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原作:秋本治『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』

  • 2008/04/20(日) 21:49:04

小説こちら葛飾区亀有公園前派出所
小説こちら葛飾区亀有公園前派出所 



KOROPPYさんの感想文を読んで「面白そう!」と思ったので、図書館で借りて読んでみました。

期待通り、面白かった!

こういうパロディ的な作品というのは、元の作品を知っていれば知っているほど楽しめる、というのは周知の事実。
ところが、私は『こち亀』は昔、弟がジャンプを読んでいた時に雑誌で読んだことがあるので登場人物や作品の雰囲気は判る、という程度の知識しかないし、作品を提供している作家さんの作品(シリーズ)も、全部を知っているわけではない…というちょっと残念な状況^^;
でも!これはそれでもかなり楽しめるハイレベルな作品集だった。

やはりポイントは作家たちの実力。
全て30~40ページ前後の短篇だけど、その中で自分のキャラと『こち亀』登場人物の出会いに始まり、ちょっとした事件を経て結末に至るまでの物語がきちんと『こち亀』のキャラクターも自分の作品のキャラクターも活かしながら展開していく。
ただ単に他の作品のキャラクターを登場させました、というだけでなく、それ自体一つのエンターテイメント作品としてちゃんと成立しているのは「さすがプロ!」という感じ。
そして、そんなプロの作品としての見事さと同時に、「一『こち亀』ファン」としての遊び心や思い入れ、尊敬の念もそれぞれにたっぷり入っていて読んでいるこちらまで嬉しくなってくる作品ばかりだった。

でも、やっぱり一番すごいのは、どんな作家の作品の中に入っても全然ブレることのない『こち亀』キャラたちのアクの強さかも(笑)
どれを読んでも、全く同じイメージの人物像が出てくるのは凄いと思う。
さすが連載開始以来30年(!)も休むことなく描き続けられ、愛され続けた作品だけのことはある。

以下、執筆作家と作品名。
大沢在昌「幼なじみ」、石田衣良「池袋⇔亀有エクスプレス」、今野敏「キング・タイガー」、柴田よしき「一杯の賭け蕎麦-花咲慎一郎、両津勘吉に遭遇す-」、京極夏彦「ぬらりひょんの褌」、逢坂剛「決闘、二対三!の巻」、東野圭吾「目指せ乱歩賞!」。

定年退職後、趣味でプラモデル作りを始めた元刑事が、プラモデル屋に飾ってあった作品を見て作者の両さんに憧れ、それに負けない作品を作ろうと奮闘する「キング・タイガー」が一番好きだったな。
両さんの登場のさせ方が印象的で巧かった。
でも、この2人、刑事の在職中に出会っていたら、こんな関係には絶対ならなかったんじゃなかと思う。
人と人の出会いってやっぱりタイミングも重要だよね。

その他では大原部長と寺井の会話でストーリーが進み、結局両さんは作品に登場しない「ぬらりひょんの褌」や、江戸川乱歩賞(というか文学賞全て?)の選考に対するパロディ(というか問題提起というか…(笑))になっている「目指せ乱歩賞!」が面白かった。

各作品に数点ずつ挿入された秋本氏の描きおろしイラストもよかった。
特に「池袋⇔亀有エクスプレス」の

キャメルのトレンチコートに、グレイフラノのボルサリーノ。目には何年か前に流行ったティアドロップ型のレイバンのサングラス

という両さんが必見!
(衣良さん、遊びすぎです(笑))

こちら葛飾区亀有公園前派出所 159巻 (159) (ジャンプコミックス)
こちら葛飾区亀有公園前派出所 159巻 (159) (ジャンプコミックス)


 

前述のKOROPPYさんのエントリーにトラックバックさせて頂きました。

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縄田一男 編『大奥華伝』

  • 2006/12/09(土) 06:12:46

大奥華伝―歴史・時代アンソロジー
縄田 一男
4043671040

出版社/著者からの内容紹介
華麗なる「大奥」の世界を、歴史時代小説の名手7人が競演!
杉本苑子「春日局」、海音寺潮五郎「お万の方旋風」「矢島の局の明暗」、山田風太郎「元禄おさめの方」、平岩弓枝「絵島の恋」、笹沢佐保「女人は二度死ぬ」、松本清張「天保の初もの」、永井路子「天璋院」を収録。

