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荒木源『ちょんまげぷりん』

  • 2011/03/13(日) 13:20:19

ちょんまげぷりん (小学館文庫)
ちょんまげぷりん (小学館文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
シングルマザーの遊佐ひろ子は、お侍の格好をした謎の男と遭遇する。男は一八〇年前の江戸時代からやってきたお侍で、木島安兵衛と名乗った。半信半疑のうちにも情が移り、ひろ子は安兵衛を家に置くことに。安兵衛も恩義を感じて、家事の手伝いなどを申し出る。その所作は見事なもので、炊事・洗濯・家事などすべて完璧。仕事で疲れて家に帰ってくるひろ子にとって、それは理想の「主夫」であることに気づく―。

180年前の江戸時代からタイムスリップしてきた侍が、偶然出会い居候させてもらうことになったシングルマザーの家で家事をこなすうちに料理の才能に目覚める。
特にケーキ作りの腕は天才的で、それがきっかけで有名人になり…という話。

設定とあらすじから考えて、もっと「リアリティは置いといて…」な展開のストーリーかと思っていたら、安兵衛がひろ子・友也親子と出会う場面、その後一緒に暮らし始めるまでの展開、ひろ子の仕事先での描写などかなり堅実な内容だったのが意外でした。
でも、その、一直線にはいかないけど、少しずつ問題をクリアしたり、誤解を解いたりしながらお互いが知り合って、信頼が生まれていく様子が丁寧に描かれていることがこの物語に説得力を与えていたと思います。

前半はそうした堅実な描写もありつつその後安兵衛がTVの時代劇に夢中になったり、買い物や家事を覚えるあたりはユーモアもあり、「なるほど」と納得してしまう部分もあってかなり面白く読めたのですが、後半安兵衛がTVに出ることになるあたりから急に話が一方的に進むようになって、内容も重く刺々しい雰囲気になってしまったのが残念でした。

終わり方はひねりがあって面白かったので、そこに至るまでの途中の部分ももうちょっと余裕を持った描写だったらもっとよかったのに…と思いました。

でも全体的にはスピード感があって読みやすくて面白かったです。

この作品は映画化されて今年の夏の公開が決まっています。
主役の安兵衛役は錦戸亮くん。
確かに映像でも面白そうな作品だし、錦戸くんも武士の格好が似合いそうではあるのですが、この作品の中での安兵衛は

歳は四十前後だろうか。小さな目に団子鼻、あごはえらが張ってがっしりしている。近頃めったに見ないくらいの泥臭い顔だ。

という外見なんですよ。(でも年齢は25歳)
その安兵衛がパティシエとしての才能を開花させ、TVでもひっぱりだこの人気者となる…というのがこの物語の一つのポイントだと思うんですけどね~。 錦戸くんじゃそのまま「カッコイイお侍さん」じゃないですか!
そのあたりのギャップをどうするのか、はたまたどうもせずにそのまま「カッコイイお侍さん」で通すのかも興味があります(笑)

ちょんまげぷりん公式サイト



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赤川次郎『鼠、江戸を疾る』

  • 2010/01/16(土) 12:50:38

鼠、江戸を疾る (角川文庫)
鼠、江戸を疾る (角川文庫)

出版社 / 著者からの内容紹介
江戸の庶民の喜怒哀楽を細やかに描いた、赤川次郎、初の時代小説!
江戸の町で噂の盗賊、「鼠」。その正体は、「甘酒屋次郎吉」として知られる遊び人。妹で小太刀の達人・小袖とともに、次郎吉は江戸の町の様々な事件を解決していく。

鼠小僧次郎吉を題材にした時代小説。
赤川さんにとって初めての時代小説とのことですが、すごく上手!
かなり楽しめました。

どの話も、物語の中心になる人物と次郎吉とその妹の小袖が知り合うきっかけ、その後彼らに手を貸すことになる経緯など話の運び方がスムーズだし、全体的に会話中心に進んでいくのでテンポもよくとても読みやすかったです。
天才的な盗賊で腕も立つ次郎吉と、勝気で小太刀の達人でもある小袖の兄妹のキャラクターも嫌味がなくて好感が持てました。
一話ずつの起承転結がしっかりしているし、何よりラストが時代小説らしい人情味溢れる結びになっているので読後感もとてもよかったです。

