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田中啓文『元禄百妖箱』

  • 2010/01/31(日) 11:18:19

元禄百妖箱
元禄百妖箱

内容紹介
日本推理作家協会賞短編部門受賞第一作!
五代将軍・徳川綱吉は狐に取り憑かれていた!
それを知った神官が放つ暗殺者。
奇想天外な切り口で「忠臣蔵」を描いた日本推理作家協会賞短編部門受賞第一作!

天下の悪法・生類憐れみの令を発布した五代将軍綱吉、その母・桂昌院、寵臣の柳沢吉保の3人は実は強力な力を持った狐に取り憑かれていた。
その狐を退治するために立ち上がった神官・羽倉斎は偶然にも彼らの弱点であるある品物を高家筆頭・吉良上野介が所有していることを知る。
羽倉は殿中・松の廊下での刃傷事件を利用して上野介からこの品物を奪い取る計画を立てる…というお話。

要するに「異聞・忠臣蔵」ですね。
四代将軍家綱が死んで綱吉が次代将軍になるところから始まるので、なかなか内容が把握出来ず、しかもこの狐付き3人の所業がかなり悪辣に書かれているので最初のほうはちょっと読むのがきつかったですが、話がよくある忠臣蔵に沿ったものになってきたあたりから、(別にギャグではないのですが)笑える部分もあったりしてグンと読みやすくなりました。

特に大石内蔵助のキャラクター設定がツボでした。
「昼行灯」というのは「敵を欺く仮の姿」ではなく、本当にそういう人物であり、浅野家が改易になるときも「迷惑だ。早く面倒事から逃げ出したい」と逃げるチャンスばかりを伺っていたような人物になっています。
その大石がどのようにして「吉良家討ち入り」という、先には「死」しか待っていないような面倒事の先頭に立つ気になったのかの描写が面白かったです。

荒唐無稽な内容でありながら、個々のエピソードはきちんと史実に合わせた説得力がある描写で読み応えがありました。

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堂場瞬一『雪虫』

  • 2009/06/04(木) 09:46:23

雪虫 (中公文庫)
雪虫 (中公文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
俺は刑事に生まれたんだ―祖父・父を継いで新潟県警捜査一課の刑事となった鳴沢了は、晩秋の湯沢で殺された老女が、かつて宗教教団の教祖で、五十年前に殺人事件に関わったことを突き止めた。了は二つの事件の関連を確信するが、捜査本部長の父はなぜか了を事件から遠ざけるのだった。正義は、そして歳月は、真実を覆い隠すのか?新警察小説。

刑事・鳴沢了シリーズの1冊目。

鳴沢家は主人公の了自身だけでなく、祖父、父と三代に渡って刑事(しかも「優秀な」)だったという設定。
これをもっと引っ張るのかと思っていたのに、それが軽く裏切られる結末でちょっとビックリしました。
(読んでいるうちにある程度予想は出来るのですが)

一人暮らしの老女・本間あさ殺しに始まる一連の事件の捜査~解決の流れはまあまあ面白かったのですが、その間に挟まる了の個人的な人間関係(家族や恋人)についての記述がかなり多いな~、という印象を受けました。

特にひっかかったのは了と現在は新潟魚沼署の署長を務める父親との確執(というか、了の一方的なこだわり?)が何度も描かれるのですが、その理由が明確に説明されていないこと。
作中で「(了が)刑事になるときに一方的に反対されたから」との記述はあるのですが、「ホントにそれだけ?」って感じがする嫌い方なんですよね。
なので、もっと深い理由があるんじゃないかと思っているのですが…。
(もしもホントにそれだけの理由だとしたら、了ってかなりガキだなあ、と思うんですが…^^;)
また「鳴沢家の男は15歳で独立する」ってことで、高校から東京で一人暮らしするっていうのもなんだかわかったような判らないような…って感じの設定でしたし。
更にそうやって多くのページを了の個人的な感情や人間関係に費やしている割に「鳴沢了」という登場人物のアウトラインはどうも曖昧なままに終わってしまったような気がしてちょっと消化不良でした。

これからシリーズが進むにつれてその辺りの事情も明らかになっていくのでしょうか。

高井忍『漂流巌流島』

  • 2009/06/02(火) 09:42:36

漂流巌流島 (ミステリ・フロンティア)
漂流巌流島 (ミステリ・フロンティア)

