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門井慶喜『天才までの距離』

  • 2010/03/07(日) 11:31:12

天才までの距離
天才までの距離

内容(「BOOK」データベースより)
近代日本美術の父・岡倉天心の直筆画が発見された!?「筆を持たない芸術家」と呼ばれた天心の実作はきわめてまれだが、神永はズバリ、破格の値をつけた。果たして本当に天心の作なのか。

先日読んだ『天才たちの距離』の続編です。
前作同様、天才的な鑑定眼を持つ美術コンサルタント・神永美有と大学で美術を教える佐々木昭友の2人が、来歴が曖昧な美術品の価値と意味を探り当てる…という連作短篇集。
「天才までの距離」「文庫本今昔」「マリーさんの時計」「どちらが属国」「レンブラント光線」の5編を収録。

前作は鑑定される「美術品」がまずあってその後ろに「人」がいるという感じだったのですが、今回は「人」の印象が強すぎてその分「美術品」の位置が下がってしまったように思います。
私は前作の位置関係の方が好きだったので、今作は今ひとつ気持ちが入り込めないまま読み終わってしまいました。

具体的にはまず佐々木が神永に必要以上に神永を神格化しすぎているように思えたところ。
確かに神永は天才的な美術鑑定眼を持っているという設定なのですが、読者の私にはそれはあくまで佐々木という物語の視点を通して見える事なんですよね。
その視点であり語り手である佐々木が最初から熱烈に神永を信奉しているため、こちらはその意識に付いていけず置いてきぼりにされたまま読み終わってしまった…という感じ。
物語の性質にもよるのですが、この作品ではもうちょっと冷静な視点の語り手のほうが良かったと思いました。

それに前作にも出てきた佐々木の教え子のイヴォンヌ…ハッキリ言って私は彼女が苦手です。
個性的で周囲と協調せずに我を通し混乱させる…それだけならいいけどその言動の結果を他人(佐々木や神永)に頼ろうとする彼女には全く共感出来ませんでした。

その他の登場人物もみんなすごく自己主張が強かったですね。
唯一安心出来たのは神永と佐々木行きつけのバーのマスターくらいでした…。

それからちょっと納得できなかったのが「どちらが属国」の結末。
確かに対立する2人の名誉は守られたのかもしれないけど、タイトルにもなっている「属国」の問題には全く決着が着いていないんですよね。
そこまで踏み込む意図はなかったのかもしれないけど、タイトルに使った上 本文中にあんな過激なメッセージを載せるのであれば、作品の鑑定だけでなくその意見に対する著者の考えも聞かせて欲しかったです。

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コグレマサト+いしたにまさき『ツイッター 140文字が世界を変える』

  • 2010/02/26(金) 11:25:56

ツイッター 140文字が世界を変える (マイコミ新書)
ツイッター 140文字が世界を変える (マイコミ新書)

内容(「BOOK」データベースより)
本書では、ツイッターがなぜ流行ったのか、どのように進化したのか、今後どうなっていくのか解説します。また、ツイッターの影響力を感じさせてくれる使用事例も具体的に紹介します。

非常に簡潔な文章でツイッターの説明がされていてとても読みやすく、判りやすい内容でした。

ただ、それは既に私がツイッターを始めていて、ある程度その内容(使い方とか、場の雰囲気とか)を理解していたためなのかも。
ツイッターを実際に始める前に同じような入門編の新書を1冊読んだのですが、その時は何が面白いのかさっぱり理解できなかったので。

何しろツイッターというシステムは

140文字以内でつぶやくこと
140文字以内でつづられたつぶやきを読むこと

しか機能がないわけで、やってない人間に「それのどこが面白いのか」を説明するのは難しいですよねえ。
色んなことが出来るのであれば「これも出来るよ」「あれも出来るよ」と説明できますが、ツイッターは上記の2つのことしか出来ないわけですから。

