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◆Date:2004年06月
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クラフト・エヴィング商會『クラウド・コレクター』

  • 2004/06/27(日) 21:39:44

新版 クラウド・コレクター
クラフト・エヴィング商會
クラフト・エヴィング商會/クラウド・コレクタークラフト・エヴィング商會の先代である祖父・傳次郎が遺した古いトランクから出てきた古ぼけた一冊の手帳。
そこには祖父を主人公とした架空の国・アゾットへの旅行記が書かれてあった…。
これは孫である三代目「私」がその旅行記を読み解く事で祖父の「空想」を受け継ぎ、彼が残した大いなる「嘘」を検証し、その想いの全貌を再構築した物語である。



初の「クラフト・エヴィング商會」本。
名前は本屋でよく見かけていたのですがてっきり本の装丁とかデザイン関係のお仕事をしている集団(会社?)なのかと思っていました。
お話も書いてらしたんですね。

21のエリアに別れた空想の国「アゾット」。
そこで傳次郎が出会う、不思議な人々や習慣。
そしてそこに込められたいくつもの謎と想い。
初めて読む物語なのに、どこか懐かしく優しい気持ちにさせてくれる物語でした。
旅先で傳次郎が集めてきた(と言うことになっている)各エリア特産の酒のラベルや怪しげな興業のパンフレット、タロットカードなどのちょっとアンティーク風の数々のイラストも素敵です。
中でも特に傳次郎氏が描いた「天使の行列」のスケッチ(p95)が印象的でした。
「祖父の書いた物語を辿る」と言うセンチメンタルな題材なのに湿っぽくならずに、むしろ軽いユーモアを交えて淡々と書いてある所にセンスの良さを感じました。

ただ作品自体はすごく素敵だったのですが、読むのにちょっと時間をかけすぎてしまった(10日)ためにちょっと印象がボンヤリしてしまったのが残念でした。
そんなに一気に読む感じの物語ではないけど、もうちょっとまとめて(3日くらいかな?)読むべきでした。
ちょっと後悔…。

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柴田よしき『ふたたびの虹』

  • 2004/06/20(日) 21:24:49

ふたたびの虹
柴田 よしき
柴田よしき/ふたたびの虹柴田よしきの本を読むのは久しぶり。
「RIKO」シリーズも、「炎都」に始まるシリーズ(このシリーズは何て呼ばれてるの?)も最初の方は面白く読んだけどその後が続かないし、その他に出ている最近の作品は何だかテーマが重そうでどうも読む気になれないし。

今回のこの作品は丸の内にある小さな小料理屋が舞台…と言うのでそんなに重くなる気遣いはないだろうと思い手に取ってみた。

結果、すごく面白かった。
まず冒頭部がいい。

その店はとても小さくて、しかもわかりにくいところにあった上に、これまで一度も雑誌の類に紹介されたことはなかった。だからどうしても常連客が多くなり、毎夜のカウンターの顔触れは時間ごとにだいたい同じになる。だが、それでもけっして、初めての客が不愉快になるような、あの、顔馴染みだけに親切なある種の排他的な雰囲気は漂っていない。
(p8より)

ね、いいでしょう♪
特に最後の一文が効果的。
その上出てくる料理は一人で切り盛りする女将が築地で選んだ旬の材料を京風の「おばんざい」(それも料亭で出てくるような薄味のじゃなくて、京都の家庭で作られるようなご飯に合うちょっと濃いめの味)に仕立てて出てくるし、しかもその女将はちょっとした雰囲気のある美人だっていうんだから、もうこれだけ読んだだけで「どこのお店?」ってちょっと捜してみたくなる。

この小料理屋「ばんざい屋」の女将を中心に話は進んでいく。
読む前はこの小料理屋の中だけで話が進む「安楽椅子探偵」もの(北森鴻の「花の下にて春死なむ」みたいな)かなと思っていたらそうでもない。
じゃあ一話完結の謎解き物かな、と思って読んでいたらこれも違っていて、どうもこの女将には結構重大な謎が隠されているらしい事が判ってくる。
更にその間には女将となじみの骨董屋の主人とのしっとりした大人の恋の話が入ってきて、そして回を追うごとに長い間閉じられていた謎の箱の蓋が少しずつ開けられて最後は…と言う感じで、一冊の中でいくつもの楽しみ方が出来る作品だった。