内容(「BOOK」データベースより)
宮本武蔵は決闘に遅れなかった!?赤穂浪士は浅野内匠頭が殿中刃傷に及んだ理由を知らなかった!?近藤勇は池田屋事件を無理やり起こしていた!?鍵屋ノ辻の仇討ちは都合よく行きすぎた!?人使いの荒い監督に強引に引きずり込まれ、チャンバラ映画のプロットだてを手伝う羽目になった主人公。居酒屋で額を寄せ合い、あーでもない、こーでもないと集めた史料を検討すると、巌流島の決闘や忠臣蔵の討ち入りなどよく知られる歴史的事件の、目から鱗の真相が明らかに…!綾辻行人・有栖川有栖両氏に絶賛された第二回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む、挑戦的歴史ミステリ短編集。

ここの所、1冊当たり1~2日でどんどん読み終わっていたので「読むスピードが上がったのかな」とちょっと喜んでいたのですが、この本は読了までに1週間掛かってしまいました。
やはり歴史ミステリーは情報が多いので時間が掛かりますね…。
(といっても、古文書の引き写しとか読み下し文など漢字が山盛りの部分は殆ど読み飛ばしていたのですが^^;)

でも、内容は面白かったです。

登場人物は歴史的な事件を扱ったオムニバスの短編チャンバラ映画を製作することになった監督と脚本家。
その資料として脚本家が集めたその事件の過去資料を元に事件のあらましを説明すると、監督が同じ資料の中から隠された事実を見つけ出す。
それを組み立てていくことでその歴史的事件に一般的に知られていたのとは別の姿が浮かび上がってくる…という構成。

2人が打ち合わせする数時間のうちに事件全体の説明から矛盾点の指摘、新説の解明までが完了するというスピーディな展開のため無駄がないし、話の内容もあまり広がりすぎないので分かりやすかったです。
(途中で殺人事件が起こったりもしないしね…(笑))
その分多少強引なところもありましたが、基本的に作品中に提示された資料の中で推理が完結しているので読者に対してもかなりフェアな内容であったと思います。

表題作他「亡霊忠臣蔵」「慟哭新選組」「彷徨鍵屋ノ辻」の4編を収録。

高橋克彦『蘭陽きらら舞』

  • 2009/05/21(木) 09:31:07

蘭陽きらら舞
蘭陽きらら舞

内容(「BOOK」データベースより)
胸にしみる人情話から背すじも凍る幽霊譚まで捕物帖の醍醐味が満載!大好評「だましゑ」シリーズ第4弾!若衆髷を結い、女と見紛う美貌だが、役者仕込の俊敏さで荒事もこなす蘭陽が、相棒の春朗(後の葛飾北斎)とともに江戸の怪事件に挑む―。

『だましゑ歌麿』から始まったシリーズの第4弾。
今回の主役は前作で登場した女形の蘭陽。

戯作者の俵蔵(のちの南北)の引き合いで休業していた舞台の仕事が回ってきて喜ぶ蘭陽。
そんな彼の行く先々で降りかかってくる事件や揉め事を春朗(のちの北斎)や北町奉行筆頭与力・仙波家の人々の助けを借りて解決していく短編集。
表題作他「はぎ格子」「化物屋舗」「出で湯の怪」「西瓜小僧」「連れトンボ」「たたり」「つばめ」「隠れ唄」「さかだち幽霊」「追い込み」「こうもり」の12編を収録。
この中で、蘭陽が役者を辞めた理由や少年の頃愛した人の話、蘭陽が抱える幕府の隠密につけ狙われるほどの秘密の話などが明らかにされていきます。

派手で短気でわがまま、だけど人情に厚く思いやり深い蘭陽と、そんな蘭陽を心配してぶつぶつ文句をいいながらも危険な場所にも一緒についていく春朗のテンポのいい会話が楽しい作品でした。

ただ、全体を通してまとまった作品にはなっているものの、1編づつが短すぎるせいか今ひとつ蘭陽に感情移入出来ずに終わってしまった感じがします。
母親を殺された少年・芳吉を引き取るあたりの話は細かく切ってしまうよりもまとまった話にしたほうがよかったのでは。


このシリーズの1作目『だましゑ歌麿』がテレビ朝日系列でドラマ化されるようです。(放送日時は未定)
歌麿が水谷豊、仙波は中村橋之助というキャスティング。
なかなか面白そうです。

テレビ朝日ドラマスペシャル だましゑ歌麿

だましゑ歌麿 (文春文庫)
だましゑ歌麿 (文春文庫)
 

