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中野京子『怖い絵』

  • 2009/01/30(金) 10:06:51

怖い絵
怖い絵

内容(「BOOK」データベースより)
一見幸せな家族『グラハム家の子どもたち』…けれど、この絵の完成後?スポットライトを浴びるドガの『踊り子』…じつは、この時代のバレリーナは?キューピッドのキスを受ける豊満な裸体『愛の寓意』…でもほんとは、このふたり?名画に塗り込められた恐怖の物語。心の底からゾッとする名画の見方、教えます。

小説ではなく、美術作品(絵画)の解説本です。
ドガやムンク、ゴヤなど一般的に著名な画家から、あまり名前を聞いたことのない画家まで20人の作品が集められ、その絵がいかに「怖さ」を秘めているかが解説されています。

新聞の広告で見かけて「面白そう」と思って図書館に予約したら、けっこうな順番待ち。
手元に来るまでに2カ月くらい掛かりました。
だからかも知れませんが、全体的に「思ったよりも…」という読後感でした。
恐怖というのは個人的な体験や想像力、感覚に依るところが大きいので、そうしたものを共有出来なかったということかなと思います。
でも、20作の中には全く知らなかった絵、画家もかなり数多くあったので、新しい作品、芸術家を知るきっかけになったのは良かったです。

紹介されている20枚の中には見た目からして怖い絵(例えば、ゴヤの『我が子を喰らうサトゥルヌス』とかジェンティレスキ『ホロフェルネスの首を斬るユーディト』とかベーコンの『ベラスケス<教皇インノケンティウス十世像>による習作』とか)もたくさん紹介されていますが、私が一番印象的だと思ったのはクノップフの『見捨てられた街』という作品。
一見静けさに満ちた穏やかな風景画のように見えるのですが、ずっと細部まで見ていくとおかしな部分が見えてきてだんだん平衡感覚がずれてくる、やがて精神がこの人の気配が全くない街に囚われてしまう…そんな感じがする絵です。
日本の美術館はどこに行ってもたいてい人が大勢いて一人きりになることは滅多にありませんが、外国の大きな美術館の誰もいない部屋などでこの絵と対峙してしまったらかなり怖いかも…と想像してしまいました。
この絵はクノップフがローデンバックの小説『死都ブルージュ』に触発されて描いた絵だとのこと。
この小説もおもしろそうなので今度読んでみようと思います。

死都ブリュージュ (岩波文庫)
死都ブリュージュ (岩波文庫)
ローデンバック集成 (ちくま文庫)
ローデンバック集成 (ちくま文庫)

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二階堂黎人『稀覯人(コレクター)の不思議』

  • 2008/10/28(火) 13:46:07

稀覯人の不思議 (光文社文庫 に 18-6)
稀覯人の不思議 (光文社文庫 に 18-6)

内容(「BOOK」データベースより)
手塚治虫愛好会の会長が自宅の離れで殺され、貴重な手塚マンガの古書が盗まれた。しかも犯人は密室状態の部屋から消え失せてしまった!犯人は愛好会のメンバーなのか?大学生、水乃サトルが持ち前の頭脳と知識と軽薄さを駆使し、高価なマンガ古書を巡る欲望と、マニア心が渦巻く事件の謎を解く。

けっこう長い(430ページ)しテーマがテーマなんで読み切れるかどうか心配したのですが、思った以上にサクサク読めました。

手塚ファンで、かつ稀覯本コレクターというのがこの作品の主な登場人物たち。
よって、作品中では手塚作品について、そして稀覯本についての蘊蓄が山ほど披露されています。

でも、それがマニアックな描写になり過ぎず門外漢でも興味を持って読める内容になっているところ(でも作品名の羅列はちょっとツライ…)や、そういった情報を交えつつ事件の関係者である登場人物たちの人となりや行動をきちんと誤魔化しなく判りやすく書いてあってとても読みやすかったです。

また、伏線もきっちり書いてあるので、最後の水乃サトルによる推理(謎解き)も納得出来ました。

仁木悦子/仁木兄妹の探偵簿〈1〉〈2〉

  • 2008/05/31(土) 08:30:57

仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻

1986年に亡くなった仁木悦子さんの作品の中から、著者と同じ名前の妹とその兄・雄太郎が探偵役を務める短篇を集めた作品集。

〈1〉「兄の巻」収録作品
「灰色の手紙」「黄色い花」「弾丸は飛び出した」「赤い痕」「暗い日曜日」「初秋の死」「赤い真珠」「だだ一つの物語」「(犯人当て)横丁の探偵」
〈2〉「妹の巻」収録作品
「木からしと笛」「ひなの首」「二人の昌江」「子をとろ 子とろ」「うさぎさんは病気」「青い香炉」「サンタクロースと握手しよう」「(犯人当て)月夜の時計」