「大奥」というと『将軍の寵を争う女たちの壮絶な争い』みたいなイメージがまずあるので、そんな内容かと思って読み始めたんだけど…。
何だか随分、あっさりな感じ。

確かに「大奥」に関係してはいるものの、上に書いたような「その内部での人間関係」の話はあまりなかったし、あったとしても特にドロドロしてるって感じでもなく…。
中には「大奥の中にいる人」は確かに出てくるものの物語の本筋には特に関係ないのでは、といった感じの作品まであったりして…。
多分、作品自体が悪いのではなく、選び方が上手くないんじゃないかと…^^;

そんな中、面白かったのは山田風太郎の「元禄おさめの方」。
五代将軍 綱吉の側用人 柳沢吉保の愛妾・おさめの方を中心に、綱吉、吉保、綱吉の参謀 隆光、吉保のもう一人の愛妾 正親町町子の4人がそれぞれの思いを独白する、という構成の小説。
天下の悪法と言われる「生類憐れみの令」を綱吉側の視点で描いた部分は、かなり斬新な切り口で興味深かった。
といっても、この作品も「おさめの方は元々大奥にいた」ってこと以外は、殆ど大奥には関係ないあたり、ちょっとどうなのよと思うけど。

と学会〈編〉『トンデモ本の逆襲』

  • 2006/08/12(土) 21:10:34

トンデモ本の逆襲
と学会
4862480373

内容(「BOOK」データベースより)
本書は、ベストセラー『トンデモ本の世界』の待望の第二弾。トンデモ本はUFO、超科学、超古代史、メチャメチャ小説、 宇宙の心理を説く受験参考書まで、著者の大マジメな意図とは無関係に、読むと思わず笑ってしまう、トンデモない本のこと。 バードウォッチングをするように世に蔓延する奇説・珍説の数々を選りすぐって紹介する、くめどもつきぬ爆笑もの「真実」 の壮大なコレクション。

こういうアプローチの本って実はけっこう好き。
この「トンデモ本」シリーズも、1冊目の『トンデモ本の世界』がソフトカバーで出たときから読んでいて、 その後何冊かは見つけるたびに買っていたのでこの本も多分一度は読んでいるはず。
まあ、例によって例の如く内容は覚えていなくて(笑)、今回も初読のように楽しめたわけだけど。

この手の本は好きだけど、私の場合本を読むのが遅いし、記憶力が悪い(というか「ない」?^^;)ので、 元ネタ本を読み返して楽しむところまでは広がっていかないのが残念なところ。
この本の説明を読んでいるとすっごい面白そうな本が多いので、出来ればこっちも読んでみたいんだけど…。
ただ、それを「面白い」と思うためにはやはりそれなりの知識が必要なんだろうな。
私みたいにまともな知識がないままおもしろ半分で読んでしまうと、却ってその「とんでも」さに捉えられて、 あちらの世界に行ってしまう可能性もあるかも?
そう考えると、こうやって専門家(?)がフィルターを掛けてくれて安全な部分だけを抽出したこんな本を読んでいるのがちょうどいいのかな。

