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坂木司『ワーキング・ホリデー』

  • 2010/01/18(月) 12:53:50

ワーキング・ホリデー (文春文庫)
ワーキング・ホリデー (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「初めまして、お父さん」。元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の爆弾宣言で一変!突然現れた息子と暮らすことになった大和は宅配便ドライバーに転身するが、荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続で…!?ぎこちない父子のひと夏の交流を、爽やかに描きだす。文庫版あとがき&掌編を収録。

元ヤンキーのホスト・ヤマトの前に突然「息子」と名乗る少年・進が現れる。
母親・由希子から「お父さんは死んだ」と聞かされていたが、あることをきっかけにヤマトの存在に気付き連絡先を探して訪ねてきたという。
突然のことに動揺するヤマトだったが、進の決意に押されて夏休み限定で一緒に暮らし始める、という設定。

物語はこの「初対面の父子」によるひと夏の共同生活の様子が連作短編で描かれています。

基本の設定にけっこう突っ込みどころ(例えば、いくら別れてから会っていなかったとはいえ妊娠したり子どもが生まれていたりしたら噂くらいは聞こえて来るものなんじゃ?とか、今まで子どもがいることも知らなかったのにいきなり「息子です」って言われてそんなに簡単に信じてしまえるもの?とか、今まで「死んだ」と聞かされていた父親が実は生きていてしかも元ヤンでホストだっていうのにそんなに素直に慕うことが出来ちゃうもの?とか、いくら本当の父親だからって全く会ったことのない子どもを一人で行かせて不安じゃなかったの?とか)はあったのですが、読み始めてしまえばそういう部分は「ま、いっか」と思えるくらい面白くてスルスル読めました。
坂木さんの作品は本当にリーダビリティがいいですよね。
1作ごとに上手くなっている気がします。

登場人物も魅力的です。
元ヤンキーでけんかっ早いヤマト、家事が得意で面倒見がいいけど口うるさい進の父子をはじめ、ホストクラブのオーナー・ジャスミン、ナンバーワンホストの雪夜、常連客のナナ、ハチさん便営業所の社員、進の友人たち・・・など個性的で、キャラクターがしっかりした脇役たちが物語を盛り上げています。

サクッと読めて、読んだ後に暖かい気持ちになれるいい作品でした。

ただ、あまりにも口当たりが良すぎて引っ掛かりがないのが難点といえば難点かも。
登場人物に嫌な思いをして欲しいというわけではないのですが、もうちょっとひねりがあってもよかったような気がします。

この作品も続編がありそうな終わり方でしたので、次の作品を期待したいと思います。
今度は、ジャスミンや雪夜やナナが中心の話が読みたいな。

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小路幸也/マイ・ブルー・ヘブン-東京バンドワゴン

  • 2009/07/18(土) 09:51:48

マイ・ブルー・ヘブン―東京バンドワゴン
マイ・ブルー・ヘブン―東京バンドワゴン

内容(「BOOK」データベースより)
国家の未来に関わる重要な文書が入った“箱”を父親から託され、GHQを始め大きな敵に身を追われるはめになった、子爵の娘・咲智子。混血の貿易商・ジョー、華麗な歌姫・マリア、和装の元軍人・十郎、そして、がらっぱちだけれど優しい青年・勘一にかくまわれ、敵に連れ去られた両親の行方と“箱”の謎を探る、興奮と感動の番外編。

「東京バンドワゴン」シリーズの4作目。
舞台は前3作から遡ること約65年、終戦直後の東京。
現在堀田家4世代の家長となっている勘一と、既に鬼籍に入っているが見えない存在のまま堀田家を見守り物語の語り手となっている勘一の妻・サチの出会いと結婚に至るまでの顛末を描いた長編です。

勘一の若い頃の話だというのはWebで読んだあらすじで知ってはいたのですが、こんな展開だとは思わなかったのでちょっとビックリしました。
勘一もサチさんもその時代の国の重要機密に影響力のあるようなお家の出身だったのですね。
そのために何も判らないまま危険に巻き込まれつつあったサチを、これまた何も知らないまま勘一が助けたのがきっかけで物語が動き出します。