背が高くてやせっぽちで大好きな植物の研究をしているのが一番幸せな兄・雄太郎と、チビで標準より太め、不思議なことに遭遇すると自分で解決せずにはいられない妹・悦子が様々な事件に遭遇し、持ち前の好奇心と探求心でその謎を解決する物語。

仁木さんの作品を読むのはこれが初めて。
安野光雅氏の表紙とタイトルに惹かれて図書館で借りてみた。

雄太郎も悦子も一般人なのに、こんなに次々と事件(しかも殆どが殺人事件!)に巻き込まれるという展開はどうなのよ?と思わなくもないけれど、最近のミステリのように殺伐とした雰囲気ではなく人情とか、人の温かさのようなものを最後にきちんと感じさせて終わるほのぼのした作風でとても読みやすかった。
謎解きもそんなにトリッキーでなく、普通の人がちょっと悪巧みして考えた、またはそういうつもりはなかったけど偶然が重なってそうなったといったちょっと緩めの雰囲気が私好み。

でも何より魅力的なのは、探偵役の仁木兄妹。
特に語り手である妹の悦子の好奇心溢れる行動力や、豊かな感情表現が物語を支えているといっても過言ではないと思う。
最初の作品で音楽学校に通う学生だった悦子は、その後新聞社所属のヘリコプターパイロットである浅田氏と結婚し、哲彦(テッチン)と鈴子(スウ子)2人の子どものママとして登場している。
結婚し子どもを持っても彼女の好奇心は健在で、時にはテッチンをお隣に預け、むずがるスウ子をあやしながら事件解明に駆け回ったりしている。
それでも彼女の行動が自分勝手で独善的に見えないのは、事件への好奇心と同時に、事件の関係者への思いやりと自分の家族(特に2人の子どもたち)への溢れるばかりの愛情もしっかり描写されているから。
悦子とテッチン、スウ子の、事件には直接関係のない他愛のない会話がさりげなく、でも愛情を込めて描かれているのが微笑ましかった。
(特に子どもたちを車に乗せるのを「積み込んで」って表現するのが私は好きだったな)

第一巻が「兄の巻」、第二巻が「妹の巻」となっているから、「兄の巻」では全て雄太郎が、「妹の巻」では全て妹が謎解きをするのかと思ったらそうでもない。
さすがに「兄の巻」では最初の何編かは雄太郎メインだけど、それも後半からは悦子に乗っ取られ(笑)「妹の巻」では完全に悦子の独壇場。
(時々思い出したように雄太郎が出てくるけど)
多分全体的に妹メインの作品数が圧倒的に多かった、ということなんだろうけど個人的にはちょっと仙人然とした部分もある雄太郎の存在もけっこう好きだったので、もうちょっと活躍してくれたらよかったな。
仁木兄妹の全集は長編ものもあるようなので、今度はこっちも読んでみよう。

仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻

西澤保彦『スコッチ・ゲーム』

  • 2008/05/18(日) 20:38:34

スコッチ・ゲーム (角川文庫)
スコッチ・ゲーム (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
通称タックこと匠千暁、ボアン先輩こと辺見祐輔、タカチこと高瀬千帆、ウサコこと羽迫由起子、ご存じキャンパス四人組。彼らが安槻大学に入学する二年前の出来事。郷里の高校卒業を控えたタカチが寮に帰るとルームメイトが殺されていた。容疑者は奇妙なアリバイを主張する。犯行時刻に不審な人物とすれ違った。ウイスキイの瓶を携え、強烈にアルコールの匂いを放っていた。つけていくと、河原でウイスキイの中身を捨て、川の水ですすいでから空き瓶を捨て去った、と…。タックたちは二年前の事件の謎を解き、犯人を指名するため、タカチの郷里へと飛んだ。長編本格推理。

今回は長編。
タカチこと高瀬千帆が故郷から遠く離れた安槻大学に入る(つまりタックやボンちゃん、ウサコたちと知り合う)きっかけになった、連続殺人事件の真相を探る物語。