ところでいつもこの手の本を読むたびに感じるのは、こんな怪しい内容の本が「自費出版」 などではなくちゃんとした出版社から数多く出版されているのはどうしてなんだろう?ということ。
出版社から本を出す場合って、やっぱりそれなりの審査(?)があるわけだよね?
なのになんだって、こんなに「んな、アホな」的な内容の本が氾濫しているんだろう。
編集の人って内容をチェックしたりしないんだろうか?
ただ、この本によるとこういう「トンデモ本」の著者って、けっこうその世界では実績とか権威があるひとも多いみたいなので、 そういう人についてはその「名前」で出せちゃのかな、と思えなくもない。
でも中には特に知名度が高いわけではない、ただのアブナイおじさんって感じの人もいるじゃない?
この人の本を「ウチから出しましょう!」と思い切れる、その根拠は何?
この手の本を出すこと自体が出版社にとっては「ネタ」ってことなの?
それとも私たち読者が「トンデモ本の~」を読むときには「と学会」の人が「これはここがヘン(危ない)ですよ~」 と書いてくれてるから危険性が認識できるだけで、 何の知識もなく読んだら編集者でも納得してしまうくらい素晴らしい文章で理論展開をしているってことなのかしら。
そのへんの事情がぜひ知りたいなあ。

細谷正充 編『江戸の満腹力』

  • 2006/01/16(月) 09:49:16

江戸の満腹力―時代小説傑作選
細谷 正充
細谷正充 編/江戸の満腹力

出版社 / 著者からの内容紹介
美食家も大食漢も大満足のアンソロジー。
蕎麦、初鰹、おでん等々、多彩な献立で描かれる江戸の世に生きる人々の悲喜交々。池波正太郎、乙川優三郎、小泉武夫、竹田真砂子、 宮部みゆき、 山本一力他による傑作8編を収録。(解説・細谷正充)

面白かった!
こんなに最初から最後まで楽しめた時代小説のアンソロジーに出会ったのは初めてかも。

江戸時代を舞台にした作品をそこに出てくる「食べ物」をキーワードに集めた、少々変わった作品集。
どの作品にも江戸の町に暮らす人々と彼らに馴染み深い食べ物が登場する。
(唯一、澤田ふじ子「蜜柑庄屋・金十郎」だけは知多半島の話)
その食べ物の選び方や物語との絡ませ方が、それぞれの作家さんごとに違うのがいい。

そして名前を連ねている執筆陣の豪華なこと!
この名前を見ただけでどんな作品が入っているのかワクワクしてしまう。
しかも、どんなに著名な作家が集まってもこういう傑作選のような形式の作品集だと1つや2つは(自分の好みの問題も含めて)「う~ん… イマイチ」という感じの作品が入っているものなんだけど、これは見事なくらいハズレがない作品集だった。
これを集めてきた編者の手腕に拍手。

どの作品も面白かったけど、一番好きだったのは小泉武夫「宇田川小三郎」。
殊勝で幸せな大酒呑みの話(^^)
自分が殆ど飲めないのでお酒呑む人の心情って判らないし、 今までそういう人が主役の話を面白いと思ったことなかったけどこれは面白かったなあ。
お酒を飲む人は小三郎をお手本にして下さい(笑)

時代小説好きな人、美味しいもの好きな人にオススメの一冊。

本格ミステリ作家クラブ・編『透明な貴婦人の謎』

  • 2005/06/02(木) 09:32:41

透明な貴婦人の謎
本格ミステリ作家クラブ
本格ミステリ作家クラブ・編/透明な貴婦人の謎泡坂妻夫、鯨統一郎、柴田よしき、西澤保彦、法月綸太郎、はやみねかおる、 松尾由美各氏による短篇ミステリーのアンソロジーに円堂都司昭氏の評論を加えた「本格短篇ベストセレクション」。


いろいろなパターンの短篇ミステリーが味わえるアンソロジー。
大部分が「シリーズもののなかの1編」という作品で「シリーズを読んでいる人には判るよ」的な設定も時々出て来たけど、もちろん 「今回初めて読みました」な読者でもちゃんと物語として成立するように書かれている。
シリーズものだけにキャラクターや物語世界が安定していて読み始めると(たとえ初めて読む作品でも) スルッと入っていけるのでとても読みやすかった。