前3作では堀田家とそれを取り巻くご近所さん中心のホームドラマだった「東京バンドワゴン」とは全然違うキャラクター(元陸軍の諜報部員だの、日本の政財界に影響力のある大人物だの、その部下の日米ハーフの美形青年だの、東北地方一帯を牛耳る大物の父を持つ美貌のジャズシンガーだの、そしてその全てに顔が効く勘一の父親だの)がどんどん出てきて、サチ自身と彼女がご両親から託された「秘密」を命懸けで守る、果ては当時日本を支配していたGHQの幹部と直接対決する、というサスペンス小説のような内容でした。

ただ、そういう流れではありながら、堀田家にみんなが集まって楽しそうにご飯を食べている様子とか、人が行動する基本は相手への思いやりであり、信頼であること、どんな相手にもまずは誠意を持って対すること、など物語の底に流れるメッセージは前の作品と何ら変わりがないので、「東京バンドワゴン」シリーズの一作として違和感なく読むことが出来ました。
その分「サスペンス」の部分が弱くなってしまい何が起こってもあまりハラハラしたりはしなかったという部分はありますが・・・そのあたりは「痛し痒し」ですかね~^^;

いろんなことが起こっていろんな人が出てきますが、一つ一つの設定や疑問にきちんと結末と回答が準備され全てあるべきところに収まっていく展開が見事。
多少唐突+出来すぎな展開もありましたが全体的にはとても面白く読めました。

シリーズ全体に言えることですが、これも映像化しやすそうな作品ですね。
現在の堀田家を描いた作品を連ドラにして、これは2時間くらいのスペシャルでやってほしいです。
原作を大事にしてくれるドラマ化してくれるTV局関係者様、いらっしゃいましたら是非。

柴田よしき/貴船菊の白

  • 2009/06/24(水) 09:41:16

貴船菊の白 (祥伝社文庫)
貴船菊の白 (祥伝社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
秋になったら、いつかあなたが話してくれた、京都の紅葉を見に連れて行って―亡き妻が語ったその地は刑事になって初めての事件で、犯人に自殺された因縁の場所だった。刑事を辞めた男が十五年ぶりに訪れたとき、そこに手向けられていた貴船菊の花束。白く小さな花は、思いもよらぬ真相を男に告げる…。美しい京都を舞台に、胸に迫る七つの傑作ミステリー。

柴田さんは巧い作家さんだと思います。
私も以前は「RIKO」シリーズとか「炎都」のシリーズとかけっこういろいろ読んでいたのですが、最近はあまり手が出ません。
あまりにも巧すぎるので読んでいるとこっちまで心理的に追い詰められてしまい息苦しくなってしまうんですよね。
(緊張の持続にすごく弱いのです。TVや映画もついついそういう作品は避けてしまいます・・・)
なので、柴田さんの作品で安心して手に取れるのは「猫探偵 正太郎」シリーズくらいかも。

そんなヘタレな私なので京都が舞台のミステリー、しかも表紙イラストがちょっと暗めと不安材料が多いこの作品も購入前にちょっと迷いましたが、ちょうど手持ちの本が切れて他にめぼしい本もなかったので思い切って買ってみました。
結果、なんとか許容範囲内でした。
内容としては予想した通り「人間関係のドロドロ系」なのですが、1篇のページ数が少ないので展開が早く、苦しくなる前に読み終わることが出来ました。

作品のイメージとしては残念ながら好きなタイプではなかったのですが、登場人物の人間関係や心理描写、事件の内容、経緯そしてそこに京都ならではの風習やしきたり、景色まで入れて短いページ内できれいに完結させる物語の流れはどれも見事でした。