お、重い…。
事件の内容も重いけど、解明された真実も動機もあまりにも重くて救いがない。

こんな事件の当事者(というか中心にいる人物)になってしまったとしたら、タカチがあんなにエキセントリックな性格なのも理解できる。
でも、タカチがあんななのは「この事件があったから」ではないんだよね。
逆にその前のほうが大学時代よりも更に(性格的には)過激だった印象。
その原因についても物語の中で言及されていたりはするんだけど、ちゃんと納得出来る回答は出てこなかったな。
どっちにしても「面倒くさい性格の人だなあ」という印象は変わらなかったけど(笑)

文章は簡潔で読みやすかったけど、人間関係が入り乱れていてしかもその間に事件とは直接関係のないタカチや他の登場人物たちの心情や考察が入ってくるので事件の動きを理解するのが難しかった。
しかも事実の提示方法(順番とか、タイミングとか)にちょっと違和感あり。
例えば、上のあらすじで書いてあるアリバイは同じことが小説の裏表紙に書いてあるんだけど、これが作品の中で明らかにされるのはかなり物語が進んでから、解決編の直前くらいなのだ。
あらすじを書くのは作家本人ではないんだろうけど…なんだかちょっと変な感じがした。

キャラクターの描き方は巧い。
ただ、あまりに巧すぎて誰がメインで誰が脇役なのかを判断するのが難しい、とか話が妙に長い(直接事件と関係ない話が多い)という難はあり。
私としてはその「関係ない部分」のほうが(今回も)面白かったので、個人的にはいいんだけど、ミステリーとして読んだ場合はどうなんだろう?

特にタカチやタックたちの関係性の築きかたについての考察はなかなか考えさせられるところが多かった。
ボンちゃん(ボアン先輩)みたいな人が実際にいたら救われる人ってたくさんいるんじゃないかな。
でも、もしかしたらその真意に気付かずに、単に「しつこい人」「空気が読めない人」と判断されてしまう可能性もなきにしもあらずかも…。
人間関係って難しい(というか面倒くさい^^;)。

西澤保彦『黒の貴婦人』

  • 2008/05/18(日) 20:34:27

黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)
黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
飲み屋でいつも見かける“白の貴婦人”と、絶品の限定・鯖寿司との不思議な関係を大学の仲間四人組が推理した表題作。新入生が自宅で会を開き女子大生刺殺事件に巻き込まれる「招かれざる死者」。四人の女子合宿にただ一人、参加した男子が若者の心の暗部に迫る「スプリット・イメージ」ほか本格ミステリにしてほろ苦い青春小説、珠玉の短編集。

先日読んだ「謎亭論拠」「解体諸因」と同じシリーズの短篇集。
表題作他「招かざる客」「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」「ジャケットの地図」「夜空の向こう側」の5編を収録。

この間読んだ2作が面白かったので、追いかけて読んでいるけど物語中の時系列と発行順、それに発行出版社がそれぞれバラバラなのでこれがなかなか難しい。
しかも、いくら同じシリーズとはいえ、状況や設定が違えば(当然ながら)それぞれ別のアプローチの作品になっているわけなので、自分が希望する作品が読めるわけでもないというのもあるし。

この本は前に読んだのと同じように短篇集だけど、雰囲気はかなり違った。
前2冊のように事件の概要だけがどんどん提示されてそれをパズルを解くようにみんなで推理して…といったアッサリした展開ではなく(そういうのもあるけど)、それぞれの物語の登場人物の関係性が詳細に描かれていたり、心情が吐露されたりしているので事件そのものはそれほどでもないのに物語そのものはかなりヘビィな印象。
特に「スプリット・イメージ」はちょっと読むのが辛かった。

その他の話も、推理や展開にあまり説得力がなかったような気がする。
事件の話よりもレギュラーメンバーから出てくるサイドストーリーに繋がるのであろうこぼれ話のほうが面白かったかも…。

あと、太田忠司氏が書いている解説が面白かった。
「この世には『議論を好む人間』と『そうでない人間』の二種類がいる」って話。
氏自身は前者で、高校の学校帰りに級友と「カレーライスは和食か洋食か」を巡って議論した思い出などが書かれていた。
これを読んで「そういえば私も学生の頃は、結論が出ない(というよりも「ない」)話を延々と喋っているのが好きだった」ことを思い出した。
まともに利害関係が絡んでいたり、感情的になってしまう議論というのは苦手だけど、ただ言葉遊びのように議論のために議論する、というのはけっこう好き。
最近はそういう話に付き合ってくれる人がいないのであまりしないけど、例えば会社のミーティングなどでもどちらの意見が「いい、悪い」「賛成、反対」とかではなく、「こういう考え方も出来ますよね」ってそのテーブルに上がっていない考え方をただ提示していくってのは時々やってたり…(笑)
そう考えると、ある内容の事柄について頭から「絶対に○○だ」という考え方ってあまりしない人間かも。
どちらかというと「どうでもいい」「どっちでもいい」というスタンスでいることが多いので感情的に視野狭窄にならずに済んでいる部分はあるけど、反面あまり周囲に興味がないことが多いので(笑)情報量が圧倒的に少ないという弊害もあるかな。
物事に対する姿勢がニュートラルで、偏らない見方が出来る「バランスの取れた人」になるのはなかなか大変だ。