しっかりと練り上げられた構成の謎物語の中にさりげなく盛り込まれる季節のおばんざいや、女将の趣味であるブロカント(骨董よりも新しい時代の雑貨類)の話、そして迷いや哀しみの果てに辿り着くしっとりとしたそして希望がある結末。
最初から最後まで気持ちよく読めた。

事件は起こるけど悪人が出てこないところや、タイトルに付けられた英文もマル。


<関連サイト>
「space Shibatay」

大塚ひかり『カラダで感じる源氏物語』

  • 2004/06/20(日) 21:21:25

カラダで感じる源氏物語
大塚 ひかり
大塚ひかり/カラダで感じる源氏物語先日読んだ「源氏の男はみんなサイテー」と同じ著者による源氏論。
この作品は、それまでの物語とは全く別の生き物のように身体への存在感を与えられた源氏物語の登場人物たちの秘密と、「視覚、嗅覚、触覚、聴覚、味覚」の五感を描くことで与えられているこの物語のリアリティについて書かれている。

語り口の軽快さとそれに反した論の鋭さ、深さは「源氏の男は~」と同様で非常に読みやすく興味深い。
但し、その内容に関しては80%くらいダブっていた感じ。
まあ、同一人物が同じ題材で書いているわけだから当然と言えば当然だけど。

2冊読んで損したとは思わなかったけど、どちらか片方だけでもよかったかも。
で、どちらを選ぶかとなると私は男性登場人物ごとに論を進める形の「源氏の男は~」のが好きかな。

石田衣良『電子の星』

  • 2004/06/17(木) 21:18:00

電子の星 池袋ウエストゲートパーク〈4〉
石田 衣良
石田衣良/電子の星人気シリーズ「池袋ウエストゲートパーク」の第四弾。
表題作を始め4作を収録。



お気に入りの作家の、大好きなシリーズ最新作。
こういう作品の感想を書くのは非常に難しい。
いやが上にも期待は大きくなるしその分評価は辛目になってしまうし。
その上で「すごく面白かった!!!」と書ければこんな嬉しい事はないけど、微妙な読後感だとどう表現していいやら…。
面白くないわけでは決してない。泣いちゃった作品もあるし。
でも、やっぱり何か「物足りなかった」と言うのが正直な感想。
(衣良さん、ごめんなさい(汗))

今までの作品ではマコトは誰かの手助けをするとき、いつもその相手と目線が同じ位置にあった。
例えそれが自分よりうんと年下の子供だったとしても。
でも、この作品の中でのマコトはちょっと違う。
一人息子を亡くした老タクシードライバー、モグリのデリヘルで働くビルマ人の少年、失踪した友人を捜しに来た山形の引き籠もり少年…そうした「依頼人」たちの"保護者"とまではいかないけどちょっとだけ目線が上にあって先まで見通せる目を持っている。
もちろんそれは池袋が彼のホームグラウンドだからだろうし、彼の成長の証でもあるのだけど…そんなマコトを見るのが私はなんとなく寂しかったんだな。
「こんなの『私の』マコト(誰がだ!)じゃないっ!」とか思ってしまって(笑)

なので、マコトと同じ目線のタカシから依頼された仕事を解決する「東口ラーメンライン」は私のイメージするマコトに近くて読んでいて一番楽しかった。

あまりにも作品や登場人物に思い入れを持ってしまうと、作品や人物のイメージと言うのを自分勝手に思い描いてその方向で物語が進むことを勝手に期待していたりする。
で、それに合っていない作品が出てきてしまうと、勝手にガッカリしたり怒ったり…。
こういうファンって、送り手(この場合は作家)には結構ありがた迷惑なんだろうなあ。
でも、ファン心理って基本的にそういうものだからそんな事で左右されてたら送り手ではいられないだろうけど。
ただ、受け手としてはそこまで好きになれる作品があることを幸せだと感じると同時に、その「好き」に縛られて作品を素直に楽しめなくなる事があるのは残念な事だとも思う。
(まあ、好きでやってる事なんだからそんなにストイックに考えることもないとは思うけどね)