どの話にも斬り合いなど盛り上がったりハラハラする場面も必ず一つ入っているので、このままTVドラマ化しても面白そうな内容でした。
ホントにやったら絶対見るけどなあ♪

「鼠、起つ」「鼠、泳ぐ」「鼠、化ける」「鼠、討つ」「鼠、騒ぐ」「鼠、落ちる」の6編を収録。

五十嵐貴久『土井徹先生の診療事件簿』

  • 2010/01/14(木) 12:48:22

土井徹先生の診療事件簿
土井徹先生の診療事件簿

内容(「BOOK」データベースより)
殉職警官を父に持つ令子は、24歳にして南武蔵野署の副署長。毎日暇にしていたら、「命を狙われている」と訴えるノイローゼ気味の偏屈な老人を訪ねることに。その老人宅で出会ったのが、病気のダックスフントを往診していた獣医の土井徹先生とその孫・桃子。ダックスフントと「話した」先生は、驚きの真実を令子に告げる…(「老人と犬」)。いつでも暇な副署長・令子、「動物と話せる」獣医・土井先生、おしゃまな先生の孫・桃子。動物にまつわるフシギな事件を、オカシなトリオが解決。心温まるミステリー。

殉職した優秀な刑事を父に持ち、自分は東大を卒業後、南武蔵野署の副署長として赴任した令子が主人公。
と言っても、別に「父の仇を取る」とか「遺志を継いで」ということではなく、のんびり構えているうちに就職戦線に乗り遅れ、たまたま受けた公務員試験に通ってしまったために警察庁に入った(厳密には「入れられた」)ので本人にやる気がないし、周囲(上司や部下)も別に何をしてくれるとも期待していない、という設定。
この、素材はよさそうなのに居場所が見つけられず覇気のない生活を送っている令子をサポートするのが偶然知り合った動物病院の院長・土井先生。
たまたま令子が担当することになった事件(いずれも「動物」が絡んでいる)の話を聞いて、その動物の生態などから意外な真実(ときには犯人)を指摘して令子を助ける・・・という話。

読みやすかったし、設定も面白かったのですが、残念ながら内容はそれを活かせていなかったように思います。

何より主人公の令子が魅力的じゃないんですよねえ。
確かに警察にいるすべてがよく小説やドラマに出てくるような「生まれつき警察官」だったり「犯人逮捕に命を掛けている」という人間ってことはないだろうから、こういう設定も面白いかもしれないけど、それでもせっかくいい大学を出ていい待遇で就職した若者がいつまでも「やることがない」「やる気がない」とダラダラしている描写が多いのはいかがなものか、という気がします。
しかも着任して半年くらいの話だったらまだしも、この作品の中で2年も経っているのに状況が変わらないというのは…どういう方向に行くのが正しいのかは判らないけど、少しは変化したり進歩したりして欲しいと思うのです。
更に事件の謎解きも他の人にしてもらうなら令子が主役でいる意味はないのではないでしょうか。
タイトルも「土井徹先生の~」とあるんだから、土井先生が主役でも何の差支えもないかと。
例えば土井先生の病院に仕事が上手くいかない令子がペットの診察にかこつけて相談に行く、といった設定の方が無理がないような気がします。

「老人と犬」「奇妙な痕跡」「かえるのうたが、きこえてくるよ」「笑う猫」「おそるべき子供たち」「トゥルーカラー」「警官殺し」の7つの短編が収録されているのですが、最後の「警官殺し」はすごく中途半端なところで終わっています。
タイトル通りひとりの警官が殺される事件が発生、犯人は捕まるのですが、その供述が怪しいのではないかと土井先生にほのめかされ令子が「真実を自分で突き止める」と決意するところで終わっているのです。
令子が変わっていくきっかけになるのかなとは思うのですが、その後の展開がまったく不明なまま終わってしまうのはかなり不親切だなあと思います。
次の展開への布石なのかもしれませんが、出来れば解決編までこの本の中に入れて欲しかったと思いました。