でもどうせ京都が舞台の話なら、以前読んだ『ふたたびの虹』の続編が読みたかったなあ。

表題作他「銀の孔雀」「七月の喧噪」「送り火が消えるまで」「一夜飾りの町」「躑躅幻想」「幸せの方角」の7編を収録。


RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)
RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)
炎都―City Inferno (徳間文庫)
炎都―City Inferno (徳間文庫)
猫探偵・正太郎の冒険〈1〉猫は密室でジャンプする (カッパ・ノベルス)
猫探偵・正太郎の冒険〈1〉猫は密室でジャンプする (カッパ・ノベルス)
ふたたびの虹 (祥伝社文庫)
ふたたびの虹 (祥伝社文庫)

小路幸也/「東京バンドワゴン」シリーズ

  • 2009/06/12(金) 11:03:53

東京バンドワゴン (集英社文庫)
東京バンドワゴン (集英社文庫)
シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン (集英社文庫)
シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン (集英社文庫)
スタンド・バイ・ミー
スタンド・バイ・ミー

内容(「MARC」データベースより)
下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」。ちょっと風変わりな四世代の大家族が、転がりこんでくる事件を解決する。おかしくて、時に切なく優しい、下町情緒あふれる春夏秋冬の物語。

築数十年の古い建物、季節ごとの自然、そして親密なご近所付き合いが残る、東京のとある下町。
この町で大正時代から「東京バンドワゴン」という変わった名前の古本屋(現在はカフェも併設されている)を営む堀田家は80歳になっても元気な家長の勘一から生まれたての曾孫まで四世代が一緒に暮らす大家族。
この堀田家周辺で起こる小さな謎や事件を中心にした連作短編集。

既刊4冊のうち『東京バンドワゴン』『シー・ラブス・ユー東京バンドワゴン』『スタンド・バイ・ミー東京バンドワゴン』の3冊を順番に読みました。

す~ごく面白かったです!

とにかく、登場人物がとても多いのが印象的。
なにしろ中心になる堀田家からして12人(!)の大家族。
(シリーズ1冊目では8人でしたが、その後お嫁さんとお婿さんが1人づつ+赤ちゃんが2人増えて3冊目現在は12人になりました。今後、更に増えそうな予感です(笑))
これだけでも充分多いのに、そのほかにもお嫁さん、お婿さんの親御さん、町内のご近所さん、お店の常連さん、子供たちの同級生やその保護者などなど。
これだけ人が出てくると普通は誰が誰だか判らなくなったり、出てきたけど印象が薄くて忘れちゃったりするものですがこの作品ではそういう人が殆どいないんですよね。
それぞれがきちんと人物設定、性格設定されて物語の中に存在して、それぞれの役割を果たしているので、小説の登場人物の名前や人間関係を覚えるのがあまり得意ではない私でも覚えようと意識しなくても読んでいるうちに一人一人がスーッと自然に入ってきてしまう感じでした。

個性的な登場人物の中でもダントツなのは、勘一の一人息子・我南人(がなと)。
60歳を過ぎて、孫までいるおじいちゃんなのに、職業は「伝説のロッカー」(「自称」ではなくホントの有名人)なのです。
金色長髪に派手な服、あちこちをふらふらしてまともに家に寄り付かず、口癖は「Loveだねぇ」…という奇抜なキャラクター。
とても「下町の古本屋(しかも大家族)」にはそぐわない設定なのですが、そんな我南人でさえ悪目立ちすることもなくちゃんと堀田家の一員、作品の中の登場人物として違和感なくそこに存在している、その世界観がスゴイと思うのです。

このシリーズには巻末に「あの頃、たくさんの笑いと涙を届けてくれたテレビドラマへ」という献辞が入っています。
つまり、この作品は「あの頃」のテレビドラマへのオマージュなんですね。
イメージからいうと「寺内貫太郎一家」あたりかな?
家長の勘一が80歳という高齢という設定なので、ドラマみたいに「毎回ちゃぶ台をひっくり返して喧嘩するシーン」はありませんが(笑)家族みんなで食事するシーンはどのお話にも出てきて、これがすごく印象的。
お料理は名前が出てくるだけでそんなに詳しいディテールが描かれているわけではないのですが、贅沢ではないけれどちゃんとバランスが考えられた手料理がいっぱいに並ぶ大きなテーブルで、家族全員が集まってワイワイ喋りながらの食事シーンはそのまま「幸せ」を表現しているような気がしました。
(だからといって、一人でご飯食べるのが「不幸」だということではないですけどね)
私は正直あまり大勢の人と一緒にいるのが得意なほうではないのですが、この作品を読むと「家族っていいよねえ」と自然に思ってしまいますね。

