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金子達仁 他『魂の叫び-J2聖戦記』

  • 2002/06/30(日) 23:50:23

魂の叫び―J2聖戦記
金子 達仁 中西 哲生 戸塚 啓
金子達仁 他『魂の叫び-J2聖戦記』1998年11月19日、川崎フロンターレはJ1参入決定戦で逆転延長Vゴール負けを喫し、J1参戦の夢を絶たれた。
翌年の11月5日、サガン鳥栖を同じ延長Vゴールで破り悲願のJ1昇格に至るまでの1年間の苦闘をキャプテン中西哲生が自ら綴ったホームページの原稿を中心に収録したノンフィクション。



巷ではサッカー熱が盛り上がっているようなので(笑)サッカー本を読んでみました。

これは1997年から1998年のフロンターレの歴史を書いた本なのですが、その冒頭に「文庫版まえがき」としてJ1に昇格したフロンターレが大幅なメンバーチェンジをしてその結果中西は出場機会を与えられずそのまま引退、それにも関わらずチームの成績は低迷し2001年、2002年はJ2として闘っている姿が書かれています。
多分、これがあるとないとじゃ読んだ時の感想って全然違うんじゃないのかな。
私はこの文章を最後じゃなくて最初に置くと言う構成はすごく「うまい」と思いました。

内容も面白かったです。
文章も読みやすくて、何かにひたむきに賭けていく熱気がストレートに伝わって来て感動的でした。

ただ、私にサッカーやJリーグについての知識が皆無であったため、著者各氏がそこに込めたであろう真意にはたどり着くことが出来ないのが残念でした。

1998年の参入決定戦で敗れたときに撮られたキャプテン・中西の号泣する姿を映した表紙も印象的です。

しかしタイトルはどうかなあ?
私は「何だか一昔前のハードロックバンドのアルバムタイトルみたい…」と思ってしまったのですが(笑)

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浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』

  • 2002/06/29(土) 23:46:28

鉄道員(ぽっぽや)
浅田 次郎
浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』映画化で話題になった表題作を含む短篇集。
収録作品は「鉄道員(ぽっぽや)」、「ラブ・レター」、「悪魔」、「角筈にて」、「伽羅」、「うらぼんえ」、「ろくでなしのサンタ」、「オリヲン座からの招待状」の8作品。

何だか…すごく上手いマッサージ師さんにかかったみたい。
泣くツボをきっちり押さえていて、「ちょっと痛いけど気持ちいい」って感覚で泣けちゃう話ばっかりだった。
私は今回、殆ど外(電車の中とか会社とか…)で読んだのでそんなでもなかったけど、部屋で読んだら絶対にボロボロ泣けちゃったと思う。
(外で読んでても涙目になっちゃうくらいだった)
映画がヒットするのも判るなぁ。
日本人って「泣ける」のが好きだもんね。
でも私としてはこれを映像化するなら、長編じゃなくて30分くらいのショートフィルムで見たい。
何も余計な物を付け加えずにそのままスッキリと、きちんと映像化した作品の方がいい。
そのくらいこの作品たちは一つ一つ美しく完結していると思う。

私が一番好きなのは著者の幼児体験を描いたと言う「角筈にて」。
これもサラリーマンのおじさん(それもちと不遇な)が読んだら絶対泣くね(笑)

でも一番印象的だったのは「伽羅」の中のワンシーン。
主人公はアパレル会社の遣り手営業マン。
その主人公がその会社の社長(若くして財を築き、会社をワンマン経営する自信家。モデル出身の会社のデザイナーと不倫の噂アリ)と飲みに行って、そのまま酔っぱらった社長を女の家まで送って行く。
その先で待っていたのは想像していたそのデザイナーではなく、「所帯やつれした中年の女(妻ではない)」だった、と言う所。
あまり本題には関係ないんだけど、ここでこういう女性を持ってくるセンスがスゴイなあ、と思って印象に残るシーンでした。

