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◆Date:2003年02月
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梶尾真治『黄泉がえり』

  • 2003/02/21(金) 19:51:15

黄泉がえり
梶尾 真治
梶尾真治『黄泉がえり』熊本市内で小さな地震が観測されたその日、市内の何ヶ所かで「火の玉」が目撃された。
その日を境に熊本市内では不思議な現象が始まる。
既に死んだ人々が次々と生き返り、家族の元に返ってきたのだ。
38歳の会社員・児島雅人の家にも27年前に35歳で死んだ父親が当時のままの姿で帰ってきた。
今話題の同名映画の原作小説。



なかなか面白かった。

こういう内容だと、普通は蘇った本人と家族の関わりに焦点が当てられる事が多いと思うんだけど、この作品ではそこに行政的な関わりも取り入れた事で成功していると思う。

こんな事が実際に起こったら(イヤ、起こらないだろうけど(笑))、普通はビックリするのが一番で「じゃあ、これからどうしようか」って考えるのはしばらく経ってからじゃないのかなあ。
それなのに作品の中では黄泉がえりが始まった数日後には市役所に戸籍を復活させるための依頼が殺到する。
で、それに対して熊本市役所もビックリするほど柔軟で迅速な対応をすると言う…。
私は各家庭のドラマよりも、こうした地方行政の対応の方が面白かった。

熊本って小説の舞台として決してメジャーな土地じゃないと思う。
だから、この作品の舞台が熊本なのって何か意味があるのかな?と思って著者のプロフィールを見たら、やはり著者の出身地とのこと。
更にこの作品は熊本の地元紙に連載されていたらしい。
なるほど。
とすると、この作品中の地方行政の動きって言うのは、著者が現実のそれに求めるものなのかな。

愛する人々が黄泉がえってきた各家族についてはそれぞれ色んなドラマが展開するけど、取り上げる数が多すぎてしまいちょっと曖昧になってしまった部分があるように感じる。
特にラストはちょっと不満。
その家族ごとに色々なパターンが描かれるけど、あまりにも多様すぎてちょっと納得できない部分もあった。
「ここだけは譲れない」っていう線を設けた方が良かったんじゃないかな。

それと疑問だったのは取り上げられた黄泉がえり(5人)の中で、人気歌手のマーチン(この名前もどうよ?と思う(汗))以外は全員男性なのは何故か、と言うこと。
5人いるならもう一人くらい女性でも良かったのでは…?
そういうバランスの問題でもないかも知れないけど。

ちなみに映画の主要キャラクターは原作には出てきません。
映画は原作に設定を借りた別作品と言うことになるんでしょうね。

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出久根達郎『おんな飛脚人』

  • 2003/02/19(水) 19:47:58

おんな飛脚人
出久根 達郎
出久根達郎『おんな飛脚人』偶然同じ日に同じ飛脚問屋「十六屋」で働き始めた"まどか"と清太郎。
どちらも江戸の町の人々が振り返るほどの俊足の持ち主だった。
そして2人とも飛脚問屋に勤めるには、何か思うところがあるらしい…。
そんな2人を始めとした「十六屋」の面々が巻き込まれる人情話の数々。



一話完結の連続もので、その一つ一つに小さな謎が配され、更に全ての物語の通した謎が最後に明かされる、と言う構成。
こう書くと「判じ物」とか「捕物帖」みたいな感じがするけど、実際に読むとかなり淡々と書かれていて謎の部分よりも江戸の風物や飛脚のシステムなどの方が印象に残った。
先月読んだ「御書物同心日記」でも同じような感想を持ったので、これはこの著者の文章の特徴なのかな。

まどかや清太郎を始めとした登場人物たちがあまりにも淡々としすぎていてちょっと物足りない部分もあり。
特に2人の過去についてはもうちょっと盛り上がりがあってもいいのでは…と言う気もするなあ。
その分すんなりサクサク読めるけど。
それに登場人物に(本物の)悪人が出てこないのも、このお話には合っていて気持ちよく読めた。