岡井崇『ノーフォールト(上・下)』

  • 2009/11/28(土) 12:37:08

ノーフォールト(上)
(ハヤカワ文庫JA)

ノーフォールト(上)(ハヤカワ文庫JA)
ノーフォールト(下)
(ハヤカワ文庫JA)

ノーフォールト(下)(ハヤカワ文庫JA)

内容(「BOOK」データベースより)
城南大学病院に勤める女性産科医・柊奈智は、深夜の当直で容態が急変した妊婦に緊急帝王切開手術を行なう。ギリギリの判断が幸いし、子供は無事に生を受けた。だが喜びもつかの間、数日後に原因不明の出血が母親を襲う。医師たちの懸命の治療の甲斐もなく、出血の原因がわからないまま、母親は死亡してしまった。患者を救えなかったことでショックを受ける奈智。だが、それは、さらなる試練の始まりに過ぎなかった…。

現在日本テレビで放映中のドラマ『ギネ 産婦人科の女たち』の原作です。
ドラマの評判は今ひとつのようですが、原作の小説は評価が高かったので読んでみました。

緊急手術、その後の治療、母親の死、遺族による訴訟、その法廷での尋問に耐えられず病院を辞めることを考える主人公、そして…という流れがシンプルに判りやすく書かれているので読みやすかったし、それでいて臨場感もあり面白かったです。

ドラマは2~3回、それもチラッとしか見ていないのですが、人間関係や設定、エピソードがかなり追加・変更されて複雑になっていて、小説を読んで感じたストレートな主張がぼやけてしまっているように思えました。
何より、主役の奈智のキャラクター設定が小説とドラマではほぼ180度違うのです!
私はドラマを先に見ていて「仕事は出来るが独善的で周りから浮いているキャラクター」の奈智の性格がとても苦手だったので、「こんな人が主役だったら小説も面白く読めないかも…」と思ってしばし読むのを躊躇していたくらいなのですが実際に読み始めたら「優秀で研究熱心、何より患者の心に沿った治療により患者はもちろん上司や同僚にも信頼されている若手医師」が出てきたのでかなりビックリしました。
いくら脚色するとは言っても主役の性格をここまで変えてしまう意図というのは何なのでしょうか。
確かにTVドラマにはちょっと印象的なキャラクターの方がいいのかもしれませんが、それにしてもちょっと変えすぎそして怖すぎです…。

著者である岡井氏は現役の産婦人科医であるとのこと。
作中にはメインストーリーに絡んで医療の現状やそれに対する改革案など著者の主張も表現されています。
この部分が小説の一部としてはちょっと唐突で、かつ冗長な感じがしないでもないのですが、書いてある内容自体は非常に興味深く、現在の医療制度を理解し、今後どうあるべきかを考えるいい材料だと思えました。

ドラマを見て原作を敬遠してしまう人がいるかもしれませんが、この作品に関しては設定とメインストーリーの流れだけを参考にしているという程度でドラマと小説は別物と考えたほうがいいような気がします。
ドラマが苦手でも小説は面白く読めることもあると思いますので医療問題に興味があったら読んでみて下さい。

「ギネ 産婦人科の女たち」公式サイト

赤川次郎『霧の夜の戦慄 百年の迷宮』

  • 2009/10/12(月) 12:19:16

霧の夜の戦慄 百年の迷宮 (角川文庫)
霧の夜の戦慄  百年の迷宮 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
16歳の少女・綾は、父親を不慮の事故で亡くし、スイスの寄宿学校に留学することになった。寄宿舎での1日目、不思議な睡魔に襲われた綾は意識を失う。そして気がつくと、なんと1888年のロンドンで「アン」という名で暮らしていたのだ!街は、殺人鬼(切り裂きジャック)の影に怯えていた。以前からこの事件に興味をもっていた綾は、自分の手で捕まえると意気込むのだが―。時空を超えて繰り広げられるミステリー。