高橋克彦『だましゑ歌麿』

  • 2002/06/22(土) 23:40:41

だましゑ歌麿
高橋 克彦
高橋克彦『だましゑ歌麿』江戸の町が大嵐による高波に襲われた夜、その混乱に乗じて「おりよ」という女が行方不明になる。
おりよは江戸で人気の絵師・喜多川歌麿の女房だった。
数日後、おりよは何人もの男に陵辱され、瀕死の状態で発見されるがそのまま息を引き取る。
人手不足で見回りに駆り出され「おりよ」の事件に関わり合うことになった南町奉行所の同心・仙波一之進は事件の真相を追う。
調べを進めるうちに次々と明らかになって行く恐るべき事実…。
その結果仙波は、同心としての立場や更には自分の命をも賭けてその核心に切り込んでいく事になる。



面白かった~っ!
こんなに最初から最後まで面白い物語を読んだのは久しぶりかも。
かなりボリュームがあった(642ページ)けど、全然苦にならなかった。
それどころか「こんなに面白い話をたっぷり読めて嬉しい」ってワクワクしながら楽しむことが出来ました。
満足、満足♪

とにかく文章が上手いです。
テンポがよくて、分かり易い文章なので、長い話でもスルスル読み進むことが出来ます。
人間関係や事件が話がかなり込み入っているのですが、その一つ一つが丁寧に印象的に書かれているので混乱することはありません。
登場人物の会話で話の殆どが進んでいくので、セリフもかなり分量が多いし説明っぽいものも多いのですが、すごく自然に読めちゃうんですよね。
中には事件とは直接関係のない、当時の時代背景や歌麿ら絵師の状況やら果ては絵の技術についてなども書かれていたりするのですが、それさえもすごく自然で全然物語の邪魔にならない、むしろ事件を解きほぐす鍵として上手く機能しているのに感心しました。

また登場人物もかなり出入りが激しいのですが、こちらもみんなそれぞれに個性的でしっかりした人物像が与えられているので途中で混乱したりする事はありません。
主人公の仙波やその小者の菊弥、仙波に好意を抱く芸者の「おこう」、歌麿、蔦重、春朗(後の北斎)などの主要人物はもちろん魅力的だし(私は仙波の父親の左門がお気に入り♪)、それ以外にもかなり話に食い込んでいるのに最後の最後で「大どんでん返し」しちゃう登場人物とか、ラスト近くに出てきて美味しいとこ総ざらいしちゃう(笑)登場人物とかも出てきて最後まで目が離せませんでした。

最後はちょっと上手く行きすぎって気がしないでもないけど、こういうタイプのお話だったらやっぱり大団円が基本なのかな。
読後感もスッキリで気持ちのいい一冊でした。

日経コンピューター編集部『システム障害はなぜ起きたか~みずほの教訓』

  • 2002/06/18(火) 22:34:13

システム障害はなぜ起きたか~みずほの教訓
日経コンピュータ
日経コンピューター編集部『システム障害はなぜ起きたか~みずほの教訓』まだまだ記憶に新しい「みずほファイナンシャルグループ」のシステム障害。
こうしたシステム障害は「みずほ」に限った事ではなく、これからどんな企業にも起こり得るからこれを教訓として自分の会社のシステムを変更する時には「プロジェクトマネジメント」の考え方を全面的に取り入れるべきだ…と言う内容が簡潔に書かれています。

私としては「ドキュメンタリー」みたいなのを期待していたのですが、これは「レポート」ですね。
起こったことが客観的に書いてありますが、それ以上は踏み込んでいません。
私は内部でどういったやり取りがあったとか、当事者の声とか、そうした具体的な生々しい話が書いてあるのかと思ったのでちょっと期待はずれ。
と言っても私が勝手にそう思っていただけなので、この本の責任ではありませんが。

しかし、これを読むだけでも「そりゃあ、システムトラブルも起こるだろうよ」と言う気になりますね。
こんなにまでお互いに自分の所のシステムを守りたいと利権争いばかりするのになんで一緒になろうと思ったんだろう?
そのおかげで迷惑を被った人は沢山いるだろうし、何より一番大変だったのはマスコミからバッシングされながらシステム復旧に寝る間も惜しんで毎日取り組んだであろうシステム担当者だろうと思う。
いつか、誰かがそう言う人たちの生の声をまとめた本を書いてくれるのを期待したい。