高田崇史『QED ~ventus~熊野の残照』

  • 2008/10/19(日) 13:35:23

QED~ventus~熊野の残照 (講談社文庫 た 88-16)
QED~ventus~熊野の残照 (講談社文庫 た 88-16)

内容(「MARC」データベースより)
伝承にまつわる一寸の「?」から歴史を辿る桑原崇と棚旗奈々の旅路は、故郷を捨てた神山礼子と共に、和歌山・熊野を舞台に牛王宝印に秘められた八咫烏の正体と熊野三山の謎を解く。「QED」シリーズ第10弾。

QEDシリーズ第10弾。

今回の舞台は熊野。
タタルと奈々の勤務先の薬局が所属している学校薬剤師会の親睦旅行で熊野にやってきた、という設定。
例によって例の如く、熊野の歴史についてタタルがひたすら喋りまくってます。
で、読んでいる私のほうも例によって例の如く読んだ端からどんどん忘れていってしまい、本を閉じると「読み終わった!」とか「すごく大量な活字を見たぞ」という(変な)満足感はあるものの後に残るものは殆どなかった…という感じ。
何だかもう、面白いのかつまらないのかさえも判らない状態になってます^^;
私の頭で処理するには情報量が多すぎるんでしょうねえ。

でも、この作品はこの旅の中で殺人事件が起こったりはしないので、その点は気楽に読めたかな。

それから、物語の語り手が2人と一緒に旅行に参加している神山礼子という奈々より年下の女性で、タタルと奈々の関係(やり取り)がこの女性の目から見た形で語られているのがなかなか楽しかった。
といっても、この礼子自身が過去に秘密があり、それによって他人、特に男性に対してすごく偏見を持っているという設定なので奈々はともかく、タタルはかなりひどい言われようでちょっと可哀想に思えてしまうくらいだったけど(笑)
というか、確かに他人には理解できないような悲惨な経験をしているのかもしれないけど、それによって自分を特別視して自分以外の他人を全て低く見ている、といった態度を取る礼子は正直苦手なタイプ。
いくら「心の中で思ってるだけで、表面には出していない」と思っていたって、そんなのはちょっと付き合えば(タタルじゃなくても)すぐ見えてくるものだと思うんだけどな~。
礼子がバカにしていたおばさんたちは、そんな礼子の頑なな気持ちも全て理解した上でお節介焼いたり話しかけたりしてくれていたんじゃないかと思うんだけど。

その礼子の忌まわしい過去の真相も最後はタタルの知識+推理によって明らかになる…という結末。
いつもに比べれば血も流れないし、穏やかな雰囲気で終わる読みやすい作品でした。

でも、タタルが話した内容はもう一生思い出せないと思う。
たとえこの先実際に熊野に行ったとしても(笑)

津原泰水『ルピナス探偵団の憂愁』

  • 2008/03/02(日) 11:23:27

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)
ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)

内容東京創元社Webサイト内より引用)
高校時代「ルピナス探偵団」として様々な事件に遭遇してきた少女3人と少年1人。卒業後、それぞれの道を歩んでいた4人のうち、1人が不治の病で世を去った。久々に顔を合わせた3人に残されたのは、彼女が死を前にして百合の樹の林に造らせた、奇妙な小路の謎だった――。第1話「百合の木陰」から時を遡り、高校卒業式を目前に殺人が起きたルピナス学園で、彼らが授かった“祝福”を描く第4話「慈悲の花園」までを辿る。津原泰水だからこそ書き得た、少年少女たちの「探偵」物語。〈ミステリーズ!〉連載の4編を大幅加筆修正。

以前読んだ『ルピナス探偵団の当惑』の続編。

前作は、第一話だけが推理そっちのけでラブコメディや学園ドラマが進行していくところとか主人公・彩子の姉 不二子が暴走しているところとかがすごく面白くてよかったのに、二話目以降は割と普通の学園ものミステリーになってしまってちょっと残念だった。
今回の続編は第一話目方向に戻っていないかと期待していたんだけど…前作以上に無難なミステリー短篇集になっていた。

彩子もキリエも大人になってるし、祠島くんの「人の顔を覚えるのが苦手」という特徴も殆ど出てこないし、庚午さんは偉くなってるし、不二子は殆ど出てこないし、そして何より探偵団の一員だった摩耶が第一話でいきなり死んでしまうし…。
私が期待していた方向性とはかなり差があって残念。