物語は堀田家の中やその周辺で起こる小さな謎や騒動を中心に展開します。
それらの事件も伏線がきちんと引いてあり結末も自然でよく出来ているのですが、それ以上にそうした事件や騒動があっても繰り返される堀田家の日常、日ごとに成長していく子供たち、人との繋がりを大切にして真面目にまっすぐ生きている人々がきちんと描かれている部分が素晴らしい作品でした。
感動して大泣きすることはありませんが、読んでいる間も読み終わった後もすごく気持ちよくて、「人に優しくしよう」という気分になります。

これからもずっと続いていって欲しいシリーズです。

取りあえずは今年の4月に出たシリーズ最新刊『マイ・ブルー・ヘブン』(勘一の若い頃を描いた番外編らしい)は現在図書館の順番待ち中。
もうすぐ読めそうなのですごく楽しみです(^^)

マイ・ブルー・ヘブン―東京バンドワゴン

公式サイト発見!
集英社「東京バンドワゴン」シリーズ

西條奈加『金春屋ゴメス』

  • 2009/06/08(月) 09:49:50

金春屋ゴメス (新潮文庫)
金春屋ゴメス (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
近未来の日本に、鎖国状態の「江戸国」が出現。競争率三百倍の難関を潜り抜け、入国を許可された大学二年生の辰次郎。身請け先は、身の丈六尺六寸、目方四十六貫、極悪非道、無慈悲で鳴らした「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった!ゴメスに致死率100%の流行病「鬼赤病」の正体を突き止めることを命じられた辰次郎は―。「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。

舞台は近未来の日本の中にある「江戸」という国。
日本から属国として認められているが、基本的に<鎖国>状態であるためその他の諸外国との交渉はない。
日本との行き来も厳密に規制されているという設定。

一見時代小説のようでありながら、実はSFなんですね。
タイムスリップものではないのに現在と過去を同時に描ける、しかもお互いに干渉しあうことも(タイムスリップものよりは)容易であるという、ちょっと緩めの設定。
しかも表紙のイラストに描かれた迫力のある人物!
これがタイトルロールの「ゴメス」だっていうんだから、どんなにハチャメチャな物語が展開しているんだろう…と思いきや、内容は意外なくらい真面目だったのでちょっとガッカリでした。

まず、物語の中で描かれている「江戸」国がその風習や人物も含めてきちんと(時代小説やドラマ、映画でよく見る)江戸なんですよ。
しかも物語の殆どが「江戸」での話なので、読んでいるうちに単純に「時代小説」を読んでいるような錯覚に陥ってしまうのです。
ベースは実在の(あるいは私たちがよく知っていると思っている)「江戸」でもいいのですが、それとは別にもっとこの物語の中の「江戸」特有の設定があったり、江戸との対比として「日本」の状況がもっと描かれていたほうがよかったかなという気がしました。

それにゴメスも、外見や噂の中ではかなり強烈な人物として描かれているのですが、実際の言動はけっこうマトモなのでちょっと拍子抜け。
人間離れした外見で乱暴者という部分は読み取れるのですが、「大泥棒も泣いて怖がる」というほどの極悪非道ぶりがあったかと言われると…。
むしろ「見かけは怖いけど、実は頭が良くて情に篤い有能なお奉行」というイメージのほうが強い人物のように思いました。
(でも、ラスト近くで窮地に陥った辰次郎たちを愛馬に乗ったゴメスが助けに来るシーンは(トラックか戦車なみの)迫力があってよかったです(笑))