ただその分「すごく面白かった!」と言うのはなかったかな…。
短篇集だということもあり、通勤時にサクサク読むのが丁度いい一冊だった。

ただ最後に掲載されていた円堂都司昭氏の評論「POSシステム上に出現した『J』」は、 何だか難しくてちょっと私の頭ではついていけなかった…^^;
だいたいこんなところに評論が入っているなんて思ってなかったし。
読んでも読んでも「謎」も「物語」も出てこないから「おかしいなあ」とは思っていたけど、まさか小説じゃなかったとは(笑)


<関連サイト>
「本格ミステリ作家クラブ」
公式サイト

新世紀「謎」倶楽部『前夜祭』

  • 2005/04/30(土) 11:36:01

前夜祭
芦辺 拓 愛川 晶
新世紀「謎」倶楽部/前夜祭明日に迫った創立40周年記念学園祭の準備でS大付属高等学校は慌ただしく浮かれた空気に包まれていた。
日頃の鬱憤を忘れ全生徒が当日の成功のために最後の準備に追われていたその時、 使われる予定のない小体育館で学校に無許可のビデオ作品をゲリラ撮影していた元「探偵小説・ホラー・SF・ファンタジー・ 漫画および映画その他諸々研究会」のメンバー4人は跳び箱の中から大変なものを発見してしまう。
それは厳しすぎる指導で生徒はもちろん教師からも嫌われていた教諭・五百旗田真子(いおきだ・しんこ)の他殺体であった。
殺人事件の発覚によりせっかくの学園祭が取りやめになることを恐れた4人は、学園祭が終わるまで遺体を隠すことに。
しかし、その100kgを超える遺体はその後色々な人物の手によって校内を転々と移動して…。

作家の二階堂黎人氏主宰のミステリー作家集団「新世紀 『謎』倶楽部」のメンバーによるリレー小説第2弾。
執筆陣は芦辺拓・西澤保彦・伊井圭・柴田よしき・愛川晶・北森鴻の6名。(執筆順)


この間、過去の本の感想を整理していたときに第1弾 『堕天使殺人事件』の感想を見つけて「そういえばこれ面白かった。次も読んでみよう」と急に思い立ち、図書館で借りてきた。

『堕天使~』を読んだのがもう3年近く前なので詳細についてはあまり覚えてないんだけど、全体的な雰囲気としてはこの『前夜祭』 の方が統一感があるかなあ、と言う感じ。
『堕天使~』を読んだときに感じた「作家によって文体ってこんなに違うんだ」と言う感覚があまりなくて、 全体的にかなりまとまっていて殆ど違和感なくスルッと読めてしまった。
それは、前作『堕天使~』は11名の作家が入り乱れて書いていたのに対し、今回の作品の執筆者が6人だったから、なのかな。
それに今回は時間の経過も短くて行動範囲が限られていると言うこともあるだろうし、そして何より前作が「前もっての打ち合わせ一切ナシ」 が条件だったのに、今作は「打ち合わせOK」だったことが大きな要因だと思われる。
その分、『堕天使~』の時に感じた「これからどうなるんだろ~!?」と言う感じのワクワク感にはちょっと乏しかったかな。

とは言っても、一人で書く(推理)小説とはやはり違っていて、その部分の担当者によって話の広げ方とか視点の置き方とかまとめ方、 雰囲気の作り方、キャラクターの扱いなど、それぞれに特徴が出ていて面白かった。

ラストは、推理小説のオチとしては「よく出来てはいたけどもうちょっと」と言う感想になってしまうけど、 複数で書いたもののまとめと言うことを考えに入れれば、広がった風呂敷を丁寧に端と端を合わせてキレイに畳んで「お粗末様でした」 ときちんとご挨拶していただいたような印象を受ける、とても丁寧な終わり方だった。

どのパートも重要だと思うけど、一番最初と最後、そして(担当した愛川晶氏ご自身もあとがきで書いていらっしゃるけど) ラスト手前と言うのが特に物語としての出来不出来を決めてしまうものなのかも。

北原保雄 編『問題な日本語-どこがおかしい?何がおかしい?』

  • 2005/01/15(土) 12:19:50

問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?
北原保雄 編/問題な日本語-どこがおかしい?何がおかしい?