でも、全体的には一話目とそれ以外の温度差があまりにも大きかった前作に比べて、作品の方向性が揃っている今作のほうがスムーズに読めたことは確か。
しっかりと個性を主張しながらも決して特徴的過ぎないキャラクターや、数多の雑学の披露の中に巧みに隠された伏線の数々。
祠島くんの推理の鋭さ、鮮やかさ。
そして事件を解決しながら時を遡り、最後にルピナスを去る日に戻っていく構成が見事。

4人が永遠の友情を誓うラストシーンが心に残った。

「百合の木陰」「犬は歓迎されざる」「初めての密室」「慈悲の花園」の4編を収録。


ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫 M つ 4-1)
ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫 M つ 4-1)
この作品の感想もよかったらどうぞ。
津原泰水/ルピナス探偵団の当惑

田村裕『ホームレス中学生』

  • 2008/01/03(木) 10:24:24

ホームレス中学生

内容紹介
麒麟・田村のせつな面白い貧乏生活がついに小説に!
中学生時代の田村少年が、ある日突然住む家を無くし、近所の公園に一人住むようになる超リアルストーリー。
ダンボールで飢えを凌ぎ、ハトのエサであるパンくずを拾い集めた幼き日々から、いつも遠くで見守ってくれていた母へ想いが詰まった、笑えて泣ける貧乏自叙伝。

私にしては珍しく「ベストセラーど真ん中」の作品。
実家に帰ったら、父親が図書館で借りてきた本があったので読ませてもらった。
(自分では買いもしないし、借りもしないと思ったので)

読み始めてすぐに感じたのは「うわ、へたくそな文章だなぁ」ということ(笑)
ですます調とだである調が混在しているし、文章がぶつ切りだし、話が前後するし、重要な話とそうでない話が並列で書いてあるので全体的に平板になってしまって、盛り上がりに欠ける感じ。
タレント本ってよく「本人じゃなくてゴーストライターが書いている」とかって話があるけど、ここまで下手なら本人が書いたんだろうなあということは納得できる出来だったかも(笑)

で、問題の内容だけど…全編が話題になっている内容(「自宅を借金で差し押さえられて住む家がなくなり、父親の「解散」の一言で家族全員がバラバラになり中学2年生だった著者は一人で公園のすべり台で暮らす」)について書いてあるわけじゃないのね。
それについて書いてあるのは全体の約3分の1程度(190ページ中約60ページ)で、また実際にホームレスだったのも約2週間くらいの期間だったらしい。

もちろん、中学2年生でいきなり自宅がなくなったうえに「解散」の一言で親に見放されて一人放り出され、何の後ろ盾も先行きへの見込みもない状態で公園で野宿することを余儀なくされるというのは2週間だったとしても異常、というか極限的な状況だと思う。
だから本の紹介をするときにその部分が強調されるのは仕方ないと思うけど、「それしか」話題にならないというのも読み終わってみるとちょっと腑に落ちない部分はあるかな。

というのも、この本はそういう異常な生活の様子よりもそうした環境の中でも失われなかった兄弟(著者と兄、姉)の絆や死んでしまった母への思慕、借金を残したまま自分たちを捨てて失踪してしまった父親に対する思いなどの家族の話と、著者を厳しい環境から救ってくれた友達、その家族、近隣の人々、学校の先生などたくさんの人々への感謝の気持ち、それによって変化した著者の心境などのほうが重要なのではないのかと思えるから。

中でも著者にとって重要だったのはまさかのホームレス生活よりも、むしろ最愛の母親の死だったように思う。
幼いころに味わったその大きな喪失感を見ないふり忘れたふりをすることで自分を守っていたけれど、成長してものごとを理解するなかでその問題と向き合わざる得ない状況になり、その結果生きることへの目的も見失い無気力な状態になってしまう。
それでも家族や周囲の人々の支えを糧にそこから立ち直り、誰を恨むわけではなくそうしたものがあったからこそ「今の自分がある」という心境に至る著者の変化こそが重要な部分だったのでは。

最初に本の内容を知ったときに感じた「笑える悲惨さ」ではなく、「哀しみを乗り越えたものだけが得られる本物の明るさ」みたいなものが感じられる作品だった。

ただ、それさえもあまりにもへたくそな文章であるために内容を理解することに気をとられてしまい、あまり感情移入できずに読み終わってしまった感はぬぐえない。
確かに経験した人にしか表現できない臨場感というのはあるのかもしれないけど、それを表現するにもやはり最低限の表現力というのは要求されるんじゃないかなあ。
リアルであることも大切だけど、もうちょっと添削するとか構成を整えるとか読みやすさを調整する必要はあったのでは。
そうした結果があれだったのならもう何もいうことはないけどね。
もしかしたらそうした流暢すぎない部分が売れている要因の一つなのかも?
あと、まさかとは思うけど「わざとそう書いた」のだとしたら…かなり腹立たしい。