赤川氏の作品を買うのは(多分)初めてです。
(読んだことは何度かあるかも。『ふたり』とか)
買わないことに特に理由があったわけではなく、あまりにもたくさん売っていると却って買う気がしなくなるという天の邪鬼な性格のせいです(笑)
今回は新刊文庫の棚に平積みになっていて、しかもいつもの赤川氏の作品らしからぬ暗いイメージの表紙だったので手にとってパラパラ読んでみて「面白そうかな」と思ったので購入しました。
(文庫版の表紙イラストは、以前読んだ有栖川有栖の『白い兎が逃げる』のカバーを描いたのと同じ牛尾篤さんです。)

両親を失ったあとスイスの寄宿学校に留学した16歳の少女・綾が、現代と1888年のロンドンを行き来して「切り裂きジャック」の正体を突きとめる、というお話。

冒頭からすごくスピーディな展開で、いろんな要素が次々出てくるので飽きることはありません。
文章も非常に判りやすいので、内容がかなり込み入っているのにすんなり読めるし。
しかも、この綾(=アン)が16歳の女の子(しかも社長令嬢)とは思えないほど肝が据わっていて、自分からどんどん危険な場所に足を踏み入れていくのでハラハラする場面がたくさんあったのも楽しかったです。
逆に「あまりにも順応性が高すぎじゃないですか?」と心配になるくらいでした^^;
普通のタイムスリップものみたいに本人として時間移動するわけではなく、また時代によって別の人格になるのにそれぞれの時代の記憶をお互いに保持したままになっているというのも結構斬新な設定でした。

ただ、いろんな要素をたくさん詰め込みすぎたため、物語の中で消化し切れていないエピソードもあったような気がします。
例えば、アンドリューの死んだ兄・ケンのこととか、綾が死んだ父の跡を継いで会社の社長になる話とか、母親が失踪した原因とか…「え、この話はこれで終わり?」って話がけっこうたくさんありました。
特に綾の両親の話はあれでホントによかったの?という終わり方。
「それじゃあ、あまりにも勝手すぎませんか?」と私なんかは思ってしまったのですが、当の綾はニッコリ笑ってエンディング。
「あれで納得できるなんて、なんて大人なんでしょう」…と思ったのでした。

大倉崇裕『福家警部補の再訪』

  • 2009/10/12(月) 12:16:40

福家警部補の再訪 (創元クライム・クラブ)
福家警部補の再訪 (創元クライム・クラブ)

内容(「BOOK」データベースより)
鑑識不在の状況下、警備会社社長と真っ向勝負(「マックス号事件」)、売れっ子脚本家の自作自演を阻む決め手は(「失われた灯」)、斜陽の漫才コンビ解消、片翼飛行計画に待ったをかける(「相棒」)、フィギュアに絡む虚虚実実の駆け引き(「プロジェクトブルー」)…好評『福家警部補の挨拶』に続く、倒叙形式の本格ミステリ第二集。

以前読んだ『福家警部補の挨拶』に続く、シリーズ第2弾。
「マックス号事件」「失われた灯」「相棒」「プロジェクトブルー」の4編を収録。

背が低く、地味で童顔、年齢不詳。およそ警察関係者それも殺人事件の現場の責任者には見えない外見の福家が、相変わらず飄々と難事件を解決していきます。
現場で見つけた小さな欠片から、その向こうにあるものを見透かてその姿を捉え、そうしたものを積み上げることによって犯人が隠そうとした真実を確実に辿り着く福家の手腕が小気味いいです。
あまりにも真っ直ぐにそこに向かっていくので少し「出来すぎ?」と思えてしまう部分もなきにしもあらずなのですが、それ以上にストーリーの持つスピード感と「次は何をするんだろう、言い出すんだろう」という期待感が優っていて最初から最後まで一気に読めました。

また、今回は事件の関係者(証言者)たちから事件とは関係のないところで(しかも福家本人はそうと意識しないうちに)、一目置かれる存在になってしまっているという描写がさりげなく入っているところが「巧いな~」と思いました。