へんな日本語にもわけがある…
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」「こちら和風セットになります」「全然いい」など、気になる、知らないうちに使っている “問題な日本語”を取りあげ、それがどのような理由で生まれてきたか、どのように使えばよいかを、日本語の達人、『明鏡国語辞典』の編者・ 編集委員がわかりやすく解説!
(「大修館書店ホームページ燕館」 内書籍紹介のページより転載)


最近話題の本。
初版が12月10日で、私が購入した1月10日版はすでに第4刷と売れ行きも好調な様子。
確かに面白かった。

この本の面白さはその対象となっている内容が日頃よく耳にする言葉であること。
例えば「こちら~になります」、「よろしかったでしょうか」、「~のほうをお持ちしました」、「私って~じゃないですか」、「みたいな」、 「こんにちわ/こんにちは」、「猫に餌をあげる」、「わたし的には~」…などなど。
どれもどこかで一度は聞いたこと、そして「ん?」と思った経験がある言葉なのでは。
そうした今現在、日常的に使われる"怪しい"日本語を『明鏡国語辞典』 の編集委員5人が文法的な見地プラス現状の使われ方を考え合わせた上で「現在の用法として妥当なのか、誤用なのか」を解説している。

解説の文章は少々硬いし、文法的な説明には難しい部分もあるけれど、全体的には用例を多く紹介して「こういう時に使うのと、 こういう時に使うのは違うでしょ?」と具体的に説明してあるので判りやすい内容になっている。

何より私が好ましく思ったのは、現在使われている用法が過去からの文法としては誤用だからと言って単純に「間違いだ」 と決めつけていなかったこと。
現在の普及度合いが進んでいたり使われ方の法則をきちんと説明出来る言葉(用法)であれば「必ずしも間違いではなく、 今後の動向を見て判断したい」と言う結論を与えているものが多くあった。

私が面白いと思ったのは「雰囲気」を「ふいんき」と読む人が増えている、と言う質問の項。
さすがの私も「そんなの漢字で書いたら違うってわかるじゃん」と思うような質問なのだが、この質問にさえも回答者は

現時点では明らかに誤用ですが、今後広く定着する可能性が全くないとは言い切れません。

と書いているのだ。
なんと心の広い見解!
確かに誤用であれなんであれ、その使い方が広がってしまうことのブレーキにはならない。
漢字を音に変換するのではなく、口に出して言いやすい、耳で聞いてすんなり理解されることのほうが言葉として定着するには重要なことである、 と言う説は納得できる。
更に驚いたのは、私たちが現在日常的に使用している「あたらしい(新しい)」、「さざんか(山茶花)」がそれぞれ元は「あらた」、 「さんざか」であった、と言う記述。
これらも使われているうちに並びが入れ替わり、そのまま定着してしまったらしい。
これが書いてあるからこそ、前の記述にも説得力が出るというもの。

上記のように、国語辞書の編集者として日常的に言葉の動向に気を配っている彼らの方が「言葉とは時代によって変化するもの」 として柔軟に受け止めている様子が非常に印象的だった。
思えば辞書の編者と言うのは、「言葉を守るもの」ではなくて「言葉を"見"守るもの」であるのかも。
その流れがどこに行こうとも、それを戻したり正しい(であろう)方向に修正することはせず、ただその流れが今どこにあるかを見つめること。
そして何故その場所にそれがあるのかを後に残すために記録する役目の人たちなのかも…などということを考えてしまった。

この本はその見守る人々からの'04年末現在の「定点観測」ってことかな。

本編の内容を受けて挿入されている いのうえさきこさんの味のある4コママンガも楽しかった。
※リンク先のご本人もホームページも面白くてオススメ!