システム統合の成功例として旧北海道拓殖銀行を吸収した北洋銀行や、東京三菱銀行の例も載っていた。
こうした前例もあるのにどうしてそれに倣う事が出来ないのかなあ…。
(実際、北洋銀行は先に統合に成功した東京三菱を訪問して助言を受けていたらしい)
結局、大事なのは会社の面子でCS(顧客満足)なんて(結果的には)二の次って事だったんでしょうね。
報道されている所によると「みずほ」のトラブルはまだ完全に終息したわけではないようなので、これからどう動いていくのかも注目です。

ただこれ「経営トップに向けて」書かれているわけだけど、こう言うのを読んで考え方を理解出来るようなトップだったら苦労はしないかも(笑)

坂東齢人(実は馳星周)『バンドーに訊け!』

  • 2002/06/16(日) 22:28:53

バンドーに訊け!
馳 星周
坂東齢人(実は馳星周)『バンドーに訊け!』デビュー作「不夜城」のヒットでベストセラー作家となった馳星周。
彼が本格的に作家デビューする前、本名の坂東齢人名義で「本の雑誌」に連載していた書評を集めた一冊。

読書なんてのは結局人それぞれの「嗜好」の問題なんだから、「絶対的な価値」なんてないんですよね。
他人がなんと言おうと、自分が「いい」と思えば「いい」わけで。
それを変に「平等」とか「公正」とかの基準で判断しようとすると却って歪んで来てしまう。
「テーマがどうの」とか「技術的にこうの」なんて高尚な話をされてもよく判らなくて、「結局好きなの?嫌いなの?」とつい訊きたくなってしまうんですよね。
その点「俺はこういう作品が好きだ!」と敢えて言いながら書く坂東氏の書評はかなり信用できると私は思います。
だって、それと趣味が合えば読めばいいし、合わなければ読まなきゃいいわけだから。

とにかく何処を読んでも「この人、ホントに本が好きなのね~」と言うのがビシビシ伝わって来るんですよね。
誉めるところは手放しで誉める。
ダメな所はダメと言うけど決してけなしているわけではない。
誉める場合でも、ダメを出す場合でも、いつでも書き手に対して「物語を書き上げた」と言う点に関しては最大級の敬意を払っている、そんな気持ちが伝わってくる書評ばかりでした。
取り上げられた本の著者にはかなり嬉しい書評なんじゃないかなあ。

もちろんそれを参考にする読者にとっても。
どれを読んでも「あ、これ面白そう!」「こっちも読んでみたいなぁ」って本ばかりでちょっと困るくらい(笑)

それに「伝奇小説」や「暗黒小説」(ってどんなの?)が、「青春小説」が好きだと言いながら、その実あらゆる種類の本を読んで(ジュニア小説など「こんなの読むの?」ってのまで)良ければ誉めると言うその姿勢も潔いと思います。

この書評の「本の雑誌」への初出が1991~1997年なので、殆どの本が文庫化されているのも文庫派の私としては嬉しい限り。
後でもう一回読み直してリストにしてみようっと。

明石散人『謎ジパング 誰も知らない日本史』

  • 2002/06/15(土) 22:25:14

謎ジパング―誰も知らない日本史
明石 散人
明石散人『謎ジパング 誰も知らない日本史』「桃太郎の正体」、「日本のお茶の起源」、「オムスビは何故三角なのか」…など、誰もが常識だと思っている通説のその奥を探る。
日本の謎を解き明かす歴史ミステリー。

苦手な食べ物でも他の人が美味しそうに食べているのを見ると「もしかしたらこれだったら食べられるんじゃないか」と思ってチャレンジしてみては「やっぱりダメだ…」を繰り返す私ですが…この本もそんな感じでした。
小説「視えずの魚」を読んだときにも主役(と言うか著者?)の明石散人他の登場人物ががひたすら喋りまくる内容に辟易して「読まなきゃよかった」と思ったのに、いくつかの書評サイトでこの本を『面白かった』と書いてあるのをみて「小説じゃないから大丈夫かも?雑学系の本って好きだし」と思って読んでみたのですが…やっぱりダメでした(泣)