次が楽しみなシリーズです。

大石直紀『輪廻の山 京の味覚事件ファイル』

  • 2009/08/03(月) 12:45:26

輪廻の山―京の味覚事件ファイル (光文社文庫)
輪廻の山―京の味覚事件ファイル (光文社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「奥様料理研究家」を目指す凪子は、結婚生活五年目に夫である準平とともに京都に引っ越すことになった。準平が、勤務先のソース会社で京都転勤になったのだ。食文化が異なる京都で苦戦する準平を尻目に、京都での料理生活を満喫する凪子であったが、食材や料理の陰には、なぜか、ミステリアスな事件が潜んでいて…。古都を舞台に、ミセスが魅せる名推理!文庫書下ろし&オリジナル。

何となく全体の設定がずれている感じがして、違和感を持ったまま読み終わってしまいました。

主人公は料理好きで「奥様料理評論家」になることが夢の主婦・凪子。
ソース会社の営業マンである夫・準平の転勤に伴って京都に引っ越してきた凪子は「料理の勉強のため」と近所のスーパーのおばさんに京都特産の野菜農家を紹介してもらって訪ねて行くのですが、何故か行く先々で事件に遭遇する・・・という展開の話(短編集)です。

警察関係者ならともかく、一般人が普通に生きてきて事件(それも人の生き死にに関わるような)に遭遇する確率なんてそんなに高くないですよね。
そんな経験、それこそ「未曾有の出来事」だと思うんですよ。
まあ、それでもたまたまその「未曾有の出来事」に遭遇してしまった、そして素人ながらたまたまその事件に深く介入する事態に巻き込まれてしまったと言う「お話」があってもいいと思います。
でもその人物が動くたびに待っていたかのように新聞沙汰になるような事件が起こるなんてお話だとしても設定としてちょっとどうなのよ、と思ってしまうのです。
そんな人がいたとしたら、事件そのものよりもその人のほうが「危ない」ってことになると思うのですが。

しかも、どの話もその前半、事件現場に行くまでの凪子がやけにハイテンションなのもイラッとする原因でした。
料理のことで頭がいっぱいで、スーパーのおばさんに強引に頼み込んで相手先を紹介してもらい、しかも「面倒くさいからいやだ」と言ってる旦那を無理やり同行して初めての場所に乗り込んでいく。
それなのにいざそこに行ってみると、初対面の凪子たちに向かって何故か相手はみんな「実は・・・」と内緒の話をし始めて、その話が「何だか気持ち悪い、何か起こりそう」と早々に退散してくる。
その直後にその家で惨劇が起きて、それを知った凪子は「ああ、やっぱり…」と思うという「なんじゃ、そりゃ」な展開の連続。

しかも、凪子は事件を「解決」も「解説」もしないんですよ。
「こういうことなのでは・・・」と予測(推測)する程度で、最終的な回答はその事件の当事者によって独白で語られるという形式なのです。

何だか勝手に人の家に押しかけて明けちゃいけない扉を開けて「ヤダ、気持ち悪い」って言って開けっ放しでサッサと帰ってくる、そしてその後は急に傍観者になってしまうような自分勝手な人にしか思えませんでした。
そういう頭で呼んでいるせいか、凪子は「霊感が強い」とか「一度見た人の顔は忘れない」とかいう怪しげな特徴が少しずつ出てくるのも「都合がいいなあ」と感じてしまいました。

全体的に残念な感じの話が多かった中で表題作の「輪廻の山」だけは、凪子の友人の身内の話であり過去の話として完結していてキレイにまとまっていたと思います。
(ただ、後味はあまりよくありませんでしたが…^^;)