西澤保彦『解体諸因』

  • 2008/04/27(日) 22:10:57

解体諸因 (講談社文庫)
解体諸因 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
六つの箱に分けられた男。七つの首が順繰りにすげ替えられた連続殺人。エレベーターで16秒間に解体されたOL。34個に切り刻まれた主婦。トリックのかぎりを尽くした九つのバラバラ殺人事件にニューヒーロー・匠千暁が挑む傑作短編集。新本格推理に大きな衝撃を与えた西沢ミステリー、待望の文庫化第一弾。

というわけで、前に読んだ「謎亭論処」が面白かったので同じシリーズからもう1冊。

内容はなんと全編「バラバラ殺人事件」の謎解き^^;

猟奇的犯罪を扱った作品ってそこに至るまでの心理描写とか犯行時の描写とかが詳しく書かれていると、それだけで読む気がなくなるので(スプラッタとかサイコホラーものが苦手なので)敬遠しがちなんだけど、これは平気だった。
何故なら、前作同様、犯行の過程ではなく、結果とその謎解き(バラバラにしなければならなかった合理的な理由)についての考察がメインで描かれているから。

もちろん、普通だったらいくら「そうしたほうが合理的」といっても、簡単にバラバラ死体なんか作らないでしょ、と思うけどね(笑)
それでも、そこを「考え方としては確かにそうかも」と思わせてしまう緻密+力業の推理力がスゴイ。

しかも途中で「バラバラ殺人事件」をモチーフにした戯曲仕立ての作品があったり(これがまた結構本格的。しかも判りやすい)、更にはその戯曲が次の作品にヒントとして出てきたり、前に起きた複数の殺人事件が最後になってそれぞれリンクしてきたり…と、かなり凝った手法、設定がされているのにも注目。
(ただ、最後のほうは登場人物が入り乱れてきて、人間関係がちょっと判りにくかったけど)
いろんな引き出しを持っている頭のいい人なんだなあ。

これはシリーズの第一作目であると同時に著者のデビュー作でもあるとのこと。
「栴檀は双葉より芳し」ってことでしょうか。
同シリーズの作品が他にもいくつかあるようなので、またチェックしてみよう。

西澤保彦『謎亭論処(めいていろんど)-匠 千暁の事件簿』

  • 2008/04/27(日) 22:05:53

謎亭論処―匠千暁の事件簿 (祥伝社文庫 に 5-3)
謎亭論処―匠千暁の事件簿 (祥伝社文庫 に 5-3)

出版社 / 著者からの内容紹介
呑むほどに酔うほどに冴える酩酊推理!
女子高の正門前に車を停め、夜の職員室に戻った辺見祐輔(へんみゆうすけ)は憧(あこが)れの美人教師の不審な挙動を垣間(かいま)見た。その直後、机上の答案用紙が、さらに車までがなくなった。ところが二つとも翌朝までに戻されていた。誰が、何のために? 辺見の親友であり、酒に酔うほど冴(さ)え渡る酩酊(めいてい)探偵・匠千暁(たくみちあき)に相談すると……。続発する奇妙な事件を、屈指の酒量で解く本格推理の快感!

基本的に主人公を始めとして登場人物の人物設定や心理描写が丁寧に描かれている作品が好き。
推理小説で言えば人間関係がまずあって、その上で事件があり、謎がある、といった感じの物語。
逆に謎のためにストーリーが動いているような物語はあまり好きじゃない…と思っていた。

ところが、この作品は目一杯、それこそ今まで読んだどの作品よりもパズル的要素大の作品なのに、これがすごく面白かったのだ…自分でもビックリ。

とにかくひたすら事件についての概要と、その謎の推理と検証だけが繰り返されていくというストイックさがスゴイ。
誰が、何故、どのようにしてその事件を起こしたのか。
それが合理的に説明出来るポイントのみを目指してストーリーが構成されている。