その難しい説明をするためにシステムの使い方よりも、(著者本人も含めて)実際に使っている人の使い方、関わり方、考え方などに重点を置いて、それを平易な文章で丁寧に書き連ねることで説得力+親近感のある内容になっていたと思います。

まだ始めていない、どんなものか判らないでいる状態の人よりも、始めたけどそこからどうすればいいのか判らない・・・と立ち止まっている人のガイドとしては有用なのではないかと思います。

個人的にはツイッターに組み合わせて使えるサイトやアプリの情報がたくさん入っていたのがすごく参考になりました。。

以前読んだのも、どこかにまだあると思うのでもう一回読んでみようっと。
今なら理解できるかも。

ただ、タイトルにある「世界を変える」というのはどうなんでしょうねえ。
確かに今まで以上にコミュニケーションが構築しやすいシステムではあると思うのですが…もし変えられるとしたらツイッターというシステムではなくて、それを使う人の意識かな、と思います。
まあ、これは何でも同じだと思いますけどね。

ところでいつも疑問に思うのですが、ツイッターというのは一つの会社が作ったシステムですよね。
それにここまで人が集中してしまうことに問題はないのでしょうか。
規模が大きくなればなるほどシステムやリソースの問題や他の企業からの圧力など大きくなって来るような気がするのですが。
利用者にとっていつまでも安定した、気持ちよく使えるシステムであって欲しいと思います。

門井慶喜『天才たちの値段-美術探偵・神永美有』

  • 2010/02/22(月) 11:22:45

才たちの値段―美術探偵・神永美有 (文春文庫)
天才たちの値段―美術探偵・神永美有 (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
一枚の絵が「もし贋物なら、見た瞬間、苦味を感じ、本物なら甘みをおぼえる」という天才美術コンサルタント・神永美有が、短大の美術講師・佐々木昭友と二人で鑑定にまつわる五つの難題に挑戦。ボッティチェッリ、フェルメールから江戸時代の涅槃図まで、古今東西の名品たちが問いかける。美術とは何か。

短大で美術講師をする佐々木昭友と、美術コンサルタントの神永美有のコンビが美術品の真贋を見極める過程を描いた連作短編集。

美術品にまつわる薀蓄話って好きなので面白く読めました。
「舌で美術品の真贋が判断出来る」(「本物」を見ると舌が甘味を感じる、らしい)という神永の設定が変わっていて面白かったです。
それだけだったら単なる特異体質でしかないけど、神永の場合はそれを裏打ちする知識と、記憶力、競争相手を出し抜く冷静さ、判断力も持ち合わせているという設定。
いわゆる「天才」ですね。
それに対して佐々木は勉強熱心な努力家で、普通よりは専門知識は持っているけれど、神永に比べれば凡人という位置づけ。
キャラクター的には神永一人の活躍でも何とかなってしまいそうな感じですが、そこに敢えて佐々木を語り手として登場させるのは神永の天才的才能と神秘性を高め、同時に他人を尊重し友情も築ける部分を描くことで好感度も高める働きもあったと思います。

ただ、この作家さんの作風なのかもしれませんが、セリフとか情景、心理描写が回りくどいというか思わせぶりというか、意味が掴みにくい感じで書いてあることがあって「だから結局何が言いたいの?」みたいな気分になってしまうことも多々ありました。
クライアントに美術品の話をしている場面とかならある程度仕方ないと思うのですが、プライベートな会話くらいはもっとシンプルに判り易くしてほしかったです。

それに、テーマが美術品だったりすると(書いてある作品が実在するのかどうかは判りませんが)どうしても実物を見たくなりますね。
作品について文章ですごく丁寧に解説されてはいるのですが、内容が面白ければ面白いだけ「実際はどんな作品を見ながら話をしているのだろう」と気になって仕方ありませんでした。

この作品は佐々木が神永のいる東京を離れ、京都の大学に助教授として赴任するのを決意したところで終わっているので「この作品だけなのかな?」と思ったら、どうやら続編がある模様。
(『天才までの距離』。早速図書館に予約済み)
次はどんな展開になるのか楽しみです。