舞台設定もキャラクター設定も話の内容もそれぞれを見ると面白かったのですが、お互いが遠慮しあって小さくまとまってしまったような印象を受けました。
設定を生かしてもっと弾けた話でもよかったのでは。

この作品はシリーズ化されているとのこと。
全体的な世界観や、文章の書き方などは嫌いじゃないので、別の作品も読んでみたいと思います。

坂木司『短劇』

  • 2009/05/09(土) 10:54:55

短劇
短劇

内容(「BOOK」データベースより)
たとえば、憂鬱な満員電車の中で。あるいは、道ばたの立て看板の裏側で。はたまた、空き地に掘られた穴ぼこの底で。聞こえませんか。何かがあなたに、話しかけていますよ。坂木司、はじめての奇想短編集。少しビターですが、お口にあいますでしょうか。

タイトルどおり、10ページ前後の短編ばかり26作が並んだ作品集。

普段は柔らかい語り口と丁寧な描写で最後にパワーや癒しを与えてくれるものが多い坂木さんの作品ですが、この本にはそうした作品の中では見えてこない人間の悪意や苛立ちがストレートに描かれています。
でも、こんな作風もまた「意外」と思わせず、「やっぱりこういう作品も書けるんだなあ」と納得させてしまうところが坂木さんの巧さだろうと思います。

長い物語ではちょっと重く生臭くなってしまいそうな内容を、短い枚数の中でサラッと書くことによってそれを回避してピリッとスパイスの効いた佳作に仕上がっています。
また、ダークな内容であっても弱い者が徹底的にいじめられるといった類のものはなく、最後まで読むと小心者の読者もちょっとした「共犯者意識」を持って思わずニヤリとしてしまう結末になっているあたりにいつもの坂木さんの姿が覗いているように思いました。

坂木司『夜の光』

  • 2009/03/27(金) 10:25:09

夜の光
夜の光

出版社 / 著者からの内容紹介
慰めはいらない。癒されなくていい。本当の仲間が、ほんの少しだけいればいい。
本当の自分はここにはいない。高校での私たちは、常に仮面を被って過ごしている。家族、恋愛、将来……。問題はそれぞれ違うが、みな強敵を相手に苦戦を余儀なくされている。そんな私たちが唯一寛げる場所がこの天文部。ここには、暖かくはないが、確かに共振し合える仲間がいる。そしてそれは、本当に得難いことなのだ。

面白かったです。

家族との関係や自分自身の存在に疑問や苛立ち、違和感を抱えいつか自分らしく生きられる場所に辿り着くために「本当の自分」を隠して学校生活を送る4人の男女。
その4人がたまたま入部した天文部で、それぞれが自分と同じように「戦っている」ことに気付き、クールだけど得難い仲間として友情を育てていく物語です。

仲間を見つけたからといって自分の悩みが解決するわけではないけれど、自分以外の人間の言動から問題に直面したときの対処法、柔軟さ、他者に対する優しさ・強さを学び、そして前に進む勇気を貰って成長していく4人の姿が愛情に満ちた優しい筆致で描かれています。

4人の周囲で起こるちょっとした謎を解決することで、少しずつそれぞれの親密度、信頼感を増していくという流れなのですが、謎(事件)自体は高校の校内で起こる事件なのでそんなに派手だったり意外性があったりするわけではありません。
ただ、その特別過ぎない、本当に実際にあり得そうなリアルな感じが却って物語に説得力を与えているように思いました。
特に学園祭のバザーで買ったセーターが原因でトラブルが起こる話は愛のある結末も含め、とても印象的なエピソードでした。
(あと、Gunsの曲が山ほど出てくるエピソードは意外すぎてビックリでした!(笑))

それぞれが語り手になった作品が各1編ずつ(「季節外れの光」「スペシャル」「片道切符のハニー」「化石と爆弾」)と、4人が高校を卒業しそれぞれの道を歩み始めてしばらくしてまた再会する様子を描いた1編(「それだけのこと」)の計5編を収録。
びっくりするようなどんでん返しもなく、全体的に淡々とした展開のまま終始しますが、自分の人生を自分の意志で歩み始めた若者たちの確かな決意が伝わってくるいい作品でした。