更にスゴイのは、その推理が「真実かどうか」は言及されていない部分。
事件の第三者の視点から謎が推理され、検証や訂正、情報の追加などが繰り返されて、その人々の間で最終的な回答に辿り着くんだけど、その後事件に直接関わった人からその推理が「真実」であるかどうか語られることはない。
誰かが謎に対して合理的な説明を付けられた、時点でその物語は終了してしまうのだ。

確かに、普通の推理小説にしても、例えば探偵や警察や犯人自身が語る「真相」がその事件にとって真実であるというのは「作家がそう宣言している」だけの話でしかないんだから、信憑性は変わらないわけだよね。
そう考えると決してこの作品が突飛であるわけではないんだろうけど…何だか最初はすごく違和感があった。
それだけ読者というのは、物語の中の探偵や警察のような存在に勝手に権威みたいなものを与えてしまっていたってことなのね。

収録されている8つの短篇全てがほとんどそんな感じの展開なんだけど、中でも由起子が刑事である夫の総一郎とある事件の真相について語り合う「呼び出された婚約者の問題」は一番その特徴が顕著だった。
総一郎が提示する情報に、由起子がそこから導かれる可能性を(間違っているのも気にせず)どんどん提示しては修正を繰り返し、また質問しては情報を引き出していくという殆ど全編が会話文で成立している作品。
その会話のテンポの良さと、読者にも等しく提示されていく情報の中でどんどん変化していく推理の面白さに引き込まれ圧倒された。

こういう作品って心情的に「後に何かが残る」ということは少ないけど、本を読むことの楽しさは充分感じられてすごく面白かった。

野火迅『使ってみたい武士の日本語』

  • 2008/01/09(水) 09:12:02

使ってみたい武士の日本語
使ってみたい武士の日本語

内容紹介
つい百五十年前まで日本を覆っていた「武士の世」で話されていた、味わい深い言葉の数々。
声に出して使ってみれば、日本語本来の豊かさ・面白さが身にしみる。
卒爾ながら(突然のことで失礼ですが)、それは重畳(大変けっこうなことだ)、異なことをいう(また妙なことを)、これはしたり(これは驚きだ)、念には及ばない(確認するまでもない)……。
会話で・メールで・手紙文で、ひとことうまく使ってみたい「極上の日本語」を紹介する。

時代小説や歴史小説を読むのはけっこう好きなので、90%くらいは知ってる言葉だったかな。
「知ってる」といっても意味を言葉で説明しようとすると難しい。
でも、ニュアンスはほぼ理解できているという感じ。
だって、いくら今は使わないといっても同じ日本語なんだからね。
その言葉だけ言われたらちょっと困るけど、文章の中で出てくるのなら前後の流れを考慮すれば大体のことは判るんじゃないかと思う。

確かにこういう言葉って味わいや含みがあって深いなあと思うけど、だからといってそれを『会話で・メールで・手紙文で、ひとことうまく』使うというのはどうなのよ、と。
例えばいきなり会社で上司に「大儀である」とか言われたら、「ケンカ売ってます?」と思ってしまいそう(笑)
それに自分は知ってるけど相手が知らない(かもしれない)言葉を使うことはあまり親切じゃないと思うし、逆にお互いに判っていればいいかというとそれもちょっとね。
例えば「率爾ながら拙者このたび転勤することになり申した」「これはしたり」なんて会話をしてたらかなりアブナイ人になってしまうでしょう?(笑)

つまり、どこで誰に対して使えばいいか判断がすごく難しい言葉だよね。
(今の時代の言葉じゃないんだから当然といえば当然)
なので、現代の一般ピープルとしては知識としてこういう言葉があって、こういう意味だったんだよって知っていればいいんじゃないのかなと思うけど。

でも、読む方はそれでいいけど、その作品の状況とか関係とかにあった言葉を探して正しく使わなければならない作家というのは大変な仕事なんだなあ、ということを改めて感じた。
これからはもうちょっと文章を味わって読んでみよう!