でも、タイトルの「おんな飛脚人」っていうのはあんまり内容と合っていないような気がするんだよねえ。
もうちょっと柔らかい雰囲気のタイトルのが良かったと思うんだけど…。

大田垣晴子『わたくし的読書』

  • 2003/02/17(月) 19:43:48

わたくし的読書
大田垣 晴子
大田垣晴子『わたくし的読書』画文家である著者が、イラストと文章で本を紹介する「書評コミック」。

お馴染みのセイちゃんのイラストと、読みやすい書き文字、そしてほんわかしているようでいて結構辛口な内容が楽しい。

ただ、つい絵の方に目が行ってしまい、あまり何の本についての話なのかと言う印象が残らなかったので書評本としての役割はどうなのかな?(笑)

目黒考二『酒と家庭は読書の敵だ。』

  • 2003/02/15(土) 19:38:18

酒と家庭は読書の敵だ。
目黒 考二
目黒考二『酒と家庭は読書の敵だ。』将来の職業を選ぶときって普通は「自分の好きなこと」を選ぶと思う。
例えそれが「夢」だったとしても、「好きなことをしている自分」を思い描いてそれに向かって努力する、と言うのが正しい姿だよね(多分)。
ところが、心配性で根性なしの私の場合「でも、仕事にしたらその好きなことを嫌いになってしまうのでは…」という心配が先に立ってしまい、結局好きなことを職業にすることはなかった。
(と言うか単に努力するのが面倒だったのかも…(汗))

例えば本を読むのがいくら好きでも、それが仕事で毎日毎日、それも自分の許容量以上の本を読まなくちゃならなくなったら絶対本を読むの嫌いになると思う。
(まあ、考え方によっては「その程度しか好きじゃなかった」とも言えるけど)

そんな生活を毎日していながら、本が好きでたまらない著者。
その筋金入りの本好き加減が満喫出来るエッセイ集と、文芸雑誌の作品を俎上に載せた文芸時評、そしてギャンブル本の書評集を出すのが夢だった著者が書いた競馬本の書評をまとめた一冊。

いろいろ「なるほど」な部分があったけど、一番興味深かったのは『無人島に一冊だけ本を持っていくとすれば』の話。
こういう設問ってよくあるけど、著者はその答えとして『毎日無人島の前を本入りの段ボールが流れてきてくれれば、その表紙を見るだけで満足できる』と書いている。
なるほどこういう考え方もあったか!と目から鱗の答えであった。
(表紙が無理なら「背でもいい。」と書くあたりがまたスゴイ)
やっぱり半端な「好き」じゃ、お金を貰うことは出来ないのね~(汗)

なるべく読者に誤解がないようにと気遣いながら丁寧に論を進めつつも、最終的には「ま、判らなければ判らなくてもいいかな」みたいな緩さもどこかに感じられる文章がとても読みやすかったです。

舞城王太郎『阿修羅ガール』

  • 2003/02/11(火) 19:31:03

阿修羅ガール
舞城 王太郎
舞城王太郎『阿修羅ガール』高校生のアイコは6年越しで同級生の金田陽治に片思いしている。
ある日全然好きでも何でもなかった同級生・佐野と「ちょっとやってみたかったから」やってしまい落ち込むアイコ。
その上、翌日学校に行ってみると佐野が行方不明になったと言う…。



なんて、一応物語のさわりを書いてみたけど、相変わらずこのまますんなりと話が始まって終わるわけじゃないオウタロウ・ワールド。

今回の主人公は高校生のアイコなので、奈津川兄弟に比べれば随分大人しいもののやっぱり疾走してる、というイメージ。
読んでいて気持ちいい。

アイコは確かにあまり賢くないかもしれない。
好きでもない相手とセックスして勝手に落ち込んでるし、同級生の女の子たちに呼び出されたトイレで逆に相手をボコボコにしちゃうし(ちょっとは手加減しろって)、ネットの掲示板に自分が不利になる書き込みしたりしちゃうし…。
読んでいると「おいおい、なんでそんな事を…」と思うような行動が多くてハラハラする。
でも、アイコはどんな時でもちゃんと自分の頭で考えて行動している(それがたとえ間違っているとしても)分、すごく真っ当だと思う。
人間として感じなくちゃいけない痛みとか優しさとか怖さとかを、ちゃんと自分の中で、自分の言葉で処理しながら生きている。
思考停止状態で生きている人(例えば私とか)に比べれば100万倍くらいマシでしょう。