私の個人的な好みの問題だと思うのですが、ミステリーの場合、人物や物語の設定と、謎の性質が乖離している作品ってあまり好きじゃないんですよね。
お料理好きで好奇心旺盛でちょっと強引で社交的な凪子の性格(私はどうしても「サザエさん」を連想してしまう…(笑))はいいと思うし彼女の作るお料理は確かに美味しそうだったのですが、その設定を活かすならもっと彼女の日常やお料理にまつわるちょっとした謎や不思議をテーマにしてラストもちょっと笑えたり、温かい気持ちになれる物語にしたほうが座りがよかったんじゃないかなあと思いました。

表題作他「呪詛の森」「怨霊の屋敷」「霊気の古樹」「幽鬼の沼」「鎮魂の塚」の6編を収録。

大倉崇裕『七度狐』

  • 2009/07/18(土) 12:32:56

七度狐 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M お 4-3)
七度狐 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M お 4-3)

内容紹介
名跡継承をめぐって開かれる落語会の取材に、僻村を訪れた間宮緑。折からの豪雨で孤立した村に見立て殺人が突発、頼みの牧編集長が到着できない状況下で第二の事件が……。 『三人目の幽霊』に続く大人気シリーズ第2弾!

以前読んだ『三人目の幽霊』に続くシリーズ2作目です。
前作を読んであまり好きなタイプの内容ではないなあ、と思ったのですが、そのあと読んだ『福家警部補の挨拶』は面白かったので、ちょっと期待して読んでみました。
…が、残念ながら今ひとつ…。

といっても決してつまらないわけではないんですよね。
むしろ物語の構成や展開はすごく緻密でそれでいてスピード感があり、どんどん読み進むことができる作品でした。
ただ、物語全てが事件とその謎解きに終始していて遊びというか余裕がない(殺人事件が起きているのに「余裕」も何もないと言われればその通りですが)、また事件の動機や犯行方法に容赦がない、救いがないというのが私にとってはちょっとツラかったです。
展開が緻密な分ずっと緊迫した場面が続くし伏線も次々出てくるので、読んでいるこちらも息付く暇なくどんどん追い込まれて行くようでした。

このシリーズは「落語」という古典芸能が重要なモチーフとなっています。
主役が落語を扱う雑誌の編集者であり、その他の主要な登場人物も落語家が殆どですし、物語に重大な影響を与える噺の内容も展開に合わせて丁寧に解説されていて、落語に対する著者の造詣の深さ、愛情が伺われます。
ただ、それがあまりにも密接に悲惨な事件と絡んでいるので、果たしてこれは落語のためになっているんだろうかと逆に心配になるくらいでした…。
う~ん、やっぱり巧い話だったんですねえ。
巧すぎてちょっと苦手、って感じでしょうか。

上田早夕里『ショコラティエの勲章』

  • 2009/06/09(火) 09:53:29

ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア)
ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア)

内容(「BOOK」データベースより)
絢部あかりが勤めている老舗の和菓子店“福桜堂”。その二軒先に店をかまえる人気ショコラトリー“ショコラ・ド・ルイ”で、不可解な万引き事件が起きた。その事件がきっかけで、あかりはルイのシェフ・長峰と出会う。ボンボン・ショコラ、ガレット・デ・ロワ、新作和菓子、アイスクリーム、低カロリーチョコレート、クリスマスケーキ―さまざまなお菓子をめぐる人間模様と、菓子職人の矜持を描く、小松左京賞作家の鮮やかな力作。

老舗和菓子店の売り子をしているあかりと、人気ショコラトリーのシェフ・長峰が周囲で起こるスイーツ絡みの騒動や謎を解決していく連作短編集。
表題作他「鏡の声」「七番目のフェーヴ」「月人壮士」「約束」「夢のチョコレートハウス」の6編を収録。

コージーミステリーらしく丁寧で穏やかな語り口で話が進み最後もきちんとエンドマークが付けられるのですが、「みんなの誤解が解けてめでたし、めでたし」というまん丸なものではなく、それぞれの気持ちのどこかにちょっとだけ引っ掛かりを残したままのほろ苦い結末の作品が多かったような気がしました。
これも「チョコレート」がテーマだからなのかな。
主役のあかり、長峰を始めとした主な登場人物も、包容力があり大人の分別を持った落ち着いたキャラクターが多く、全体的に大人っぽい雰囲気の作品。
作品中に出てくるお菓子の描写もすごく丁寧で美味しそうだし、物語の中での役割も不自然ではなく上手くまとまっていて気持ちよく読めました。