表題作の「電子の星」は、扱っている題材が非常に苦手な部類なので読むのがキツかった。
(それも夜中に読んだので、途中で止めるのが気持ち悪くて最後まで読んだら2時近くまでかかってしまった…。休日の昼間一気読みすればよかったよ(泣))
で、内容はかなりグロい部分があるし、結末も結構悲惨なのにラストは妙に爽やかだったりするのにちょっと違和感を覚えた。
そんなに吹っ切れるものなのかな。
まあ、悲惨なまま終わられてもつらいけど。

「あの内戦のときも今回もそうだが、おまえは正しいと自分が信じることのためなら、どんなやばい手でも平気で打ってくるな。危ないやつだ。おまえとおれは、案外似たもの同士なのかもしれないな」(p175より)

西澤保彦『幻惑密室~神麻嗣子の超能力事件簿』

  • 2004/06/15(火) 21:52:06

幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿
西澤 保彦
西澤保彦/幻惑密室~神麻嗣子の超能力事件簿「チョーモンイン」神麻嗣子シリーズ 長編第一作。

会話のテンポはいいし、登場人物の造形も個性的。
どこに着地するのか判らない展開にグイグイ引き込まれて、結局ほぼ1日で一気読み。
つまり、全体的な感想は「面白かった」なんだけど…う~ん、どうも引っかかる。

何がかというと、事件の鍵となる超能力の種類。
今回の超能力は「ハイパーヒプノティズム(略してハイヒップ。超催眠術)」。
これによって作られた『どうしても外に出ていけない空間』の中で殺人事件が起こると言う話なんだけど、とにかくこのハイヒップという超能力の定義が(私には)難しすぎた。

もちろん、その内容については神麻さん、能解警部、保科の3人の会話の中で丁寧に説明されるわけで、事実それを読んでる間は「あ、なるほど」と思っていたんだけど…読み進めるうちに段々わけが判らなくなって来ちゃって。
いや、基本的にどう働くかっていうのは理解できるんだけど、何しろこの超能力、すごく細かい法則が存在するのよね。
確かにこんな能力、無制限に使えたら何でも出来ちゃうからとてもミステリーの題材になんかならない。
だからその能力に制限を設けるのは設定上仕方ないんだとは思うんだけど、それにしても細かすぎる。
更には、その細かい法則を使ってる本人が判ってる、と言うことが私にはどうしても納得出来なかったんだな。
いくら自分が所有している能力だって言ったって、その法則全てを把握してるって事はあり得ないんじゃないかと思う。
なのでそれを全て理解した上でこの超能力を使っている、と言う前提自体が私にはちょっと受け入れにくいものになってしまったと言う事なんだと思う。
(自分の理解不足から来る八つ当たりかも知れないけど(汗))

それから、この物語は全編「男と女の関係」の話が底流に流れてて、いくつもの関係論が語られる。
それらは確かに説得力あるし面白いと思ったけど、あまり「ああ、そうだね~」って納得したくない内容であった。
ただ、それでも「イヤだ」と思わせずにスルスル読ませる筆力というのはさすが。

ところで、この作品を読みながらふと、第一作目で主人公のミステリ作家の部屋でまず超能力を使った殺人事件が起こる、と言う設定は主人公にこの作品世界の設定を否応なく認めさせると同時に、その目を通して物語を見ている読者にも同様の効果をもたらすためのものだったんだなあ、と言うことに思い当たった。
主人公が否定的だったら、話は前に進まないもんね。

鯨統一郎『九つの殺人メルヘン』

  • 2004/06/13(日) 21:45:55

九つの殺人メルヘン
鯨 統一郎
鯨統一郎/九つの殺人メルヘングリム童話の新解釈と、殺人事件の謎解きを組み合わせた推理小説の短篇集。
「ヘンゼルとグレーテル」、「赤ずきん」、「シンデレラ」、「白雪姫」など9つの作品が題材になっています。

解釈はどれも面白いし、事件の謎解きもそれなりに纏まっていると思う。
特に最初の2作くらいはその2つがきちんとリンクしていて「ほお~」と思う作品になっていたけど、それ以降は何となくそれぞれがバラバラな場所にあるものを無理矢理一緒の所に持ってきたみたいな印象で、別にこれとこれは一緒にしなくてもいいのでは…みたいなものが多かった。