表題作の他、「紙の上の島」「早朝ねはん」「論点はフェルメール」「遺言の色」の5編を収録。

岳真也『土方歳三 修羅となりて北へ』

  • 2009/11/18(水) 12:28:08

土方歳三修羅となりて北へ
土方歳三修羅となりて北へ

内容(「MARC」データベースより)
負けても、負けても、生ある限り戦う! 鳥羽・伏見から江戸、甲州、下総流山、宇都宮、会津、そして箱館・五稜郭へ-。戦い、戦いぬいて「義」に殉じた土方歳三の壮絶な生きざまを描く長編時代小説。

図書館で本を探しているときに見つけた一冊。
鳥羽伏見の戦いでの敗戦以降、生きる(あるいは死ぬ)場所を探して北へ転戦していく新選組を土方を中心に描いた作品です。

タイトルに土方の名前が入っていたら借りないわけにはいかないでしょう、ということで借りたのはいいのですがなかなか読めなくて結局読み終わるまでに1カ月近く掛かってしまいました。
新選組を扱った作品の中で何度も読んだことがある時期の話で切り口としても特に新味があまりなかったし、文章も丁寧なのですがその分盛り上がりが今ひとつ。
また、土方の人物設定も主役のわりにちょっと弱かったかな~、という印象でした。
まあ、これは、私自身が新選組関連本を何冊も読んでいるので、つい他と比べてしまうからなのですが。

回想として描かれる鳥羽伏見以前のエピソードの挿入方法や、転戦の途中足の指を負傷した土方が会津で(思い通りにならない身体にイライラしながら)療養していたあたりの記述は興味深かったです。

それにしても、会津藩主・容保公はやっぱり素敵ですね。
この作品にはちょっとしか登場しないのですが、容保公が土方に掛けた一言に暖かい人間性が感じられました。
彼を主役にした小説が読んでみたくなりました。
今度探してみよう。

海堂尊『ひかりの剣』

  • 2009/09/13(日) 12:12:15

ひかりの剣
ひかりの剣

内容紹介
『チームバチスタの栄光』の舞台でおなじみの東城大と帝華大。『ジェネラル・ルージュの凱旋』の天才外科医・速水晃一は「東城大の虎」とよばれた剣道部主将だった。かたや、「帝華大の伏龍」とよばれた清川。二人のあいだには、医鷲旗(東日本医科学生体育大会の剣道部の優勝旗)をめぐる伝説の闘いがあった。

「バチスタ」シリーズの外伝、という感じの作品。
『ジェネラル・ルージュの凱旋』に登場した速水と、『ジーン・ワルツ』(こちらは未読)の清川がまだ大学生だったころの物語。
大学医学部の学生だけで開催される剣道大会で医鷲旗(いしゅうき。大会の優勝旗)を争う各大学の剣道部員たちの姿を、お互いにライバルと認め合う速水と清川を中心に描いた「スポ根」小説です。

登場人物がシリーズのメンバーとかぶるのと、途中にちょっとだけ『ブラック・ペアン1988』で出てきた、速水、島津、田口3人の病院研修のシーンが出てくるので「バチスタ」シリーズなんだなあと感じる程度で、あとはひたすら剣道の話です。
相変わらず(剣道の)専門用語とかバンバン出てきてストイックに話は進んでしまうのですが、登場人物の書き分けも巧いし、ストーリーに勢いがあるので全編飽きずに読めました。
特に最後の医鷲旗を巡る速水vs清川の試合のシーンは迫力があって読み応え満点でした。

ただ、天才的な剣道の腕を持つ帝華大剣道部の新入部員「朝比奈ひかり」の存在はちょっと微妙な感じ。
清川の剣を、そしてその後(間接的とはいえ)速水の剣も変えていくという、物語の中で重要な役割を担っているのは確かなんだけど、それでも結局これは「速水と清川の物語」にしか読めなかったので。
タイトルにまで彼女の名前を使う必要があったのかなあ、と。
(しかも、あまりいいタイトルとも思えないし^^;)