柴田よしき『謎の転倒犬-石狩くんと(株)魔泉洞』

  • 2009/02/07(土) 10:12:26

謎の転倒犬―石狩くんと(株)魔泉洞 (創元クライム・クラブ)
謎の転倒犬―石狩くんと(株)魔泉洞 (創元クライム・クラブ)

内容(「BOOK」データベースより)
深夜のアルバイトを終えた僕が偶然出会った、厚化粧の女性。なんと彼女は連日女の子が行列をなす、カリスマ占い師・摩耶優麗だった。時を遡って過去を見てきたと嘯く彼女に、ズバリ言い当てられた僕の過去。きっと何かカラクリがあるはずだ!ミステリ同好会の僕が必ずこの謎を解いてやる!(株)魔泉洞に持ち込まれる不思議な事件を、鮮やかに解く、優麗の推理(占い?)。そして石狩くんの受難をユーモラスに描いた本格ミステリ連作集。

柴田さんの作品は上手い分、重い作品を読むと自分の気持ちも引っ張られてしまうのでちょっと敬遠してしまうことが多かったのですが、これは「よく判らないタイトルだけど少なくとも重い内容ではないだろう」と見当を付けて読んでみました。
結果、読みやすくて面白かったです♪

大学の卒業は決まったものの就職先が決まらない石狩くんはひょんなことから人気占い師・摩耶優麗(まや・ゆうれ)と知り合い、彼女が社長を務める株式会社 魔泉洞に無理矢理就職させられ裏方と同時に優麗のアシスタントを勤めるハメに陥る。
そのなかで出会う不思議な話、出来事を優麗が解決していく、というストーリー。

短篇集だということもあり謎自体はそんなに手が込んだものはありませんが、その分読みやすく判りやすい内容になってます。
また、強気で我が儘、自分勝手だけど自分の役割と能力を知り尽くして行動する優麗、彼女の右腕として会社の雑務を一手に引き受けるオネエ言葉の中年男性・ウサギちゃんこと宇佐見儀一郎、そして気弱で要領が悪く何の取り柄もないけど何故か優麗に気に入られている石狩くん、といったキャラクターの設定や彼らのちぐはぐな会話が効果的でした。

表題作の他「時をかける熟女」「まぼろしのパンフレンド」「狙われた学割」「七セットふたたび」の4編を収録。
こうやって並べると不思議なタイトルの意味がハッキリしますね。
個人的には「七セットふたたび」というタイトルが一番ウケました(笑)

不知火京介『女形』

  • 2008/09/19(金) 10:39:41

女形 (講談社文庫 (し78-2))
女形 (講談社文庫 (し78-2))

出版社 / 著者からの内容紹介
乱歩賞作家が満を持して放つ驚異の歌舞伎ミステリー
京都と東京 同じ日、同じ時、遠く離れた舞台上で、2人の名優が怪死した。絢爛たる世界に潜む闇が蠢きだす!
2人の名優は、なぜ同時に死なねばならなかったのか。
演じる者の業、家門を守ろうとする執着 桔梗屋の内弟子・堀内すみれが、封印された梨園の謎(トリック)を解き明かしたとき、凄絶な愛憎の一幕が浮かび上がる。

歌舞伎界を舞台にしたミステリー。
事件の謎解きだけでなく、一般とは一線を画したその世界の内部事情も丁寧に描かれていて興味深いし、文章も読み易かった。
(でも、内部の人間関係は名前が入り乱れていて時々わけわかんなくなった^^;)

探偵役である若手歌舞伎役者のすみれが単に謎を解く役目だけでなく、彼自身ある秘密を持たされているところが普通のミステリーとはちょっと変わっていた。
最初は事件そのものとは無関係だったすみれがその秘密によって徐々に物語の中心人物になっていく構成が面白かった。
ただ、その秘密とは別に桔梗屋がそれほどに目を掛けるだけの実力・魅力をすみれが持っていると読者に説得する力が少し足りなかったかなあ、という印象。
加えて、作品中のすみれの言動が普通の若い子っぽすぎて、「歌舞伎役者」を感じることが少なかったのも残念。
いくら駆け出しとは言っても、もうちょっとそれっぽくてもよかったのでは。