事件とは全く関係ない部分で登場人物(この作品の舞台になっているバーの常連2人とマスター。42歳のオジサン3人)が披露する昔のヒット曲やらTV番組やら子供の遊びやら…の話は面白かった。
懐かしの無駄知識って感じ。

次から次へと展開していく話は確かに楽しいんだけど、これがまた後半に行くに従って話の量が増えていく所あたり、どっちがメインなんだ!って感じ(笑)
ま、面白かったからいいけどね。

あと、物語の舞台である日本酒バー「森へ抜ける道」で饗される日本酒の蘊蓄や、美味しそうな料理の数々も楽しかった。

この著者の作品ってまだ3~4作しか読んでいないけど、その中で判断する限りでは物語の本編よりもこういう「周辺情報」の方が面白いような気がする。
なんとなく「本末転倒」な感じがしなくもないけど、それでも全体的にユーモアがあり披露されてる知識が多岐に渡っていて、またその書き方が自然な感じ(尊大でもないし、卑下してるわけでもない)なのですんなり読めてしまうのは好感が持てるからいいかな。

それにしても桜川東子さん(この作品のヒロイン 兼 謎解き役。大学で「メルフェン」を専攻しているお嬢様)、日本酒飲み過ぎです。
それに、金曜の夜だってのに毎週3人しか客がいないようなバー(しかも出てくるお酒や料理はちゃんとしてる)の経営は大丈夫なんだろうか…(笑)

大塚ひかり『源氏の男はみんなサイテー』

  • 2004/06/13(日) 21:43:16

源氏の男はみんなサイテー
大塚 ひかり
大塚ひかり/源氏の男はみんなサイテー副題は【親子小説としての源氏物語】。
「源氏物語」を<男女関係>ではなく、<親子関係>と言う切り口で分析した源氏論。

タイトルはちょっとふざけてるし、語り口も結構軽かったりするんだけど、書いてある内容はかなり真面目。
しかも、テーマが安定しているので読みやすく、切り口も斬新でしかも説得力があるので今まで読んだ<源氏論>の中ではダントツの面白さだった。

ご多分に漏れず私も「源氏物語」って言うとつい反応してしまうタイプ。
さすがに原文は読んでないけど(昔、古典の授業でやった程度)、一応現代語訳は全巻通しで読んだ(それが橋本治訳「窯変 源氏物語」だったりする辺りが私らしい…(笑))し、他にはマンガとか、<源氏論>とか、あまり難しすぎなくて手に取りやすいものだったら結構読んでるんじゃないかな。
で、その度に例の自分勝手で相手の気持ちなんか全然気にしないくせに勝手に悩んだり傷ついたりしてばっかりいる登場人物に「あ~、もうイライラするっ!」って腹を立てていたりするわけで。
(だったら読まなきゃいいじゃん、って事なんだけどね(笑))

その点、今まであまり触れられなかった「源氏物語」に登場する男たち(もちろん光源氏も含む)のダメさ加減を徹底的に追求し、それを原文の表現や当時の慣習、また昔も今も変わらな‭い人としての心の動きなどに照らして分析していく、という内容のこの本は、その辺の苛立ちの原因を的確に、そして冷静に分析してくれるので「ああ、なるほどね」とイチイチ納得しながら、すごく面白く読めた。

中でも私が一番嫌いな「宇治十帖」での薫のグダグダさについて分析してある全3章は読み応えあり。
(ちなみにこの3章と言うのは、登場人物中一番の長さ。主人公である光源氏(全2章)よりも長い。)
それと朱雀院について書かれた『ホモ疑惑のミカド』(!?)も面白かった!

語り口は登場人物たちを辛辣に斬っているものの、その根底には彼らへの理解と共感があるため、単なる悪口には終わってないところもいい。

また文学作品としての現代語訳では読み切れない(語られない)行間に表現された感情や、慣習に則った上での行動、セリフなどへの解説も判りやすくて面白かった。

この著者は他の切り口での源氏論もいくつも書いているようなので、機会があったらそれも読んでみようと思う。

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