梨木香歩『沼地のある森を抜けて』

  • 2007/12/15(土) 10:46:42

沼地のある森を抜けて
沼地のある森を抜けて

内容(「BOOK」データベースより)
始まりは「ぬかどこ」だった。先祖伝来のぬか床が、呻くのだ。変容し、増殖する命の連鎖。連綿と息づく想い。呪縛を解いて生き抜く力を探る書下ろし長篇。

梨木さんの本は今までに何冊か読んでいるけど、読むたびに意外な感じを受ける。
イメージが一定しない、というか。
最初の頃に読んだ『裏庭』や『西の魔女が死んだ』のイメージが大きくて、そこが基準になっているせいなのかな。

この作品はそんな中でもかなり「意外」な作品。

主人公・久美の家に代々伝わる家宝の「ぬか床」。
独身のまま急死した母方の叔母からマンションとともにそのぬか床を譲り受けた久美の周囲で不思議なことが起こり始める。
それをきっかけに自分の家族や祖先が住んでいた「島」について調べはじめ、ついにはその「島」に渡ることを決意する。
ぬか床を持って渡った島で久美が知った真実とは…。

ぬか床が呻いたり、いつのまにか卵が入っていたり、更にはそこから人(のようなもの)が生まれてきたり…と前半はSFというかホラーの世界。
でも、それを見ている久美はパニックになったりせずかなり冷静に「それ」の存在を観察しているので緊迫感はない。
もちろん多少のストレスはあるんだけど、むしろ彼女は「それ」に共感や懐かしさを感じているように思えた。
(恩田陸の「月の裏側」をちょっと思い出した)

「ぬか床」という家庭料理の基本のような存在のもののなかから、母性や性的なものへの嫌悪、コンプレックス、トラウマが出てくるというのは、「ぬか床」自体が「家」そのもの、また「自分自身」を表現してるってことなのかな。
よくわかんないけど。

後半出てくる暗喩のような「僕」の物語もかなり謎だった。
(もしかして細胞の話なのかなあ、と思ったりしたけど…)

読み始めたらスルスル読めたけど、全体的に「なるほど」な感じは殆どない、でも読後感も悪くないという不思議な物語だった。

似鳥鶏『理由(わけ)あって冬に出る』

  • 2007/11/14(水) 10:25:18

理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1)
理由あって冬に出る (創元推理文庫 M に 1-1)

内容(東京創元社Webサイト内より引用)
某市立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい――吹奏楽部は来る送別演奏会のため練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。かくなる上は幽霊など出ないことを立証するため、部長は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし自分たちだけでは信憑性に欠ける、正しいことを証明するには第三者の立会いが必要だ。……かくして第三者として白羽の矢を立てられた葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 第16回鮎川哲也賞に佳作入選したコミカルなミステリ。

著者はこの作品で昨年「鮎川哲也賞」に佳作入選、これがデビュー作らしい。

面白かった♪
「見つけた!」ってところまでは行かないけど(笑)、かなり好きな雰囲気を持った作品で楽しく読めた。

何より人物設定がいい。
主人公の美術部員・葉山くん、探偵役の文芸部部長・伊神先輩、しっかりものの吹奏楽部部長・高島さん(ひかるちゃん)、葉山くんを狙っている演劇部部長・柳瀬さん、葉山くんの友人で演劇部裏方の三野くん(ミノ)…などなど、いかにも文化系・芸術系クラブにいそうなキャラクターが秀逸。
(特に伊神の傍若無人っぷりがいい!さすが探偵役だ(笑))
また彼らのテンポのいい会話も読んでいて楽しかったし、事件に直接関係のない些細なエピソードにも彼らの性格を特徴付ける工夫が凝らされていた。
こうした主役クラスはもちろん、それ以外(例えば邦楽部の2人とか)の描き方もすごくディテールが細かくて、不思議なリアリティがあったし。
あとがきによると著者自身の母校をモデルにしているということなので、人物設定とかも(全部ではないにしろ)モデルがいるのかも。

同じ学校内で「失踪した」、更には「死んだ」とまで言われる先輩の噂を葉山が知らないのは不自然じゃないの?とか、ミスリーディングを誘うつもりで書いているのかもしれないけど効果は「?」の部分もあったりするなど物語の設定に納得出来ない部分もあり。

でも、全体にごまかしがなくストレートに書いてあるので読後感は悪くなかった。
特に全体的に著者の優しい気遣いが溢れているのが私は好きだったな。
例えば、最後に噴出する大人のずるさ、身勝手さを和らげるために事前に「そういう人ばかりじゃない、こういう大人もいるんだよ」って予防線が張ってあるところとか。
ラストの展開にしても普通のミステリーだったらあのエピソードまで書くことはないと思うけど、そういう存在も含めて全てにエンドマークを付けようとする心遣いに好感が持てた。(もしかしたら余計なことなのかもしれないけど)

今後どんな作品を書いていってくれるのか楽しみ。

ただ、あとがきは本編と関係ない話が長々書いてあって正直つまんなかった。
あとがき作家にはならないように注意して欲しい…。

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