現在この本の発行部数は180万部(!)だとか。
どこかで「世界一売れているノンフィクション作品だ」という話を聞いたんだけど…ホント?
まあ基本的にノンフィクションの本が売れないという事実があるからかもしれないけど、この本がそういう位置に置かれてしまうというのは何かが間違っているような気がするなあ…。

※この↓話と勘違いしてるかな?
麒麟田村“貧乏本”ギネス申請も検討

「ホームレス」から想像されるダンボールを使った装丁は好き。
下手な手書きで書かれた文字がタイトルになった表紙もいいけど、背表紙で同じダンボールの隙間からちらりと外の景色(マンションらしき白い壁とその周囲の木)が見せているところがよかった。
その隔てられた「あっち」と「こっち」にあるのは薄っぺらなダンボール1枚だけど、それこそが「超えることが出来ない厚い大きな壁」であるということが端的に表現されていたと思う。
(実際にはダンボールに住んでいたわけではないけどね)
本文中には著者によるヘタくそなイラスト付き。(これは別になくてもよかったかも…^^;)

高田崇史『QED~flumen~九段坂の春』

  • 2007/10/07(日) 23:17:53

QED~flumen~九段坂の春 (講談社ノベルス タS- 20)
QED~flumen~九段坂の春 (講談社ノベルス タS- 20)

内容
鎌倉宮、浅草寺、熊野灘……。封印された歴史に導かれ、哀しき殺人の連鎖を解く!!
桑原崇の初恋を終わらせた謎とは!?「QED」シリーズ番外編!!
千島ヶ淵の桜の下、花弁を握り締めて男が死んだ――。中学生の桑原崇は、聡明な女教師・五十嵐弥生に思いを寄せるが、ほろ苦い思い出を残して彼女は消え、崇の胸には一つの疑問が残った。それぞれの青春を過ごしていた、棚旗奈々や御名形史紋の周囲でも起こる怪事件。すべての糸が、一本に美しくつながるQED初の連作短編集。
講談社BOOK倶楽部「本のご紹介」ページより)

QEDシリーズの最新刊。
本屋に行ったら平台に並んでいて、表紙がきれいだったので思わず買ってしまった(笑)

今回の作品は「九段坂の春」「北鎌倉の夏」「浅草寺の秋」「那智瀧の冬」と季節を舞台にした短篇が4編収められていて、それぞれが他の作品とリンクする形で成立している。
こうした連作形式はシリーズ初、とのこと。

この4つの物語に登場するのは崇や奈々、小松崎、岩築などお馴染みのキャラクターたちの過去の姿。
まだそれぞれが出会ってはいないけれど、出会うきっかけになる結びつきが彼らの周囲で起こる事件とともに描かれている。
そして、それぞれバラバラに配置されていた事件が、時を超え空間を超えて一つの事件に集約していく構成はきれいにまとまっていて読みやすかった。

中学時代の崇はクラスの中ではエキセントリックな存在だけど、美人で頭のいい先生に恋しちゃったりしてフツウの中学生っぽい面が垣間見ることが出来たのも楽しかった。

ただ、それぞれの物語の中で披露される(恒例の)歴史蘊蓄がそこで起こる事件と殆ど関係ないというのはどうなのかなあ…と^^;

津原泰水『ルピナス探偵団の当惑』

  • 2007/07/08(日) 08:49:09

ルピナス探偵団の当惑
ルピナス探偵団の当惑

内容(「BOOK」データベースより)
「そうだ、検視の結果なんだけど」と姉(警察官)は言い、「いい。聞きたくない。いま食べてるし」と私(女高生)はかえすのだが、「じゃあ聞かないで。勝手に喋るから」そうして事件に巻き込まれ(押しつけられ)てゆく私たち。どうして殺人を犯した直後に被害者の残したピザなんかを食べていったのだろうか、どうして血文字のダイイング・メッセージ(らしい)はわざわざ鏡文字になっていたのか、そしてどうして死体から腕だけを無理して盗んだのか―。才人津原泰水が本格ミステリーの粋を凝らした傑作。