高階院長は、剣道部の顧問(しかも最初は帝華大の、そしてその後東城大の)として登場して、速水と清川、そして2つの大学の剣道部員をいいように「弄んで」います(笑)
こんなに若い頃から「たぬきオヤジ」だったのね~。
「バチスタ」あたりよりも登場シーンが多い分、タヌキっぷりが堪能出来ると思います。

この剣道部での経験が速水を「ジェネラル」にしたのね、と納得できる作品でした。
清川の出てる『ジーン・ワルツ』も読むのが楽しみです♪(現在、図書館の順番待ち中)

ジェネラル・ルージュの凱旋
ジェネラル・ルージュの凱旋
ジーン・ワルツ
ジーン・ワルツ
ブラックペアン1988
ブラックペアン1988

児玉憲宗/坂道尾道書店事件簿

  • 2009/07/05(日) 09:47:33

尾道坂道書店事件簿
尾道坂道書店事件簿

内容紹介
著者・児玉憲宗が勤める啓文社は、昭和6年、尾道にある商店街に十坪ほどの店舗、わずか3人で創業した。もともとは、煙草の元売捌をしていたが、制度廃止後、今まで、身体の害になるものを売ってきたから、今度やる商売は人の役に立つものにしたいと、薬局か書店かに絞られた末、書店をすることにしたという。今では広島県内に二十店舗を展開する書店チェーンである。
そのお店で、先輩から仕事を盗み、良いお店に向かってがむしゃらに突き進んでいた児玉を襲ったのは、脊髄の悪性リンパ腫だった。新店オープンを前に入院することになるが、児玉は一切泣き言をもらさず、現実と立ち向かい、手術、リハビリの末、退院。手に入れたのは車椅子とバリアフリーの家、そして「わしはおまえに障害があろうと特別扱いはせんよ。バンバン仕事をやってもらうから。」と肩を叩く社長をはじめ、同僚だった。現在本部として啓文社の売り場を支えているが、そのフットワークは、誰よりも軽く、改造した車に乗って各店舗を見て歩く。そんな書店員人生と地方の書店の現状、本部という仕事を描いた1冊。

タイトルに<事件簿>と付いていますが、ミステリーではありません。
著者の児玉さんは広島県内でチェーン展開する書店「啓文社」の一社員。
その児玉さんが実際にお店や社内で起こったこと、経験したこと、本を扱う人間として思うこと、仕事仲間やお客さんとのエピソード、そして著者自身の日常などを描いたエッセイです。

とても面白かったです。

さまざまなエピソードから児玉さんの書店員という仕事への真摯な、前向きな思いがストレートに伝わって来ます。
地方書店としての悩み、その中で出来ることを積極的に取り入れていくアイディアや実行力、サービスに対する考え方、同僚との関係など、ただ「書店員」だけに限らずどんな職業にも当てはまるエピソードがたくさんあってとても参考になりました。

児玉さんは(上記の「内容紹介」にも書かれているように)10年ほど前に難病(悪性リンパ腫)を患い、その治療のための手術により下半身不随になり車椅子での生活を余儀なくされています。
そのため書店員としての活躍の他に、その発病からリハビリ、会社復帰までの様子が「闘病編」として約50ページにまとめられています。
そこには、普通であればかなり悲劇的、絶望的であるとも思える難病とハンデキャップに真正面から向き合い、決して諦めず前向きにそれを受け入れ、乗り越えていく児玉さんの力強い姿が描かれています。
そんな児玉さんのために会社をバリアフリーに改築してまで「また一緒に働こう」と待っていてくれた手塚社長を始めとした啓文社という会社の懐の深さ、温かさが感動的でした。
もちろん、その待遇は破格のものだなと思います。
一般的には会社はそこまでしてくれないと考えるのが普通でしょうし、仮にそうしたくとも出来ない場合も多いでしょう。
でも、児玉さんはそうした対応をしてくれる会社に出会うことが出来た、それはとてもラッキーなことだったと思います。
でも、児玉さんは何もせずにそのラッキーに巡り会ったわけではなく、そういう状況や関係を可能にしたのもまたそれまでの児玉さん自身の努力や働きがもたらしたものだと素直に理解できる内容でした。
本当は社会全体がこんなふうにきちんと努力した人が、正当に報われる仕組みであるべきなんですけどね…。