この物語にはアイコの親は登場して来ない。
唯一登場する2つ3つ年の離れた兄もアイコと仲が悪いわけではないのに、名前も出てこないし外見や容姿の描写もなく(会話で「イイヤツ」な雰囲気は伝わってくるけど)割とあっさりした描き方になっている。

それに対してアイコの陽治に対する信頼というのはすごいものがある。
そういう部分を読んでいてつい「刷り込み」を思い浮かべてしまった。
カモなどの鳥が卵から孵って一番先に見たものを親だと思って付いて歩く、っていうアレ。
アイコにとって陽治はそれまで卵の中にいた自分を目覚めさせてくれたものだったんじゃないのかな。
そこに陽治がいるからアイコは何があっても自分でいられる。
例え他の誰が否定しても、この人が認めてくれるなら大丈夫、そんな存在。

人には始めに誰を好きになるかで、決定してしまう「何か」もあるのかも。

まあ、そんな感じでアイコくらいだったら何とか自分の中で整理して受け入れたれたりするけど、グルグル魔人はやっぱり怖い。
こういうのを怖いと思ってしまうのが私の限界なんだろうね。
でもやっぱり怖いものは怖い…と言うか気持ち悪いし、理解できなくてオーケーって感じかな。

でも、そんな気持ち悪いヤツの描写でもちゃんと読ませてしまうのがオウタロウなんだな。
相変わらず好きな人は好きだし、嫌いな人は嫌いでしょう。
でも、それでいいと思うよ。

阿刀田高『鈍色の歳時記』

  • 2003/02/10(月) 19:27:22

鈍色の歳時記
阿刀田 高
阿刀田高『鈍色の歳時記』阿刀田高氏の作品は以前何かのアンソロジーで偶然目にしたくらいで、あまり意識して読んだことがなかった。
今回手に取ってみたのは、タイトルと表紙(ブルーグレーのバックに置かれた朱色の丸い器、それを目指して集まってくる赤と青の小鳥の絵)が平台の上で目を惹いたから。
でも、こういう作品は大体面白いんだな。

これも良かった。
「豆撒き」「父の日」「年の瀬」などのよく耳にする言葉から、「半夏生(はんげしょう)」「油照り」「鉦叩き」などの初めて聞くような言葉までその季節を表す季語を題材にした短篇が12入っている。
主人公は殆どが40代後半から60代、人生の折り返し点を過ぎた人たち。
今までの人生を何とか自分なりにやり過ごしてきて、明日も同じように過ぎていくのだろうと思っているある日、主人公に起こる出来事。
その何気ない日々の描写と、最後に用意されている結末のギャップが背中をシーンと冷たくするような感じ。
変なホラーよりもずっと怖い、でもとても懐かしいものを読んだような気がする。

忙しく一人の日々を送る未亡人が死んだ夫の七回忌を前にふと微かな気配を感じ取る「鉦叩き」が一番好き。

巻末の宮部みゆきによる(解説代わりの)「短編小説講座」も楽しいです。

しかし、浅田次郎もそうだけど、こういう作品を普通に「いいなあ」って感じるようになったというのは、私が年を取った証拠なんでしょうねえ…(笑)

有栖川有栖『有栖川有栖の密室大図鑑』

  • 2003/02/08(土) 19:24:07

有栖川有栖の密室大図鑑
有栖川 有栖
有栖川有栖『有栖川有栖の密室大図鑑』推理作家・有栖川有栖氏が古今東西の密室ミステリーの中から名作・傑作41作品(海外20作品、国内20+1作品)をチョイスしてそれを解説、更にその密室をイラストレイター磯田和一氏が図解した一冊。