それにしても、日本語を文法的に理解するのは難しいことだよなあ…^^;

文藝春秋 編『私の死亡記事』

  • 2004/12/23(木) 16:44:58

私の死亡記事
文藝春秋 編/私の死亡記事文芸春秋 編/文春文庫
作家、評論家、大学教授、俳優、国会議員、ジャーナリストなど各界の著名人が文藝春秋の企画に応えて書いた「自分自身の死亡記事」。
文庫化にあたり単行本時の102人に更に12人を追加。



自分が死んだときに他人によって記される「死亡記事」。
自分のことであるのに、自分ではどうすることもできない、他人が判定する「自分の人生の価値」。
それを自分で書いてしまおう、というのは企画としてとても面白いと思う。

総勢114名の各界著名人がそれぞれの形式で自分の「生」について語っておられる。
そう、今更ながら気がつくことだけれど「死亡記事」というのは、その情報の大半が「死」ではなく「生」についてのことなのだ。
その人がどう生き、何を成し、何を残したのか。
それが語られる場なのである。

今、私が自分の死亡記事を書こうとしたらどんなことが書けるのだろうか。
毎日、目の前にある仕事をなんとかやり過ごして、特に苦労もなく、諍いもなく、悲しみもなくまあまあ平穏に暮らしている。
確かにそれだけでもいいのかも知れないけれど、一方あまりの中身のなさに愕然としている自分も間違いなく存在している。
要は「それを自ら選んだのかどうか」ということだ。

この本を読んで「よく死ぬことは、よく生きることだ」という言葉を思い出した。
いつか必ず来るその時に、他人ではなく自分がキチンと納得できる「生」を選んでいたい。
そして見送ってくれる人に「まあ、幸せだったんじゃない?」って言って貰えるように。

毎日何気なく生きている私でさえ、そんなちょっと真面目なことを考えてしまった。
これは「自分がこれからどう生きるか」を考えるために有効な方法を示唆してくれている一冊だと思う。

凶鳥の黒影(まがとりのかげ)~中井英夫へ捧げるオマージュ~

  • 2004/11/01(月) 15:52:21

凶鳥の黒影 中井英夫へ捧げるオマージュ
赤江 瀑 有栖川 有栖 嶽本 野ばら 恩田 陸 笠井 潔 菊地 秀行/河出書房新社
凶鳥の黒影(まがとりのかげ)~中井英夫へ捧げるオマージュ~
中井英夫氏のデビュー作にして偉大なる代表作『虚無への供物』刊行40周年を記念して、17人の作家が捧げる短篇&エッセイ集。



とてつもなく贅沢な一冊でした。
とにかく執筆陣が素晴らしい!
鶴見俊輔の序文から始まって、赤江瀑、有栖川有栖、北森鴻、倉阪鬼一郎、竹本健治、嶽本野ばら、津原泰水、皆川博子、森真沙子(以上、短篇)、恩田陸、笠井潔、菊池秀行、北村薫、長野まゆみ、三浦しをん、山田正紀(以上、エッセイ)監修である本多正一の手による後書きと言う錚々たる顔触れが、ただ一人の作家の一つの作品のために集結し、暗く輝く宝石のような文章を寄せています。

それを読めただけでも幸せな気分になれたのですが、これらの文章の目指す先にあるその【作品】をきちんと読んだことがない私は、劇場で繰り広げられている絢爛な舞台を客席にも入ることが出来ずにロビーのモニターで見ているようなもどかしさや疎外感を感じながら読んでいました。
それもまた楽しからずや…と言う部分もありましたが(笑)やっぱりちょっと寂しいので、3年前に一度挫折したその本に再挑戦して次は天井桟敷あたりからでも見られるようになればいいなと思っています。

虚無への供物〈上〉
中井 英夫/講談社文庫





<関連サイト>
「凶鳥の黒影」津原泰水氏による本書の公式サイト

『七人の武蔵』

  • 2002/11/19(火) 15:27:58

七人の武蔵
司馬 遼太郎 山岡 荘八 光瀬 龍 武者小路 実篤
『七人の武蔵』日本人なら誰でも知っているが、その生涯は謎に包まれている「剣豪・宮本武蔵」。
日本を代表する七人の作家が武蔵を題材に書いた短篇を集めた歴史時代アンソロジー。