児玉さんは本屋さんであって文筆を職業にしている方ではないのですが、やはり毎日本に触れているだけあって(読書量も相当とか)文章がとても上手なんですよね。
いわゆる「美文」というわけではありませんが、感情がセーブされ、人間関係や時系列などがスッキリまとめられている判りやすい文章で読みやすかったです。
プラス、そこにちょっとした笑いの要素や、話の内容に合わせた本の紹介などもさりげなく挟み込んでまとめあげてしまうセンスもあって、下手な小説家の装飾語ばかりで何が書いてあるか判らない文章よりもずっと好感が持てました。
文章というのはその人の性格や思考方法の反映だと思うので文章を読むとその人がどんな人かよく理解できると思うのですが、その視点で行くと児玉さんは頭が良くて、情熱的だけど同時に理性的、そして気さくで信頼出来る人というイメージですね。
こんな児玉さんが愛して止まない啓文社書店。
機会があったら是非行ってみたい本屋さんです。

越水利江子『花天新選組-君よいつの日か会おう』

  • 2009/05/25(月) 09:38:03

花天新選組―君よいつの日か会おう
花天新選組―君よいつの日か会おう

内容(「BOOK」データベースより)
現代の少女がタイムスリップし、幕末の新選組隊士に!否応なく戦闘に巻き込まれ、泣いたり、わめいたりしながらも、やがて総司への想いを胸に、鳥羽伏見の戦いに…。壮絶に燃える幕末ファンタジー。

前作では幕末の沖田が秋飛のいる現代に飛んできた、という設定でしたが、今回は秋飛のほうが幕末にタイムスリップして新選組の隊士になる(死にかけた隊士の身体に秋飛の意識だけが入り込む)という設定になっています。

新選組の隊士たちのキャラクターや史実、時代の中で果たした役割などは丁寧に判りやすく書いてあるのですが、そこがあまりにもカッチリし過ぎていて「秋飛」という異分子が入り込んだことによる「ずれ」とか「遊び」の部分があまりなく、全体的に普通の「新選組もの」になってしまっているのが残念でした。

元々は女の子であった、とか剣の修行をしていた、とかいう前提の部分を活かせば、もっと「物語」として膨らますことが出来る部分が多かったような気がするのですが。
逆に考えれば、それだけ著者が「新選組」という集団に対して真摯であったという証なのかもしれませんが。

一番気になったのは、幕末に飛んでから最後まで秋飛が一度も現代に戻る部分がなかったということ。
秋飛にとっては沖田が一番大切な人物になっていたということや自分の意志でどうこうできることではなかったということだと思うのですが、現代にもまた秋飛を心配している家族や友人、仕事仲間がいることを考えれば何かのきっかけで少しの間でも現代に戻るシーンがあってもよかったのでは。
そして本来の秋飛としての人生や生活に心を残しながらも、その上でやはり沖田のいる時代に戻ることを自分の意志で選択して、その時代に戻るという設定にしたほうが秋飛の真剣さがより強調されたような気がしました。
または沖田が死んでから現代に戻ってきて、自分の生きる意味や進む道を真剣に考えて生き始めるとか…。

自分で捨ててきたわけでもないのに突然タイムスリップしてそのままそこで終わってしまい残された現代の状況には何も触れないというのはちょっと不親切だなあ、と思いました。

新選組本として読めば丁寧な文章できれいにまとまっているし沖田や土方ら主要な人物はかなり魅力的に描かれている作品だと思うのですが、せっかく歴史小説以外の要素を持ち込んでいるのですからその視点からのアプローチがもっとあったらよかったのに…と思います。