惜しい。
この本には同じ登場人物が出てくる短篇が3つ(「第一話:冷えたピザはいかが」「第二話:ようこそ雪の館へ」「第三話:大女優の右手」)収録されている。
最初の「冷えたピザ~」はすごく面白くて『これはもしかして今年のベストかも!』と思ったくらいなんだけど、その後「ようこそ~」「大女優の~」と読み進むにつれて第一話のワクワク感がだんだん薄れてしまい読み終わったときにはちょっと残念な気分になってしまった。

いや、面白かったんだけどね。
作品としては星4つ(3つ半かな)くらいいくでしょう。読みやすいし。
でも最初の面白さがあまりに強烈だったので、後半パワーダウンしたという印象は否めない。

第一話の何がそんなに面白かったかというと、ミステリーとそうじゃない部分(例えばラブコメディとかホームドラマとか)が当たり前に並立して存在しているところ。
主人公の彩子が学校の校庭で片想いの相手・祀島くんに一ヶ月掛かって書いたラブレターを渡そうとしているところに不二子がいきなり車を乗り付けて「事件が起きたから早く来て」って無理矢理連れて行こうとする導入部がまずすごい。
で、そのまま事件に巻き込まれていくのかと思いきや、祀島くんとの話や学校での生活、不二子との日常的(?)な会話もまた同じように描かれている。

それに対して第二話、第三話は物語全体が事件の謎解きメインになってしまっていたし、特に第一話で思考力も言動もかなり乱暴だった不二子の反応が普通の刑事っぽくなってしまっていたのが残念だった。

それから第一話では祀島くんがあまり前面に出てないのもよかったな。
「謎解き」の部分でかなり重要な鍵を握っていることは事実なんだけど、あまり事件自体には興味がなくて別の部分を見ていたら図らずも核心に近づいてしまったという感じが彼の物事に動じないマイペースなキャラクターに合っていた。
それに比べると後の2作では自分から積極的に事件に関わりすぎという印象が強くて、それが第一話で感じた祀島くんのイメージとはちょっと違うかな、と。

うん、第一話は登場人物の言動や考え方がバラバラでそれを制止する役割も正しい方向に物語を先導する役割も誰も担っていないにも関わらず、物語が破綻せずにミステリーとしてもコメディとしても成立している、という微妙なバランスがよかったんだなと思う。
で、それに比べると第二話、第三話は普通のミステリーになってしまっていたよということ。

そんな中、会話文の軽妙さは3作品共通。
テンポ、ツッコミ方、はぐらかし方、言葉の選び方、笑いのセンス…読んでいてすごく気持ちよかった。

文庫版の帯情報によると今年の秋にシリーズの新刊(「ルピナス探偵団の憂愁」)が出るらしい。
つまらなかったわけではないので、次回作もチェックしておこう!
不二子の暴走が復活してますように!(笑)


<関連サイト>
aquapolis :作家の公式サイト

戸坂康二『グリーン車の子供』

  • 2007/05/08(火) 13:23:20

グリーン車の子供
戸板 康二
4488458025

内容(東京創元社Webサイト内より引用)
7年ぶりに「盛綱陣屋」への出演依頼を受けた中村雅楽。しかし、子役の演技が気になる雅楽は、なかなか出演を承諾しない。そんな折、大阪で法要に出席した雅楽と竹野記者は、帰京する新幹線で一人の少女と出会う。東京駅に着く間際に、雅楽が「陣屋」への出演を決めた訳はーー。第29回日本推理作家協会賞を受賞した表題作を含む、珠玉の18編を収録。《中村雅楽探偵全集》第2巻。資料再録等=戸板康二・小泉喜美子・佐野洋/解説=巽昌章/編者解題=日下三蔵

「中村雅楽探偵全集」の第2巻。
1巻同様、面白かった。

事件の舞台は劇場周辺、そして登場人物は雅楽翁やワトソン役の新聞記者竹野の知己が殆どなのにどの作品もそれぞれに新しい工夫があってどれを読んでも楽しめる。
あんな狭い空間でよくもこんなに色んなシチュエーションの事件を考え出せるものだなあと感心してしまう。
またどれも40~50ページほどの短篇ばかりだけれど、その中に状況や人物の説明、物語としての起承転結、そしてもちろん謎解きまで過不足無くきちんと完結しているのもいい。

狭い範囲で事件が起こりすぎといえなくもないけど(笑)、これからも難問奇問を鋭い観察力で解いていく雅楽翁の活躍に期待したい。

「目黒の狂女」「劇場の迷子」「松風の記憶」の3冊が刊行予定。

團十郎切腹事件
戸板 康二
4488458017

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團十郎切腹事件

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