私は歴史小説が好きで高校くらいの時から割とあれこれ読んでいるので有名な歴史上の人物だったら(それが合っているかどうかは別にして)ある程度その人物のイメージというものを持っていると思っていたけど、今回この本を読んでみて自分が「宮本武蔵」と言う人がどんな人なのか全く知らないことに気が付いた。
もちろん名前と、あとは「巌流島で佐々木小次郎と決闘した人」と言うのは知っているけど「じゃあどんな人?」って言われてもイメージが浮かんでこない。

この本にはかなり有名どころの作家7人(司馬遼太郎、津本陽、山岡荘八、光瀬龍、武者小路実篤、海音寺潮五郎、山本周五郎)が色々な角度、視点からそれぞれの武蔵を書いた作品が入っている。
その武蔵像が著者によって全くイメージが変わっているのだ。
なので自分のイメージを持たない私はかなり混乱しながら作品を読むことになった。

ある作品では「傲慢で独りよがりな老人」であったり、ある作品では「若いが尋常でない『気』の持ち主」であったり、また「己の過去を静かに振り返る人物」であったり、「落ち着きがあり周囲に気を配る人物」であったり…。
もちろん、武蔵に限らず歴史上の人物が現実にどんな人間だったかは残された資料から推測する他ないわけだから、どんな人物であってもそれを著す人物の光の当て方によって影もあれば光もあると思う。
でも同時に、同じ人物なら普通はこんなにも描かれ方の差は出ないものなんじゃないかなとも思う。
この作品集は読んでいくと全く違う人物の話が書いてあるようにしか思えないくらい、「宮本武蔵」と言う人物像が著者によって変わってくるのだ。

事実、武蔵に関しては信じてもいい史実は「漢文体にでもしたら百行程度」のものしか残っていないらしい。
この本の中の作品『宮本武蔵の女』の中で山岡荘八も
『幻の大剣客ゆえに、われわれ文筆の徒の米塩の資に、どれだけ多く寄与をしたかわからない。』

と書いている。

つまり「判らないからどうにでも書ける」と言うこと。
これじゃあ、私のイメージが固まらないのもやむを得ないか?

そんな色々な印象を受ける作品の中で好きだったのは海音寺潮五郎の「宮本造酒之助」。
武蔵と養子である造酒之助、そしてその弟・伊織との心のふれあいを描いた美しい作品。
海音寺作品を読むのは(確か)初めてなんだけど、すごく読みやすかった。
もっと他の作品も読みたくなった。
ここに出てくる武蔵は思慮深くて思いやりがあって暖かくて厳しい、まさに「父親」そのもののような、割と判りやすい存在に描かれている。
だから「武蔵」としての面白みはもしかしたらないのかも。

一方意味がよく判らなかったのは光瀬龍の「人形武蔵」。
何だか内容的にもこの主人公が武蔵である必然性がよく判らなかったし(武蔵好きには判るのだろうか?)、何より「あのからくりはどうなっているのだ!」と言う謎が…。
あれで終わるなんて「アリ」なの?!納得行かないぞ(笑)
(そういうもんだ、と言われたら仕方ないけどね…)

武者小路実篤も初めて読んだけど…う~ん、よくわからなかった。
文章も句点が多くてちょっと読みにくかったし。
武蔵の相手をしている「俺」と言うのが著者本人であることは判ったけど。
(この作品の著者は実は「直木三十五」であったことが後日判明した。出版社が作品名と作家名を取り違えたミスとのこと)

武蔵を主人公にしたマンガ「バガボンド」も売れているし、来年にはNHK大河ドラマ「MUSASHI」も始まるので宮本武蔵と言う人物は更にクローズアップされていくと思う。
(この本にしてもその辺の動きを見越しての事だと思うし)
特に映像としてのイメージというのは非常に強いから、大河「MUSASHI」が高視聴率なら現代の日本人の武蔵像と言うのはもしかしてこれで決まってしまうのかも。

そうなった後にこの本を読んだら、また違った印象を受けるのかも知れない。

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