越水利江子『月下花伝-時の橋を駆けて』

  • 2009/05/21(木) 09:33:55

月下花伝―時の橋を駆けて
月下花伝―時の橋を駆けて

内容(「BOOK」データベースより)
秋飛!天と地があるかぎりおれたちは永遠に共に生きる。激動の時代を駆け抜けた青年・沖田総司と現代の少女・秋飛の出会い。

主人公は17歳の少女・秋飛(あきひ)。
2歳のときに両親を事故で亡くして以来、剣術の道場を営む祖父の元で7歳違いの姉・春姫とともに暮らしていたが、先日その最愛の祖父も病死してしまう。
悲しみにくれる秋飛が気晴らしに家の中から見つけた古い映画のフィルムを見ていたところ、その中から新撰組の沖田総司が現れる…。

読みやすい文章できれいにまとまっているのですが、何が言いたいのかがよく判らないまま読み終わってしまった感じでした。

古い映画のフイルムの中から沖田が出てきたり、秋飛が女優になるという設定自体は面白いのですが、その根拠や意味がきちんと描かれていないのでその設定の重要さや秋飛の真剣さが今ひとつ伝わって来ないんですよね。
秋飛の前に沖田が出てくるのは、おじいちゃんが剣術の達人で小さい頃から秋飛も稽古をつけてもらっていたからという前提があるのでまだ納得できるのですが、女優になる設定の方は「興味があるからやってみたい」以上の、もう少しのっぴきならない、または運命的なエピソードがあったほうが秋飛の行動や心情に感情移入出来るのではないかと思いました。

この後、続編(『花天新選組』)があるのでこちらではもっと深い話が読めることを期待しましょう。
(既に借りてあります(笑))

今野敏『蓬莱』

  • 2009/05/16(土) 09:27:46

蓬莱 (講談社文庫)
蓬莱 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
そのゲームには「日本」が封印されている!?人気沸騰のゲームソフト「蓬莱」を開発したソフトハウスは、パソコン版に続きスーパーファミコン版を計画した。しかし、恫喝し、力尽くでその発売を執拗に妨害する巨大な力が…。バーチャル・ゲームと伝奇世界がリアルに交錯する傑作エンタテインメント巨編。

安積班シリーズの長編です。

主役は小さなゲームソフト会社の社長・渡瀬。
彼の会社の若手社員・大木が中心となって作成された「蓬莱」というゲームソフトを巡って起こる事件に所轄の担当者として安積が関わっていくという構成になっています。

いつもの安積班メインの作品とはちょっと異質な印象でしたが、とても面白かったです。

物語のキーワードとなるのは「蓬莱」と名付けられたシュミレーションゲームなのですが、このゲームのディテールの設定が見事。
重要なアイテムなのですから当然といえば当然なのですが、かなり細かい部分まで手を抜かずきちんと設定してあるし、何よりゲームとして「面白そう」と感じました。
このゲームソフトが全ての鍵を握っていて、これを中心に事件が動いていることを考えると、そのアイテムをどれだけ魅力的にみせることが出来るかがポイントだと思うのですが、そういう意味で「蓬莱」の描写は成功していたと思います。
といっても私自身はこういうシュミレーションゲームのような手の込んだゲームにはあまり興味も知識もないので、あくまで「小説の中の設定として」という判断しか出来ませんが。 

また、今回の作品では「蓬莱」自体の解説の他にも設定の元となる史実や学説、人物についての解説がかなり詳しくページ数を割いて記述されています。
私はこういう歴史的薀蓄みたいなのも好きなのでけっこう面白く読んだのですが、いつもの「安積班シリーズ」の1作品として読み始めるとちょっと面食らうかもしれません。
確かに事件のベースになる考え方だし、すごく判りやすく書いてあるのですが、物語の展開の上でここまでの分量が果たして必要だったのかどうかはちょっと疑問を感じました。
(「QEDシリーズ」に比べればカワイイものですけどね…って比べる対象が違うか^^;)