とにかくこの人の書く文章と言うか、読者に対する姿勢が私は受け付けないみたいです。
書いてある内容はもしかしたら通説よりも信憑性が高かったり、なるほどと思うところがある説があったのかも知れないけどとにかく私は「この書き方ムカツク!」って頭しかなかったのでよく判りません。

例えば歌舞伎の演題である『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』について書いた回。
『これ、千松、よう死んでくれた、でかした、でかした、でかしゃったなあ…』で始まるセリフを延々と書いたあと、

『これは、ことさら歌舞伎通でなくとも「伽羅先代萩」における乳母政岡の台詞であることくらい、大概の日本人は知っている』

と書いているあたりとか。
「伽羅先代萩」って歌舞伎としてそんなに一般的なお話ですか?
それも台詞を聞いただけで判るくらい?
そうとは思えないんだけどなあ…。

他には、テーマによって著者と「村上」さんと言う女性秘書との会話で話を進めていく回があるのですが、その「村上」さんが何かを訊くと「何でわからないの」を連発する部分も私の神経をチクチク刺激してくれました。
この「村上」なる秘書が実在の人物なのかどうかは判りませんが、私は彼女は「読者の代表」として書かれているのでは?と思ったんですよね。
で、その読者に対して『何だこんな事も知らないのか。仕方ないから教えてやるよ』と言っているような書き方じゃないかと…。
(これは知識がない自分の引け目とか劣等感から来るひがみなのかも知れませんが)
「自分の常識が世間の常識」って思ってんじゃないの?と言う書き方が腹立たしかったです。

あ、あとやたらに文中にリーダー(「…」ってヤツ。それも2つ分、つまり「……」)が多用されているのも読むにもテンポが悪くなるし、見た目もウツクシクないと思いました。

そうした文章も書き方も著者のスタイルなのでしょうが、私は好きになれそうにありません。
と言うことで、私はもうこの著者の作品は読まないでしょう。

鯨統一郎『文章魔界道』

  • 2002/06/13(木) 22:21:35

文章魔界道
鯨 統一郎
鯨統一郎『文章魔界道』あらゆる小説を読んでいるが作品は書いたことのない作家・大文豪(おおふみ・ごう)が初めて書いた作品『小説とは何か』が「文章魔界道」に棲む文章魔王に奪われてしまう。
大文の弟子で小説を全く読んだことがないが文章を書く才能があるミユキはその作品を取り戻すために一人「文章魔界道」に入っていくのであった…。



すっごい下らないです。
お金と時間が有り余っていて、下らないダジャレが読みたくて仕方ない!って人は読んでみてもいいかも…。
(それを読んだ私って一体…(泣))

これに400円出すなら、もうちょっと足して他の本買えば良かった…。

酒井順子『煩悩カフェ』

  • 2002/06/13(木) 22:19:13

煩悩カフェ
酒井 順子
酒井順子『煩悩カフェ』女だったら誰でも心のどこかにこっそり隠し持っている(であろう)様々な「煩悩」を赤裸々に(笑)解明した一冊。

量(原稿用紙10枚分くらい)と、内容(テーマの選び方、重さ、毒の量)のバランスが絶妙。
この前に読んだ「たのしい・わるくち」の時も思ったけど、心の中にあるちょっとした気持ちを具体化させるのがすごく上手い人ですね。
結構キツイ事を書いていても、あまりイヤな気持ちにさせずに読ませてしまう文章力、表現力にも感心します。
ただ、(当然ですが)個人の嗜好(思考)によっては「何コレ?」なキワモノ的作品であるのも確か。
笑って読める人だけ読めばいいでしょう。
私は好きです。
(中には「これはちょっと…」もありましたが)

ちなみに私のツボだったタイトルを幾つか…。
*「映画館で、前の人を殴りたい」煩悩
*「同じ話を二度された時、『それ、前にも聞いた』と言いたくなる」煩悩
*「前あきの服のボタンを全部外さずに脱ぎたい」煩悩
*「後回しにしたい」煩悩
などなど。
このタイトルでピンと来たら、本屋にど~ぞ(笑)

