの得意分野に身を置く人々だと言うことも忘れてはならない。

私が好きだったのは、(細かい内容はちょっと意味が判らないところもあったけど)たけしの「痒いところに手が届く」反応を恥ずかしがりながらも気持ちよく感じていたに違いない松っちゃんと、どっちがインタビュアーだか判らないぞと思うくらいたけしを質問責めにしていた故・淀川長治氏。
どちらもその人物の輪郭がくっきりと表現されていた。

実際に対談が行われたのが3~4年前だったので内容的に古い話が多いけど、その人物の人となりを垣間見られるいいテキストだと思う。



<関連サイト>
「OFFICE-KITANO WEB SITE」

川島誠『ロッカーズ』

  • 2004/07/03(土) 23:11:56

ロッカーズ
川島 誠
川島誠/ロッカーズ天才的な才能とカリスマ性を持つヴォーカリスト・セージを擁するロックバンド「NEXUS」。
14歳のある日、雨上がりの裏街でセージと運命的な出会いをし、憑かれるように彼の傍でギターを弾き続けた最年少メンバー・リンの目を通して語られる彼らの誕生、成功、葛藤、そして崩壊の物語。



内容的には、かなりありきたり。
特にビックリするような展開はありません。
「ロックバンドの栄光と挫折」と聞いて思い浮かべるストーリーそのままのような、いわゆる「セックス、ドラッグ、ロックンロール」な内容の物語です。

ちょっと異色なのは語り手であるギタリスト・リンがバンドに参加した時はまだ中学生で、高校を中退してメジャーデビュー、解散した時はまだ19歳だったって事かな。
しかも、彼は開業医の家の一人息子だっていうんだから…。
普通、そうなると家族の反対がすごいんじゃないかと思うんだけど、その辺は恐ろしく「サラッ」と流されているあたりがすごいです(笑)

センテンスが短くてリズミカルな文章がとても読みやすくて、内容よりもそのリズムがとても「音楽的」な作品だと感じました。

あさのあつこ『バッテリー2』

  • 2004/07/03(土) 22:08:01

バッテリー〈2〉
あさの あつこ
あさのあつこ/バッテリー2中学生になった巧と豪は野球部に入部するが、巧の才能と性格は監督や先輩部員たちとの間に軋轢を生む。
そしてそのきしみは遂にある事件を引き起こしてしまうのだった…。



まあ、1巻目の巧のあの性格だったら中学に入ってこういう結果になるのは目に見えていたと言う感じですが、その辺りを丁寧に書いてあるのがいいですね。
丁寧すぎて、息苦しいくらいです。

巧の言ってることは間違っていないと思うのと同時に、「でもやっぱり違うでしょ」とも思ってしまう。
どちらとも答えが出せないのは、私自身がそうした葛藤を経ずに協調する事を選択した結果なのかもしれません。

それにしても校則の厳しい中学校ですね。
私は中学校の頃の記憶が殆どないのですが(!?)、少なくともここまで校則をうるさく言われた事はなかったはず。
結構テキトーな生活だったと思います。
ま、だからこそ何の記憶もないとも言えるわけですが…(汗)

青波ファンの私としては彼の出番が少なかったのがちょっと不満!
でも、登場すれば相変わらずいいところをさらってしまうので、印象はとても強いです。
彼のお父さんも1シーンしか出てこないのにいい味出してました。
この辺の書き分け、リズム感もいいですね。

小川洋子『沈黙博物館』

  • 2004/07/03(土) 21:45:52

沈黙博物館
小川 洋子
小川洋子/沈黙博物館幼い頃から集め続けた個人のコレクションを展示する博物館を作ろうとする資産家で気難しい老婆。
その博物館を作るための知識の提供と、更なる収蔵物の収集のために老婆の依頼に応え初めて村を訪れた一人の青年。
そして、まだ少女のような老婆の一人娘と、その家の使用人である庭師と家政婦の夫婦。
彼らはゆっくりと心を通わせながら、いつしか安定したリズムの中でそれぞれの役割をこなしていく。
彼らが作ろうとした博物館の展示物、それはその村の人間が生きた証である「形見」だった。



この物語を読んでいて気になったのは「こんなに輪郭がぼやけて感じられるのは何故だろう」という事でした。
このくらい丁寧に描き込んである物語だったらもうちょっと楽にその世界が視覚的にイメージできるものなのですが、この作品はそれがとても難しかったのです。

どんなシーンでも青年からの視点から見た周りの情景はなんとなくイメージできるけど、彼と一緒にいるはずの他の登場人物は全く出てこない。
更には彼自身がどんな姿をしているかも判らない。
見えてくるのは彼を取り巻く村の様子ばかりでした。
その村もどこの国なのか(ヨーロッパ風なのか、アメリカの田舎なのか、はたまた日本の農村か)はっきりとは判らない、まるで特徴のない模型のような景色しか出てこない事がちょっと気持ち悪く思うくらいでした。

最初はその理由がよく判らなかったのですが、3分の1くらい読み進んだ所で「あ、名前がないからだ!」と気付きました。
この物語の登場人物や地名には固有名詞が全く出てこないんですね。
それが私のぼやけたイメージの正体でした。
そのせいでこの物語は確実にそこにあるのに、どこにあるのか判らないと言った曖昧な性格の作品になっているような気がします。

正直、「名前がない」というだけで作品がこんなにも不安定な雰囲気になってしまう(と言うか、読んだ私がそう感じてしまう)と言うのはちょっと驚きで、改めて「名前」の持つ意味を認識させられた気がしました。
そして思い出したのは(確か)「陰陽師」に出てきた「この世で一番短い呪(しゅ)は『名』である」と言う言葉。
「名前」と言うのは単にその人物を表現する記号ではなく、その人間の性格、外見、性質、イメージなど全てを内包しその人物を縛る呪文なのです。
その「名前」を持たない彼らは一体どこの誰なのでしょう。

そんな実体を持たない彼らが博物館の展示物として蒐集するのもが、村の人間たちの生きた証としての「形見」なのです。
名前=実体を持たないから「物」を集めたということでしょうか。
もしかしたら彼らが集めたものは実は「物」の形をした彼らの「名前」そのものだったのかもしれません。

『私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。思い出などというおセンチな感情とは無関係。もちろん金銭的価値など論外じゃ。』(本文p49より)

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