楽しかった♪
とにかく有栖川氏の紹介文が上手い!
これは単に技巧的なうまさ、と言うより「自分が好きなものを他の人にも知って欲しい!」と言う情熱(いや、単に「好きなものを書けて幸せ!」と言った気分か?(笑))があるので読んでいて気持ちいい。
やはり本(でなくても何にしても)の紹介をする文章だったら「この本、読んでみたいな」と言う気分にさせてくれるのがいい文章だよね。
で、この本には更に技巧的なうまさもあるわけだから面白くないはずがない。
この本の中で有栖川氏は全ての作品に関して作品の内容(特にその密室がどのような状態であったか)を本文を引用する形で書いている。
普通こういうのって「ネタバレ」の危険性があるので加減が難しいところだと思うんだけど、これを読む限りではそれによって作品に対する興味はなくなるどころか却って「どんな作品なんだろう、読んでみたい!」と言う興味を引き出す事に成功している。
さすがプロの作家さんです。

そして密室を描いたイラスト。
これもまた楽しい♪
文章だけでは今ひとつイメージがわかなかった密室が、イラストにして貰うことで位置関係や状況がひとめで判って更に興味を持てた。
更に磯田氏の一見ラフな感じなのに実は緻密な絵が推理小説の雰囲気に合っていてとても良かった。
元々氏のイラストが好きな私には、思いがけない再会もとても嬉しかった。
(本作には関係ないけど密室とか建物がメインの推理ものにはここまで緻密じゃなくてもいいから、せめて見取り図は入れるようにして欲しい、といつも思う。)

驚くのはここに載っている41作品の中で私が最後まで読んだことがあるのが1作もない、と言うこと。
(「最後まで」と書いたのは、森博嗣「すべてがFになる」だけは途中まで読んだことがあるから)
それどころか、ここに出てきた作家の他の作品も(多分)一冊も読んでいないと思う…(恥)
自分ではミステリーとかも割と読んでいるような…?と思っていたけど、全然そんな事なかったのね~。
これからこれを参考に読んでいきたいと思います。

津原泰水『妖都』

  • 2003/02/02(日) 19:14:11

妖都
津原 泰水
津原泰水『妖都』鞠谷雛子は大学に入学し東京に出てきて以来、毎晩のように悪夢に悩まされていた。
それは生きた屍体に襲われ殺されそうになる夢だった。
そして苦しむ雛子に屍体は言う、<苦しいなら早く再生なさい>。
ある日、目の前で交通事故を目撃した雛子は帰りの電車の中で死んだ女に襲われたところを美少女・馨に助けられる。
実際に死者が見える馨は、あの死者たちはこの数ヶ月で東京に頻出するようになったと言う。
東京では何が起ころうとしているのか、そして雛子に向けられたメッセージとは。



すごく面白く読んだ。
人を襲う死体、自殺したロックグループのカリスマヴォーカリスト、両性具有、国造りの神話…。
そういう怪しげなモチーフがこれでもかっ!って言うほど入っていて、オドロオドロした雰囲気なんだけど全然下品じゃない。
それどころかどんな陰惨な殺戮シーンにも気高さが感じられるほどの冷めた文章が心地いい。
たくさんの情報を取り込みながらも、それを丁寧に煮出してキチンとその上澄みだけを取った透明なスープのような感じ。

この作品に「結末」はない。
雛子は、馨は、その他の登場人物たちはこの先どうなるのか?
そして東京は?
全ての物語たちは結末を持たないまま、増殖を続ける。

普通だったらこんな終わり方をする物語にはストレスを感じると思うけど、この作品に関しては「こういうものなんだなあ」と何となく納得してしまう。
それは、現実の生活にはエンドマークが付くことがないのと似ているからかも知れない。

佐藤嗣麻子氏が解説で書いている
『(「妖都」は)津原泰水という作家のチャンネルから見た、実際の世界の一部のような気がしている』

と言う意見に納得。

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