この作品では渡瀬の目を通した安積が描かれています。
(特に前半)
通常の作品では安積の心理描写が(しつこいくらい)出てくるので、安積は仕事が出来るし部下や同僚からの信頼も篤いのに心配性で気にしぃというイメージあるのですが、こうやって第三者(しかも心当たりのない暴行を受け不安な一般人)の目から見た安積は、その表情の内側で何を考えているか判らないため事務的でとっつき難い印象に映るということが(当然のことではあるのですが)新鮮でした。
(その後、時間の経過とともに渡瀬にも安積の本質が理解されていくのですが)
誰の目から見るかで同じ人物でも違った印象で見えてくるのが面白いですね。

導入部、設定、伏線、展開、エピソード、どれもスムーズですが同時に緊迫感がある展開で、非常に面白い作品でした。
登場人物も一人一人丁寧に設定されていて、物語に説得力と厚み、深みを与えていました。

これで現在出版されている安積班シリーズは全て読了。
充分楽しみましたが、もう次に買うものがないのが寂しいです…。
でも、このシリーズのおかげで今まであまり意識していなかった「警察小説」というジャンルに、興味が湧いたのでこの系統の本から次のお気に入りを探してみたいと思います。
※面白い作品をご存知の方、教えて下さい!

今野敏『ST警視庁科学特捜班』

  • 2009/05/14(木) 11:08:07

ST警視庁科学特捜班 (講談社文庫)
ST警視庁科学特捜班 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
多様化する現代犯罪に対応するため新設された警視庁科学特捜班、略称ST。繰り返される猟奇事件、捜査陣は典型的な淫楽殺人と断定したが、STの青山は一人これに異を唱える。プロファイリングで浮かび上がった犯人像の矛盾、追い詰められた犯罪者の取った行動とは。痛快無比エンタテインメントの真骨頂。

「警視庁科学特別捜査班」という架空の部署に所属する特殊な能力を持つ5人のメンバーを中心にしたシリーズの1作目。

普通の刑事たちの地道な捜査活動を描きリアリティを追及した「安積班シリーズ」に対し、超能力とも呼べる頭脳や身体能力、五感を持つ5人のSTたちを主役にしたこちらのシリーズはかなりエンターテイメント性が強いです。

STのメンバー5人それぞれが別々の特殊脳力を持っているんだけど、個性的すぎて(?)却って特徴と名前を覚えられない…^^;
結局どちらもちゃんと覚えられたのは「もう帰っていい?」が口癖の美貌のプロファイラー・青山くんと地獄耳の紅一点・翠ちゃんだけでした(笑)
あとの3人は名前は覚えたけど(赤城と山吹と黒崎)、どの人が何が得意なのかよく覚えてません…。
同じ5人でも安積班の地味な(笑)メンバーズはすぐに覚えたのにな。
しかも一つの場所に(彼ら以外にも)何人も一緒にいるシーンが多いので、しゃべり始まると誰のせりふかよく判らない部分もあったりしてその点でもちょっと混乱してしまいました。

さらに安積班シリーズの場合は、捜査の状況が全て読者に開示されているイメージなのでどこでどうなっているのか何が起こっているのか読んでいるこちらにも判りやすかったのですが、これは実際に捜査に当たる刑事たちが集めてきた事実がSTたち(というかプロファイラーの青山)によってどう解釈されるかが判らないと全体像が見えてこない構成になっているらしく、その辺りが曖昧なまま進んでいくので読んでいてちょっとイライラしました。
しかもプロファイルとか科学捜査がメインになるだけに事件そのものもかなり込み入っているし…。
全体像が見えてきてからは展開がスピードアップして俄然面白くなるのですが、そこに行き着くまでを「長い」と感じてしまいました。
テーマや雰囲気は嫌いじゃないので短編があったらまた読んでみたいです。

ところでこの5人の名前、戦隊ものの登場人物みたい。
だったら紅一点はミドリじゃなくてピンクだよね(笑)

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