ただ、読むのに邪魔ってほどではなかったですが、お菓子についての専門用語がすごく多いなあと思いました。
専門家である長峰はともかく、単に「お菓子好き」という設定のあかりの口からもどんどん専門用語や蘊蓄が出てくるんですよね。
いくら父親が菓子職人で、本人も無類のお菓子(スイーツ)好きだとしてもちょっと詳しすぎでは…。
それとも最近の女の子はこのくらい当然なのでしょうか?(汗)
でも、そうした専門的な用語が多用されているにも関わらず 鼻につかないのは、文章や構成がスッキリとまとまっているからなんでしょうね。

ちなみに私はこの本を読んで「ここに出てくるようなチョコレートとかケーキとかにあまり興味がないんだな~」ということを改めて実感しました(笑)
もちろん嫌いではないので目の前にあれば美味しく頂きますが、こういう小説を読んでどうしても食べたくなって思わず買い(食べ)に行ってしまうようなタイプではないみたい。

そんな私でも面白く読める作品でした。
甘いもの好きの人だったら絶対気に入ると思うのでぜひ。

恩田陸『ネクロポリス(上・下)』

  • 2009/01/19(月) 10:03:11

ネクロポリス 上 (朝日文庫)
ネクロポリス 上 (朝日文庫)
ネクロポリス 下 (朝日文庫)
ネクロポリス 下 (朝日文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
懐かしい故人と再会できる聖地―アナザー・ヒル。死者たちを『お客さん』と呼び、温かく迎えるヒガンという祝祭空間。連続殺人、不可思議な風習、天変地異、そこに新たな事件が―めくるめく想像力でつづられる謎とファンタジーの結晶体。

面白かった!

本屋の新刊文庫コーナーで見つけたときは、分厚いし、上下巻だし、しかもタイトルも表紙絵もオドロオドロしいのでヘビィな内容だったらヤだなあ…と思って一瞬躊躇したのですが、たまたま出先で待ち時間があって、でも何も読むものがないという状況だったので「いいや!」と思って購入したのでした。
で、読み始めてみたら、最初の印象と違ってすごく読みやすくてサクサク読めて最後まですごく楽しめました。

内容はミステリー風味のファンタジー、または幻想小説といった感じでしょうか。
イギリスと日本が融合したような風土と習慣を持つV.ファーという架空の土地、その中でもまた特別の意味を持つ「アナザー・ヒル」という場所の設定が秀逸でした。
イギリスは私も大好きな国。
大陸を隔てて反対側にあるのに、何故か日本と似てる気がするんですよねえ。
特に空気の重さとか質感とか。
なので「イギリス+日本」という設定は個人的にすごくツボで、それだけでマルでした。

それに加えて好奇心旺盛でおしゃべり好き、何があってもある程度時間が経てば当然のように受け入れて順応してしまうV.ファーの住民たちの描き方も魅力的でした。
血塗れの惨殺死体や幽霊や超常現象などがたくさん出て来て重くて読みにくくなっていきそうな物語を、全体的に妙に明るい雰囲気にしてくれていたのは彼らの存在だったと思います。

全体的に緩急があったし「どこに着地するんだろう」と最後までワクワクドキドキさせてくれて面白く読んだのですが、唯一残念だったのは連続殺人事件の犯人との対決が何となく中途半端な印象で終わってしまったこと。
あれだけヤ~な感じの捨て台詞を残して去って行ったので、どんな対決シーンがあってどんな決着が着くのかと期待していたら、あっさり終わってしまって…ちょっとビックリ。
あれはちょっと納得行きませんでした。
ラインマンももっと活躍して欲しかったな。

あ、それと、主人公のジュンの一人称が「俺」だったのがちょっと引っかかりました。
あの性格設定だったら「僕」のほうが似合うんじゃないかなあ。

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