あ、そうそう。
一応「男子禁読」のエッセイだそうですので念のため。

大沢在昌『黄龍の耳』

  • 2002/06/11(火) 19:28:26

黄龍の耳
大沢 在昌
大沢在昌『黄龍の耳』イタリアとスイスを隔てるアルプスの山岳地帯にある修道院。
13の年から7年間、一人でここに預けられていた一人の青年が院長に呼び出され日本人である彼の父親が死んだ事を知らされる。
彼はそれを受けて、長年住み慣れた修道院を離れ、まずは日本の弁護士より依頼されたイギリス・ロンドンの弁護士の元に行き弁護士から一通の手紙を受け取る。
それは父から青年にあてた遺言状であった。
そこには、彼が父の死を受け奈良時代から続く名家・棗(なつめ)家の第45代当主・棗希郎右衛門(きろうえもん)となる事、そして同時に棗家の当主だけに受け継がれる能力(「類い希な金運」と「全ての女性を惹きつけずにはおかない魅力」)も受け継いだことが書かれていた。
青年の右耳には産まれたときから小さな穴が開いており、物心付いたときから金の輪がはめ込まれていた。
それは能力を得たときにその力を押さえ込む働きをするものであった。
希郎右衛門はその力と新しい人生を抱えて、まずアメリカへそして生まれ故郷の日本へと旅立つ。
そこで彼を待っていたのは、棗家とも浅からぬ因縁を持つ巳那(みな)一族との戦いの日々であった。



う~ん…面白かったんだけど…今一つ物足りないなあって感じ。

設定は面白いんですよ。
イタリアの修道院で人目に付かぬように育てられた奈良時代から45代続く名家の当主、しかもその身には類い希な才能が秘められている主人公。
その主人公が闘う相手は美しい女を産み育て、その女を代々の権力者に与えることで反映してきた一族。
そしてその相対する一族のどちらとも深く関わっている主人公の存在。
「どんな話が出てくるのかな~、ワクワク♪」な感じの設定が揃っているでしょう?

なのに物足りない~っ!(笑)

何故かというと、ストーリーがあっさりし過ぎてるんですよねえ。
希郎はあちこち行く先々でトラブルに巻きこまれる。
そしてその危機を自らの能力や協力者たちの活躍で脱していくわけです。
どんなに不利な戦いであっても、希郎は主役なんだから結果的に勝ってしまうのは構わないんだけど、そこに行き着くまでが早すぎる!
新しい敵や困難な状況が出てきて「面白くなってきたぞ」と思うと、それを楽しむ間もなく「あれあれ?」って感じで解決しちゃうんですよねえ。
もうちょっと展開を溜めてこっちをハラハラさせて欲しいなあ…と全ての場面において思ってしまったのでした。

それに最初の設定では「類い希な金運」と「女を惹きつける魅力」だけだったはずの希郎の能力が、ストーリーが進むにつれてどんどん超人的な力になっていくのもなんだかなあ…でした。
(それも、その元々の「運」や「力」もちゃんと表現されていたとは思えないうちに…)
主人公が不必要に悲惨な目に遭うのもイヤだけど、ここまで超人的になってしまうとお話として却ってつまらないと思うんですけどねえ。

ただ、解説を読んだら何故こういった展開になったか判ったような気がしました。
この小説の初出はコミック誌の「週刊少年ジャンプ」が『マンガのノベライズ化を企画しながら小説の読者も増やしていこうと意図して創刊した』(二上洋一氏の解説より)「jump novel」だったとの事。
そう言われてみれば確かに少年漫画的な展開ではありますね。

同じ設定でもっとハードボイルドな内容の作品、書いてくれないかなあ。

武田泰淳『十三妹(シイサンメイ)』

  • 2002/06/10(月) 19:24:50

十三妹(シイサンメイ)
武田 泰淳
武田泰淳『十三妹(シイサンメイ)』満州族の貴族・安家の公子(若旦那)の第二夫人・何玉鳳(かぎょくほう)は、またの名を「十三妹」と言う女忍者であった。
その美しさ、男勝りの度胸、組織力、剣の腕で同業者からも一目置かれ、また市井の人々の間では伝説となっている存在である。
ある日、安家の主人(公子の父親)が遠い任地で無実の罪で囚われたとの連絡が入る。
科挙の試験に励んでいた公子だが、子供の務めとして父親の苦境を救うために旅立つ。
その公子に近づいてきたのは十三妹の永遠のライバル・白玉堂こと錦毛鼠(きんもうそ)であった…。