ロシア系アメリカ人の歌舞伎役者 青松のキャラクターが秀逸。
2m近い身長と金髪碧眼という外見はどこから見ても外国人、とても日本人、ましてや歌舞伎役者には見えないのに、操る言葉、日本文化の知識、果ては情の世界までも日本人より日本人らしさを持つ青松に、最初は警戒していた"すみれ"や"やんま"が少しずつ心を開いて親しくなっていく様子が丁寧に描かれて、それが最後のキーマンとしての役割にきちんと繋がっているのがよかった。
また、本編にはあまり関係ないけど、彼が語る夢は「なるほどね~」と思わせられた。
そういうことを実際に考える人がいてもおかしくはないかも。
でも実際問題として、現在の歌舞伎界というのは彼のような人でも日本人と同様の条件で入門出来るのかな?

あと、名門・山城屋の御曹司 信十郎もよかった。

京都の観光名所などの話題もさりげなく入っていて、いろんな楽しみ方のできる一冊。

斎藤美奈子『物は言いよう』

  • 2008/07/13(日) 09:36:34

物は言いよう
物は言いよう

内容(「BOOK」データベースより)
性や性別についての望ましくない言動を検討するための基準です。しかし、意識のありようまではとやかくいいません(心の中で「このブス」「このクソババア」と思うのはかまわない。)せめて、おおやけの場ではそれに相応しいマナーを身につけよう、との趣旨で考案されました。本書を通して、笑いながらFC (フェミコード)感覚を身につければ、いやーなセクハラ、思わぬセクハラとは、もうさようならです。

政治家や作家、文化人などが語った公の発言を「FC(フェミコード)」を基準に考察する、という内容の本。

その発言内容によってFC判断の難易度を★の数(1~3)で示してある。
★1つの発言、例えば

子どもを一人もつくらない女性が自由を謳歌して、楽しんで、年とって税金で面倒見なさいというのはおかしい。

程度なら私にも「(思うのは勝手だけど)それを公式の場で言っちゃダメでしょう」とすぐに判るけど、★3つレベル、例えば

近い将来、日本で新しい小説的思想、思想的小説にはっきりした世界を達成するのは、若い女性だと思います。

あたりになると「え、これのどこが差別なの?むしろ応援してる内容では?」と思えてしまうような内容が多かった。
著者に「これはこうこうこういう理由だからFC的に×なんだよ」って説明されれば「なるほど」と思うものの、うっかりすると自分も使ってしまいそう。
こういうことに敏感でいるのは難しいことだなあ、と思った。

FC的な問題って微妙だからこそちゃんと考えなくちゃならないんだろうけど、あまりにも微妙すぎると「面倒だから触れないほうがいいや」って考えに流れてしまって不可侵領域になってしまうこともあり得るんじゃないのかな。
(放送禁止用語みたいに「言わなきゃいいのか」って感じ)
でも、そうやって隠されてしまうのは却ってマズイことだと思うので、そのあたりのバランスをどうとっていくか、が今後の課題かも。
(と、どうとでも取れる適当な感想でお茶を濁す私であった…^^;)

でも、基本的に一般論として「女性は~」とか「男性は~」とかいった大きなくくりで話をするからつい口が滑っていってしまうんじゃないかな。
そうではなく、目の前にいる誰かをちゃんと見据えてその相手に向けた言葉を発すればFCに引っ掛かることってかなり減るし、もし引っ掛かっていたとしてもお互いにそれについてきちんと話すことが出来るような気がするんだけどどうだろう。

それにしても、かなり有名な、しかもその業界では力がありそうな人ばかりの発言を実名入りで取り上げて、冷静に的確にそのFC的勘違いを指摘する著者の度胸の据わり方に拍手。

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