読みやすくて面白かったです。
この作品、書かれたのは1966年とか。
今から36年も前の事なんですね。
でも内容が活劇ものだからなのか、舞台が外国だからなのか全然古くさい感じはないです。
先がどうなるか判らなくてワクワクしながら読めます。

ただねえ…。
何で十三妹のような女性が安公子なんかと結婚しているのかが謎(笑)
確かに公子は美男子らしいし、いいとこのお坊ちゃんだし、お金持ちだし、科挙の第二試験まで若くして合格してるくらい頭いいんだけど…でもそれだけなんですよね。
自分の家に賊が入っても怯えているだけだし、旅に出ても世間知らずの見栄っ張りですぐ騙されるし。
こんなヤツより頭が良くて、腕が立って、顔も言い白玉堂の方がずっと十三妹には似合うような気がするけどなぁ。
(事実そういう雰囲気の場面もあるし)
物語の中では最初から「何故この2人が結婚したのか」とか「どこが良かったのか」なんてのは周知の事実として扱われているんだけど、私はどうしてもそこが気になって仕方なかったのでした。
(でも白玉堂さえも安公子のことが気に入ったりしちゃうんだよねえ。こんなぼんやりなヤツ、どこがいいのだ(笑))

公子、十三妹、公子の両親、第一夫人、第一夫人の両親と大人数で同居している安家ですが、みんな気のいい人たちで十三妹の正体を知りながらそれを頼りにして仲良く暮らしている描写が微笑ましいです。

新世紀「謎」倶楽部『堕天使殺人事件』

  • 2002/06/05(水) 19:20:03

堕天使殺人事件
新世紀「謎」倶楽部
新世紀「謎」倶楽部『堕天使殺人事件』観光客で賑わう北海道・小樽運河でウェディングドレスを着せられた女性の死体が発見される。
その死体は6人の別の人間から切断された頭部・両足・両手・胴体のそれぞれのパーツを再度縫い合わせたと言う恐るべきものであった。
その発見と前後して、地元の新聞社に犯人からと思われる犯行声明文とビデオテープが届けられる。
犯人は自らを《堕天使》と名乗っていた。
その翌日、苫小牧の人気のない林の中で9つの男性の他殺体を乗せたマイクロバスが発見される。
警察はこの2つの大量殺人を《堕天使》の仕業として捜査を始めるが…。



この作品は11人のミステリー作家による「リレー小説」です。
執筆陣は二階堂黎人、柴田よしき、北森鴻、篠田真由美、村瀬継弥、歌野晶午、西澤保彦、小森健太朗、谺健二、愛川晶、芦辺拓の各氏。
一つの章を一人ずつ、事前の相談なしに前回までの原稿をそのまま引き継いで書く、しかし書きっぱなしではなく必ず自分なりの展開・結末を考えておくこと、と言うルールの元で書かれたとの事。

面白かったです(^^)
こういう作品って初めて読むので「どうかな?」と思ったけど、予想以上に面白くて大満足でした。

とにかく先が読めないのがいい。
そりゃあ、書いてる方が読めないんだから、いわんや読者をや(笑)
構成も、先に書いてある設定を受け継いでそれを発展させる作家もいれば、全く舞台を変えて新たな展開に持っていく作家あり、自分の作品の登場人物を出して来て取りあえず推理を始める作家あり…と色んな設定があってこれもまた楽しい。
更に一人の作家が書いた物ならそんなにいくつも盛り上がる部分ってないけど、プロとして「書くからにはやっぱり目立たないと」と言う心理が働くのかどうか一つの章に一回は山場が出てくるところも豪華な感じ。
それでいてどこかだけが目立ってしまうってわけじゃない、バランスの取り具合が「さすがプロ!」って感じでした。

それから、すごく感じたのは「作家って一人一人文体がこんなに違うんだ」って事。
考えてみれば当たり前なんだけど、普段は全く別の作品を読んでいるからよっぽど個性的な文体の人でない限りあんまり違いを意識する事ってないんですよね。
それがこれは違う作家が同じ物語を書いているのでその違いがすごくくっきり判ったのがすごく印象的でした。

登場人物も、同じ人物を複数の人が書けばその人数分の表現が出てくるし、特にこの作品のために出てきた人物ではなくてある特定の作家の持ちキャラを他の作家が書くと微妙に印象がブレていくのも新鮮な感じ。

ストーリー的には最初に「大量猟奇殺人」で始まるのでその後の展開はどうなることかと心配したけど、これもそんなに怖いことはなかったので怖いもの嫌いな人もご安心を。

でも申し訳ないけど、このラストはあんまり好きじゃなかった。
確かにこういう作品の場合、他人が広げた風呂敷を畳まなくちゃならないわけだからしんがりは難しいと思う。
それも理論的に解説しながら。
更に自分独自のアイディアで、とも思うだろうし。
ただ、その気持ちがあまりにも強すぎて、ちょっと強引すぎるんじゃないのかなという印象を持ちました。
それに私はこの人(芦辺拓氏)の文章とか表現もあまり好きじゃなかった…苦手なタイプの作家さんだったせいもあるのかな。

それでも全体的にはプロによるリレー小説の面白さを堪能できた一冊でした。
第2弾も出ているようなのでそれも楽しみです(^^)

乙一『暗いところで待ち合わせ』

  • 2002/06/01(土) 19:16:09

暗いところで待ち合わせ
乙一
乙一『暗いところで待ち合わせ』突然の事故で視力をなくしたミチルは、父の死後外界との接触を殆ど断ち一人で家に閉じこもって過ごしていた。
そんなミチルの家に見知らぬ男が忍び込み、そのままひっそりと暮らし始める。
男・アキヒロは近くの駅で起きた殺人事件の容疑者として警察に追われる身だった。
自分以外の人間の気配に最初は怯えるミチルだったが、ひたすら気配を消し自分を刺激しないようにしながらひっそりと居間の片隅に座り続けるアキヒロの存在を次第に受け入れ始める。



表紙の折り返し部分に著者の紹介を見たら、まだ24歳…。
若いなあ。それなのに、上手い。
才能に年齢は関係ない事であるよ。

相変わらず文章が美しいし的確。
特に私が好きだったのはアキヒロの存在をミチルが意識していく過程の自然な感じ。
最初は思い過ごしだろうと自分を納得させ、やはり何となく気配を感じ、そしてそれが確信へと変わっていく。
そしてそうした形で自分の傍にいる見知らぬ男に怯え、しかし自分に危害を加えない事で安心し、更にある事をきっかけにそれが信頼へと変わっていく。
2人とも何も語らないシンとした部屋の中でミチルの気持ちがそうやって移り変わっていく様子を私たちは手に取るように知ることが出来る。
まるで読者はその家に潜むもう一人の侵入者であるかのように。
歩き回るミチル、それを目で追うアキヒロの静かな暮らしを見守っているような気になってしまう。

こうした心理描写も、ミステリとしての筋立てもきれいだった。
(ただミステリの方はある仮説を立ててしまうとそのまま真実が導き出せてしまう。あまりにも伏線がキチンとし過ぎと言うことか)

最後の方でアキヒロが『必要なのは自分の存在を許す人間だったのだ』と思うシーンがある。
ミチルがそうしてくれたことで、自分は立ち直れたのだと。
でも人に何かを求めるときは、相手にも自分が求めるものを与えなきゃいけないんじゃないかな。
例えば人に許してもらいたいなら、自分も相手を許さなきゃならないように。
アキヒロの今までの人生が不幸だったとしたら、それは彼が他者から否定され続けた事ではなく、そうならないためには自分が他者を否定する事を止めることだと教えてくれる人がいなかったことだと思う。
それをこれからはミチルと2人で学んで行ければいいと思う。

しかし!やっぱり私はこのトーンのお話はちょっと苦手。
出来ることなら「あとがき」的なノリの物語が読みたい(笑)
乙一、よろしく。

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